武尊山・鹿俣山・尼ヶ禿山(群馬)
2026年10月10日 (土)日帰り
山と高原地図の紫破線が気になっていた上州武尊の不動岳。せっかくなら秋の紅葉シーズンに行ってみたいとルートを構築していたら、良い縦走ラインを見つけたので行楽日和の連休にチャレンジしてきました。
【上州武尊】
群馬の山に登れば北東方面に目立つ古い火山で、侵食が進んだ山体の随所に険しい岩峰が見られます。不動岳や家の串の岩稜はなかなかスリリングで、古くから修験道の山と知られています。深田氏もその点触れていますが、彼の注目したのはその自然度。Wikipediaによれば、標高2,000m以上では唯一、国立、国定、県立のあらゆる自然公園に含まれていない山岳とのことですが、実際麓から歩いてみると、豊かなブナ林が広がっており、紅葉狩りにも最適でした。
山頂だけを目指すと川場スキー場オープン時はものの2時間で登頂できてしまいますが、沖武尊から前武尊までまとまって続く2,000mの稜線は関東では貴重な高さ。関東地方の高い山は県境付近に集中しているため、関東圏内の山としてはほぼ最高峰です。厳密には至仏山や草津白根の方が高いですが、それらはほぼ県境なので関東内部の山としては上州武尊はトップクラスと言えるでしょう。そのため、赤城も榛名も谷川も、関東平野方面の山は敵なしで、文字通り見下ろすことができます。それらの山と比べると派手さに欠けるかもしれませんが、その分静かな山歩きを楽しめます。稜線を歩くだけではこの山の魅力を語るには物足りないので、山スキーや沢遊び、麓の森歩きなんかもやってみると、上州武尊の引き出しの多さに気付かされると思います。
歴史も深く、登山口の武尊神社は865年創建と伝えられています。ヤマトタケルとの関連も深いようですが、武尊はもともと「保宝鷹」と書いたようです。東征の折、ヤマトタケルノミコトも登った伝説があるようですが、深田氏久弥は「裏付けがない」としています。実際古事記のルートも日本書紀のルートも、直接武尊山を経由したものは書かれていないので、先にあった保宝鷹に伝承を合わせたのかもしれませんね。たぶんですが、北麓を流れる“宝川”も関係している気がします(深掘りすると面白そうですが、今回は割愛します)。主街道からは外れるものの、古くから聞こえる山だけに、タイトル多数です。
日本百名山、新・花の百名山、一等三角点百名山、ぐんま百名山、関東百名山、日本百霊山、温泉百名山など
【ルート概要】
公共交通機関利用。武尊橋スタートで旭小屋に降り、そこから川場温泉まで歩きました。
○アプローチ
バスのダイヤ的に確保できる時間はマックス10時間。逆ルートでも同等の時間を用意できますが、始発のバスには沼田駅で宿泊する必要があります。武尊橋スタートであれば、水上駅8:32発のバスが始発なので都心早朝発で十分間に合うでしょう。ちなみに谷川岳ロープウェイ行きは3台体制でしたが、宝川温泉行きのバスは乗客2人。皆さん、もっと武尊に登りましょうよ笑
武尊橋のバス停には何もありませんが、途中通過する宝台樹のキャンプ場にトイレ、売店何でも揃っています。
○武尊橋~武尊神社
先走って宝台樹キャンプ場を書いてしまいましたが、登山口まで注意点が2つ。まず、ショートカット路の存在です。基本は車道ですが、青木沢の集落から一度山道を登ってショートカットができます。ところがこの入口が分かりづらい。案内看板は無く、畑の間から山道に入るような場所だったので、GPSを小まめに見ておくとロスしないでしょう。
またこの山道、ヤマビルがいるようです。幸い10月になり気温も低くなったので出くわさなかったですが、アスファルト以外では足をあまり止めない方が良いと思います。
○~手小屋沢小屋
緩やかな樹林の登り。たまに滑るのと、超小さな渡渉が何か所か。手小屋沢小屋は登山道から20mほど下なので立ち寄りませんでしたが、水の音は聞こえたため、水場として利用できる可能性は高いと思います。
○~沖武尊
沖武尊西の肩に出るまでの斜面にロープや鎖あり。どれも足場はあるので難しくはないと思いますが、一部ロープを使わないと登りづらい箇所がありました。西の肩まで出てしまえば稜線さんぽのスタートです。ちなみに1984m峰を経由する道が地図上には示されていますが、今回歩いた際には分岐を確認できませんでした。
○~前武尊
