先週登った飯豊連峰の「えぶり差岳」について、「えぶり」の漢字表記には「杁」と「朳」のどちらが正しいのかというコメントをいただきました。
https://yamap.com/activities/24843523
えぶり差岳のえぶりは平仮名で表記されることが多いのですが、山にできる雪形が農機具の「えぶり」に似ているからついた名前なのです。
なら農機具のえぶりの漢字表記を調べれば楽勝ですね!!
手元にある漢字辞典(『漢字源 改定第四版』)で調べてみると、
「杁」は「いり」と読み、水門という意味があるとのこと。ただし、2には「えぶり」とよみ、農機具の名前、そして地名に用いられる字とされており、杁差岳の名前が挙げられていました。
それに対して、「朳」は「えぶり」とよみ、地面をならすための農機具と出てきました(「えんぶり」とも読む)。
あれ?杁も、朳も、農機具という意味があるぞ?
農機具の杁と朳が同じ道具なのか、微妙に違うものなのか、あるいは同じ漢字の簡易体なのか、気になるところです。(そこのところ辞典にはなんにも書かれてないんですよ)
ここでインターネットに頼ってみる。ウィキベディアによると、誰が書いたのか知らないですが「杁差岳」は誤記だと書かれています。
ウィキベディアだけだと信憑性に疑問符がつきますが、私が愛用しているヤマケイの『登山用語データブック』にも、「朳差岳」と表記されています。
あれ?少なくともこの2つのソースは漢字源とは真反対のことを言っているね??
そこで広辞苑で「えぶり」を調べてみる。
手元にある初版、第二版、第四版を確認するが(未だに第七版買ってないのです)、全て、穀物や土をならす農機具の意味として、「柄振」もしくは「朳」の漢字で乘っていた。
とすると、「朳差岳」のほうが正しい表記なのだろうか???
と思って、えぶり差岳山頂の位置する関川村のホームページをみてみる。
なんと、そこに書かれていたのは「杁差岳」の文字!!
しかも、エブリ(杁)は農機具の名前とバッチリ書いてある。うーん、地元自治体が認めてるってことは「杁差岳」のほうが正しいのだろうか??
ということで、新潟県のホームページから、関川村の概要を調べてみた。ここに「杁差岳」と書かれていたら万々歳のだが、読んでみた結果…
あるぇ???新潟県のホームページから飛んでいたのに「朳差岳」と表記されているぞ!?同じ行政なのに混乱しているのか?あるいは区別しないでもいいのか?まったくわかりません。
つーか、よくみたら山頂標識や避難小屋の看板には「朳差岳」とバッチリ書かれているし。
山頂標識や山頂の避難小屋は関川村が管理しているのだから、「杁差」としなくてよいのだろうか…。
こうなってくると最早「杁差岳」も「朳差岳」も単純に誤記と言えないような気がしてきます。
(「杁」も「朳」も同義な漢字で、異字体であるといわれれば別にどっちでもいい話なんですけどね。)
ということで、調べてみた結論。
国土地理院は(ついでに言うとYAMAPも)この山のことを「えぶり差岳」と表記しております。
とすると、公の名前としては「えぶり差」か正しい表記であるというのが一つの主張であります。
それでもあえて漢字表記を行うならば、
「杁差岳」と「朳差岳」「杁」と「朳」の言語学的な意味の混同(あるいは同音異字?)、そして行政レベルでの混同を踏まえると、
「杁差岳」も「朳差岳」も間違いではないというのが正解ではないでしょうか?
(ぶっちゃけ、国土地理院もこの混同を踏まえた上で統一できないからこそ、「えぶり差岳」という表記を選んでそう?)
とまあ、酔っぱらいの頭で考えるにはなんともややこしいお話ですがね。
何が言いたいかというと、飯豊・えぶり差岳はいい山だということです。
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