投稿日 2026.08.31 更新日 2026.08.31

登る

北アルプス 乗鞍岳のコース紹介|登山ガイドが初めてのアルプスに挑戦したい人向けに解説

北アルプスの南端に位置し、標高3026mを誇る乗鞍岳は岐阜県と長野県の県境にまたがる火山の山です。乗鞍岳山塊を構成する23の峰々があり、その主峰が剣ヶ峰(けんがみね)です。

その大きな特徴は、バスを利用することで、一気に標高2702mの畳平(たたみだいら)まで到達できる点にあります。森林限界を越えた高山の世界に短時間で足を踏み入れられるこのアクセスのよさは、初めて3000m級の山に挑戦する人にとっても大きな魅力となっています。

稜線からは周囲の峰々だけでなく、晴天時には御嶽山(3067m)や北アルプスの主脈が視界に飛び込んできます。長い縦走路を歩くタイプの山とは異なり、比較的コンパクトかつ効率的に高所の空気と絶景を味わえるのが特徴です。

初心者はもちろん、初心者から中級者を目指したい方、初めてのアルプスに挑戦したい方や、友人・知人を連れていきたい経験者におすすめコースについて、登山ガイドの上田洋平さんが厳選してくれました。

目次

乗鞍岳のおすすめポイント

高山植物の咲く畳平周辺

①バスで標高2702mまでアクセスでき、日帰りで北アルプスの山に登れる
②初心者でも登りやすい北アルプスの3000m峰で、富士登山の練習にも最適
③高山植物のお花畑と季節の景色を楽しめる

乗鞍岳が初心者の友達を連れていくのにおすすめな理由

登山道から不消ヶ池(きえずがいけ)を望む

乗鞍岳の最大の魅力は、3000mの高峰に比較的易しく立てる点にあります。
他の北アルプスの3000m峰では森林限界を越える前に急登が続くこともありますが、乗鞍岳は標高2702mまでバスでアクセスできます。

バスの終点である畳平(たたみだいら)は日本で最も標高の高いバス停として知られ、ここから山頂を目指すことで、多くの人が憧れの“3000m台”を体験できます。
このアクセスのよさは、登山初心者にとって大きな後押しになります。

また、3000m台の標高のため、富士山登頂を目指す初心者にとっての高所登山の練習にピッタリの山ともいえます。

ただし、標高が高いことに変わりはありません。

空気は街中よりも明らかに薄く、天候の変化も急激で、風が強くなることがあり、体感温度は一気に下がるため、初心者だけで行く場合、天候の悪い場合は別の日にするかキャンセルする判断が必要です。

夏山であっても防寒具や雨具の携行は欠かせず、無理のない行動計画と早めの下山を心がけることが安全登山につながります。

今回は、登山ガイドの上田洋平さんに、畳平コースに絞って紹介していただきました。

バス使用で日帰り3000m峰へ|乗鞍岳 畳平コース【2時間50分】

ポイント

①バスで一気に標高2702mの畳平へ
②初めてのアルプスや3000m峰登山の入門として最適
③富士登山の高度順応の練習にも

コース情報

コース定数:11(コース定数とは?
コースタイム:約2時間50分
歩行距離:5.5km
累積標高差(上り)427m
累積標高差(下り)427m
モデルコースを詳しく見る

マイカーの場合は乗鞍高原観光センター(長野県側)、もしくはほおのき平駐車場(岐阜県側)からシャトルバスに乗換えて畳平までいきます。長野県側からのシャトルバス(乗鞍エコーライン)は予約優先制です。 ※参考:のりくら観光協会公式サイト

