04:24
5.8 km
397 m
八森山(BC)
磐梯山・雄国山・赤埴山 (福島)
2026年03月01日(日) 日帰り
再び地元の山岳会のレジェンドにお誘いいただいて、裏磐梯の八森山へ。レジェンド曰く隠れた山スキーの名山とのことだったが、豊富な雪、低山らしい複雑で楽しい地形、適度な樹間のブナの森など、名山との評価に違わぬ素晴らしいルートだった。 この日は、朝から先週とは打って変わって身を切るような寒さになった。桧原湖畔から八森山を目指すこのルートは、最高点でも1200mに満たない低山のツアーだが、さすがに裏磐梯はこの寡雪の最中でもまだ雪は豊富だ。加えて、タイミングよく流れ込んだ寒気のおかげで雪質もよく締まっており、久しぶりに快適な滑降を予感させた。 ルートは大まかにしか聞いていなかったので、二通りほど予想して地図上にルート図を引いていたが、実際のコースはそのどちらとも少し違った。もう少し正確に言うと、予想していたルートのひとつとほぼ同じだったのだが、リーダーがセオリー通りの尾根道ではなく、はじめのピークをふたつほど巻く選択をしたため、出だしが予想外だった。下山では行きに巻いたピークを巻かずに登り返したが、これは登り返しの労よりも斜面の快適さを優先したためだろう。 せっかく豊富な経験を持つ大先輩と歩かせてもらう機会なので、出来るだけ後ろにくっついて、ひとつひとつの選択の意図を確認しながら歩く。これが本当に勉強になる。 八森山は檜原湖の西側に位置する1149.5mの山で、巨大な阿賀野川水系の第三階層の分水嶺になっている。裏磐梯三湖(桧原湖、小野川湖、秋元湖)の流出河川はいずれも長瀬川で、これは猪苗代湖に注いでおり、猪苗代湖の水は日橋川(にっぱしがわ)を通じて阿賀野川に流れ込んでいる。一方で、八森山を含む高曽根山の山域を原流域とする大塩川は、猪苗代湖とは正反対の喜多方市方面に流れ、途中で姥堂川の流れを合わせて直接日橋川に注ぎ込んでいる。大塩川の源頭と桧原湖は、八森山を挟んでほんのわずかな距離にあるにもかかわらず、その水が旅をする経路がまったく異なっているのは、なんとも面白いことだ。 余談だが、ものの本には桧原湖の流出河川は長瀬川と書かれているものの、地図を眺めてもどこから長瀬川に流出しているのか分からない。そこで国土地理院地図をつぶさに確認してみると、どうやら桧原湖と小野川湖のあいだに地下の水路があり、ここから小野川湖経由で長瀬川に流入しているらしい。ちなみに、初夏のニッコウキスゲで有名な雄国沼から流れる雄子沢川(おしざわがわ)や、ネコママウンテンスキー場のある猫魔ヶ岳から流れる清水沢などもみな桧原湖の流入河川である。雄国沼のニッコウキスゲを育んだ水や、ネコママウンテンでスキー客を楽しませた雪解け水が、はるかに旅をして日本海に注ぎ込むのかと思うと、自然の雄大で繊細なネットワークを感じずにはいられない。 さらに余談だが、猪苗代湖の水は安積疏水を通じて阿武隈川にも流れ込んでおり、そういう意味では、人工的にではあるが実はこの地域は阿武隈水系にも属していると言えなくもない。猪苗代湖は、その水が日本海にも太平洋にも流れ込んでいるという、日本でも珍しい湖なのだ。 八森山は桧原湖畔にひっそりと佇む小さな山だが、隠れた山スキーの名山にして、魅力あふれる水の物語をかかえた、実に素晴らしい山なのである。
