ゴーニー

気まぐれエッセー(297) 「新・プロジェクトX」 東京スカイツリーのたもとに立ったことがある。見上げても塔の先は見えなかった。634mの高さは半端でなかった。 「新・プロジェクトX」が始まった。1回目は、「東京スカイツリー　天空の大工事」である。 お馴染みの中島みゆきさんの歌・地上の星が流れ、ナレーターは田口トモロヲさんだ。再放送かと思ってしまうほど変わらない。 建設に関わったのは延べ58万人で、工期は3年半。この世紀の大工事が、構造設計者、鉄鋼技術者、とび職の3者の立場から語られていく。 それぞれが大変なプレッシャーの中で、一番はやはりとび職かなと思った。高所での作業は命懸けであるし、工期の圧力もある。 進捗の遅れからチーム内の雰囲気が悪くなる中で、花見をきっかけにプライドを捨て、他社に学びを得ようとしたリーダーの姿が良かった。 いいものを作るんだという気持ちに自社も他社もない。ワンチームになってやり遂げようという気持ちにじわっとやられた。 完成した時の達成感ってどんなものなのだろうか。自分が関わったことが形として残る。とても素晴らしい仕事である。 ナレーターが最後に言った。この東京スカイツリーには、人々の誇りが刻まれていると。やっぱりプロジェクトXはやばい。

気まぐれエッセー(296) 「Coffee Story ③」 nageia coffee は、豊後竹田駅を出て橋を渡った先にある。店舗のドアを押すのはこれが2回目だ。 先客の男性が腰掛けてコーヒーを楽しんでいる。ボクは縦型のピアノの隣に腰を下ろした。 ピアノの心得があれば、触れてみたいところが、眺めるだけだ。静かにコーヒーの出来上がりを待っていたが、それを待たずに先客が腰を上げた。 マスターが運んできたコーヒーは、澄んだ色をしており、口に含むと酸味があって、華やかな香りがした。 何気に選択したコーヒーは、コロンビアの豆だった。nageia coffeeさんのウェブを覗いてみると豆のことが載っている。 Mariaさんという女性の方が生産者で、写真付きで紹介されている。15年前に土地を買ってコーヒー栽培を始めたとある。 標高2,000mの地で家族ぐるみの農園に関わっており、スペシャルティコーヒーの分野で販売出来るようになったという。 ハイクオリティの世界で認められるためには、相当な試行錯誤があったことだろう。今でも努力が続けられているに違いない。 たかが1杯、されど1杯。丁寧にいただきたい。

気まぐれエッセー(295) 「Run like the wind ④」 左ふくらはぎが張った感じだったなので、少しためらったが、とりあえずは走りだしてみた。31日(日)のことだ。 すぐに左ふくらはぎが不平をこぼした。痛えぇっと。一体、何をやってくれるんだと思ってることだろう。 これは長くは走れないなぁと思ったが、痛みがひどくならない。おやっと思って走り続ける。 半周(750m)まできた。これは1周できそうだ。着地の仕方がいいのかもしれん。気を良くして、だけども気を抜かずに足を運ぶ。 1周がきた。さて、どうする？2周目に入るかどうか。進むことを選んだ。途中断念が濃厚だっただけにまさかの展開だ。 カラダがリズムをつかみ、ピッチを刻んでいる。これはいける感覚だ。いわゆる乗ってきた。 うっすらとした汗が濃度を帯びてくる。2周目のほうが、1周目より早かった。走れたじゃん、自分。 こうなると走るのが楽しくなる。次に備えて体のメンテをしておこう。

