🧀gotoスイス 第2週 ミューレン3日目 シルトホルン ミューレン📌という山村に3泊しようと5月に決めた理由は、思い出せない。 ツェルマット、グリンデルヴァルトの2大観光拠点は混むだろうから、雰囲気を変えたかったのだが、なぜミューレンだったのか。 比較的マシな値段のホテルを見つけたからだったっけ? 📌ミューレン(Mürren)——— ラウターブルンネン谷(Lauterbrunnen)の断崖の上にあって、オーバーラント三山(アイガー、メンヒ、ユングフラウ)の眺めがいい。標高1650m。車ではアクセスできず、ロープウェーと鉄道を使う。 360度のパノラマを楽しめるシルトホルン(Schilthorn、標高2970m)の観光拠点。 ————————————————————— グリンデルヴァルト~ミューレンは25kmほどだが、25日の移動では、壮観な地形の中をローカル線→ローカル線→ロープウェー(!)→ローカル線と乗り継いだ。 最後の鉄道は1両編成で、谷沿いの断崖の上を走った。左側の車窓から眺められる三山は、どんどん姿を変えていった。 着いてみると、「寂れてはいても可愛い山村」という当初の期待は少々外れた。穴場感は薄く、山岳リゾートのムード濃厚。 とはいえ、ツェルマットやグリンデルヴァルトに比べたら、可愛いものだ。 これまでの反対側から眺める三山は「別人」のように感じられた。 翌26日のラウターブルンネン谷は終日曇天、幻想バージョンになった。 gotoスイスの山登り編は、ここミューレンで終わる予定。村でダラダラしながら「締めくくりは27日、シルトホルン」と決めた。 ミューレン泊を決めてから聞き知った景勝地だが、村からロープウェー17分でアクセスできて、なかなかの人気らしい。 17分で登って写真を撮って帰ってきても、面白くない。残った時間やることもない。 ロープウェーを途中駅のビルク(Birg、標高2677m)で降り、運がよければ三山が映るという山上湖グラウゼーリ(Grauseeli)を経て、シルトホルンに登頂し、ミューレンには歩いて下山することにした。 🧀 🧀 🧀 🧀 🧀 27日朝、天気予報が悪くなっていた。終日、曇りのようだ。 実際、ロープウェーは間もなく雲の中に入ってしまい、ビルク駅で降りてからも何も見えない。三山どころか、ゴールのシルトホルンがどこにあるのかも分からない。 無人&ガスガス&ガレガレのトレイルを、希望を見いだせないまま、とぼとぼ登る。周りを埋め尽くすかのような花々が救いだ。 気づくと、山上湖への分かれ道を見落としている。まあ、後でいいや。 ところが、山頂直下あたりで、唐突に空が明るくなり始めた。 まず、周辺の高峰が姿を現した。 慌ててカメラを向けていると、右手のシルトホルンを覆っていた雲も切れ始めているのに気づき、一人で右往左往した。 どうやら、標高2000~3000mあたりに分厚い雲がかかっているものの、それより上は晴れのようだった。 登頂する頃には三山まで完全に見えるようになった。想定外「雲海に浮かぶ名峰」だ。 🧀 🧀 🧀 🧀 🧀 下山を始めると、またまたガス生活。 ロープウェーを使わず、村からヒーヒー登ってくる何組かとすれ違ったが、一様に表情が冴えない。お気持ち分かります。 ナイスミドルの白人夫婦が「山頂どうでした?」とテンション低めで聞いてきた。 「晴れていました」と答えると「えっ」。 写真を見せたら、2人の表情が分かりやすく好転した。 ヘタレ石垣市民が「希望の光」を灯した瞬間だ。なんと神々しい。 「ロープウェー17分組」はともかく「ヒーヒー組」には、ぜひとも神のご加護がありますように。あの雲海を眺められますように。 明日、アルプスを離れる。 次の行き先は、世界遺産の首都ベルン。 民泊(アパートメント)の主はシリア人。ドイツ語、英語、アラビア語を操る留学生♂である。 🧀付録「gotoスイス山登り編を終えて」 ツェルマット(マッターホルン)、グリンデルヴァルト&ミューレン(オーバーラント三山)という2大拠点で計13泊してみた感想。 どのコースも激しくお勧めしたいが、①日本から遠い②物価が異様に高い——の2点が厳しいハードルになる。 