権現山(伊那谷) 2023-08-20
木曽駒ヶ岳・空木岳・越百山
(長野)
2023年08月20日(日)
日帰り
愛とYUKIだけがともだちさ(挨拶)
(所感)
昨日の権現縛りで伊那市の権現山に登る。中央アルプス・将棊ノ頭に抜ける権現づるね(尾根)の中間に山頂があり、権現「山」の中では国内最高所だそうだ。かつては雨乞いや幕藩時代の検地登山に利用され、ウエストンが西駒から下ったというクラッシックルートである。
東麓の西春近からは、権現山に隠れて中ア主稜線の山々は見えない。朝な夕なに仰ぎ見た一番高い山に神性を見出すのは、自然なことだっただろう。あるいは、山仕事で登った権現山から、その先の主稜線に続く長大な尾根を、神の通いし道に見たてたか。
伊那谷全体に雲が低く垂れ込める朝。雲が上がり、雷雲ががんばらなければ、山頂から眼下には伊那谷が広がるだろう。何しろ標高は1749.3m(語呂合わせで伊那良く見える)である(ただし三角点の標高は1749.46m)。
ゲレンデのリフト終点まで車を進める。標高が上がり、雲が霧になる。霧が立ち込めた季節はずれのスキー場はうら淋しい。中途半端に人里に近く、クマの棲息域のど真ん中。そこかしこにクマの気配をひしひしと感じ、要するに今まででいちばん怖かった。熊鈴を鳴らし、撃退スプレーの安全装置を抜き、それでも飽き足らず大塚愛とJUDY AND MARYを交互に大音量で流す。どうせ無人、愛とYUKIだけが〜(冒頭)。
ヒノキ人工林→カラマツ人工林。数年前の一斉開花により、林床のスズタケが集団で枯れている。枯れたササが霧の中にぼおっと浮かぶのにすらビクッとして心細い。道は良く踏まれ堀状になっているが、密生したミヤコザサ(ササの種類が変わる)が路面を覆っている。場所によっては胸の高さにまで育っており、定期的に行われるササ刈りでは追いつかない。朝露が下半身を、滝汗が上半身を濡らす。これぞ水も滴るいいおとk(略)。
人工林に落葉広葉樹の二次林が混じってくる。萌芽の多さは、農用林や薪炭林として利用されてきた歴史を物語る。今も境界の確認や、登山道のササの刈り払いを定期的に行っているのは、共有林の管理のためだろう。
登り一辺倒だが、山頂までは一足。傾斜が緩やかになり視界が開けると、山頂広場に出る。
巨岩を背に立つ西山権現社の石祠。所狭しと立ち並ぶ地元小学校の登山記念碑。学校登山は昭和初期からの恒例行事のようだ。小学生がこの高さのササを泳ぐのは少しキツい。でも、学校登山は地域の共有財産を見回るという行事を次世代に伝える意味もあるのだろう。
山頂を境に森林がカラマツ人工林からコメツガ林に変わる。亜高山帯針葉樹林への移行は、日常的に利用する里山から非日常の奥山に移ったことを感じさせる。ここはもう人の領域ではない。女性ボーカルを止めると、ふいに沈黙が訪れる。我唯ひとり。虫の羽音すらしない。その結果、かえって肝が据わり、非日常の時間と非日常の領域にただ身ひとつを置く。
風雪に耐え曲がりくねったダケカンバの間に覗く伊那谷は雲海?いや雲の中。「伊那良く見え」ない。対峙する南アルプスも山影がはっきりしない。
山頂三角点は広場の少し先。三角点を忘れずに確認して往路を忠実に戻る。
リフト終点に下山すると、霧は晴れていた。草いきれにむっとする。
天竜川とその支流が作り出す広大な扇状地。
わが伊那谷。その風景を認めた刹那、植物を名に抱く後輩と、若き日にここから見た風景がフラッシュバックした。人より少し聡明だった彼女は、人より少し早く大人の理に気付いてしまった。スキー場の駐車場で一生懸命話を聞き、一生懸命考えたけれど、あの頃の僕たちには解決できなかった。僕たちがもう少し大人だったら結果は違ったかもしれない(※)。
それにしても、思い返せば何十年ぶりの伊那リだろう。それは若き日のリグレット。今なら笑って話せるだろうか?もう彼女の消息を知る術もないけれど。
むかしを思い出して目の奥が痛くなった。いや、ただ汗が染みただけかもしれない。
(登山記録)
アクセス・登山道
伊那スキーリゾート看板(セブン-イレブン伊那西春近店の交差点)をスキー場方面に曲がる。スキー場の駐車場は閉鎖中で駐車場脇に車を停める。または第1Pの脇からリフト終点まで作業道を進む。舗装状況はA-だが、幅員が狭いのと急勾配なので走行できる車種は限られる。リフト終点の路肩に数台の駐車スペースがある。駐車場にはトイレなし(スキー場直下の細ヶ谷グラウンドにある)。携帯電波は良好。
良く踏まれた登山道ではあるが、季節によってはササが高くて軽いササ漕ぎが必要かも。危険な箇所はないが、下山時は路面が滑りやすい。
かんてんぱぱガーデンが近い。
https://yamap.com/moments/814163
(メモ)
鳥:キジバト、シロハラ、シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ルリビタキ(sg)
植物:モミ、コメツガ、ヒノキ(植栽)、カラマツ(植栽)、スズタケ(枯)、ミヤコザサ、(クマイザサ)、ブナ(少ない)、ミズナラ、ウダイカンバ、ダケカンバ、シラカンバ、ホオノキ、オオモミジ、コハウチワカエデ、アサノハカエデ、ヒトツバカエデ、ダンコウバイ、クロモジ、オオカメノキ、ホツツジ(花)、リョウブ、コシアブラ、ウツギ(実)、ノリウツギ(花)、タマアジサイ、コバイケイソウ(実)、ヤマジノホトトギス(花)、アキノキリンソウ(花)、クガイソウ(実)、ツリガネニンジン(花)、モミジハグマ(花)、ヨツバヒヨドリ(花)、サラシナショウマ(蕾)、ミズヒキ(花)、キンミズヒキ(花)
地質:泥岩系の変成岩
水分:1.8L持参→1.0L消費
(注釈)
※名前は伊那スキーリゾートだけど、リゾラバ的なやつではないからな。それにしても、冒頭との振れ幅が酷いな。