00:43
2.1 km
175 m
御殿山
金丸山・大丸山・雨乞山 (静岡, 山梨)
2025.12.28(日) 日帰り
12月28日の午前、僕は姪っ子ちゃんと遊んだ。 幼い手のひらが無遠慮に僕の腕を叩き、笑い声が冬の乾いた空気を切り裂いた。 その後、YouTubeでみんなで大家さんの成田ゲートウェイプロジェクトを貸借対照表から読み解く動画を観た。画面に並ぶ数字は、感情という余分な脂肪を削ぎ落とした骨格のように美しく冷酷であった。 午前中、家でゆっくりした後に蒲原の御殿山に登った。品川区の御殿山ではない。 御殿山への道は新蒲原駅から始まる。舗装路をしばらく歩くと神社が見え、本格的な登山道となる。整備はされているが、人は誰もいない。熊鈴を鳴らしまくり、怯えながら一歩一歩、自分の脚を前進させる。途中、駿河湾を手前にして、奥に日本平が見える景色が現れる。非常に綺麗だ。そして、再び歩を進め山頂に着く。そこからの景色は愛鷹山塊が中央にどっしりと構える。草むらから動物が動くような音がする為、そそくさと下山をする。 御殿山から下山した後、銀行業務検定を受験するため、流刑先の沼津試験場へと行く。 本来ならば静岡市で受けたかった銀行業務検定は、世の中の予約状況という冷酷な歯車によって、沼津へと島流しとなった。僕は観光客のような顔をして電車に揺られていた。 試験は財務4級だ。初めて銀行業務検定なるものを受けるため、まずは初歩的な4級を受ける。 4級という呼び名は人懐こいが、CBT画面に映る問題は一片の温情も持たなかった。 株主資本関係の選択肢は僕の知識の拙さを容赦なく暴き、キャッシュフロー計算書だけが、かすかな猶予を示すかのように、穏やかな選択肢を差し出していた。 結果は38点。50点満点中の38点(76%)である。合格である。しかし胸を張るには少し低く、うなだれるには少し高い、実に中途半端な点数であった。初歩的な資格であるがゆえに、なおさらこの失点は僕の自尊を深く抉る痛恨の極みであった。 しかし僕は、結果の紙切れを見つめながら、「また一つ、役に立たない勲章が増えた」と静かに呟いた。 英検2級、漢検2級、歴検2級、簿記3級、ビジ法3級、城郭3級、ビール3級、世界遺産、サウナ……。 僕の履歴書は、まるで趣味の悪い百貨店のようで、統一感というものがない。そこへ今度は、銀行業務検定(財務)4級という、やけに堅い箱が無理やり押し込まれた。 それでも僕は次を考えている。 財務3級、法務3級。どうせなら、もっと深い沼へ行こうではないか。どうせ僕は底まで行かないと安心できない性分なのだ。 僕は今日も、自分の人生という名の帳簿に、 「資格+1」 と、静かに書き足したのであった。 試験を終えた僕は、沼津仲見世へと流れついた。 ONE DROPという、いかにも救いが一滴だけ残っていそうな名のビール居酒屋に、僕はほとんど祈るような気持ちで入ったのである。 カウンターに腰を下ろした。だが、そこは救済の席ではなかった。店員は忙しそうで、僕の存在は、空気よりも軽かった。目も合わない、笑ってもくれない。僕はいつのまにか、壁紙の模様の一部になっていた。 ビールはうまかった。それだけが少しだけ悔しい。 僕は静かに思った。 この店はもう二度と来まい、と。 沼津の夜は、僕の決意をあざ笑うように、冷たかった。