釈迦ヶ岳 山頂の釈迦如来像

2022.05.04(水) 日帰り

活動データ

タイム

03:59

距離

8.2km

のぼり

621m

くだり

639m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
3 時間 59
休憩時間
52
距離
8.2 km
のぼり / くだり
621 / 639 m
1 21
23
15
29
46

活動詳細

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大峰山系の山々は修験道の山だ。7世紀後半の飛鳥時代、修験道の開祖と呼ばれる役小角(えんのおづぬ/役行者えんのぎょうじゃ)が修行を積んだことでも知られている。我ら下山部は、山上ヶ岳・七曜岳・大普賢岳・弥山・八経ヶ岳に親しんできた。今日はいよいよ最南部に位置する釈迦ヶ岳に登る。 天気予報では今日も明日も近畿地方は晴天。もともとは4/30(土)5/1(日)の予定だったのを、天気が思わしくないため5/4(水)5(木)に延期したのだ。女性3名、男性4名の総勢7名が誰一人欠けることなく日程調整できたのは幸運だと思う。 8時に阪急芦屋川駅近くでMワさん、Mチさんを拾って高速道路へ入る。阪神高速3号神戸線〜同1号環状線〜同14号松原線〜阪和自動車道〜南阪奈道〜169号線を行く。途中少し渋滞に合ったが、予定より20分程度の遅れで、9:50頃に道の駅吉野路大淀i センターに到着。ここでTちゃんカー組4名と合流だ。 TちゃんMエさん夫妻、Sワちゃん、Mダさんのいつメン。大きな道の駅だが、既に駐車場はほぼ満杯。おにぎり2つ弁当は200円。これにおやき4個入り450円を追加。Mワさんはハンバーグやら色々入った500円弁当。Sワちゃんは目を話した隙にキツネうどんを食べていた。特大のおあげさんに感動したそうだ。 鳩首協議の末、今日、十津川村の太尾登山口からピストンで釈迦ヶ岳に登り、明日、小仲坊から大日岳に登ろうということになり、太尾登山口へ車を走らせた。谷瀬の吊り橋の案内標識が見えた。あそこも行ってみたいところだ。Mワさんは渡ったことがあるらしい。時間が許せば下山後に寄ってみたいところだ。 山道を車でどんどん登る。急カーブの連続。登山口は何処だろう。道の駅から1時間も走らせれば登山口だと読んでいたのだが、とんだ計算違いで2時間以上もかかってしまい、車を止めた時はもう12時を回っていた。 登山靴に履き替え、トイレを済ませて12:20、さぁ出発だ。昨日捻った右足首に不安を覚えつつ最後尾で歩き始める。普通に歩く分には何とかなりそうでホッとする。登山靴は昨日はmont-bellのティトンブーツだったが、今回はタイオガブーツにした。こちらの方が足首が固定されている感じだ。 広葉樹の森は明るく新緑が目に優しい。少し汗ばんできたなと思ったら、30分ほどで稜線に出た。山々、峰々が遠くまで続いている。ここは奈良県の南東部。周囲は全て山また山。晴天微風。今日は素晴らしい一日になりそうである。 稜線はふかふかしたなだらかな道が続く。ガレ場だったら、小生の足首はもたなかっただろうが、今日はこの優しい道に救われた。12:50道端の小スペースで昼食休憩。カップ麺ができあがる間に、道の駅で求めたおにぎり弁当を食べる。今日の麺は日清の「麺職人沖縄風そば」。弾力のあるノンフライ麺は熱湯3分後も、塊になっていて箸でしっかりほぐす必要があったが、弾力があってとても美味しかった。 皆それぞれの昼ごはんを食べ終えた。進行方向の手前には黄緑色の優しい形をした山があり、その右奥には頭の尖った濃い緑色の山がある。手前が古田ノ森1618m、右奥が釈迦ヶ岳1800mだ。目線をさらに右へ動かしていくと背の低い槍ヶ岳のような山がある。