気まぐれエッセー(294) 「マイ英語道　②」 先週の水曜日に今年初めてのTOEICを受けた。13:30にテスト開始、15:30終了の2時間であった。 終了1分前で、まだ長文がひとつ残っていた。回答数は5問。ふーと心の中でため息が漏れる。Oh, my God! これも心の中でつぶやいた。 解くのを諦めた。もう無理だ。ここからは、TOEICの世界で言われている"塗り絵"の時間である。 答えは全て4択なので、適当にマークを選んでランダムに塗り潰すか、どれかひとつのマークを決めて選ぶかだ。 後者の方法で、Cというマークを5箇所塗りつぶした。10秒もかからない。頭も使うことはない。ただただ虚しい。 5問のうち1つでも当たればラッキーだが、それは期待薄だ。この5問は捨てられたのである。 問題の冊子も回収されてしまうので、最後の長文がどんな内容だったのか、想像すら出来ない。 なんとも無念。時間内に全問を解くぞと意気込んでいただけにガックリきた。ヤツは今回も手強かった。 でも、満点を取る人がいるんだから信じられない。ほんと心から敬服する。満点を取れる人は、もちろん大変な努力もされているし、センスも持ち合わせているのだろう。 せめて8割の800点は取ってみたいが、それがいつになるかは、、、。

気まぐれエッセー(293) 「いまいちでない石畳　2/2」 それは紅いミツマタの群生であった。個人宅の庭にある。私有地に勝手に入るわけにはいかず、敷地外で眺めていた。 が、立て看板に気づいて自由に入ってよいと書いてある。遠慮がちにミツマタに近づいてみた。 ミツマタの株は4つほどで、多くはないが枝ぶりが良く、株数の割に迫力がある。 感心しながら眺めていると家の中から品の良いおばあちゃんが現れた。あいさつをしてミツマタの樹齢を聞いてみた。 品の良いおぼあちゃん 「一番古いのは、この端っこのもので今年で40年になるのよ。わたしがここに嫁入りした時に植えたからねぇ」 ゴーニー 「えっ、40年も。それは思い入れのあるミツマタですね」 幹が驚くほど太い。30センチ位はあるのではないか。黄色のミツマタも含めこの弩級(どきゅう)サイズは初めて見た。 品の良いおばあちゃん 「でもねー　このミツマタも歳を取ってきたからか他のに比べると花付きが良くないのよ」 そう言われると確かにそうだが、極端な違いはないのでまだまだいけそうだ。 品の良いおばあちゃん 「他のミツマタは、全てこの40年ものからの分家なのよ」 ミツマタを見つめるおばあちゃんの目が優しい。小さい苗木から面倒を見てきたミツマタが、分家ができるほど大きくなった。 これはもう我が子みたいなものだろうな。水をやって、肥料をまいて、言葉をかける。ミツマタが成長するには気候や土壌が大きいだろうが、おばあちゃんの愛情もありそうだ。 40年のミツマタhistory。おばあちゃんは語りたいことが沢山あるかも。来年も是非足を運んでみたい。

気まぐれエッセー(292) 「いまいちでない石畳　1/2」 大分市の"今市(いまいち)石畳"を歩く。今市には江戸時代に宿場町として栄え、参勤交代道路の名残りとしての石畳が約600m残されている。 その石畳。石というよりは随分と硬い大小の岩が敷きしめられている。岩どおしの隙間もあるので、気をつけないと足を取られてしまう。 先人は草履ばきだから、硬さが足に響いたのではないか。お殿様の駕籠かき人夫も大変だったろう。 ここの茶屋で一休みということで、お殿様やその家来衆もお茶や団子を頂いたり、はたまた煙草盆を引き寄せて一服といったことをしていたに違いない。 旅籠(はたご)に、庄屋、油屋、傘屋など日常に必要なお店(たな)が軒先を合わせて並んでいたと想像するが、今はその面影は無い。 ごく普通の住居が道の両サイドに並んでいるだけだ。往来の賑わいを知るのはこの石畳だけになっている。 さて、今は艶やかな"枝垂れ桜"が、この石畳通りの主役である。枝垂れ桜には艶っぽいというか、色気を感じる。 それに誘われるようにふらふらと歩いて、ぱっと視線を向けた先に驚くものがあった。まさかこんなところでと思ったのである。 (つづく)

