待ちに待った赤木沢

2022.08.18(木) 3 DAYS

活動データ

タイム

23:46

距離

29.2km

のぼり

2220m

くだり

2221m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
7 時間 25
休憩時間
45
距離
11.3 km
のぼり / くだり
1183 / 625 m
DAY 2
合計時間
12 時間 40
休憩時間
1 時間 18
距離
11.4 km
のぼり / くだり
980 / 564 m
DAY 3
合計時間
3 時間 39
休憩時間
37
距離
6.4 km
のぼり / くだり
57 / 1032 m

活動詳細

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<ワンチャンスに賭ける> 昨年は入山日に有峰林道の土砂崩れがあり、ドタキャンし、その後も天気のタイミングが合わずに果たせなかった赤木沢遡行。昨年も希望されていたお客様と満を持しての入山となった。 ところがまず当初予定していた日程は北陸地方が豪雨となり断念。かわってお盆明けにリスケしたものの、線状降水帯が3日に一度やってくる不安定な天候にヤキモキ。ただどの予報機関も8月19日だけは晴れ予報。これはかなり確率が高い。 <直前まで大雨> 8/18は小雨で太郎平小屋まで時々雨具を着けたが、酷く濡れはしなかった。しかし下山してくる登山者から8/17夜からの雨で薬師沢出合が増水、雲ノ平への登山道まで冠水している、との情報。太郎平小屋で登山計画書を出すときも警備隊の方に増水してますので十分注意してと警告され、薬師沢小屋でも小屋番のYさんに「薬師沢ですか、、、、」と返されて、その夜は気が気でなかった。 まず本流の水量次第だが、ダメなら薬師沢左俣に作戦変更も視野に入れて翌19日朝を待った。薬師沢小屋は釣り人や登山者、沢の人で今季初めての満員御礼状態。とは言ってもコロナ禍で定員を減らしての営業なので、満室とはいえ、いつもの繁忙期のような殺気だった感じはない。 <不可解な登山者> だがこの季節、山にはいろんな人がやってくる。「ガイドは見た」と面白おかしく書くつもりはないが、今回も不可解な人たちに出会った。大きなザックにマットをくくりつけた中年のカップルが遅くに薬師沢小屋に到着した。男性の方がテラス周辺の様子をうかがっていたかと思うと、大きなザックを背負ったまま本流川岸に降る梯子を降りていった。時間も時間だし、沢装備というわけでもない。怪しんでいると連れの女性も大きなザックを背負ったまま梯子を降りようとする。 さすがに声をかけた。「どちらへ?」「、、、、沢へ」という曖昧な答えが返ってきた。すると受付にいた小屋番のYさんがすっ飛んできて、「幕営指定地以外でのキャンプは禁止ですので、小屋に泊まってください!!!川沿いはまだ増水する危険もあるので」とキッパリと忠告というか警告を発した。 男性が戻ってきて何やらモゴモゴ言っていたが、2人はそのまま今度は吊り橋を渡って雲ノ平への急登に消えた。時刻は16時頃。その後雨が激しく降り出した。その後彼らがどうしたかは知らない。男性はビニール傘をザックに括り付けていたので、傘をさせば雨はしのげたかもしれない(そんなわけはない)。 <氷水の渡渉> 脱線した。翌朝、星空が見えた。真っ暗闇でヘッドライトで川面を照らすと、昨夕より明らかに流れが穏やかになり、水位もかなり下がっている。これならいけると思ったが、小屋の朝ごはんを食べてのんびり準備して、少しでも水位が下がるのを待って入渓。 出合までは日が差さず水温も低くて寒かった。水位が高めで膝くらいの渡渉になった。氷水の中を歩いているようで、これで転倒したらまずい。お客様は小柄な方だったので、膝上まで浸かってしまう。スクラムを組んで慎重に渡渉した。 1時間ほどで先行していた学生パーティーに追いつき、追い抜かせてもらった。大きなザックに幕営装備、ザックカバーをなびかせワイワイ言いながら歩いている。楽しそうだ。出合手前のゴルジュ帯までは同じルートどりだった。 我々は左岸をそのまま高巻く作戦をとった。左岸の高巻きは全部で3箇所。最初は容易い。水量が少なければへつっても行ける。2番目は残置スリングの箇所をへつりとボルダリングか泳ぎで突破すれば、高巻きの懸垂下降をしなくて済む。三箇所目も微妙な岩場トラバースで越えられないこともないかもしれないが、ここはたかまいて少し藪漕ぎすれば河原に降りられる。あとは出合いまでもう少し。 <キラキラだけど迫力> 平水時の赤木沢は、出だしからナメ滝をどこでも好きにヒタヒタと歩いて行くことができる。段差もちょっとした淀みも危ないところはないのだが、今回は少し事情が違った。ナメも水圧を感じる。傾斜がきついところでは圧に負けてスリップしてしまう恐れもあった。登れるところは直登したいが、ルートどりは慎重に行った。 大滝も水量が多く大迫力。大滝の巻きはロープを出して通過。ツメの草原の直前まで水が絶えなかった。 <大切な人に見守られて> 登山道に出たのは14時過ぎ。赤木沢に入ってから後半でお客様のスピードが落ちてしまった。天気も良く、想定内で太郎平小屋にはあらかじめ遅くなるからと伝えてあった。のんびりと稜線歩き。 道すがらお客様がポツリポツリとご自身のことをお話になる。いつも15mくらい後から彼がついてきてくれるんですが、私の方が歩くのが早いので、と。どういうことかわからないので、ご主人ですか、と尋ねる。 詳しくは書かないが、山で亡くなったパートナーと一緒に行く計画を立てたまま今まで果たせなかった赤木沢なんです、と。そうか、今日もずっとご主人はと一緒に歩いていらした事を知る。 太郎平小屋まで後少しのところで、黒部源流の山々が夕景に浮かび上がった。しばらく佇んで三人でその景色に見入った。良い赤木沢だった。

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