公共交通機関の場合は平湯バスターミナルもしくはほおのき平バスターミナルから畳平行きのバスに乗れます。

バスに乗って約50分で、畳平に到着。ここでしばらく休憩して高度に慣らしてから登山開始するとよいでしょう。

畳平から階段を降りていくと、辺り一面に高山植物のお花畑が広がります。

畳平周辺には初夏の頃に多くの花が見られます。↑はハクサンイチゲ。

高山植物の女王、コマクサも見れます。

お花畑の道をしばらく進むと階段があるので、これを登り幅の広い遊歩道に合流します。

右手側に不消ヶ池(きえずがいけ)と雪渓を見ながら整備された道を進みます。

やがて奥に肩の小屋が見えてきます。

畳平から約30分程度で肩の小屋に到着です。肩の小屋は夏山シーズン中は宿泊もできるので、ご来光を狙うなら宿泊するとよいでしょう。

肩の小屋から先は本格的な登山道になるため、肩の小屋や小屋の外にあるテーブルで休憩しつつ、登山の装備は大丈夫か確認してから登り始めましょう。

乗鞍岳は初心者向きの山といわれますが、登山道には所々岩が出ているため、バランスを崩して転倒したりしないようにして登りましょう。

つづら折りの道を40分程度登ると蚕玉岳(こだまだけ)に到着します。眼下に先ほど見た肩の小屋を見下ろすことができます。

蚕玉岳から乗鞍岳山頂の剣ヶ峰へは約30分。空気が薄くて登りが大変になってくる頃ですが、オーバーペースにならないように登ります。

山頂の少し手前に乗鞍岳 頂上小屋があります。宿泊はできませんが、休憩やグッズ販売されているので立ち寄ってみてもよいかと思います。

乗鞍岳最高峰の剣ヶ峰へ。山頂には乗鞍本宮 頂上本殿があります。

乗鞍本宮は1181年(養和元年)、木曽義仲の家臣が飛騨国を視察するために乗鞍岳に登った際、山頂に社殿を建て、黄金の神像を奉安したのが始まりと伝えられています。

当初は「鞍ケ嶺(くらがね)神社」と呼ばれていましたが、1928年に「乗鞍神社」へ、さらに1949年の宗教法人設立に伴い現在の「乗鞍本宮」へと名称が改められました。

御祭神は以下の四柱で、総称して「乗鞍大神」として祀られています。

・天照皇大神(アマテラス スメオオミカミ): 太陽を司る女神
・大山津見大神(オオヤマツミノオオカミ): 山を司る大神
・五十猛大神(イソタケルノオオカミ): スサノオの子で、樹木・林業の神
・於加美大神(オカミノオオカミ): 水を司る龍神

山頂付近からは火口湖である権現池や北アルプスの山々を一望できます。

剣ヶ峰からの下りはやや岩場になっているので、初心者の方は慎重に下って下さい。
特に雨の日や登山道が濡れている場合は滑りやすいので要注意です。

しばらく下ると登りの道との合流点まで下れます。
ここから先は往路と同じ道を下ります。

肩の小屋付近まで降りてくると一安心ですね。

肩の小屋からも往路と同じ道で不消ヶ池分岐まで戻ります。

分岐では往路のようにお花畑経由で階段を降りず、広い遊歩道をそのまま進んで鶴ヶ池経由で畳平へ戻ると、途中でコマクサやコバイケイソウが咲いているので、お花を見ながら畳平に戻ります。

バスの最終時刻も考慮し、時間に余裕を持った計画を立てましょう。

トイレ情報


乗鞍高原観光センター、畳平に水洗トイレ、肩の小屋にバイオトイレ(有料)があります。

乗鞍岳のおすすめ休憩場所

畳平付近


畳平付近には休憩するのに適した広いスペースがあるのでゆっくり休めます。
また、建物内のレストラン等に立ち寄ってゆっくり高度順応してもよいでしょう。

肩の小屋

肩の小屋

肩の小屋の入口奥にも広いスペースやテーブルがあるため休憩に適しています。

乗鞍岳の自販機の場所

畳平


建物内に自販機があります。

また、各山小屋で飲み物の購入が可能です。

乗鞍岳 近隣の名店

喫茶メープル

山賊焼き定食。左上のカップにはビーフシチューがたっぷり(ペールエールさんの活動日記より)