気まぐれエッセー(291) 「竹田ウォーク2/2」 街中をトコトコと歩いて城址へ向かう。 風はあるものの寒くはない。ぐーんと気温が上がったので、半袖でもいけたなと思う。 城址駐車場は3割も埋まっていない。来週の桜まつりではきっといっぱいになることだろう。 大手門入り口の桜は終わっている感じ。葉っぱが出始めている。大手門から入って左手の西の丸跡へ向かう。 まずは菜の花の黄色が目に飛び込んだ。昨年よりも増えている感じがする。それから、左側に展開する桜はちょうど満開であった。 さらに奥側に並ぶピンクの桜。これもまたいい。今日の城址内の桜は、ここが一番良かった。 カップルが菜の花の中へ進んでいく。モデルを頼まれたらしい。男性がカメラを構え、何枚も撮っていく。 それをボクが後ろから撮る。まさか撮られているとは思ってないでしょ。

気まぐれエッセー(290) 「竹田ウォーク　1/2」 竹田城下町を歩いているとカレーの香りが鼻をくすぐった。時刻は11:30。看板には「MOUSEI CURRY」とある。 MOUSEIとは？なんぞや。 "猛省"という漢字しか浮かばない。 随分と開放的なお店で、道路から店内が丸見えである。二人の男性が背中を見せてカレーに向き合っていた。 感じのいいテーブルに座ったが、メニュー表が無い。カレー一択のみになっている。まぁ、いいかと。腹をくくる。 想像していたカレーがきた。もう見るからに当たりという感じがした。一口でスパイスが口内に広がる。 鶏肉のぶつ切り感がよい。ナッツにバクチーといろんな味で攻めてくる。見た目以上にボリュームがあった。 お店の奥さんに観光客と聞かれ、いやいや違いますと返すと、近くの桜の開花状況を教えてくれた。 気になっている竹田城址は、今朝行ってきたばかりだと言う。その新鮮な情報によると大手門から入って左手側は満開だと言う。 じゃあ、これから早速行ってみますよ。 あっ、"MOUSEI"のことを聞くのを忘れた。また、来いってことか。

気まぐれエッセー(289) 「Coffee Story ②」 コーヒー豆が無くなってきたので、SUZUNARI COFFEEさんへ足を運んだ。時刻は18:00過ぎており、弱い雨が降っていた。 平日の遅い時間なので、店のスタッフさん以外はいない。今日のスタッフさんは初めて見る人だ。 奥には山崎さんがいる。後で話しをしてみよう。まずは豆の購入ということで、今回は「刻刻(こくこく)」にした。 味の紹介として、 「継続するコーヒー感を持ち 木いちごやぶどうの様な 程よくすっきりとした酸味」 とある 以前にも飲んだことがあるので、あぁ、こんな味だったなと思い出すことになりそうだ。早速、明日作ってみよう。 カウンターで、美味いコーヒーをちびちび飲みながら、英語の音読をする。小声でボソボソと。 誰もいないので、誰の迷惑にもなっていない。すっと頭に入り込む感じがする。コーヒーのおかげか。 閉店時間が近づいてきた。山崎さん、インスタグラム見ましたよ。ニカラグアはどうでしたか？ 山崎さんが目を輝かせて言った。 「現地でパワフルな生産者と会って、いい勉強になりました！」 買い付けた豆は、今年の10月頃に入荷するそうだ。今から楽しみと山崎さんの目が言っていた。

気まぐれエッセー(288) 「Run like the wind ③」 先週の金曜日、これはいいタイムが出るぞと足を運んでいたが、左足のふくらはぎが張ってきた。 なんかやばい。少し減速するものの足の張りが抜けない。攣ってしまいそうな感じがあったので、走るのをやめた。 そういえば以前にも同じ場所が痛くなったことを思い出した。ぶり返しというやつか。ある程度の負荷を超えると筋肉がもたないようだ。 足の痛みさえなければ、1.5kmを8分15秒くらいではいけそうだった。惜しい。記録更新が幻に終わった。 左足のふくらはぎとの付き合い方が、今後の走りのカギとなりそうだ。筋肉の強化やストレッチ、足の着地などいろいろ工夫がある。 下手すると炎上しかねないので、無理は禁物。走るモチベーションも奪われかねないので、慎重にいきたいところだ。

