笈ヶ岳を冬瓜平付近で撤退
笈ヶ岳
(富山, 石川, 岐阜)
2024.04.21(日)
日帰り
日本二百名山の笈ヶ岳(おいずるがたけ)に挑戦。
山毛欅尾山(ぶなおやま)から向かったが、冬瓜平(かもうりだいら)付近で撤退となった。
今回は、まず先に撤退を決断した経緯から書こうと思う。
何よりも、自分が覚悟していた以上に薮が険しく、
道中のタイムロスが大きく、体力の消耗が激しかった事が大きい。
「笈ヶ岳は薮が険しい」という説明は何度も聞いていたが、
夏季はともかく春季なら笹薮やせいぜいハイマツレベルのものをイメージしていた。
だが山毛欅尾山から冬瓜平の区間の薮はそうではなく、
硬質な樹木の枝が天然バリケードとなって道を塞ぐのがここの「薮」の正体だった。
中には主幹がどこにあるか分からず、伸びているのが枝なのか根なのかも判別がつかないような樹木も多々あったが、このレポートでは便宜上「枝」と呼ぶ事にした。
それでもどうにか山毛欅尾山以降の薮の区間は抜けられたが、冬瓜平付近まで来ても雪が緩んでいた。
この日すれ違った先行グループの方の話によると雪崩を何度か目撃していたとの事で、これ以上進む事に危険を感じた。
(このグループの方は前日の土曜にアタックを開始、やはり想定以上のタイムロスで当日下山できずビバークしたらしい)
また、帰りも薮という名のバリケード区間を抜けなければならず、
そのタイムロスが予測しづらかったため、体力に余力がある内に引き返す事を判断した。
撤退の理由について話をしたので、続いて当日の行動について。
4時前に出発し、中宮発電所横の砂防ダムを抜ける。
ヘッドライトをつけながらかなりの高低差のハシゴを上り下りするので何気に怖い。
また、標識もほとんどないため、ダムへ下りるための道が分かりにくい。
ここについては、自分は前日にダムへの道までルートの下調べをしたので問題なかった。
これから笈ヶ岳へ挑むことを考えている人は、ダムへの道は前日に把握しておく事を推奨。
ダムを抜けると発電施設の一部である導水管横の階段を一気に駆け上る。
この階段が非常に長く、傾斜も急なので結構しんどい。
この発電所コース、ウォーミングアップするための区間がなく、
山行開始してすぐにダム横断、階段急登と続くのでいきなり辛い道から始まる。
……だが、今振り返るとこのあたりはそれでもまだ有情な部類だった。
長い階段を登り切ると上に貯水施設があり、その裏に山毛欅尾山への登山道がある。
この山毛欅尾山への道もかなりの急登だが、前半は道が明瞭で分かりやすい。
後半になると少し分かりづらくなってくる。
もう少し頑張ると山毛欅尾山に登頂。
自分の時は山毛欅尾山山頂の少し手前から雪が出てきた。
この後、山毛欅尾山から冬瓜平へ向けての尾根筋に歩いていく。
恐らくこの区間が中宮発電所コースの核心部になると思う。
より正確に言うと、この区間にどれだけ雪が残っていて、
薮という名のバリケードを回避して進めるかがコース難度に直結してくる。
自分が登った時はかなり雪解けが進んでおり、
1週間前、2週間前に登頂した方の記録と比べてもかなり残雪量が減っている印象があった。
冒頭の撤退判断の理由でも書いたように、自分はこの区間で大幅なタイムロス、体力の消耗があった。
尾根筋なので一応尾根伝いに道はあるのだが、
尾根の道が枝で塞がれている事も多々あり、その場合にはどうやってよけて進むか都度判断しなくてはならない。
その際に普通ならコースアウトと判断されるような道も突っ切るのでとにかく疲弊が酷い。
そうやって非常に険しい道を抜けながら、冬瓜平に近づくとまた雪が出てくる。
それもかなり緩んでいて、あまり速度が上がらない。
下山時に余力を残した方がいいと判断し、冬瓜平少し手前で撤退を判断。
登山者が少なすぎて道が不鮮明なため、下山時にも危うく大きめなコースアウトを起こすところだった。
それから、下山時に初めて熊と遭遇した。
自分の進行方向を横切る形だったが、十分に距離があり、こちらの事は気付かれなかったので何事もなく済んだ。
という事で、結局山頂にはたどり着けなかったが、
「笈ヶ岳の薮とはどういうものか」「残雪期が明けるとどうなるか」のイメージがより鮮明になったのは得難い経験だったと思う。
薮の有無は0か1かではなくて、雪解けが進むにつれて徐々に薮が復活し、それによって線形的に難度が上がってくるという事なのだろう。
薮が復活した場合にどれほど通行困難になるかが感覚として理解できた。
また、1週間前、2週間前の登頂者のレポートを読むと自分は雪解けが進んでタイミングが悪かったように思うので、
うまくタイミングが合っていれば途中のバリケード区間をもう少し楽に進めたかと思う。
今回の笈ヶ岳挑戦のため、かなり入念にアイゼン訓練をしたがそこまでする必要はなかったように感じた。
アイゼンを使っても進むのに苦労する「積雪エリア」はあまりなく、雪があるところは概ね斜度に問題なかった。
それよりも、薮の突破と、雪と薮の境界面があるところをどう渡るかの方に苦労させられた。
もっとも、これは雪解けが進んだ状況下だったので、もっと残雪が多い時期だったら話が違ってくるかもしれない。
それから、ビバークをプランに組み込んでいなかったのは甘かったと思う。
ビバーク用テントは持ち込んでいたが、あくまでどうにもならなくなった時の最終手段で、
タイムが遅れた場合にビバークしてでも登頂を目指すかという事を考えていなかった。
この山はコースタイムの変動が激しいので、途中でビバークプランに切り替える事を視野に入れてもよかったと思う。
とは言え、今回の場合はそこまで計画に組み込んでいても結局撤退していたような気もする。
この山の特性について理解は深まったので次回はもっとうまく登れると思う。
問題は、正直もう二度と行きたくないレベルでの過酷さだったため再度計画し直すのに気が重い事だが……