『鍛えに行くんじゃない。会いに行くんだ。』
いつもの山トレ 歩き始めた時、ふと思った。 「もう”トレーニング”って呼ぶの、やめようかな。」 トレーニング。 その言葉を口にすると、不思議と頭の中には同じ言葉たちが並ぶ。 鍛える。 継続する。 頑張る。 サボるな。 努力。 コツコツ。 継続は力なり。 もちろん、それは悪いことじゃない。 むしろ生きていく上で、とても大切なことだ。 だから街を走る日もある。 筋トレをする日もある。 そんな日は堂々とこう呼ぼう。 「今日はトレーニングだ。」 でも山だけは違った。 山へ向かう時。 ザックを背負う時。 靴紐を締める時。 心の中にあるのは、“頑張らなきゃ”じゃない。 「今日はどんな山の姿かな。」 そんなワクワクだった。 だから今日から呼び方を変えることにした。 山歩きに行く。 山へ遊びに行く。 森に会いに行く。 景色を見に行く。 今日も虚空蔵山に挨拶してくる。 散歩してくる。 心の充電に行く。 花を見に行く。 なんだか、その方が自分らしい。 身体を鍛えたくて山へ行くんじゃない。 山や自然が好きだから山へ行く。 その結果として、身体も少しずつ強くなっていた。 それくらいが、ちょうどいい。 昔は、 「続けなきゃ。」 そう思っていた。 でも今は違う。 気付けば今日も山へ向かっている。 気付けばまた歩いている。 そして気付けば、あの日より少しだけ強くなっている。 目的は「続けること」じゃない。 楽しんでいたら、いつの間にか続いていた。 そんな歩き方が、一番幸せなんだと思う。 もちろん、これから先。 もし山の大会に出るようなことがあれば、その時はちゃんと山トレしようと思う。 ……あるかな、そんな日。笑 その時は「楽しむ」だけじゃ足りない。 しっかり鍛えて、ちゃんと挑む。 だからトレーニングって言葉は、その時まで取っておこう。 今はまだ、山へ遊びに行く。 森に会いに行く。 景色を見に行く。 それで十分だ。 頑張っている人を見ると、本当に素直に尊敬する。 目標に向かって汗を流し、自分を追い込める人たちはすごい。 だからこそ、自分は自分らしく。 競争じゃなく、自然と向き合う山歩きを楽しんでいこうと思う。 だから今日も言おう。 「ちょっと虚空蔵山に、挨拶してくる。」 🍃⛰️ ……と言っても、ザックの中には猫砂二袋が入っている。 軽く歩くつもりでも、そこは譲れない笑 肩に食い込む… 台風が過ぎ去り、ようやく訪れた青空。 森へ一歩足を踏み入れると、木々の隙間から柔らかな陽の光が降り注いでいた。 雨をたっぷり吸った森は、まるで深呼吸を終えたばかり。 登山道はきっと昨日まで小さな川だったのだろう。 折れた枝や流されてきた葉が、その時間を静かに物語っていた。 今日は生き物たちも忙しい。 鳥や蝉の声。 蝶がひらひらと舞い、 カナヘビは岩の上で身体を温める。 アオダイショウが道端でのんびり日向ぼっこ。 「うわっ!」 思わず声が出る。 ……毎回びっくりする笑 爬虫類は好きだが。 少し歩けば、今度はリスが木々を駆け上がっていく。 「おっ、リスだ。」 虚空蔵手前でも猿の群れも居た。 なんだろう。 今日は山全体が目を覚ましたような気がした。 雨上がりの森。 生き物も草木も、みんな一斉に動き始めた日。 そんな世界を歩いているだけで、自然と笑顔になる。 虚空蔵山山頂。 いつものベンチに腰を下ろした。 眼下には住み慣れた街並み。 南アルプスは厚い雲に包まれている。 その上には澄み渡る青空。 風に押される雲は、いつもより少し足早だ。 「あ〜、気持ちがいいな。」 登りでかいた汗が風に冷やされる。 今日は何もしない。 コーヒーも淹れない。 タバコも吸わない。 飯も無し。 ただ、 ぼ〜っとする。 それだけで十分だった。 きっと今日のご褒美は、この時間そのものだったんだ。 腰を上げる。 「さあ、ちょっとだけ遠回りして帰ろう。」 虚空蔵山を越え、延命水を回るいつもの道。 走らない。 急がない。 景色を見ながら、森の音を聞きながら、ゆっくり歩く。 小さな幸せを積み上げる。 戦いじゃ無い。 そんな日があってもいい。 いや── そんな日だからこそ、山は最高なんだと思う。