気まぐれエッセー(287) 「Body balance」 職場では、コロナもインフルもかなり減っているのだが、半数近くが依然としてマスクを着用している。 時々、大きなくしゃみを連発している人がいて、鼻をかむ音もしているので、おそらくは花粉症なのだろう。 マスクの着用は、おそらく花粉症対策だと思われる。ボクは、長いこと生きているが、これまで花粉症になったことはない。 たまにくしゃみはすることはあるが、連発しているわけではないので、花粉症ではないだろう。 花粉症は突然発症すると聞いている。体内にだんだんと花粉(アレルギーの元)がたまってきて、それが体内から溢れると発症するらしい。 ボクは子供の頃から、スギやヒノキに晒される環境で育ってきたので、花粉の取り込み量は人並み以上だと思われる。 体内の容量はすでにいっぱいで溢れる前か、それともまだ容量があるのか。はたまた蓄積しないような仕組みでもあるのか。 特になにか予防策を取ってるわけではないので、こんな体質に産んでくれた両親に感謝である。 一方で、人に言えない恥ずかしい体質も持っている。恥ずかしがる必要はないのかもしれないが、正直なところ劣等感になっている。 花粉症にならない体質をプラスとすれば、恥ずかしい体質はマイナス、合わせるとプラマイゼロでバランスが取れているではないか。

気まぐれエッセー(286) 「マイ英語道①」 今日27日に、今年初めてのTOEICを受験する。TOEICとは、英語力判定テストのことで満点は990点。全国平均は600点くらい。 ボクのベストスコアは、昨年9月の730点だが、同年12月は620点にスコアダウンした。なので、実力的には600以上700未満とみている。 600点台は10回程度記録してるので、いい加減に600点台は卒業したいものだ。継続して勉強はしてきたので、700点台にcome buckしたいところだが、どうだろうか。 鍵を握るのはReadingだ。いかに正確に早く読めるか。なにせいつも時間が足りないので、"塗り絵"になってしまっている。 塗り絵とは、時間が足りずに適当にマークを塗り潰すことを言う。とにかく何かマークすれば、まぐれで当たることもある。 ただ、この塗り絵は悔しい。完走できずに途中で断念することと等しいから。 今回こそしっかり最後まで問題を読み込んで、Readingは350点取りたい。Listeningは380点で、合わせて730点目標だ。 そして最終のスコア目標は800点超えだが、実力的にはまだまだと感じているので、マグレでも800点を超えることはないだろう。 800点を超えると会社から大きな"報奨金"がある。なぜか15万円ももらえるのだ。気前が良すぎる気がするが、もらえるものはもらっておくに限る。 ただ、このスコアはハイレベルなので、そう簡単にはいかないのだ。壁は厚く、高い。一方、だからこそやり甲斐もある。 そのうちクリアできるとは思うが、会社の気が変わって報奨金制度が無くなっては困る。その前になんとか突破せねば。 Let's do my best !

