投稿日 2026.02.18 更新日 2026.02.19Sponsored

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人生変わる歩き旅|熊野古道ロングトレイル~巡礼の舞台は川の世界遺産へ~

1000年の歴史を刻む祈りの道、熊野古道。「令和版・熊野古道巡礼ロングトレイル」として、ロングディスタンスハイカーの中村純貴と清田勝が中辺路の全150kmのロングハイクに挑むプロジェクト。その第2弾は「川の参詣道」として世界遺産にも登録されている熊野川が舞台だ。

古くから神聖な川とされている熊野川。川そのものが浄化や再生の象徴であり、熊野詣を行う参詣者たちは舟で川を下りながら祈りを捧げたという。そんな川の参詣道を、現代のギアであるパックラフトで辿っていく。

目次

ROUTE MAP|熊野本宮大社〜熊野川〜熊野速玉大社セクション|約32km

旅で歩いたルートはこちら。本記事は「中編」として茶色のセクションを進む。YAMAP「モデルコース」や「限定バッジ」は記事末尾を参照

中編は、熊野本宮大社から熊野速玉大社を目指す。このセクションは1泊2日で設定した。1日目は投宿した川湯温泉から中辺路を歩く。万才峠(ばんぜとうげ)の分岐で熊野古道伊勢路を進み、パックラフトセクションがはじまる熊野川中流域の「瀞峡めぐりの里」へ。装備を整えパックラフトで川を下り、「川舟センター」裏の河川敷でキャンプをするルートを計画した。

2日目は引き続きパックラフトで熊野川の流れに乗り、河口付近の権現河原までアプローチ。再びハイクモードに切り替え、熊野速玉大社を参拝。その足で熊野速玉大社の摂社である神倉神社を訪ねる。

ちなみにパックラフトは、旅の1日目に紀伊田辺駅で配送サービス「口熊トランスポート」を利用し、事前に「民宿立石」に配送することができた。日数が多い旅程や装備が変わるプランなどでは活用してみるといいだろう。

※前編から読みたいかたはこちら

パックラフト取材協力:MRS [MRS公式Instagram]

DAY4|川湯温泉〜万才峠〜パックラフト|約15.6km(徒歩10.5km、川下り5.1km) 熊野川を目指して

川湯温泉エリアで旅の疲れを癒したふたりは、次の目的地へ。ふたたび中辺路を進み、万才峠から伊勢路経由で熊野川へと向かう。ここで地元ガイドの上野勝美さんと合流。パックラフトのレクチャーを受けつつ野営地を目指して漕いでいく。

早朝に民宿立石を出発し中辺路へと向かう。川湯温泉は、その名のとおり「川を掘れば湯が湧き出る」という珍しい温泉だ

国道168号線の登山口からトレイルへ。万才峠の分岐へと向かう

パックラフト装備一式を背負って歩く。ハイキングと川旅の組み合わせの可能性を探る

熊野川を目指し、中辺路から伊勢路へ

中辺路を進んでいくと分岐点となる万才峠に到着。ここは難所のひとつとされ、峠に立つと安堵の気持ちから「万才!」と唱えたことが名の由来だという。一般的にはこのまま中辺路を歩き、熊野那智大社へと向かうが、ふたりは熊野川を目指し、伊勢路を歩く。

4kmほど歩き、万才峠の分岐点に到着。ここから伊勢路へと進む

マサル「ここで中辺路から伊勢路に行きます。ハイカーとしては、ここから小雲取越、大雲取越を歩いて那智の方に向かうのが一般的なんだけど、今回は川下りのために、伊勢路を通ってまずは熊野川を目指すと」

ジュンキ「パックラフトの装備をさらに加えて歩いていますよ。ハイキングのなかにパックラフトがある旅をずっとやってみたかった。熊野古道でできるというのが嬉しい」

マサル「昔は川舟で下ったらしいけど、パックラフトというのは今だからこその発想やね。パドルやライフジャケットもうまくパッキングすれば担げる」

ジュンキ「世界遺産にも登録されている川の参詣道を辿る。パックラフトをできるフィールドは全国にあるけど、巡礼の手段としてパックラフトができるというのはかなり斬新だね」

