黒姫山BC
黒姫山
(新潟, 長野)
2024.03.31(日)
日帰り
一気に春めいてきた週末、直前まで天気が読めず迷いましたが、BCメッカの黒姫へ。パウダーも楽しめる山スキーの名山ですが、黒姫自体が山の品格・歴史・個性に富んだ秀峰ですので、雪質の落ちたこの時期でも十二分に楽しめました。
【黒姫山】
北信五岳の一座として、また信濃富士として古くから親しまれてきた名山。街道からもよく目立つので、信越線の車窓からその火山らしい優しい山容を仰いだ方も多いのではないでしょうか。日本二百名山、信州百名山、甲信越百名山。北信五岳では妙高に次ぐ高さだけあって、いろんなタイトルを持っています。
黒姫、という優しい名前も印象的ですが、山名は「黒姫伝説」にちなみます。ストーリーのパターンはいくつかありますが、大筋は地元の殿様の娘を竜が好いてしまうというもの。その竜の住処が黒姫山にあるということで、一帯では古くから信仰を集めていたのだと思います。一方この伝説はもう少し検証しがいがあって、登場する他の舞台が志賀高原に偏っていたりと、黒姫山の位置と少し異なる内容です。加えて、上越や中越にも同名の黒姫山があり、(全然洗いきれていませんが)きっと深堀すればまだまだ面白い逸話が転がっていそうな奥行きある歴史を持っています。
個人的に魅力に感じたのは、綺麗な火山地形を保っていること。山が生きていたことが鮮明に分かるため火山地形は元々好物なのですが、黒姫山は火山らしいゆったりした裾野、最新の噴火の産物である御巣鷹山(小黒姫山)の円やかな中央火口丘、火口原に形成された美しい湿原(冬は雪原)…。これらの秀でた景観が、すべて「黒姫」という枕詞に相まって、非常に優しく・美しく見えてしまいます。でも決して名前負けしているわけでなく、黒姫の山容は本当に美しい。火口原と中央火口丘の組み合わせは秋田駒、鳥海山、妙高山、秋田駒、浅間山と数多く見てきましたが、荒々しさ残るそれら火山と比べて、黒姫の山容は慈母のごとし。大体、外輪山の内側をスキーで滑れること自体、なかなか珍しい。(通常、外輪山の内側はかつての山体が吹き飛んだあとなので急です)
そうそう、この外輪山から火口原に降り立つルートが、後述のとおり素晴らしいんですよ。もちろんどこを滑ってもOK、しかも厳冬期はパウダー可能性大、というのはBCスキーヤーにとって非常に魅力的。
もちろん冬だけでなく、四季折々の良さがあると思います。花のシーズン、夏の湿原、豊かなブナ林は紅葉が…考えるだけでワクワクしてきますね。
【ルート概要】
◇アプローチ◇
大橋林道口駐車場は十数台。少しドロドロ。西新道口駐車場は4台。かなりドロドロ。トイレはありません。東京からだと信濃町ICが最速だけれど、数分しか変わらないので長野ICでも良いかも。
◇西新道登山口~黒姫山◇
Googlemapだと西新道登山口。YAMAPだと大橋登山口。いずれにしても、東側の登山口です。はじめはメジャーな林道沿いを行くつもりでしたが、こちらの駐車場が空いていた&スキートレースがあったので追ってみることに。結論、正解でした。
古池南西と北西にそれぞれ渡渉がありますが、ここはちょっと厄介。南西はスノーブリッジでギリ渡れましたが、今週末は持たないと思います。北西もギリギリ。私は手前で歩きやすそうな道を選んだら失敗。結局スキーを一度脱いで、小川を突破しました(幸い、勢いを付ければ対岸に着水せず渡れる距離)。ちょっと不安がよぎりましたが、シュプールは続くのでそのまま辿ることに。一定の斜度で登っていく典型的な火山の登りという具合で、適度に広がった樹間もまた登りやすい。上部の等高線が詰まった所も問題なくシールだけで登れましたし、最短距離で外輪山にアプローチできるので、おススメかも。林道沿いの方が人は入っていますが、静かな登山を楽しみたい人には向いてます。
外輪山は微妙なアップダウンや雪波もありますが、南側が開けているのでスキーでも歩きやすい。ただ、厳冬期は雪庇注意でしょうね。最後50mアップが遠く見えますが、こちらもスキーで登れるくらいの斜度でした。山頂は北アルプスから越後方面、周囲の北信五山と大展望。
◇黒姫山~御巣鷹山◇
山頂直下、七ッ池に向かって一直線に延びる天然の名ゲレンデがあります。人呼んで「七ッ池シュート」。木立がなく、遠望だと雪崩の痕跡かな?と思う見た目をしていますが、「七ッ池シュート 雪崩」で検索しても雪崩事故の確証はヒットしませんでした。デブリもなかったですしね。とはいえ、それなりに斜度はあり、無木立なので降雪直後は要注意ですね。ただ、御巣鷹山を正面に、ブッシュのストレスなく一気に滑降できるのは快適の一言。
七ッ池からはせっかくなので御巣鷹山へ。綺麗な中央火口丘で、本来なら登山道がついて然るべき黒姫山の最新峰(4万年前の噴火らしいです)にして中心峰なのに、グレーピーク。ただ、若干名登る方はいるらしく、東からはスノーシュー、西面にはスキーシュプールがありました。東面は木立も少なく、多少斜度はありますが登りやすいピークです。ジグを切ればシールで行けます。山頂は木立に囲まれ展望なし、道標も無し。ちょっと不遇ピークかも。
◇御巣鷹山〜登山口◇
御巣鷹山は西面を滑走。上部は樹間が狭く細かいターンを要求されますが、中腹は木が小さいため開放感あり。下部は滑りやすいブナ林でした。
外輪山は等高線沿いにトラバースすればシールを貼り直す必要なく突破できます。
外輪山をトラバース気味に落とした後は、森の中をゆるゆる抜けていきます。1610mで枝沢の源頭部を越えましたが、下の方はしっかり沢地形で、乗り越えるのが少し手間に見えたので早めに越えていたほうが良さそうです。
まもなく登山道に合流すると、あとはトレースを辿るだけ。よく踏み固まっているので、午後の昇温でもスキーが走ります。林道まではちょっと藪がうるさいですが、あっという間に登山口へ。雪も腐れ雪というよりは均一のザラメになりつつあり、それなりに快適に滑れました。
というわけで、今回もまた良き山行。黒姫山はこれまで登りたいと思いつつ、縦走ができずピンで行くには少し遠いことから足が遠のいてましたが、やはり名山と称えられるだけあってとても楽しい山でしたね。ルート的にも積雪期限定のルートがほとんどで、かなり満足度が高かったです。
今年は山以外の予定も色々あって、春スキーの始まりが板納めになる気もしますが、今回を〆に据えても悔いが残らないくらいには充実した山行でした。