06:04
17.9 km
877 m
自分らしく、豆大福を~雨竜沼湿原と南暑寒岳
暑寒別岳 (北海道)
2026年06月22日(月) 日帰り
淡く澄んだ青空を二分した一方に更に淡い薄墨を広げたような曖昧で、何処か儚げな空模様の朝だった。予報は午前から午後にかけAからBと下り坂を示しおり、15時には雨が町まで降りてくる。雨の日の情緒は好ましいものだが、湿原から上部の登山道が沢になって流れ落ち、岩が滑り、木道が滑り、至る所に出来た泥濘に足を捕られて多少の難儀は強いられる。そして、熊。雨天時には彼らの鼻が効かず、遭遇率がぐんと跳ね上がってしまう懸念があった。雨は極力、避けねばならない。 7時40分、管理棟脇の電話ボックスへ入山届を出し、湿原への道のりを歩みだす。最初にタニウツギ、クルマバソウ。次いでレイジンソウ、ユキザサ、ヨツバムグラ。花を数え、吊り橋を渡り、次第に高度を上げてゆく。昨年は暑気に当てられ何度も足が止まったけれど、6月第4週のこの日は暑からず寒からずの登山日和に恵まれた。左手にペンケペタン川の流れが聞かれたら、湿原まではもう一息。ヒオウギアヤメ、チシマノキンバイソウ。水場で軽く靴底を洗い、木道に踏み入れる。 ワタスゲが揺れていた。木道の脇、池塘の縁、至る処にコツマトリソウ、ハクサンチドリ、イワイチョウ、ツルコケモモ、チングルマ、水芭蕉、コバイケイソウ。まばらに、とりどりに、やすらかに。湿原というのは何時訪ねても、不思議な場所だ。途方もない長閑さの中で、空と風だけが廻り続け、それはあたかも世界がすべて消えてしまったかのような透徹した穏やかさに満ちている。静かではあれど揺ぎ無く、深く沁みわたり、ただ魅了されてしまう。 南暑寒へ至る展望台でカロリーメイトを齧った後は笹の深い山路を辿る。今季はよくよく笹狩りされており、随分と歩きやすい。以前は結構な悪路でもあったがこちらについても大幅な改善がなされており、管理の皆さんには本当に頭の下がる思いである。山頂直下に残された僅かな雪渓を踏んで山頂へ出ると、ガスが廻りつつはあったが群別岳から暑寒別へ連なる美しい縞模様がちらりと望まれた。 雨を避け、少し急ぎ足に下山。リュックのサイドポケットにはまだ豆大福が残してある。帰り道の暑寒ダムに車を停め、高台に座る水上神社へ無事のお礼がてら休憩に立ち寄った。湯を沸かし、スタッフバッグから何気なく取り出したコーヒーの小袋に「自分らしいのが一番です」の文言がある。もしかしたら、水神様からのメッセージかもしれない。深呼吸をひとつ、豆大福をひとつ。ダムの空はよく晴れて、午後からの雨の予報などすっかり忘れているようだった。 銀