気まぐれエッセー(285) 「珍プレーはお断り」 先日、久しぶりに大分市内のとある小さな温泉へ入った。時刻は16:00過ぎ。読み通りに入浴者は少なかった。 脱衣所にある16個のロッカーをひとつひとつあたるが、鍵がうまく回らない。5個目のロッカーでようやく使えるものにあたった。 使えないロッカーが増えている。フロント側は気づいていないのだろうか。サイフといった貴重品を持っているので、鍵なしのロッカーは不安だ。 実際、ちょうど1年前にこの脱衣所で、靴を盗られた。ロッカーとは直接の関係はないが、、、。 幸いにも1ヶ月後に靴は戻ってきた(履き間違え)が、盗難へのリスク管理を実感させられた。 なので、盗られるという前提に立てば、鍵をしてないロッカーは、守りが甘いと言わざるをえない。 鍵をかけたロッカーの安心感があり、のんびり湯に浸かった。心も体もほっこりして、さぁ、着替えようとしてロッカーに鍵を差した。 が、鍵は回らない。左に90度回すだけのシンプルな仕組みだが、動かない。番号を確認する。ロッカーは間違っていない。 もう一度、鍵に触れるが頑なに動かない。えっ、やばくないか。ロッカーには全てのものが入っているので、手元にはタオル1枚無い。 つまり、スッポンポンでロッカーと対峙しているのだ。このまま開かなかったら、どうする？ まずは、近くの人に声をかけて助けを求めるか、それとも前を手で隠してフロントに駆け込むか。後者は絶対に無いぞ。 これはなんとか自力で解決しなければならない。一旦、ロッカーから鍵を抜いた。そして、もう一度差し込んで軽く左に捻った。 カチッと解錠の音がした。ほっとした。直前のあの頑なさはなんだったのだろう。前を隠す珍(チン)プレーを逃がれたのは確かだ。鍵のことは、"風呂ント"に言っておこう。

気まぐれエッセー(284) 「Goodby SL HITOYOSHI」 23日、"SL人吉"が福岡から熊本まで走り、最後の特別運行を終えた。国産で最古の蒸気機関車であった。 ボクは、鉄道オタクではないので、詳しくはないが、鉄道は人並みに好きである。 SL人吉は、観光列車として熊本〜人吉間を走っていた。ボクは数年前に一度乗ったことがある。 熊本駅でSLと対面した。迫力のある漆黒のボディは見ているだけで絵になる。出発に向けて、旗艦のエントツから白い蒸気が上がっていた。 鋭い汽笛とともに車体がゆっくりと動き始める。窓を上げて先頭に目を遣ると、黒い煙がモクモクと上がっていた。 徐々に加速していくと、黒い煙が長くたなびいて車体にじゃれついてくる。煙に思わず咳き込んで慌てて窓を閉めた記憶がある。 SLは、球磨川沿いを滑るように走った。遮断機待ちの車から、田んぼの中から、人々がSLに目を留めていた。手を振る人もいた。 それから先頭車両も覗かせてもらった。SLの心臓部である釜には小さな扉があった。それを時々開いては、乗員さんがスコップで石炭を投入していく。 扉が開かれるたびに赤い炎が、石炭に飛びつく様が見えた。空気もいっぺんに吸い込んで熱さまでも目に焼き付いた。 もうあのボディも、黒い煙も、そして赤い炎を見ることはないのか。いい経験をしたと思うと同時に、一抹の寂しさを感ぜずにいられない。

気まぐれエッセー(283) 「Coffee Story① (2/2)」 カウンター内で、マスターが作ってるのは、ネルのドリップである。市販されてるけど、これというものがないので、自分で作ってるそうな。 棒状のステンレスを適度にカットして、丸い部分を作り、取っ手を形状する。仕上げは、ハンダ付けとのこと。器用なものだ。 肝心なネルは、布を裁断して形を整えて、そして丸くした部分に縫い合わせるそうだ。 シンプルなものだが、こういうものほど見た目以上に作るのが難しいと思う。 ネルを使ったドリップは、ペーパー式に比べると、味が柔らかいらしい。特に深煎りの豆ほど、脂分まで通すのでペーパーとは味が違うと言う。 ペーパーだと脂分を吸収するので、さっぱりした味になる。好みがあるので、どちらがいいとは言えないが、マスターのこだわりは明白である。 ネルは使うたびに染まり味わいがでる。これは間違いなく美味いコーヒーを演出してくれそうだ。 効率が良いのはペーパーなので、ネル派は少ないんですけどねと、マスター。ボクも使ってみたいんで、ひとつ買うことにした。コーヒーを淹れる楽しみが増えた。