〇vs日本アルプス 日本人として、つい「本場は違うよね~」と言ってしまうのは、謙遜しすぎだろう。 2021年9月、北アルプス南岳から槍ヶ岳にプチ縦走し、その槍先を初めて間近に見た時は、目が潤んだ。 今回、その涙腺は平静を保っている。日本で「絶景免疫」を獲得したらしい。 本家アルプスは背が高く、氷河もあってダイナミックだが、個人的な登山体験としてはトムラウシ山や宮之浦岳も甲乙つけ難い。 ただし、ふもとの町並みの景観なら、スイスが30-0で三回コールド勝ちだ。 ほとんどすべての建物が山小屋風に統一されていて、花々による飾りつけも見事。 〇驚異の山岳交通 乗鞍スカイラインみたいな観光道路も、登山口へのアクセス道路もない。駐車場もないから、その争奪戦も起こり得ない。 そもそも、ツェルマット村はガソリン車の乗り入れ禁止である。 代わりにローカル鉄道、登山鉄道、ゴンドラが驚くほど充実している。まさに網の目。 標高3466mの世界遺産の景勝地ユングフラウヨッホでも、歩きゼロ、夏の好天ならサンダル、スカート、日傘姿で観光できる。 拠点は小さな村なので、各山岳交通の乗り場まで歩いて行けるのも、大きな魅力だ。 山岳交通は、集客のため増設されてきた。稼ぎ追求の流れは変わらないだろう。 今は中国勢が事実上、国内幽閉されているが、彼らが復活すれば、たとえ標高3466mでも浅草寺&道頓堀状態になると思われる。 〇トレイルは快適 国の内外を問わず「自然を満喫したい。映える写真を撮りたい。でも、疲れたくない」という観光客のほうが、はるかに多い。 だから、トレイルの「本格度」をほんの少し引き上げるだけで、人けがなくなる。 お薦め「マッターホルンのヘルンリ・ヒュッテ」と「アイガー・トレイル」には、いずれも快晴の日曜日に登ったが、あいさつが面倒にならないほどの適度な人出だった。 トレイルの案内標識、目印は、日本並みに充実している。危険個所のロープなども、十分にメンテナンスされている。 日本でよく見られる砂防施設は、ほとんどない。景観にとっては大きなプラス。 日本では、土砂災害のリスクに加え、土建系の政官財利権という固有の事情もあり、景観上は不利である。 〇登山地図アプリは必携 YAMAPのDL地図には細かいトレイルまで表記されていて、登山中の軌跡も残るため、道迷い防止対策として不可欠。 スイス政府観光局のサイト&登山地図アプリ"SwitzerlandMobility"も役立つ。 GPSアプリとしてはYAMAPで十分だが、海外では活動日記が乏しく、トレイルの解説もない。スイスのアプリは、もちろん解説が充実している(日本語はない)。 〇来たれ、YAMAPER アルプスでの山登りを「ゆったりと」楽しむには、ガイドブックだけでなくアプリも生かして、トレイルを自分なりに開拓すべし。 YAMAPERなら普段からやっていることであり、順応しやすい。 Let's go to Switzerland!
ユングフラウ界隈の分かりやすい地図(HIS、再掲)。 地図左のグリンデルヴァルトから右のミューレンに引っ越した。 27日に登ったのは、右端のシルトホルン。
25日、グリンデルヴァルト村からミューレン村に移動するため、ローカル線を2回乗り継いだ。 2回目の乗り継ぎでは、谷底のラウターブルンネン駅から断崖上のGrütschalp駅まで大型ロープウェーで移動した(写真)。 大きなキャリーバッグを引きながらロープウェーに乗るというのは、新鮮な体験だった。
Grütschalp→ミューレンの鉄道からは、常にオーバーラント三山(左からアイガー、メンヒ、ユングフラウ)を眺められる。 三山側に深い谷があり、視界を遮るものがない。
ミューレン駅に到着。 鉄道は1両編成で、貨物を積むための台車を1台引っ張る。
3泊するホテル。gotoスイス唯一の「ホテル」である。断崖の端に建っている。 朝食、バス・トイレ、冷蔵庫付きのツイン1泊1万3300円。スイスでは、かなりのお値打ち価格。 谷側と反対側で眺めのよさは180度異なるのだが......
