【島崎三歩の山岳通信】第332号(令和6年3月6日)<2月26日~3月3日遭難事例> ◎山岳遭難発生状況(週報): ・3月2日、異なるパーティの10人で北アルプス風吹岳に入山した男性(38歳、53歳)が、風吹岳に向けてバックカントリースキーのため、ハイクアップ中、雪崩に巻き込まれ行動不能となる山岳遭難が発生し、無事救出しました。 ・3月2日、2人パーティで北アルプス小遠見山に入山した男性(55歳)が、バックカントリーを滑走中、雪崩に巻き込まれ、負傷する山岳遭難が発生しました。 ・3月2日、単独で毛無山に入山した男性(34歳)が、バックカントリーを滑走中、道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生し、無事救出しました。 ・3月2日、2人パーティで中央アルプス千畳敷カールに入山した男性(45歳)が、八丁坂を登山中、スリップし、滑落、負傷する山岳遭難が発生しました。 ・3月3日、5人パーティで北安曇郡小谷村地籍鵯峰に入山した男性(47歳)が、バックカントリーを滑走中、立木に衝突し、負傷する山岳遭難が発生しました。 ○令和6年3月3日現在の遭難状況は 38件(死者7人、行方不明1人、負傷者8人、無事救出30人)です。 前年比は、発生件数が±0件、遭難者が±0人です。 内)バックカントリーは、発生件数が+7件、遭難者が+8人です。 内)単独登山は、発生件数が-6件、遭難者が-6人です。 ★長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス 3月1週は、5件の山岳遭難が発生し、うち4件がバックカントリー中の遭難でした。 北アルプス風吹岳の雪崩遭難は、雪崩発生時、現場に居合わせたほとんどの人が雪崩に巻き込まれています。幸い自力で脱出したり、仲間によって救出されたことにより、救助された2人を含め無事が確認されました。 この時期は、寒暖差や急な降雪により雪崩が発生しやすくなっています。雪崩が発生時の雪が滑り落ちる速度は、新幹線と同じくらいと言われ、衝撃の強さはトラック1台分の重さと言われています。 このような速度の雪に巻き込まれてしまったら・・・雪に埋もれて窒息するだけではなく、深刻な外傷を伴うことも・・・ 冬山では、いつどこで雪崩が発生するかわかりません。「過去に雪崩が発生していないから大丈夫。」という保証はどこにもありません。入山や滑走前に雪の状態を確認し、事前に雪崩注意報が発出されている場合は、入山を控えることも大切です。 中央アルプスでは、滑落遭難も発生しています。 朝晩と日中の寒暖差により、凍結した雪面と岩が混在しているため、非常に滑りやすくなっています。特に下山は集中力が散漫になりやすく、一歩足を滑らせてしまうと凍結した斜面で止まることなく滑り落ちてしまいますので、アイゼンとピッケルをしっかりと利かせるとともに何よりも滑らないことが大切です。