気まぐれエッセー(282) 「Coffee Story① (1/2)」 先日、佐伯市のカフェ「coffee5」のドアを引いた。"5"は、マスターの名前と関係があるらしい。 店内には幾人かいたが、カウンター席には誰もいない。その一番端に腰を下ろした。 厚みのある板のカウンターは品があって、肘付きのイスも格がある。座ってみて心地良さを感じる。 小さなメニュー表から、タンザニア豆をhotで頼んだ。何も選んでも間違いない気がした。 マスターが、ハンドドリップでコーヒーを落としていく。あまり見かけないネル式のドリップだ。 今日は風が強いでしょとマスターが話しかけてきた。えぇ、と応えると、注意報が出てましたからね、とマスター。 春一番かな。 いや、まだ早いか。 実は、今日庭の紅ミツマタを見にきたんですよと言うと、ほぉという顔をマスターがした。 庭の隅のほうにそれは植っていて、それほど目立つものではない。だから、ほぉという顔つきになったのか。 マスターが次のように話した。 「あのミツマタは、実家から持ってきたんですよ。小さかったなぁ。庭に植え替えたんですが、土壌の水捌けが良すぎるようで、、、。あれで6年目くらいかな」 なるほど、そんな過去を持った紅ミツマタか。大切にされてきたのだろう。今年も元気に咲いている。 ところで、マスター　ちょっといいですか？ 今、そこで何を作っているんですか？ボクは、覗き込んでみた。

気まぐれエッセー(281) 「Run like the wind ②」 ２週間前から走り始めた。まずは1.5kmを7:30秒以内で走ることを小さな目標としている。 今のシューズはかかとに不安を感じていたので、思い切ってランニング用のシューズを買うことにした。近くの小さなショップへ足を運ぶ。 専門店ではないので、その手のシューズは多くない。専門店だと選択肢も多いだろうが、値も張ってくる。 今は安いシューズでいい。店内に並んでいたのは、adidas、nike、newbalanceのみ。nikeは予算オーバーで外し、残り2択でnewbalanceを選んだ。 一番の決め手は、甲が3Eタイプだったこと。足の長さでシューズを選ぶと甲がキツくなることが多いが、このシューズは長さと甲の広さがフィットした。 そして、最も気になるところが、自分の走りにこのシューズが合うかどうか。ボクはこのシューズをnewb君と名付けることにした。 早速、newb君を履いて走ってみた。地面との反発に足が戸惑っている感じだったが、走っているうちに少し慣れてきた。 結局、自宅周りの1.5kmを8分29秒で走ることが出来た。ベストタイムだ。さて、newb君が良き友達となって、さらに"親友"となれるかはこれからの走り次第だ。

気まぐれエッセー(280) 「Red mitsumata」 川沿いを車で走っていると、山にぽつぽつと点在する山桜が目に留まった。緑の中で、そこだけ白く山が笑っている。 あっ、道を間違えた。確か去年も間違ったなと思い出した。こんなことならナビをはじめからセットしておくべきだった。 予定よりも少し遅れて目的地に着いた。ここ佐伯市本匠の大水車に赤いミツマタはあった。今年も咲いてくれていた。ピークには若干早かったが、悪くない。 ミツマタは増えた感じも、減った感じもしない。ただ、風が強くミツマタが激しく揺れる。風のせいではないだろうが、ミツマタの枝が何本か根本から折れていた。 折れた先には花はついていない。やっぱりそうなるよなと思うと残念な気持ちになってくる。 誰かが意図的に踏んだとは思えないが、モノ言わぬ花が泣いているようにも思えた。 親子連れがやってきた。ミツマタに目をくれるわけではなく、一直線に河川へと降りていく。石をつかんでは川へ投げ込む。 黄色い花見っけ、と小さな女の子が言った。菜の花も風で揺れている。春一番にはまだ早い。

