華山(山口)
2026年8月29日 (土)日帰り
8月29日。「月に一度は山に登ろう」――そんなささやかな決意を胸に、私は下関市の華山へ向かった。
歌野川キャンプ場側からのルートは、実際に足を踏み入れると、そこは人の気配が薄れた静寂の森。蜘蛛の巣が道をふさぎ、草木は好き勝手に伸び、最近誰も来ていない感じであった。
華山の頂は、雲が少し流れていたものの、景色は見事だった。
誰もいない山頂で風を浴びながら、「来てよかった」と素直に思った。しかし、ここからが物語の本番だった。
■京の嶽、大滝山――静かな山々の試練
京の嶽へ向かう舗装道は単調で、最後まで行ってもたいしたことない。正直「行かなくてもよかったかな」と思うほど。それでも周回ルートを選んだのは、ただ華山を往復するだけでは物足りないと思ったからだ。
だが、下りに入ると昔からの持病――左膝の痛みが顔を出した。運動不足のツケがここで回ってきた。夜に歩く習慣も途絶え、柿ピーをつまみながらドラマ「VIVANT」やネットを見て寝る生活。身体は正直だ。
そして、復路の登山道はさらに正直だった。「これは本当に道なのか?」
赤い札はあったりなかったり、地面の四角柱のマークも頼りにならず、GPSがなければ完全に迷うレベル。そんな中、スマホの電池が突然20%を切った。
胸がざわついた。「やばいぞ……」
■電池残量3%、膝痛、静寂――孤独な尾根での決断
大滝山を過ぎた頃、スマホの電池ランプはほとんどみえず。
誰ともすれ違わず、蜘蛛の巣だらけの道は「数日は誰も来ていない」と告げている。ヤマップには「この先、道迷い注意」の文字。実際、何度も道を外れた。
そして――
とうとうスマホは沈黙した。
森の中でひとり。
膝は痛む。疲労は蓄積。戻る気力はない。ひざもいたいし。
「最悪、一晩ここで過ごすことになるかもしれない」
そんな考えが頭をよぎった。落ち葉を敷いて横になり、助けを呼んでみるが、返事はない。静寂だけが返ってくる。たぶん誰も来ないだろう。
そこで私は決めた。
「迷ったら左へ行こう。西へ下れば、沢に出て、歌野川へ戻れるはずだ」
地図はない。頼れるのは自分の感覚だけ。
まるで物語の主人公が最後の選択を迫られる場面のようだった。
■スマホなしで下山できたあ・・歌野川に帰る道
尾根を下り、また下り、そして左へ舵を切る。
林業の管理道のような細い道を見つけ、そこをひたすら降りた。
すると――
視界が開け、見覚えのある道が現れた。
歌野川駐車場の近くだった。その瞬間、胸の奥が少し熱くなり、涙が出そうになった。「帰ってこれた……」
遭難を覚悟した時間が嘘のように。
■おわりに
菊川のサングリーンの温泉で身体を癒しながら、今日の出来事を反芻した。
「ほんと、今回はやばかった」
「次は絶対に予備バッテリーを持っていこう」
「運動不足も解消しよう」
そう心に刻んだ土曜日の夕方でした。