馬越峠 熊野古道伊勢路-2025-11-24
天狗倉山・便石山・馬越峠(熊野古道伊勢路)
(三重)
2025.11.24(月)
日帰り
怠惰に過ごしている間に秋も終わろうとしている。
気候変動やらクマ問題で、もはや登山も気楽な趣味ではなくなってきた。
最近見ていると、余暇のすべてを捧げる層と高尾山だの富士山だの観光地と化した山だけで終わる層に収斂するような気がする。登山口からよほど近いところに住んでいる人なら別だが。
僕としては山に行っていないと、ほとんど健康的な趣味がなくなるので、人間ドックの数字が怖くなるのだが、適当に続けるほどのやる気が起きない。 そもそも出不精になりつつある。
旅行の計画も立てにくい。平日はもう疲れて考えられない。休日も頭が働かず、一日マンガなど読んで、ようやく頭が回りそうになると、深夜になる。
これでは何も決められない。
勤労感謝の日の3連休はどうせどこも航空運賃も宿泊も高いだろうと思って、半ばあきらめていた。
北日本は中途半端な季節で寒いだけだし、なるべくなら西日本に行きたいが、ちょうど京都の紅葉シーズンで、関西は見る気もしない。
鉄道で行ける不人気そうなところを探してみたら、三重県の東紀州の辺りはあまり宿泊費が高騰していない。
たしかに関東の人間の意識からは外れやすい。
僕などまだ紀伊半島に行っている方だが、南紀まで「近鉄で行くの」などと、伊勢志摩のすぐ先にあると思っているレベルの認識のヤカラをたくさん見ている。
僕にしても熊野古道の中辺路などで、新宮や勝浦あたりまでは何度か行ったが、そこらへんは特急で素通りしただけである。
熊野古道の伊勢路は知っているが、中辺路と違って見所が散らばっていて、紀勢本線の少ない本数では回りにくい。
それでも、やはりこの季節は熊野古道歩きのチャンスではないかと思った。
夏は論外。春は杉だらけなので、花粉でダメ。だいたい雨も多いし、台風も来るからなかなか選びにくい。1泊では行けないので、やはり連休に行きたい。
そういえば名古屋からならJR東海に熊野古道のフリーきっぷがある。これを使うと安くあがりそうだ。
最近には珍しく頭が回って計画ができた。
といっても往復だけで細部は決められていない。1泊目は尾鷲で、2泊目は熊野市に宿をとった。
一日目、名古屋駅でいったん外に出て、みどりの窓口に並んで、「熊野古道フリーきっぷ(伊勢路コース)」を買う。
往復の運賃特急料金にフリー区間での乗降、バスなどもついている。
こういう形態のフリーきっぷはネット予約の進展でJR東日本ではなくなってしまった。
昼過ぎの特急南紀で出発する。先代のキハ85のころには3回乗ったが、新型のHC85系には初めて乗る。ハイブリッド式気動車で、今までのディーゼルカーと違って、エンジンで直接駆動するのではなく、発電機を回して、その電力でモーターを回す。余ったり回生ブレーキで発生した電気はバッテリーに充電して、必要なときに使うという。
今までの気動車と違ってエンジン音が静かである。
だから車両の側面には気動車のキハではなく、電車の「モハ85」と書いてある。
サービス面でいうと、全座席にコンセントがついた。しかし、キハ85にあった座席の高いハイデッカーや前面の展望座席はなくなり、南紀にはグリーン車もなく、その面ではおもしろみは減った。
名古屋を出ると木曽三川を渡り、伊勢平野を抜けて多気から山間部に入る。
梅ヶ谷から紀伊長島へ国境の山をΩ状にカーブしながら30メートルを駆け下りるのは相変わらず楽しい。
ここからはリアス式海岸となり、海岸にそそりたつ急峻な山をトンネルでくぐる間に入江が見える。
尾鷲に着いたのは名古屋を出た2時間半後である。すでに夕方近い。
この大都市からの遠さが紀伊半島である。
尾鷲には初めて下りる。
行政上や経済上は三重県の東紀州の拠点らしいが、町の中心街の店は空いているのが珍しい。
漁港も近いし、歴史もあって、風情はあるのだが、世界遺産を抱える町にしては全然観光地化していない。
以前は火力発電所などあったから、観光には忌避されていたのか。
ホテルにしても数年前はじゃらんや楽天トラベルで扱っている宿がなかった。
観光案内所は一応あったが、予算はなさそうである。ただし、親切で熊鈴をくれた。
夜になると、市街地でも真っ暗になる。ゴーストタウンに見える。なんとかやっている店を見つけた。
居酒屋みたいな構えだったが、夜も定食をやっていて、一人旅にはありがたい。
こんな魚は関東では食べられない。
これが紀伊半島。
翌朝路線バスに乗る。これもフリーきっぷで乗れる。
国道沿いにはそれなりにロードサイド店舗があるが、それでも何かくたびれている。一度トンネルを抜けて、歩いてまた馬越峠を越える。
石畳がよく残っている。関東の低山に登るとつまらない気分になることが多いが、ここではそういう気は起きない。
急いで行ってはもったいない気がする。
観光地に毛が生えたレベルのハイキングで問題はない。クマは心配だが。
峠から天狗倉山へ足をのばしてみた。
頂上は巨岩で手前にハシゴがあり、登るとあまり凸凹のない岩であった。
尾鷲の町から熊野灘が見える。
再び尾鷲の町に下りたらもう正午を回っていた。
次の熊野市方面の列車は1244を過ぎると、1536までない。
ここに3時間いても仕方ないから、足早に駅に向かった。