気まぐれエッセー(279) 「Fly in the sky」 阿蘇の大観峰を目指して車を走らせていると、空に人が浮かんでいた。パラグライダーである。 展望台で車を停めて、鳥になった人に目を遣る。上昇気流に乗って、右に左にとゆるやかに弧を描く。 空に浮かんで気分がいいだろうなぁと思うが、やってみたいとは思わない。高さに対する恐怖が先に立つ。いわゆるビビリである。 見ている分には楽しい気分にさせてくれるが、飛んでる本人はある意味命がけだろう。操作ミスで墜落なんてこともあり得る。 事故はないのかなと思ってネット検索したら、つい先日この場所で墜落事故があったようだ。 樹林にひっかかったパラグライダーの写真を見た。幸いにも死亡事故ではなかったが、一歩間違えばという可能性もあったかもしれない。 それでも空に向かうのは、経験者だけがわかる空の醍醐味があるのだろう。ボクは、その醍醐味を知らずに終わりそうだ。

気まぐれエッセー(278) 「interesting Title」 阿蘇内牧のカフェで一息ついて、席を立った時に本棚が目に止まった。そこにざっと目を走らせると背表紙に「福士加代子」と書いてある本に気づいた。 名前に覚えがあったからだが、まさかあの有名ランナーとは思わなかった。手に取ってページを繰るとまさにその通りだった。 福士さんは、主に2000年代に活躍した陸上競技の第一人者で、軽やかな綺麗なフォームでトラックも駅伝も実に強かった。また明るいキャラだったことも記憶に新しい。 なんでまた本のタイトルが、「福士加代子」なのだろうか。笑いが出る。そして、なぜこの本がここにあるのだろう。マスターが好きな本ということか。 実は、お友達なんですよとマスターが言った。いつの間にかマスターが近くにいた。えっ、お友達？　どんな繋がりなの？ 結婚式がきっかけで知り合いお友達になって、このカフェにも来たことがあると話しをしてくれた。 福士さんて、誰とでも仲良くなれる方で、結構フランクに喋るので誤解されることもあるけど、とってもいい人なんですよと褒める。 マスター自身も柔らかい方で、初対面のボクにも自然と寄せてくる。福士さんとマスターは大いに気が合ったのだろう。 さて、福士さんはどの席に座ったのだろう。そして何を飲んだのかな。店の看板メニューでもある"天使のパン"あるいは、"悪魔のパン"を食べたに違いない。 そして、うめーなぁーと率直な感想を漏らしたに違いない。あの「福士加代子」をきちんと読んでみたいと思った。

気まぐれエッセー(277) 「人気もほどほどに」 阿蘇内牧にある"いまきん食堂"の前を通ると人が群がっている。有名な赤牛丼待ちと見える。 時刻は14:30になろうとしているのだが、とんでもない人気である。この時間に食べるとなると最早ランチとは言えないような気がする。 ボクは、近くの雑貨店に入りお店の人と話しをした。カフェも併設していて、コーヒーと一緒に"天使のパン"と呼ばれるパンとアイスを楽しんだ。 1時間ほどして外に出ると、いまきん食堂の前は嵐が去った後のように静かになっていた。もう誰もいない。 食堂は15:00で受付が終了なのである。雑貨店の方が言うには、多い時で1日あたり500人もの人がこの店を訪れるそうな。 やっぱり土日は避けて、平日狙いですねと振ってみると、いやいやそうでもないんですよと雑貨店の方が答える。 月曜日も意外と多いらしい。水曜日は定休日なので論外だが、火曜日と木曜日はスタッフが少なく、料理が出てくるのに時間がかかるとのこと。 となると一番の狙い目は金曜日のようだ。でも、普通に仕事がある。明日は、いまきん食堂に行くんで休みますなんて、言えるわけもなく。