パックラフト装備で荷物は重くなったものの、これから待ち受ける川旅を思うと笑みがこぼれる

歩く人は少ないようで、登山道はしっかり整備されているものの、ワイルドな景観を楽しめる

「瀞峡めぐりの里熊野川」に到着。地元の名産品を販売するコーナーとレストランが併設されている

レストランで昼食をいただいた。食事や補給スポットが豊富なのも熊野古道の魅力だ

川の参詣道、熊野川をパックラフトで下る

熊野川のエントリーポイントで、川のガイド・上野勝美さんと落ち合う。上野さんはアウトドアメーカーの立ち上げに関わったのち、熊野に移住。「くまのエクスペリエンス」を主宰し、ハイキングやカヤックなど、さまざまなアクティビティを通じて熊野エリアの自然を案内している。

河原でパックラフトの準備を整え、止水エリアでレクチャーを受けたのち、熊野川の流れに乗る。ときおり急流はあれど、穏やかな水面を進みながら川の参詣道を味わう。

熊野川の河川敷に降り、パックラフトを組み立てる。ここから川の旅が始まる

上野さんのレクチャーのもと、パックラフトの基本操作を学ぶ

広々とした熊野川を漕ぐ

三和大橋は熊野川のパックラフトセクションでは数少ない橋だ

ジュンキ「熊野川が見えたとき、ここを行くんや!って興奮したね。川幅が広いし、山々も連なっていて、ロケーションが最高。実はパックラフトは初めてで、不安なところもあったんだけど、上野さんのガイディングもあって、序盤からかなり楽しめた」

マサル「今日は2時間くらい。漕ぐ距離は短いけれど、上野さんからもいろんな話を聞けて充実した1日やったね。ハイカーだと川からの目線で自然を見ることってあんまりないから新鮮やったし」

ジュンキ「水がめちゃくちゃきれい。川底も魚も見えた。きっと昔の人もこの熊野川の自然に触れながら川を下っていったんやろうね」

マサル「上野さんが教えてくれたんだけど、熊野川って元々は橋がなかったんやって。だから渡し船があって、ちょっと前まで使っていたらしい。川を参詣道として使うくらいだし、川はもっと身近だったんだと思う」

ジュンキ「パックラフトの楽しさはもちろんだけど、川の見方が変わったね」

1日目の野営地は川舟センター裏の河川敷。広大な河原をキャンプ地とした

夕方前、「熊野川 川舟センター」裏の河川敷に上陸。パックラフトを安全地帯まで引き上げ、テントを設営。川旅らしく、水の流れを聞きながら野営を楽しむ。ちなみに、「熊野川 川舟センター」は熊野川の川舟下り体験の拠点であり、熊野速玉大社へ向かう水上巡礼を観光サービスとして行っている。パックラフトがなくとも川の参詣道を体験することが可能だ。

焚き火を囲み、夜を過ごす。焚き火台を使用すればキャンプファイヤーも楽しめる

DAY5|川舟センター〜熊野速玉大社|約16.2km(川下り16.2km) 熊野詣第二の目的地へ

パックラフトの旅、2日目は引き続き熊野川を下っていく。距離は約16km。河口付近の権現河原を終着点とし、そこから熊野速玉大社へ。水量を増し、広くなっていく川幅。ゆるやかでありながらも力強い流れがクルーを待ち受ける。

深い渓谷となっている熊野川を下っていく

上野さんが川のアクティビティを通じて熊野の自然を教えてくれる

中州にある「昼嶋」に上陸しランチタイムに

目を見張るほど大きな口を開けて食べることから名付けられた「めはり寿司」をいただく。高菜の葉で米をつつんだ熊野地方の郷土料理だ

ジュンキ「どこを見ても熊野の山が見えて、川を旅することの楽しさを知ることができた。ずっと山に挟まれてるんやなって」

マサル「川の流れが谷を作ったんだね。でも水量が豊富だから、昔は洪水も多かったみたい。参詣者が乗る川舟も、激流で砕けたこともあったらしい。川の参詣道も命懸けだったのかもしれないね」