ホテル最上階の3階(日本で言う4階)の部屋。 最安なので期待はしていなかったが、当然の如く眺望は谷の反対側。 しかも、エレベーターなし。巨大な荷物を4階まで引き上げるのは、なかなかの筋トレになった。
ホテルのテラスから見た三山。左奥からアイガー、メンヒ、ユングフラウなのだが、ミューレン村からだと、ユングフラウが手前の黒い山塊に隠れる。 この黒い山塊は「黒メンヒ」と名づけられている。 ロープウェーや登山で標高を上げれば、フルスペック三山を眺められる。
ミューレン村でも、まずスーパーを視察した。 庶民の味方コープがあったが、街の規模に比例して、まさに「コンビニに毛が生えた」程度。電子レンジもなかった。ホテルにもない。
26日は、gotoスイスで初めて、朝から雨または曇りという天気になった。嬉しかった。 悪天候が続くと困ってしまうが、雲に覆われたラウターブルンネン谷もまた美しい。空中散歩人が、ちらほら(写真)。 この日は終日、近所の散歩、石垣島から持ってきた文庫本の読書、休養に充てた。
ホテルの近くに、グーグルマップ口コミ高評価の中華料理店があった。テイクアウトにも応じる、ごく普通の店構えだ。 しかし、いわゆる定食(6種類)の値段を見ると、いずれも26.5㌵=3700円(写真)。欧米人サイズ(特盛り)だろうが、肉野菜炒め的な定食が3700円というのは、どうよ? 1年前、1㌵=120円だった。それで計算しても3200円。 世界有数のセレブ&リッチ国家スイスの物価は現在、日本の3~4倍といったところ。長期滞在には、それなりの覚悟と工夫が要る。 で、この中華料理店に入るか否か。 1日くらいご馳走を堪能しても経済的負荷に大差はないが、肉野菜炒め定食に3700円を支払うこと自体にアホらしさを感じる。ビールを頼んだら、4000円超。 よって、ミューレンでの3泊4日の夕食は、コープ食材(パン、パックサラダ、チーズ、ハム、ツナ缶、ビールなど)となった。これなら、概ね1食1000円くらいに収まる。
建物を花々で飾り付けることに関しては、スイス人は天才的な能力を発揮する。
ここから27日。 ミューレン村(標高1650m)からシルトホルン(標高2970m)行きのロープウェーに乗り、途中のビルク(標高2677m)で降りる。 初めは村が見えていたが、この直後、雲の中に入り、何も見えなくなった。
ビルク駅で途中下車して、シルトホルンまで登り始めた。ガスガスで、何も見えない。 どういうわけか、雪渓に東京ドームの屋根のような巨大なシートがかけられていた。 溶けるのを防ぐためだろうが、なぜここだけ保護しているのか、見当がつかなかった。
トレイルはガレガレ。不鮮明だが、目印が十分すぎるほどあり、助かった。
グーグルレンズでも分からない。 緑色のふかふか絨毯の上に咲いていた。
シルトホルン山頂直下で、唐突に空が明るくなり始めた。 一気に雲が切れて、山頂の展望台が初めて見えた。 痩せ尾根(ロープあり)を通らされるため、ややチビった。 なお、展望台はロープウェー客で混んでいたので、トレイルに撤退した。トレイルなら、静かに景色を眺められる。
シルトホルン山頂から、オーバーラント三山(左からアイガー、メンヒ、ユングフラウ)。 きょうは、標高2000~3000mあたりに分厚い雲がかかっているようだった。
三山から続く峰々は標高3000m台後半。
その右端の峰の氷河をアップ。
下山開始。さっきの痩せ尾根で、改めてチビった石垣市民。こーゆーの苦手。
標高を下げると、またまた雲の中。山上湖グラウゼーリ(標高2514m)に着いたものの、湖の形すら分からなかった。 とても近くからカウベル合奏団の演奏が聞こえた。 しかし、その姿は見えない。 そう、かなりホラーなのであった。
さらに標高を下げると、雲の下に抜け出て、景色が見え始めた。 このあたりは放牧エリア。
トレイルに立ちはだかるカウベル合奏団のコワモテ。 ガン見されたので、左サイドの草地を迂回した。
振り返ると、やはり標高2000~3000mあたりに分厚い雲がかかっているのだった。
ミューレン村に戻ってきた。 断崖の上のわずかなスペースに造られた村であることが分かる。 右は「黒メンヒ」。三山のうちユングフラウの眺めを阻む悪役キャラだが、これ自体、見事な山容である。
頭いい!!! 村の水道(飲用OK)の蛇口にホースを差せないので、ジョウロを経由させる。 水の行き先は、小さな畑だった。