楽しい稜線さんぽ。短い区間ですが割と変化があります。中ノ岳と家の串の鞍部まではたおやかな笹原の道。三ノ池も景観を爽やかにしてくれて気持ちが良い区間。家の串手前から少し岩稜が混じり楽しいです。
川場剣ヶ峰手前で巻き道と稜線ルートで分かれますが、稜線ルートは地図上でも紫の破線で示していいのでは?という水準の難路です。年季の入った鎖や梯子とはいえしっかりは付いていますが、鎖のない岩場も多くなかなかアスレチックなので、経験者向きです。
川場剣ヶ峰はトラバース。沖武尊周辺より歩く人は減りますが、笹払いもしっかりされていて感謝でした。ちなみに家の串手前でクマと鉢合わせ(詳細後述します)。
○~旭小屋
前武尊から不動岳までは紫破線。踏み跡は若干薄れますが、不明瞭なところは皆無でした。不動岳周辺の鎖場はなかなか手強いです。正確には不動岳の北のコル部分に、地形図では読み取れない岩峰(とはいえ高さ20mくらいはある)があり、そこをトラバース状に進むところが核心部。
まずチムニーを登りますが、かなり急で足場も少なく、適宜岩壁に体を押し付けながら登るなどテクニカルです。そこを登り切ると今度は切れ落ちた岩壁を下るタテバイ(体感で斜度70度ほど)、そして降りたところからは今度は岩峰基部を直接トラバースするヨコバイと難所が続きます。鎖はどれもしっかりしていましたが、足場は少し選ぶ必要があるので、ある程度慣れた人でないと難しいと思います。不動岳も鎖で登りますが、前武尊方面からであれば高度感も少ないので難しくはないと思います。ただ、不動岳の降りはじめに登山道とは別の方向に延びる謎の鎖があり(もしかすると巻き道?鎖自体少し急で厄介そうだったので確認せず)、安易に入り込まない方が良さそうです。そこを終えれば樹林帯の道で、1時間程度で旭小屋に着くと思います。
○~川場温泉。
ひたすら車道を8.1km、2時間弱。18:52が終バスです。
○熊
今年はドングリが豊作なようで、歩き始めのブナ林に沢山落ちていたので、エサの乏しい稜線で遭うとは思っていませんでした。家の串に向けて登っていると、急に前からガサガサ…。音の方向を見るとクマが道を横切っているではありませんか。その距離、10m。いや、焦りました。当方、熊鈴はもちろん、時折空砲も鳴らしていたんですけどね。
熊ははじめこちらを気にする素振りもなく、道を横切っただけ。が、周りは笹藪なので、様子が伺えません。クマが藪の中を遠ざかっているなら、笹をかき分ける音が続くはずですが、それもありません。このまま進むと、藪に潜んでいるクマと至近距離で鉢合わせするかもしれない…ということで、熊スプレーの安全管を外し臨戦態勢を取りつつ、クマが藪の中にとどまっている可能性が高いことをふまえ、少し声を出して改めてこちらの存在を知らせます。(大声だと刺激が強すぎるので、「いるよー」と呼びかけるイメージ)。
するとクマが再び登山道に戻ってきて、何事かとこちらをジッと観察。これもなかなか焦りましたが、敵意は無いように見えたので、ゆっくり後ずさりつつもう一度声を出すと、あちら側から逃げていきました。熊もそれなりに離れたのでこちらもそそくさと通過。これが最善の対応だったかは分かりませんが、無事に切り抜けられたのは何よりでした。何度かクマに遭っていますがやはり大事なのは刺激しないことだと思います。
なんでまたエサのない稜線にと改めて歩きながら考えていましたが、エサの豊富な山腹はひょっとするとより強いクマの縄張りなのかもしれません。これまで遭ったクマはどれも若い個体だったと思いますが、やはり経験がなく人との遭遇を避ける行動が十分に身に付いていない個体は、遭遇しやすいのかもしれません。にしても熊鈴鳴らして10mはあまりにも近い…きっと夜コッソリドングリを食べに行くため、日当たりの良い稜線で休んでいたのかもしれません。推察に過ぎませんが、なんだか寝起きな印象も受けたので、そう結論づけました。
【山行を終えて】
久しぶりにロングトレイルをしたく、長く縦走路も取れるということで秋の武尊を歩きましたが、なかなか疲れました。体力的にもですが、精神的にもこたえましたね。岩場は覚悟していたものの、クマは聞いてない…笑 まぁ無事下山できたのでヨシとしましょう。登山自体は上州武尊の魅力にどっぷり浸かって、紅葉も岩場のアスレチックも楽しめましたし、素敵な縦走路も描くことができたので申し分のない山行でした。