テンクラC。傾山に『逆天使のハシゴ』がかかっています。三つ坊主が不気味です。 戻る 次へ

「吉作落とし」に怯えながらの『傾山』初登拝!の写真

2022.02.17(木) 00:44

テンクラC。傾山に『逆天使のハシゴ』がかかっています。三つ坊主が不気味です。

この写真を含む活動日記

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08:01

12.5 km

1480 m

「吉作落とし」に怯えながらの『傾山』初登拝!

傾山 (大分, 宮崎)

2022.02.15(火) 日帰り

 登山に目覚めて今月でちょうど一年。  その間、九重-大船山系を中心に四季の山々の自然美を楽しませていただきました。  最近では、昨年まで敷居が高く近寄れなかった祖母山系にも思い切って挑戦し、登山での楽しみ方に幅がでてきました。ハッピー感上昇です!  今回、祖母傾山系の東の雄である『傾山』(四皇子山)を記念すべき山に選択。ソロ登頂のリスクはありますが「センゲン尾根」からの双耳峰を見たいという強い気持ちに負けました。  もちろん祖母山同様、登山ルートや安全情報については準備万全。しかし、その中で傾山に伝承される民話『吉作落とし』(日本まんが昔話)のことを知ってしまい、心に潜む登山に対する恐怖心が呼び起こされました。  ちなみに、アニメ日本昔話のコンテンツの中で『吉作落とし』はトラウマ回として年齢に関係なく日本人の心を震撼させたとのこと(https:/www.YouTube.com/watch?v=j5A-qplCX10)。  登山者の危険回避能力を問う民話として意義ある作品(怖さ満載の教訓民話)ですね。傾山での遭難や死亡事故の頻度からして納得です。  今回、傾山登頂には、豊後大野市上畑にある九折(つづら)登山口を選びました。坊主尾根コースに比べると危険度は低いコースですが、それでも長い急登が続く健脚コースです。  緒方町から県道7号を南下して健男社少し手前の細い市道を経て、豊栄鉱山作業所(旧九折鉱山跡)内にある九折登山口駐車場(トイレあり)に8時に到着(原尻の滝から20km)。当日登山指数Cが影響してか一台も車が停まっていません。  8時30分に緊張感をもってスタート。  鉱山跡地にある県営水処理場と九折川に挟まれた山道を三尾坊主尾根路と九折越路との分岐点まで鉱山敷地内を登ります。  分岐標識に従って九折越コース入りますが、標識がなければ絶対気づかないような登山口から侵入。いきなりの急登に入る状況に流石傾山と納得。  急登がやや落ち着くと、 九折川支流の渓谷途中に、木々で滝全体はよく見えませんが落差ある「芥神の滝」が現れてきます。  滝を過ぎるとやや下り、最初の渓谷渡渉となります。標識にある手書きの“対岸へ”の表現は、初心者にはやや分かり難い印象を持ちました。カンカケ谷の長い山道にはリボンもしっかりつけられています(感謝)が、それでも道迷いもしばしば。どこも山道に見えるところばかり、リボンがなければ間違いなく迷います。九折越までのルートは終始緊張感が必要なコースといえます。    最後の渡渉を終えると、渓谷沢から離れて五合目(林道)までロープも利用しながら再び急登となります。  違和感ある広い林道出合に出ると、一旦林道を下り右手に架かるハシゴを登り、九折越までまたひたすら登ります。高い木々のため残念ながら眺望は望めませんが、時折垣間見える傾山に疲れた心が癒されます。標高1000mを越えると残雪が山道を覆うためアイゼンが必要となりました。    標高1300mにてようやく九折越に到着。 タフな登りと緊張感ですでに疲労マックス!  九折越は、複数の登山道が合流する広々とした緑豊かな広場でテント場としても賑わう場所です。「九折無人小屋」はここから西に50m登った位置にあります。ただしトイレはありません。  九折越の東方向には、傾山の双耳峰(猫耳)がはっきり見えてきます。期待感で胸が膨らみます。  傾山へは、緩やかなセンゲン尾根(千間山1378m)を抜けて傾山後傾峰に1時間くらい歩きます。  途中、はっきりしませんが千間山のピーク(丘)を通過しますが、ここが本傾と後傾がなす『双耳峰』の絶景ポイントとなります。私はここからの傾山を見たいがために登ってきました。評判通りの絶景に大感激です。    景色並びに雰囲気のある細尾根から杉ケ越道分岐(南稜新道コース)に辿りつくと、次は大きな安山岩が並ぶ急登をから後傾の峰頂きに到着。  ここは、傾山から本谷山、古祖母山、障子岳、そして祖母山まで続く長い稜線(縦走路)が見渡せる最初の絶景ポイントとなります。岩の隙間から自生する赤松群も九重連山にはない独特の雰囲気を演出しています。  後傾から隣の本傾を眺めると、その西側の垂直絶壁にまず目が奪われます。それは「吉作落とし」そのもののの怖さを醸し出しています(実は場所が違う)。  後傾山頂から下り、鞍部を跨いで僅かな昇降を経れば念願の本傾に到着。  大型のキュウビック状安山岩(火山岩)に囲まれた山頂には休憩ができるほどの広い平面があり、そこに傾いた山頂標識が鎮座していました。  山頂は標識より西にも岩棚状の頂きが連続しており、後傾とは異なる角度の絶景スポットが待ち受けています。とにかく素晴らしいの一言。やっぱり傾山は素晴らしいことを実感しました。  山頂には小さいながら八幡社石祠があり、傾山が別名、『四皇子山』と呼ばれる由縁、すなわち神武天皇とその兄弟神4皇子(4柱)が傾山に天神地祇を祀ったとする伝説を想起させる存在となっています。    本傾から北側を覗くと、『三つ坊主』(三尾坊主尾根コース)と呼ばれる大きな岩稜峰が三つ見えます。その一番左に位置する急峰の西絶壁が『吉作落とし』と文献に記載があるところです。吉作落としは、傾山本傾ではなく三つ坊主に相当する岩峰の絶壁にあるようです。実は、九折登山口付近からもそれが見えています。    山頂到着まで、色々トラブルもあり4時間もかかってしまい、ランチなしですぐに下山となりました。    北斜面にある登山道は日暮れ前に暗くなることから、道迷いなく下山するためには16時までにカンカケ谷を抜けれなければなりません。  焦る気持ちと凍結や残雪で滑る急な下りで体力消耗も激しく、これまでで一番キツイ登山となってしまいました。膝は長い下りでガクガク!  16時半前に無事下山。  傾山の素晴らしさと厳しさをともに体感できた8時間の山行。結局、この日は、ガスに見舞われた以外、誰にも会うことはありませんでした。  とにかく『吉作落とし』の傾山には感謝です。ありがとうございました。 #追記: 傾山鞍部の下りで、気をつけていましたが表層の泥濘みで滑り転倒。運悪く滑り落ちた箇所に朽ちた尖った木が『傾いて』、なぜかこちらに向いており、そこに左側胸部(下肋部)を強打。  肋軟骨挫傷。テーピングなどの応急処置をして事なき下山しましたが、胸壁穿刺や気胸の危険性を考えると誰もいない山で命拾いした感じです。『モンチュラのベスト』の頑丈さに救われました。