活動データ
タイム
08:03
距離
13.0km
のぼり
1587m
くだり
1582m
活動詳細
すべて見る恥を忍んで公開します。私、白髭岳で命を落としかけました。この体験はぜひ知っていただきたいと思い、記録します。 ・私は54才男性、登山歴13年 ・白髭岳は今回初めて ・ソロで日帰り 足にはまあまあ自信がある方でしたが、急登に次ぐ急登、山頂までのジグザグの登り返しでかなりバテました。他に人は皆無で、山頂で初めて人(ソロの男性)に会いました。 その方と少し話したあと、別ルートで下りるということで、そこで別れ、下山開始した直後でした。 ほとんど道のない超急角度の斜面を下りていくので、木につかまりながら下るしかないのですが、そこそこ太い木をつかんだところ、その木がボキッ!ヤバいと思ってもう一本つかんだらその木もボキッ!! その瞬間、視界が猛スピードで回転して頭を強打、たぶん後ろ向きに3回転ぐらいしたと思います。木の切り株で止まりました。この切り株がなかったら、もっと落ちていたでしょう。切り株が岩だったら…と思うとゾッとします。 「あーやっちまった」と思って立ち上がったら頭から血がボタボタ落ちてシャツもズボンも真っ赤になりました。「ヤバい、死ぬかも」と思うと同時に「わー、このカッコじゃ帰りに銭湯寄れないやん」と思いました。ついでに「あっ俺意識ちゃんとしてる」と気がつきました。ボーッとした感じもないし目も見える。 まず止血だと思い、地面に落ちたタオルを拾って傷口にぎゅっと当てました。頭頂部から後頭部への傷なので、どうなってるのかわかりません。水をかけてタオルで押さえ続けたら、とりあえずおさまったように感じたので、スマホで写真を撮ってみました。自分でも引くぐらいヤバいことになってました。 不安な点が3つありました。 ①血が止まらなくて気を失ったらどうしよう ②脳に損傷があったらどうしよう ③傷口にバイ菌が入って破傷風になったらどうしよう それに加えて、ここはまだ山頂付近。下界にたどり着くまで最低3時間はかかる。こんな体でこの急斜面を下りられるのか? とりあえず落ち着こう!と思い、落ちたその場所で弁当を食べました。食べながら作戦を立てました。食べてから傷口に水をかけてティッシュで泥をふきました。 持っててよかった!と思ったものが3つあります。 ①水をたくさん持ってた。飲む分も十分残しつつ、頭にぶっかけることができた。 ②ポケットティッシュをふたつ持ってた。これで傷口の泥をだいぶ拭き取れた ③タオルの他に、手ぬぐいも一枚持ってた。タオルはすぐに血で使いものにならなくなったので、手ぬぐいで傷口を縛って歩いた 何よりラッキーだったのは、首から下がほぼ無傷だったことです。苦しいながらも、3時間歩いて下山できたのです。山の神様が一回だけチャンスをくれたのかもしれません。 時々スマホで我が子の写真を見ながら、「絶対に帰ってこの子に会う!絶対に生きて帰る!」と念じながら下り続けました。 とはいえ本当にハードな下り道でした。経験の少ない方、自信のない方にはこの山はお勧めしません。道なんかほとんどない急斜面のルートが何回も何回もありました。落ちた時の残像がフラッシュバックして、「ここで落ちたら今度は本当に死ぬぞ」と自分に言い聞かせました。 危ないと思った時はしりもちをついてゾロゾロ滑っていく「腰抜けスタイル」で下りました。 自分の車にたどり着いた時には「ああ生還できたんだ」と思いました。でもまだ安心できません。傷口がどうなってるのかわからないからです。 あちこち電話をかけて、一時間ほど走ったところに救急病院があることがわかりました。電話口で「気をつけて来てくださいね」と言われました。ここで事故でも起こしてしまったら、せっかく拾った命が台無しです。 行き先が決まったところで妻に電話しました。「ちょっとミスをしてしまって…」いきさつを説明してるあいだに感極まって言葉に詰まりました。ああ、今日死ぬかと思ったけど、もう一度家族に会えるんだ、我が子の頭をなでてやれるんだ。 連休初日で道が混んでおり、なんとか病院にたどり着いた時には夕方5時近くになっていました。南奈良総合医療センター。他にも患者さんが待っておられましたが、傷を見せたらすぐに処置室に入れてくれました。 救急にかかるのは人生初。とりあえずの応急処置だけなんだろうなあ…と思っていたのですが、 ・傷口を洗ってステープラーで縫合 ・CTを撮って脳と頭蓋骨に損傷がないかチェック ・破傷風のワクチンを打つ と、至れり尽くせりでした。まあ治療費は高くつきましたが、おかげで不安点は全て払拭できました。この病院のドクターは、びっくりするくらい親切でにこやかで、治療はとても丁寧でした。良い病院に出会えてよかった! それから一時間半運転して帰宅、食事して布団に寝転んだときは「あー生きてるっていいなあ!」と実感しました。一日経過して、今のところ何ともなさそうです。本当に私はラッキーでした。 以上が私の記録です。何がしかの参考になれば幸いに思います。
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