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32 四国遍路旅日記 保田〜別格龍光院〜龍光寺〜仏木寺〜歯長峠の写真

2019.10.17(木) 12:35

遍路道が田んぼの真ん中

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24.1 km

621 m

32 四国遍路旅日記 保田〜別格龍光院〜龍光寺〜仏木寺〜歯長峠

四国遍路その9 (高知)

2019.10.17(木) 日帰り

左足甲のピリピリした痺れと深部にくる鈍痛は、骨からくるものかも知れない。靴のベロが当ると痛いので一番上の穴は通さず二番目で閉めておいた。 昨日切り上げた保田までタクシーで行き、一時間かけて宇和島駅まで戻ってくる。駅から近くにある朱塗りの別格龍光院からは、宇和島城の天守閣が真近に見えてラッキーだった。 窓峠と歯長峠が立ちはだかり、気が重くなる。スロープが蛇行しながら続く窓峠は、腫れ上がった左足と手術後の右膝を容赦なく攻めてくる。山麓をゆっくりと進む列車が、心の拠り所となり、急ぐ心を落ち着かせてくれた。 龍光寺にある、いきなりの階段に「壊す気か」と左足が文句を垂れた。境内は団体のお遍路さんで埋め尽くされ早速に納経を済ませる。 空には鯖雲が溢れ出して、歯長峠を前に暗雲が漂う。4km歩き仏木寺に着くと、茅葺き屋根の鐘楼堂があり、なぜ藁なん?変わっていて面白いかも。家畜堂があり、家畜やペットを供養しているのも共感できる。 住職が「台風で橋が流されたので歩いての峠越えは、お勧め出来ない」これみよがしに言うもので、迂回して車道を歩く事にした。後で、宿にいた男性が「橋は壊れているが下を渡れば行けたよ」と言う。岩窟なクソ坊主のお陰で、振り回された感が強く残念と言うしかない。 歩いていると幻の蝶々アサギマダラがいて、ハイトンボイスで馬鹿騒ぎしてしまった自分が虚しく思えた。 深山に響く自分の声は直ぐに消え静寂の森に還る。ミミズが鳴くよな深い森には靴音だけが木霊し、一人ぼっちの恐怖に拍車が掛かかると、小雨も降りだし尚のこと孤立感が増す。弱きな自分が顔を見せた時に一台の車が止まる「乗せてやろうか、ここは大変やで、そんな調子じゃ辿り着かんで」 折角、声を掛けて頂いたのに訳の分からないしがらみから断ってしまった。車が行き去るのを見て一瞬死の文字が過ぎる。何が起こるか解らない山の怖さは、痛いほど知っていた筈なのに、千載一遇のチャンスを捨てた自分には呆れるばかりだ。 足を引き摺り頂上に着く。後は下るだけと高を括っていたら下らずにそのまま平行移動するだけだっだ。限界と萎え始めた頃になって歯長トンネルが現れた。燻んだオレンジ色の灯火が揺れる古びたトンネルは、未知との世界の架け橋の様で背中が凍りつく。 ここまで道幅が狭いと、ドライバーの技量ひとつで私の命は決まる。滅多に来ない車の影に怯えながら歩き通すと間髪入れずの下りだ。すぐ脇に近道があるにはあったが行けそうになく、そのまま車道を行く。小腸みたいに複雑に入り組んだ道は、予想以上に時間がかかり下には辿り着けない。電話が鳴るも山の中だと電波の状況が悪くて、途切れ途切れで聞き取り辛く、電波が繋がる所を探して聞いてみた。民宿みやこのご主人からだった。余りにも遅いから安否が気になったらしく「T字路に着いらまた電話を下さい」とだけ言い残して電話は切れた。目標が決まれば後は下るのみと言う事で目の前の霧が晴れる。苦しんだ歯長隧道も終わりに近づくと、T字路にある歯長峠口バス停が見えて電話を入れる。バス停の他、何もない空いたスペースに鳴くメェ〜メェ〜と言う山羊の声を聞いて安堵する事が出来た。地元の人が繋いだもので、ご主人が来るのを待つ。やって来た軽トラに荷物を載せて終了。オーストラリア人ファミリーが仏木寺で困り果てていたらしく、気得な方に宿まで送り届けて貰ったと言う。断ったからこそ道は繋がった訳だが、正しかったのか自責の念に駆られ続けた。足の腫れが酷い、明日からが心配だ。