yamap四国縦走部 デビュー戦「試練と洗脳の面河道」

目を閉じると、今でもあの光景が頭の中を駆け巡る。 ガスで見えない石鎚山の方向を見つめて立ち尽くすずぶ濡れの7人。そして、みんなの心の声が僕の胸に突き刺さる。 「こんなクソ計画を立てやがって・・・」× ６人 こんな筈ではなかったんだ。壮大な笹の稜線をみんなと楽しく歩くはずだったのだ。それがこんなことになろうとは････。 四国ヤマップの一部の方々、そう「ヤン」の流れを組む方々は、最近、ロングトレイルにハマっているようだ。僕もロングトレイルは嫌いではないので、この際、仲間に入れてもらい心身ともに鍛え直していただこうという思いで、保井野登山口から石鎚山までのピストン登山を計画した。 計画当初は、ヤマップ内で「変態」と言われている方々しか集まらなかったのだが、次第に参加予定者が増え、男性８人、女性３名の計１１名の大所帯となっていた。 女性が３名・・・ これは奇跡、いや事故といえるほどの出来事である。このチャンスを逃してなるものかと、すかさず手を打つ。朝5：00の出発に備え前泊を提案をする。勿論、夜はミーティングという名の「酒盛り」を実施する。　さすがにこれはオッサンだけになるかと思いきや、2名の女性が参加表明してくれた！ この時点で僕の頭の中は、登山よりも前泊の酒盛りがメインになってしまった。しかし、問題は天気である！ 週半ばまで土日の天気は雨。さすがに雨の中、20キロを超えるロングトレイルは辛い。これは中止やむなしか････と思っていたところ、奇跡が起こった！ 金曜日の朝の天気予報では、土・日が晴れに変わっているではないか！！！ 再びおっさん達のテンションはＭＡＸとなり、朝からＬｉｎｅにメッセージが入りまくる。あまりのメッセージの多さに「この人達は仕事しているんだろうか・・・？」と疑っていたところ、 「仕事やる気、ZERO～～～」とか、 「しょうがないんで一時間だけ真面目に仕事しまーす」 なんていうメッセージが入っているじゃないか。ダメな大人の見本のような方々だ…。 そして土曜日の朝、ここからが悲劇のスタートである。昨日まで日曜日の天気は晴れだったのに、午後から雨の予報に変わっている。やはりか････。そして、この天気予報を受けた後、女性2名が不参加となる。（男性も2名不参加となったが、これはおっさん達ののテンションには関係なし）　しかしである、高知の「ネエヤン」、ライスさんは初心貫徹、雨が降ろうが槍が降ろうが、おっさんに絡まれようが、セクラハラ混じりの言葉を浴びようが関係なし。ブレずに参加しますとの事。本当にありがたい！これでおっさん達はテンションを維持したまま、前泊酒盛り縦走を決行することにした。 今回初参加となるＩＫＤ（勝手に命名）とライスさんを車に乗せて18：00過ぎに高知を出発する。実は17：30まで里山で山の先輩方に可愛がられていたので、僕の体は汗まみれ。男汁をたっぷりと吸い込んだ僕のＴシャツは、乙女ならば悲鳴をあげて逃げ出す程の臭いだったに違いないが、助手席に座っているライスさんはこの男臭を受け入れたのか、いや、諦めたのか、はたまた気を失っているのか、何も言わない。これは優しさなのか？？？いや、僕のフェロモンにメロメロになっているのか？？？きっとそうに違いない…なんていう妄想を駆け巡らせながら保井野登山口に車を走らせた。 保井野登山口に20:30に到着する。カメラを片手に待ち構えていたパパラッチ達（ソーヤさん、タヌヤン、くりきんさん、veryさん）に何故だかゲス男の扱いを受ける…。 挨拶もそこそこに皆でビールで乾杯し、後は酒盛り。が、みなさん、あまり酒が進まない。どうやら明日の事を考えアルコールをセーブをしているようだ。そんな中、今回初参加のIKDだけは違った。350mlの缶ビールを15本持参。うち3本は予備との事らしいが、ライスさんから「そもそもビールの予備って何？？」との鋭いツッコミがある。これは、明日の山行に備えて飲むのを12本でやめておきたいが、飲みたくなるかもしれないので3本予備に持ってきたということらしい。どうやら、この人も僕と同じく、酒盛りがメインイベントなのだ。 酒盛りでは、やらしーい話（ソーヤさん）やら、スケベーな話（くりきんさん）やら、エッチな話（タヌヤン）やら、エロい話（veryさん）やらをして夜が更ける。寝る前になってようやく明日の予定を決める。朝9:00から雨予報なので、保井野から登ると帰りが怖いとの意見があった為、面河登山口から登ることを決定する。そして23:00に酒盛りを終了し、それぞれの寝床に移動する。僕とIKDはそれぞれテントを張り、他のみんなは車の中へ。しかし、IKDがまだ飲み足らないようなので、我々二人は日本の将来について熱く語りあいながら二次会に突入する・・・が、気がつくとすでに1:30を過ぎていたというまさか。急いで寝ることにするがIKDはまだ飲みますとの事。結局、この男、350mℓのビールを12本空けていた。 翌朝5:00に目を覚ます。