テンプル山
2023.06.03 (土)日帰り
🍁gotoカナディアン・ロッキー 第3週 再びバンフ3日目 モレーン湖~ラーチ谷〜センチネル峠(最終回)
バンフ国立公園でルイーズ湖と人気を二分する大御所が、近所のモレーン湖(Moraine、標高1884m)である。
連峰"Ten Peaks"に囲まれた美観は、旧20㌦紙幣にも採用されていた。「世界一美しい湖」だの何だの、派手な異名をとる。
すなわち「ディズニーランド状態」を覚悟すべしということだ。
でも、ラーチ谷(Larch Valley)を経てセンチネル峠(Sentinel Pass、標高2600m)まで足を延ばせば、往復11km、標高差800mになる。
テンプル山(Temple、標高3544m)まで頑張れば、距離15km、標高差1700m。観光客が立ち入る余地はなくなる。
残雪期のカナダの3500m峰に生半可な準備で突入しても死ぬだけなので、登れるところまで登ることにしていた。
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しかし、GWさなかの石垣島で、モレーン湖へのアクセス道路を調べていたら、全くもって想定外の問題が見つかった。
あまりにも混むため、今季から一般車両の通行を禁じ、シャトルバスを運行するという。それも「6月1日」から。5月のバンフ滞在中のテンプル山挑戦プランは崩壊した。
こうなったら意地だ。
ジャスパー国立公園に近いOrienおばあちゃん家から南へ455km、Invermereという町で民泊する予定をキャンセルし、6月1日からバンフに戻ることにした。
モレーン湖へのアクセスを最優先したシフトである。やれやれ。一度は落ち着いた。
ところが、旅程を変更したGWに、またまた想定外の問題に見舞われた。
「バス、予約できるかも」と軽いノリで国立公園サイトに入ったら、6〜7月の午前の便(始発6:30)は、ほぼ完売だった。
辛うじて取れたのは、6月3日の午前9時発。これでは十分な活動時間を確保できない。
甘かった。根本的に甘かった。
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バスに乗るには、バンフの町から60km、ルイーズ湖近くのスキーリゾートまで行く。
3日朝、そこに車を止め、17km離れたモレーン湖の駐車場でバスを降りた。1分で「世界一美しい湖」にご対面できる。
1枚撮ると、確かにレアな出来映え。ただ、感想はそれ以上でもそれ以下でもなく、見物をスルーしてトレイルに入った。
きょうも針葉樹林帯から始まる。
グリズリー(ひぐまモン)の生息エリアらしいので、たまに笛を吹きながら1時間10分ほど耐えると、視界が突然、開けた。ラーチ谷に差し掛かったようだ。
ずらりと居並ぶTen Peaksを、ここで初めて一望できる。「なんと壮大かつ淡麗な」と思ったが、序の口に過ぎなかった。
さらに進むと、右にテンプル山、左にエッフェル・ピーク(Eiffel Peak、標高3077m)とピナクル山(Pinnacle、3070m)が現れる。
近い。デカい。テンプル山は「どすん」といった感じで鎮座し、エッフェル・ピークとピナクル山は鋭い峰を突き上げている。
振り返ると、Ten Peaksの氷河がドーン。
で、足元は今の時季、一面のお花畑だ。
桃源郷。それ以外、言葉が見つからない。
「gotoカナディアン・ロッキー」の中で、いや、今まで歩いてきたトレイルの中で、視覚的インパクトなら頭一つ抜けている。
まさに「空前」である。
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そのラーチ谷からセンチネル峠、さらにテンプル山の登山道の標高2800m地点まで足を延ばしてみた。
視点(標高)が変わるにつれ、Ten Peaksの御歴々もピナクル山の鋭鋒も姿を変える。「味変」みたいで、飽きさせない。
どう考えても、駐車場徒歩1分の「世界一美しい湖」からの眺めより、ラーチ谷やセンチネル峠からの眺めのほうが、百万倍美しい。
歩けば歩くほど閑散とするのもいい。
好天の土曜日だったが、ラーチ谷~センチネル峠の人出は多くもなく少なくもない。挨拶が面倒臭くない程度で、快適この上ない。
一方、センチネル峠~テンプル山は、人間を寄せ付けない雰囲気。難易度は非連続的に激しく上がり、たまに落石の音が遠くから響いてくる以外は静まり返っていた。
"Stunning❗"
ラーチ谷で出会った白人カップルのお姉さんが声をあげるのを聞いた。英語にも色々な感動表現があるが、きょうの彼女の気持ちは、これだったらしい。
日本語では、何と言うべきか。
やっぱり、きょうは「空前❗」かな。
さて、これは「絶後」になるのだろうか。
まだ分からないし、「絶後」と断定するにしても、それは地球放浪を、または人生を終える時でいいだろう。
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「gotoカナディアン・ロッキー」が幕を閉じる。
昨年7月の「gotoスイス」と比べると、絶景ぶりは甲乙つけ難いが、
〇だだっ広く、的を絞りにくい
〇レンタカーなしの登山は困難
〇トレイルの補助インフラ(目印、鎖など)には期待できない
〇くまモン多すぎ♡
といった違いがある。色々な意味で不利な日本人が個人登山に挑むには、ハードルが少し高いと思った。
最も驚いたのは、30分の間に4頭のくまモンに出くわしたジャスパー国立公園。
あえて残雪期を狙い、アイゼンやピッケルを石垣島から持ってきたのに、出番が全くなかったのも想定外だった。
アルバータ州では、5月にもかかわらず、異常気象による山火事頻発で緊急事態宣言が出ていた。湖の氷が融けるのも1カ月ほど早いらしい。氷河の後退は、もちろん進んでいる。
一方で、国立公園では、ガソリンがぶ飲みのピックアップトラックが、巨大キャンピングカーを牽引してガンガン走っている。
そういう自分もカローラでガンガン走り、燃料がぶ飲みの飛行機で石垣島に帰るのだ。
氷河の悲鳴を何度も聞いた。
なかなかつらいものがあった。(了)
🍁おことわり───
実際の撮影時間より1時間早く表記されています。YAMAPでは、夏時間を反映できないそうです。
🍁お礼&おしらせ───
ご愛読、誠にありがとうございました。
次回は7月6日出発「goto北海道2023」です。カナダで「熊慣れ」した流れで羅臼岳、幌尻岳あたりに挑みます。
地球放浪(本業)については「gotoキリマンジャロ」の具体的な検討を始めます。決断できるかどうか、フィフティ・フィフティ。
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