乗鞍高原にある、ログハウス風の温かい雰囲気のレストランです。野菜たっぷりのカレーや山賊焼定食、唐揚げ定食など、リーズナブルでボリュームのあるメニューが特徴です。

そば処 合掌

鴨南蛮そば(タクさんの活動日記より)

登山客に人気の高い十割そばの名店です。自家栽培しているそば粉から打つ蕎麦を使った郷土料理の「とうじそば」や、旬の山菜を使ったボリューム満点の天ぷらが評判です。

レストラン irodori

定番のハンバーグ定食をご飯大盛りで、目玉焼きをトッピング(ドラモンキー(drumonkey)さんの活動日記より)

すずらん温泉を引く宿に併設されたカフェ&レストランです。夜遅くまで営業しており、登山後の宿泊や夕食にも適しています。

乗鞍岳の近隣にある温泉

画像提供:あったか温泉宿 美鈴荘

乗鞍岳の近くには登山後の疲れを癒す温泉施設がいくつかあります。

下山後にお風呂で山の汗を流せば、最高の休日が出来上がります。以下におすすめの温泉施設を紹介します。

乗鞍高原温泉 湯けむり館

画像提供:乗鞍高原温泉 湯けむり館

標高約1500m、乗鞍高原の森に抱かれる日帰り温泉施設。乗鞍岳の登山後に立ち寄る場所として、理屈抜きに相性がいい一湯です。下山して車ですぐ近くにあり、アクセスのしやすさも魅力。

泉質は乳白色の硫黄泉。硫黄泉は血行を促し、筋肉のこわばりをゆるめるといわれます。
内湯に加え、開放感のある露天風呂があり、天気がよければ高原の空を眺めながら湯に浸かれます。秋は澄んだ空気、冬は雪見風呂。季節ごとに表情が変わるのも山麓温泉の醍醐味です。

湯上がり後は広めの休憩スペースでひと息。水分補給を忘れずに。登山後は軽い脱水状態になりがちなので、入浴前後にしっかり水を摂るのが賢明です。

登山者目線でのポイントをいくつか。タオルは持参が基本(販売・レンタルの有無や営業時間は事前確認を)。混雑は週末午後に集中しやすいので、下山時刻を少しずらすと快適です。硫黄泉は金属製アクセサリーを傷めることがあるため、外してから入浴を。強い疲労時は長湯を避け、ぬるめで分割入浴が無難です。

詳細はこちら:公式サイトを見る

*施設の説明は2026年8月時点の情報です。公式サイトなどで事前にご確認ください。

乗鞍高原温泉 乳白色温泉 美鈴の湯

画像提供:あったか温泉宿 美鈴荘

「乳白色温泉 美鈴の湯」は乗鞍高原温泉の乳白色の湯を引いた硫黄泉の源泉掛け流しの温泉で、宿泊施設ですが、日帰り入浴にも対応しています。
濃厚なにごり湯が特徴で、硫黄成分による独特の香りと柔らかな湯触りが体を包み込みます。硫黄泉には血行促進や筋肉痛・関節痛の緩和、冷え性への効果が期待できるとされ、登山で使った脚や背中の緊張をほぐすのにうってつけです。

施設には内湯と露天風呂があり、季節や天候によって違った表情を楽しめます。特に露天風呂は高原の風や空気が直接肌に触れるため、湯上がりに肌寒さが気持ちよく感じられることも。夜であれば、満天の星空を仰ぎながらゆったりと浸かることもできます。