これが大日岳1568m、こんな急登を修験道の山伏は歩いていくのか。 再び稜線を歩いていく。新緑が青空を背景に一層鮮やかに見える。別へ目を向けると立ち枯れた白い樹々が立っている。バリエーションに富んだ景色が広がっている。 古田ノ森1618mはこうした稜線の先にある小高い丘だった。釈迦ヶ岳への道の最終盤は急登であったが、季節が良いのでさほど苦にならない。千丈平という平たい場所の脇を登る。かくし水という湧き水が近くにあってテント場には最適だ。ここからの最終盤が急登だったが、爽やかな天気のお陰で苦もなく山頂1800mに着いた。14:30頃だった。 何度も写真で見たことのある釈迦如来像が青空を背に立っている。顔を真南に向けている。第四十靡(なびき)。釈迦像は大きくて美しい。風雨に晒されているのに、なんでこんなに綺麗なんだろう。こんなに天気の良い日に釈迦像を拝むことができ、登ってきた甲斐があった。 山頂からはぐるり360度の眺望である。釈迦像の右後方には八経ヶ岳と弥山が望める。さらにその向こうには七曜岳、大普賢岳、山上ヶ岳、稲村ヶ岳や観音峰が続いているのだろう。世界遺産・巡礼の道、大峯奥駈道が続いているのだ。 16:20下山。ここから今夜の宿泊先の小仲坊(おなかぼう)へ車で移動。小生の車が先、Tちゃんカーが後。17:30〜18:00頃到着と読んでいたのがとんだ勘違い。山道をぐねぐねと降りて行き、国道168号線へ。到着予定時刻は20:30。これはマズイ。小仲坊へ電話して到着の遅れを詫びる。安全運転でお越しくださいと励まされる。 車はずっと南下して十津川村へ。425号線を東へ走り、電波のほとんど入らない細い山道へ入っていく。カーナビも反応しなくなったので助手席のMワさんがiPhoneでGoogleマップを確認して指示を出してくれる。すでにとっぷりと暮れている。葛折りの山道は狭い上にガードレールもない。暗くて周囲もよく見えない。カーブにヘッドライトが随いて来れないのだ。道からはみ出すと大惨事になることは分かっている。慎重に運転しつつも小仲坊に早く着かないとマズイという思いに気は焦る。 下北山村役場を過ぎ、池原貯水池の横を169号線に入った。貯水池というのはMワさんが教えてくれたことで、運転席からは何も見えない。道をはみ出せば池に真っ逆さまである。暫く走って前鬼口バス停から脇の山道に入った。道路には落石がゴロゴロ転がっている。こんなのにハンドルを取られたらえらいことになる。それを避けながら車は山道を登っていく。車止めゲートは鎖で塞がれていたが、小仲坊さんに聞いた通り、鎖を外してさらに進む。こんなところで対向車が来たらジ・エンドだが、幸い降りてくる車は無かった。 前鬼口バス停から30分も走っただろうか、20:50頃にやっとこさ小仲坊に着いた。真っ暗な中に小仲坊の灯りのなんと有難いことか。時間設定のミス、全て小生の責任である。 宿坊は母家と離れ、加えて別の建物もある。母家の下の広場にはテントが数張り。意外に宿泊客は多いようだ。宿坊の方に導かれ、離れの宿坊に荷物を下ろした。板の間で30畳ほどの広さだったろうか。先に風呂に入れと言われ男性4名が先に、女性3名が後に入った。男湯と女湯に分かれておらず、交代で入る形だ。交代を示す看板や暖簾の類は無いので、全て阿吽の呼吸である。湯船は2つ。熱湯風呂だったので水道の蛇口を全開放。早く洗い終わって女性陣と交代してやらねばと、シャンプーのある所へ足を踏み出した途端ツルッと横転。左肩をしたたかに床に打ちつけてしまった。 風呂から上がり厨房を覗くと、年配の禿頭の男性から声をかけられた。「早くしてくれ、何時だと思ってるんだ、うちはホテルでも旅館でも無い、宿坊だよ!」偉い剣幕に小生はただただ平謝りである。この方が小仲坊を守る61代目の五鬼助義之(ごきじょよしゆき)さん78歳であった。 