岩宇土山・白鳥山・銚子笠(熊本,宮崎)
2026年10月18日 (日)日帰り
昨日、実家に帰省した時のこと。
「おー、〇〇。」
隣の家の畑から声を掛けてきたのは、Jちゃんだった。
子供の頃のあだ名で呼ばれるのは照れ臭いが、こちらも二級上の幼なじみの先輩に、
「お久しぶりです。Jちゃん。」
と頭を下げる。
本当に久しぶりだった。
2年ほど前、実家近くの五ヶ瀬川が氾濫しそうになった時に、電話で水位を尋ねたことはあったが、顔を合わせるのは、母親が我が家で暮らすことになった5年前、隣保の方々に挨拶して回った時以来だった。
近況を伝え合い、しばらく立ち話をした。
うちの母親より少し年上だったと記憶しているJちゃんの母上は、今年の夏までは元気に自宅で暮らしておられたそうだが、急に体調を崩され、今は施設に入居されているという。
久しぶりに会う同世代とは、どうしても親の介護の話になってしまう。
Jちゃんも、すっかり白髪頭になっていた。
「山は歩いていますか。」
と、話題を変えた。
地元で就職したJちゃんは、若い頃からスキーや登山など、アウトドアを楽しんでいたことは知っている。
「うん、ぼちぼち行きよるよ。明日は『峰越』から五勇山までの整備に行くばい。」
峰越は、宮崎と熊本の県境近くにある登山口だ。数年前から熊本側の道が崩壊し、宮崎の椎葉側からしかアクセスできなくなっている。
最近は、地元の有志と登山道の整備にも取り組んでいるそうだ。
矢部から清和、地元の馬見原、そして五ヶ瀬や椎葉までの山に詳しいJちゃんに、各登山口までの状況を尋ねた。
「たまには、家の片付けに帰ってきますね。」
そう挨拶して、実家を後にした。
その帰り道、
(峰越か、、。明日は久しぶりに、あっち方面を歩いてみるか。Jちゃんたちは何時くらいから整備を始めるんだろう。朝から峰越で待っていたら、Jちゃんも驚くだろうな、、。)
などと考えると、なんだか楽しくなってきたが、Jちゃん以外の方には人見知りしそうなので、遠慮しておこう。
それでも、明日は峰越登山口の数キロ手前にある唐谷登山口から歩こうと決めた。
今朝は5時に目が覚めた。
テーブルの上には、妻が作ってくれた新米のおにぎりが5つ並んでいた。
1つを食べ、残りの4つを昼飯に持っていく。
6時ちょうどに家を出た。
2日連続となった実家のある馬見原まで50km。そこからトイレ休憩をした上椎葉ダムまで35km。さらに奥椎葉を経由し、唐谷登山口まで27km。
合わせて112kmのドライブを終え、8時40分に登山口に着いた。
予定では、白鳥山から横才山を経て、七遍巡りまで歩く。
白鳥山と横才山は椎葉側から、七遍巡りは五家荘側から、それぞれ歩いたことがある。
今日はその間の尾根を歩き、繋げようと思う。
いつかそのうちにと考えながら、延び延びになっていたコースだ。
晴れの予報だったが、見渡す限りの曇天。
まあ、これくらいのほうが歩きやすかろう。
Jちゃん達も、そろそろ登山道の整備を始める頃だろうか。
そんなことを思いながら、9時前に唐谷登山口を出発した。
白鳥山までの森には深い霧が立ち込め、幽玄な雰囲気を漂わせている。
九州山地の最深部ならではの静寂と景色を楽しみながら歩みを進めた。
横才山を過ぎたあたりから、時折、雲の切れ間に青空がのぞくようになり、木々の色づきも始まっているのがわかる。
水上越の手前では、思いがけずトリカブトの群生に出会った。
終盤のため葉はほとんど落ちていたが、七遍巡りの登りが始まるまで広範囲に咲き誇るその群落は、最盛期には、さぞ見事な眺めだったことだろう。
6時間半ほどを見込んでいたコースだが、5時間ほどで往復できた。
急いだつもりはなかったが、帰りの3時間のドライブを考えると、自然と足早になっていたのかもしれない。
唐谷登山口に戻った時も、自分の車以外の駐車はない。
日曜にもかかわらず、紅葉の始まった静かな山を独り贅沢に歩くことができた。
おにぎりのお礼に、椎葉名物のバターサンドを土産に買い、観光協会でダムカードをもらって帰路についた。
旧暦では明日が重陽節。
中国には、高い場所に登って厄を払う「登高」という習慣があるそうだ。
色づき始めた山を歩き、今日は一日早い、気持ちのいい登高になった。