詳細はこちら:公式サイトを見る

*施設の説明は2026年8月時点の情報です。公式サイトなどで事前にご確認ください。

乗鞍岳へのアクセス

公共交通機関


東京方面
上高地線 新島々駅から路線バスで乗鞍高原まで約50分。
乗鞍高原からはシャトルバスで約50分で畳平へ。

長野県側からのバスは予約優先制となっています。
※参考:のりくら観光協会公式サイト アルピコ交通株式会社公式サイト

大阪・名古屋方面
高山から、ほおのき平バスターミナルまで路線バスを利用し、
ほおのき平バスターミナルからはシャトルバス乗鞍線に乗り換え。

※参考:濃飛バス公式サイト

自動車

関東方面から
長野自動車道・松本ICから国道158号線、県道84号線経由で乗鞍高原観光センターの駐車場に駐車し、シャトルバスに乗り換えて約50分で畳平へ。

※参考:アルピコ交通株式会社公式サイト

関西・中京方面から
東海北陸自動車道 高山ICから国道158号線経由でほおのき平駐車場に駐車し、シャトルバスに乗り換えて約50分で畳平へ。

※参考:濃飛バス公式サイト

乗鞍岳登山に必要な装備、服装と注意点

登山装備が必要な乗鞍岳

乗鞍岳を登る際には、以下のような装備が必要です。

登山靴:
登山靴はソールが滑りにくいことをチェックして下さい。

●登山靴について詳しく知る:足の疲労度が変わる!登る山をイメージして登山靴を履き分けよう

服装:
季節に応じた防寒・防水・通気性のある服装を用意しましょう。
肌着には速乾性の高いものを。急な天候変化に備えて、防風・防水のレインウェアも必要です。

●服装のレイヤリングについて詳しく知る:基本6アイテムを活用した、1日のシーン別レイヤリングをご紹介|登山装備のチェックリスト

ザック(バックパック):
水や食料、着替えなど必要なものを入れるためのザック(バックパック)。雨の日でなければ、ご自身が持っている旅行用のリュックサックでも良いでしょう。

●ザック(バックパック)について詳しく知る:登山用バックパックの選び方を徹底解説|「どれがいいかわからない」に終止符を

水筒:
季節にもよりますが、1L程度を準備しましょう。乗鞍岳では登山道沿いにある山小屋で飲み物を購入できますので、足りない分は補充するようにしましょう。

●水筒について詳しく知る:登山用水筒(ボトル)を3タイプで解説|自分にぴったりな一本を見つけよう【山登り初心者の基礎知識】

行動食:
エネルギー補給のために、栄養価の高い軽量な食料を用意しましょう。ドライフルーツ、ナッツ、チョコレート、スポーツドリンクなどが適しています。

●行動食について詳しく知る:山でバテない行動食の選び方とポイント|山のお悩み相談室 Vol.2

GPSアプリ・地図:
道迷いしないように、登山GPS地図アプリ「YAMAP」と地図をインストールしたスマートフォンで、事前にコースを確認しておくことも重要。GPSアプリを使う場合、バッテリーが減った場合に備えてモバイルバッテリー(容量10000mAh程度)も用意しましょう。

●登山地図GPSアプリについて詳しく知る:登山地図GPSアプリの活用法をガイドが解説【山登り初心者の基礎知識】

ヘッドライト:
日帰り登山であっても、怪我などのトラブルがあった場合、予定通り下山できずに日没を迎える可能性があります。その場合にそなえ、ヘッドライトを準備して下さい。

●ヘッドライトについて詳しく知る:登山用ヘッドライトの選び方|日帰り登山でも必要なアウトドアの必需品【山登り初心者の基礎知識】

あると便利なもの:
手袋、帽子、サングラス、日焼け止め、ストック、防虫スプレー、タオル、救急セットなど、そのときの天気などに応じて用意しましょう。

●手袋について詳しく知る:登山用グローブの悩みを解消! 理想の一双が見つかる選び方を徹底解説
●サングラスについて詳しく知る:目の日焼けが体力を奪う原因に! 登山の紫外線対策に必須のサングラスを正しく選ぼう

事前にしっかりと準備し、安全に登山を楽しんでください。

執筆・写真提供:登山ガイド・上田洋平

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