気まぐれエッセー(276) 「How to overcome plessure」 オカリナを始めて2年5ヶ月。それなりに形にはなってきたが、まだまだ道半ばである。 人前でスムーズに演奏出来て、はじめてモノにしたと言える、とボクは考えている。人前での演奏は難しい。 緊張で普段よりもパフォーマンスが落ちる。緊張というものは悪いことではなく、パフォーマンスを上げる重要な要素になる。 それが落ちるということは、"緊張過多"であって、演奏に集中出来ていないのだ。意識がaudience(聴衆)側に寄っている。 具体的には、いいカッコをみせようとか、失敗したくないという気持ちが強く働いている。 これを克服するには、ひとつにaudienceを"かぼちゃ"だと思うことだ。かぼちゃだなんて失礼なんで、ニンジンでもいい。 かぼちゃだと過度に緊張することもない。失笑もないかわりに、賞賛も無い。だから気楽である。 対策の二つ目は、もっと練習を積んで自分に自信をつけることだ。指が勝手に動く状態が望ましい。 酔っ払って千鳥足になっても、呂律が回らないような状態になっても演奏出来なくてはならない。 極めるとはそういうことだと、思う。ボクには到底出来ないことだが。フラフラに酔ってオカリナを地面に落としやしないかと別な緊張感が生まれそうな気がする。

気まぐれエッセー(275) 「Mr.Kato」 自分とよく似た人が世界には3人いるそうだ。もちろん兄弟や血縁関係を除いてである。 ボクは、中学時代にその一人に会った。顔はもちろんのこと、声、身長、体型が驚くほど似ていた。 2年生の時には同じクラスにもなった。加藤君と言った。彼は、ボクと違ってサッカーに秀でていて県の代表になるほどの非凡な才能の持ち主だった。 今でも覚えていることのひとつは、昼休みに一緒にサッカーに興じた時のことだ。彼は右利きだったが、左足だけでドリブルするので、ボールを奪ってみてと言った。 ボクは素人だが、それほど運動神経が悪くなかったので、侮っているなとムキになった。何度も何度も彼に向かっていったが、軽く翻弄されボールに触れることができなかった。 軽やかなボールタッチで、右に左にかわさられ、大きく足を開いたところで股の間を抜かれたりもした。 それでも手加減をしていたようで、余裕綽々だったのである。 彼は、その後サッカーの有名校に進んで、さらに実業団に入ったことを風のウワサで聞いた。 それから数年後。ボクはある温泉の施設に入った。誰もいないと思ったら、一人の男性が入浴中で背中を向けていた。 その男性がふいに振り返った。なんと加藤君だった。やぁ、久しぶりと言って旧交を温めることになった。 引き締まった体の彼は、未だ現役とのことだった。中学時代から時間が過ぎて、お互いに顔は変わってきた。 もう似てるとは言い難かった。それでも昔の名残りを見つけるとそれを懐かしいと感じた。 さらにそれからウン10年がたった。さすがに現役ではないだろうが、今でもサッカー関係に携わっているような気がする。 加藤君のドリブルは、今でも記憶の中で華麗なままである。そして、自分はピエロのように振り回されている。

気まぐれエッセー(274) 「Run like wind ①」 先日、友人がフルマラソンを完走したと聞いて、自分も再び走ってみようかなという気持ちになってきた。 そこで、先週自宅周り(1.5km)を走ってみた。途中、2回歩いた。11分かかった。歩くようなペースだ。 友人はもっと遅いペースだったが、42km完走している。実際に自分でも走ってみて、これは大変な距離だなと実感した。 翌日に、棚で眠っていたストップウォッチ付きのデジタル時計を叩き起こした。眠りが長かったせいか、時間も日付も大きくボケていた。そこで、まずは調整した。 それを腕につけて、再び1.5kmを走った。今度は歩かずに"完走"できた。9分58秒だった。 1kmを5分ペースで走るとなると、1.5kmは7分30秒で走らないといけない。約2分30秒短縮しないといけないので、まだまだだ。 何せ走りがバラバラである。上体と足の動きが連動しておらずカクカクした走りになっている。もう10年近くまともに走っていないのだから、無理も無いのだが。 まずは1stepとして来月には、1.5kmを7分30秒で走りたい。その前にモチベーションが落ちてやめてしまうかもしれないが。 まぁ、そうなったらそれでもいいかなぁと思う。緩い願望なので、覚悟もたいしたことはない。