――傭兵G、西伊豆の尾根に立つ――(金冠山・奥山・瞽女倒山・真城山・内匠山)
金冠山・達磨山・葛城山
(静岡)
2026年02月14日(土)
日帰り
戸田峠。標高726m。
舗装された駐車場は静かだった。
斜め向かいが金冠山の登山口。
まずは様子見の15分。
金冠山(816m)。
芝の稜線の先に、富士。
駿河湾越しだ。
霞んでいる。
暖気のせいだろう。
だが、立っているだけで価値はある。
本命は別にあった。
貫ヶ岳。
だが凍結、残雪、熊。
情報が足りない。
だから呼んだ。
傭兵G。
この男は一度踏破した山は振り返らない。
貫ヶ岳は却下。
代わりに茅ヶ岳を提案されたが、
それは傭兵の領域だ。
この時期、
俺みたいな素人が足を踏み入れてはならない。
恐る恐る伊豆を出した。
彼は未踏だった。
彼は一瞬黙った。
成立。
金冠山からは富士、箱根、沼津アルプス。
説明はいらない。
未踏の地、西へ向かう。
奥山。瞽女倒山。真城山。
瞽女倒山――
だが景色は少ない。
ほぼ無言の縦走。
Gの背中が遠い。
ついていく。
真城峠は車道。
現実に引き戻される。
真城山。
ここで視界が開く。
駿河湾、富士、南アルプス。
暑い。
二月とは思えない。
内匠山。
山頂は電波塔。
NTT真城中継所。
門を越え、
林道を戻り車道で出発点へ向かう。
ここからが長い。
意識が薄れる。
足が重い。
そのとき――
道路脇で「Gカフェ」開店。
彼がいくつもの戦場を共にしたカップ。
注がれたコーヒー。
熱い。
救われた。
あれがなければ、
俺は車道の砂利になっていた。
こうして記録も残せなかっただろう。
戸田峠に戻る。
俺は祈っていた。
「このまま達磨山へ行くぞ」
その言葉が出ないことを。
Gは何も言わなかった。
助かった。
彼は振り返らない。
だが視線だけが、
もう一度、金冠山を捉えていた。