鷲ヶ岳(岐阜)
2026.07.26 (日)日帰り
◇白尾山の積層
この時期のひるがの高原(岐阜県郡上市)に足を伸ばしたら、何か一山をと思った。目を付けた白尾山は、奥美濃の盟・大日ヶ岳(日本二百名山)の影にあり、隣接する鷲ヶ岳(日本三百名山)に連なる、高まりのひとつに過ぎない。
その控えめな頂こそが、かえってヤマヤの矜持心をくすぐるのである。
ここにはかつてスキー場があった。「しらお」といえばモモンガのマークが愛らしい、穴場中の穴場のスキー場である。しかし、それも今は昔、静かなゲレンデの記憶も、山の深層に埋まっている。
均された林道の先、砂利敷きの駐車場で、あいにくの空模様に、出発をしばしためらう。
見上げた稜線には、太平洋側では失われつつあるブナ林が広がっていた。
◇ブナとササの尾根を歩く
頭上はブナ、足元はチシマザサ。
ササが刈り払われた一本調子の尾根を、淡々と登る。分岐はない。風もほとんどない。ただ、国有林と民有林の境界柱が、規則的に続いているだけだ。
管理を怠れば、一帯はたちまちササの海に呑まれてしまうだろう。高標高ゆえに、スギもヒノキも雪に押し潰され、ササに埋もれてうまく育たない。
ふと見ると、開花したササがいくつかあった。
この頻度であれば珍しいことではなく、自然の揺らぎの一部なのだろう。
林床はわずかに湿り気を帯び、ほんのりと森の匂いがした。地面で蠢く蝮の影を、反復横跳びで避ける。
ブナ林の保水効果などという予定調和は言わない。安山岩質の特質か、それとも高標高地がなせる技か。
──少し、雨の気配がする。
◇白き尾の峰
伐り開かれた山頂に着く。誰ひとりいない。
立ち位置を確認しようにも、白い雲が低く垂れ込め遠望はまるで効かない。
その静けさを破るように、にわかに遠雷が響き、雨粒が山名盤を濡らしはじめる。
息を整える暇もなく山頂を辞す。
一陣の雨風が吹き抜け、目映い雷光と甲高い雷鳴がしじまを切り裂く。
さきほどまでの静寂が、うねりを帯びた力に呑み込まれる。
近い。猶予はない。
雷雨の気配に背を押されるように、急ぎ足で引き返した。
麓に降りると、雨の気配など微塵もなかった。
しかし、振り返った白尾の峰は白い霧に烟っていた。
その姿は、まさしく白き尾であった。
(追伸)
この日の山の記録は、長めの随筆として note にまとめています。
山で感じた“深層の記憶”について、もう少しだけ書き添えました(8/8公開予定)。
https://note.com/geogeist/n/n91e5ebe80dec/
(登山記録)
アクセス・登山道:東海北陸自動車道・白鳥ICから北東に約30分。林道は現在工事中であるが、通行は可能であった。未舗装のフラットダート。登山口に駐車場あり。30台ほど駐車可能。トイレなし。携帯電波は登山口と頂上付近を除き不通。登山道は一本道で、刈り払いが行われている限り迷うことはない。
形態:郡上市白鳥町六ノ里の登山口を起点に往復、ソロ登山、約1時間15分(休憩0分)
天候:曇り~雨
水分:1.2L携行→0L消費
行動食:なし
ウェア:Tシャツ、山シャツ(計2枚)
行程:登山口(11:56~12:22)―1315m独標(12:36)―白尾山(13:06~13:07)―1315m独標(13:26)―登山口(13:37~13:50)
(メモ)
動物:マムシ、トラツグミsg、ウグイスsg、ソウシチョウsg
植生:植生:冷温帯落葉広葉樹二次林(+ヒノキ、スギ人工林)
植物:ヒノキ(植栽)、スギ(植栽)、ダケカンバ、ミズメ、ブナ、ミズナラ、ウワミズザクラ、ナナカマド、ホオノキ、シナノキ、ユズリハ、ハウチワカエデ、コハウチワカエデ、ウリハダカエデ、ヒトツバカエデ、ミネカエデ、コミネカエデ、オオカメノキ、ノリウツギ(花)、リョウブ、マイヅルソウ、チシマザサ
地質:安山岩
土壌:湿性腐植型ポドゾル