我ら7名は厨房横の板の間に並べられたお膳に付いた。座布団の上で全員正座。とても足を崩せる状況では無い。五鬼助さんは椅子に腰掛け我らを見下ろす形。奥様はその近くで板の間に座って我らの食事を見守っている。五鬼助さんの叱責は続く。それを取りなしてくれたのが奥様だった。まさに厳父慈母である。全ては小生の登山計画の甘さゆえ。五鬼助さんにも仲間にも合わせる顔がない。俯いたまま静かに食事を始めた。 ここで五鬼助さんが中座。途端に張り詰めた空気が少し緩む。下を向いていた我らの視線は上を向く。少しリラックスして奥様と会話する。大阪に住んでいて、小仲坊には週末や連休の時だけ通いで来ているらしい。だから他所へは旅行したことがない。夜遅く坊を出て車を運転する時など、道が狭くて暗くていまだに怖い、冬は宿泊客はいないけれども水道管が破裂してしまわぬようにメンテしないといけないなどなど。徐々に和やかなムードに。そこへ五鬼助さんが再び入ってきた。途端にピーンと張り詰める。ところが五鬼助さん、さっきと比べるとお怒りレベルは少し落ちている様子。なぜ釈迦ヶ岳に登ろうと思ったの?とか気さくに聞いてくださる。我ら警戒しつつも次第に打ち解けていく。太尾登山口から釈迦ヶ岳に登ったことを伝えると、あっちの道は楽だけど、やっぱりこちらの道がずっといいよ。(奥様も頷く)あっちの道はたかだか30年前からの道、こっちの道は1300年前からだそうだ。 この辺りはクマの生息地。クマが出ると騒ぐのがおかしい。クマの棲家に人間が入っていってるわけだから。北海道や東北の熊と違って、この辺りの熊は人間の姿を見ると逃げていくよ。 奥様は2回熊に遭ったことがあるそうで、一度目は谷の向こう側にいるのを見た時、もう一回は五鬼助さんと一緒にいる時に、子熊に出逢った。母熊の姿は見えなかったが絶対に近くにいるので、そうっと離れた。その時芝犬を連れていて、吠えさせないように五鬼助さんが犬の頭を抱えて、静かに必死に反対側の尾根を越えて、もう大丈夫なところまで来て犬を離すと、山道を駆け上がったり駆け降りたり見たことがないほど興奮していたそうだ。 食事を終えるとすでに10時半。朝の早い宿坊ではあり得ない時間である。早くおいとましようと、「ご馳走様でした」と立ち上がって寝所へ引き上げようとすると、Mワさんが「あのーこの辺にビールの自動販売機あります?」と空気を読まない発言。あり得ない!(汗) 五鬼助さんに「何時だと思ってるんだ!」と怒鳴られるかと首をすくめたが、豈図らんや「自動販売機は無いけど、売るビールならありますよ」と五鬼助さんの返事。350ml缶ビール1本500円也。 Tちゃん夫妻とSワちゃんはビール飲まないというので、寝所の外でMワさん、Mチさん、Mダさんと小生の4名で乾杯。見上げると星がくっきりと見える。次第に目が慣れてくると満天の星である。一つ一つの星が大きく見える。京阪神で見る星とはモノが違う。 布団に入って眼を閉じて今日一日を振り返る。本当にいろんなことがあった。こんなことでは皆んなを山に誘う資格はないな、文句も言わずに着いてきてくれた仲間にただただ感謝だ。とうつらうつらしていると、隣の布団から爆音が。Mワさんの大いびきだ。いびき防止リングに、いびき防止鼻輪もしていた筈なのに。皆が寝静まって迷惑は承知の上だが、このままでは小生は眠れない。耳元で熊鈴を鳴らす。チリーン!いびきに変化なし。もう一度チリーン!変化なし。よく見ると布団を頭からかぶっているではないか。こいつはやられた。枕を思いっきり引っ張る。敷布団を持ち上げる。いろんな手を使ってやっといびきが止んだ。先ほどの感謝の気持ちはどこへやら、小生の心は鬼になっていた。明日は平穏な一日になりますように。

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