三ッ石山・大深岳・諸桧岳(岩手,秋田)
2026.08.23 (日)日帰り
網張火山群──。
ここを八幡平と呼んでいいのか。
前回、大深岳で止めた続き。歩けなかった区間を歩いてきた。
以前の50kmトレイルや、滝ノ上温泉から三ツ石山へは何度か足を運んだが、今回も景色やピーク、踏破が目的ではない。
あくまで、足元に刻まれた大地の歴史や成り立ち、そこに残る地球の鼓動を、私なりに感じる山旅。
そんな思いから、古い地質図を片手に松川温泉へ。
3:25、20℃、星空。東北道を南下する。
ところが安代町へ入る頃には雲が増え、竜ヶ森トンネルを抜けると一面の霧。松尾八幡平で高速を降りても、岩手山の裾すら見えない。
あぁ、天気なんかそっちのけで、はるばる来てしまうんだな──。
ふと、西塔幸子の歌が頭をよぎった。
灯を消せば山の匂のしるくして
はろけくも吾は来つるものかな
5:10、松川温泉登山口駐車場着。
5:30、支度を終え出発。
地熱発電所の音、走るパイプ、立ち上る蒸気。松川渓谷を渡り、三ツ石山登山口へ入る。
ブナやダケカンバの森を登ると、足元に茶色系の軽い石。ここは「松川変質安山岩」。
標高1000mを越えるとヒメコマツ(キタゴヨウ)やコメツガが混じり、樹皮に鼻を付ければ、あぁ、奥秩父の匂いだ──。
やがて「大松倉溶岩」。
標高1100〜1250m、姥倉山から三ツ石山にかけて等高線が広がる地形を眺めながら、
なるほど、網張火山群か──。
と、火山のイメージがいくつか頭に浮かぶ。
7:40、三ツ石山荘。
三ツ石湿原に囲まれた静かな山荘だ。
水場を確認するも、水瓶には一滴の水も滴らない。
大松倉山へ向かうと、完全に雲の中へ。足元の石は黒み(青み)がかった暗灰色。
急に勾配が消え、南側が急斜面となる草地へ出る。地質図では、そこに火口記号。
8:25、大松倉山。
大松倉溶岩の山頂には二等三角点「大松倉」。
(2019年も同じような天気だったな)
大松倉山から三ツ石山荘へ戻り、三ツ石山へ。
赤茶けた粘土質の地面に、ゴロゴロとした礫。ひとつ拾って写真を撮る。
朝、二度目に撮った石っこと同じ。
硬くて肌色っぽい石っこ。
なるほどなぁ──。
9:30、三ツ石山。
大松倉溶岩(類)の灰色の硬い岩塊が山頂をつくる。
視界は利かなかったが、岩塊から降りると風が変わった。
立ち止まって空を眺める。
雲の流れ、風が見える。
少しずつ青空が広がり、その数秒後──
雲の中から大深岳と源太ヶ岳が、スクリーンから現れるように飛び出した。
振り返れば、岩手山も頭だけ出している。
何故だか岩塊へ走って戻っていた。
また雲に消えて……。
(追えば逃げるもんだ……宇宙のイ・タ・ズ・ラ)
10:10、三ツ沼。
天然の箱庭のような湿地に、ミタケスゲやサワギキョウ。
10:20、覘標ノ台。
三ツ石火山の一部、大松倉溶岩(類)。三等三角点「三ツ石」。
明治時代の三角測量に覘標を建てた事からこの名がついたという。
ここからは小畚山、大深岳、源太ヶ岳だけが雲から抜けていた。
岩に腰掛け、その景色をスケッチした。
あ、小畚山ピークに数名立ったのが見えた。
10:45、小畚山。先行者あり。
足元には茶色系の軽石、軟岩のような石。
あぁ、今朝と同じ松川変質安山岩か。
西側斜面には「小畚山の鼻」が見えた。
鞍部へ降ると、ハイマツやミヤマナラの中にイチイの木。
ここまで、各ピークで見つけたイチイは、周囲の樹木より少し背が低い。
なるほど、皆、周りに同調している。
同調、いや共同⁈
(魂で会話しなければわからねぇな)
11:45、八瀬森分岐。
11:50、大深岳。
先週ぶりの二等三角点「大深岳」。大深岳溶岩。
12:15、源太ヶ岳。ここも大深岳溶岩だ。
北側の茶臼、八幡平、前回歩いた稜線を眺めながら昼食。湯を沸かし、コーヒーを飲む。
岩手山は雲から抜け出したが、黒倉山、姥倉、大松倉、三ツ石山はまだ雲の中だった。
自然──。
すべての要因が創る、複雑な地形。
しかも、それは現在進行形だ。
東斜面の大崩落跡を降る。
大きなダケカンバ、ブナ、シナノキ。そして大きな大きなセンノキ。
アサギマダラが舞う森。
ここですら、数百年の歴史と、生き物たちの営みがうかがえる。
あぁ、諸行無常、諸法無我、一切皆苦、涅槃寂静……。
ななそ万年(とせ)
まゆ引き間なるこの星の
くらぶればこそ うつせみの世なれ
フワッと硫黄の匂いが漂って来た。
14:20、無事下山。
今日も松川荘の硫黄の湯へと。
あぁ、全身に湯が沁み渡る──。
追記 今回歩いた火山と、その上に刻まれた地形
岩手火山群
・松川変質安山岩(安山岩)
・丸森火山
上倉外輪山熔岩(安山岩)
丸森中央火口丘熔岩(安山岩)
・大松倉火山
大松倉熔岩(安山岩)
八幡平火山群
・大深岳火山
大深岳熔岩(安山岩)
※本文中の地質に関する記述は、主に昭和39年刊行の5万分の1地質図幅「八幡平」を参考にし、現在公開されている地質・火山資料等も併せて参照した。