睡眠時間は3時間程であるが、意外に体調は悪くない。さすがにIKDはしんどそうだが、他のみんなは元気である。何より今回は寝起きのライスさんを見れたことが幸せである！ 予定を少しオーバーした6:15に保井野登山口から土小屋に移動する。1時間あれば余裕で到着するだろうと考えていたのだが、実際は2時間程かかってしまった。僕の車は、助手席にライスさん、後部座席にはIKDが居たので楽しいドライブであったのだが、他のおっさん達は一人で寂しいドライブ。可哀想に…と思いながらも、「こんな計画立てやがって…」と怒っているだろうなと思うとだんだん怖くなってきた。これは先手必勝だと思い、土小屋に到着するや否や、速攻で土下座をブチかます。ふっ、この世は先に謝まった者勝ち。土下座なんて簡単なもんだという負け犬魂でなんとかやり過ごした。 そして今度は面河登山口に移動し、9:00から登山開始となる。前泊し起きてから4時間も経っているのだがまだ登山口にいるというまさかに皆が気づかないフリをしている。 出発して間もなくすると、気のせいか雨が降ってきた。いや、明らかに気のせいではない。ヤバい、このままではみんなに叱られる。こうなれば洗脳しかない！　雨を気のせいだと言い張り、陽がないのは森の中だから、石鎚が見えないのは心が汚れている人間だから、あー今日は天気にも恵まれ楽しい登山だと、何がなんでも言い張るのだ！ そうだ、嘘だと認めなければ嘘じゃないんだ！ 人を傷つけないための嘘ならば、時としてそれは必要な事なのだ！ しかし、尾根に出ると雨は強くなり、この洗脳も限界を迎える…。皆ビショビショで捨てられた野良犬のようになっている。みんなの目は明らかにこう言っている。 「こんなクソ山行を企画しやがって…」 こんな筈じゃ無かったんだ…。本当は笑い声が絶えない楽しい登山になる筈だったんだ！ 俺が悪い訳じゃない、悪いのは…、悪いのは…、このクソ計画を立てた俺か…。 正気に戻ったみなさんは、「こんな雨の中歩けるか！」とばかりに、速足で一気に歩き始め、二ノ鎖小屋を「俺たちの弥山」と言い張りはじめる。どこかできいたセリフであるが、このセリフを口に出すという事は、この山行にかなり嫌気がさしている証拠である・・・。 みんなから10分ほど遅れて「俺たちの弥山」に到着すると、我慢の限界を超えた某ラ○ス姫がドＳ嬢に豹変し待ち構えていた。 ドＳ嬢　　「おい、そこの青海苔男」 Ｍッシー 「ぼ、僕の事ですか？」 ドＳ嬢　　「お前以外に口の周りに青海苔が付いてる奴なんていないだろうが！」 Ｍッシー 「い、いや、これは、青海苔ではなく髭の剃り跡なのですが…」 ドＳ嬢　　「ふん。お前の今回のクソ計画は何だ？ 2days0サミット3登山口って何だ？ こんな計画立てやがって恥ずかしくないのか！」 Ｍッシー 「す、すいません。こんな筈じゃ無かったんです…」 白髭クソ眼鏡「私の曇ったメガネに免じて許してやってくれませんか…。青海苔男もこうして頭を下げてるので。」 ドＳ嬢　　「白髭クソ眼鏡ゲス野郎がそう言うなら仕方ないわね。ふん、次にこんなクソ計画立てやがったら、そのキ○タ○握り潰すわよ！」 Ｍッシー 「握る時は素手でお願いしたい…です…」 という具合の楽しいお芝居写真を撮り、俺たちの弥山を後にする。 そして、変態の先輩方は本降りの雨の中を駆けてゆく。あっという間に僕とIKDは置いてけぼりとなり、二人でトボトボと土小屋を目指す。頬っぺたを生暖かい液体が伝っていく。雨なのか、汗なのか、涙なのかは分からない。クソ計画を立ててしまった申し訳なさ、みんなの足手まといとなった情けなさ、そしてぶっちぎられる悔しさ…。そんな反省ばかりの山行であったが、一つだけ言える事がある。 人間は厳しい環境に身を置き、それに耐える事で成長し強くなるのだ。だから、悪天候の中登山を行うことは、強くなるためには必要なことだと思う。 これが今回の精一杯の言い訳だ！ 最後にこの山行の被害者の方々を紹介しておこう。 タヌヤン 健脚。かなり良い人。女性に優しい。初参加となる女性は彼の撮影の餌食になること間違いなし。 veryさん サイボーグ。顔色を変えずどこまでも歩く。水を取り入れ、水を逃がさないのゴアと逆機能を持つ謎のカッパ（通称クソカッパ）の持ち主。 ソーヤさん（白髭クソ眼鏡） ヤマップの有名人。最近マゾ山行がお気に入り。数ヶ月前から体調がよろしいようで、精力と共に体力も充実し、かなりパワフル。髭。眼鏡。ゲス。エロ。 くりきんさん わんぱく。カッパを着ない。クオリティの高い山メシは有名。その巨体ゆえ、歩くのは苦手を思いきや、この人動けるんです！ そして登る為に努力をする熱い心の持ち主。 ライスさん 可愛い。優しい。強い。 女性に珍しく、岩場でも足の置き場所を迷わない。運動神経が抜群。ドM山行が大好き。納豆は嫌い。山菜はそんなに好きじゃない。よっしーの汗の匂いはかなり好き。キレるとS嬢に変身…というキャラに仕立てあげられる。 IKD 酒好き。歩荷訓練を中敷きなしの登山靴で行う、とんでもないドM。 以上