ジュンキ「川幅が広くなっていくにつれて、流れが穏やかになるからずっとパドルを漕がなくちゃいけなくて。結構腕がパンパンになった。でも、旅の行程のなかにパックラフトが入ってくるだけで、ワクワク感がすごい。見える景色も違うから、興味ある人はぜひ試してほしいと思ったね」

マサル「最初は霧がかった山間の川だったのが、だんだん里の景色になって、海につづいていく。歩いて辿りつくのとも感覚が違うし、熊野古道の新しい視点をもらったね

あと、パックラフトがなくても川舟センターから舟が出ているのもいいよね。パックラフトのハードルが高い人は、ぜひ舟下りを体験してほしいわ」

パックラフティングのゴールである権現河原が右手に見える。向かい風に耐えながら漕ぎ続けた

川旅の終わり、そして熊野速玉大社へ

熊野川河口大橋のたもとにある権現河原でパックラフトを降りる。ここから装備を変え、ハイクスタイルで熊野速玉大社へ

マサル「海まで来ました。紀伊田辺駅から街を歩いて、山を歩いて、川を下って、紀伊半島を横断しました」

ジュンキ「地図で見ると感慨深い。シンプルに嬉しかったよね。そして、やっぱりハイキングとパックラフトはすごく相性がいいと思った」

マサル「そうやね。装備を背負って歩ける軽さももちろんあるけど、配送サービスを使って、宿で受け取って、また送り返してみたいなことができるのは旅の可能性が広がる。アメリカでも必要な荷物や不必要な荷物を郵便局を使って送ったりするやん。それに似てる感覚だったから、結構しっくりきた」

ジュンキ「アクティビティとしてはもちろん、川の参詣道をリアルに体験できたのがよかった。昔の人もこうやって熊野川を旅したんだなって、すごく理解できた」

熊野詣第二の目的地、熊野速玉大社を参拝。河原から速玉大社はすぐ近くだ

朱色の鮮やかな社殿が美しい。熊野本宮大社と同様、熊野三山それぞれの神が祀られている

熊野速玉大社は熊野三山のうち、過去を司る聖地。参ることで過去の罪や穢れが浄化されるとされている。境内にある樹齢千年を超える御神木「ナギの木」も見所だ。

熊野速玉大社の摂社、神倉神社へ

神倉神社へとつづく538段の石段を登っていく。この日は山道補修のための砂を上まで運んだ

神倉神社と御神体であるゴトビキ岩。神倉神社からは太平洋を望むことができた

熊野速玉大社の摂社である神倉神社。熊野の神々が最初に降臨したと伝わる巨大な岩「ゴトビキ岩」を御神体とする。自然そのものを神として祀る、熊野信仰の原点とも言える場所だ。

神倉神社までは急峻な山を這い上がるように設けられた538段もの石段を登る。参拝自体が修行ともいえる体験だ。毎年2月には白装束の男たちが松明を手に石段を駆け下りる神事「御燈祭り(おとうまつり)」が行われることでも有名だ。

ジュンキ「自然崇拝のこと、なんとなく見えてきた部分があるんだよね。まだ言葉にはできないんだけど、昔の人がどういうふうに自然と向き合っていたのか、自然と接していたのかが少しずつ見えてきたというか。

熊野川はすごく穏やかだったけど、洪水を起こすくらい荒れる川だということも知ることができた。まわりの山もかなり急だから土砂崩れも多いらしい。太刀打ちできない災害を目の当たりにしたら、自然が怒っていると捉えたんだと思う」

マサル「その当時は自然と共に生きるしかなかった。自然からいろんな情報を得て、人間が生活を変えていくしかなかったんだと思う」

ジュンキ「僕らはハイカーとして自然と接しているわけだけど、こうしてじっくり旅をしていくことで、熊野という場所への理解が深まっていくんじゃないかなって感じたね」

神倉神社参拝後は新宮市内のホテルへ。パックラフティングで全身疲れた体をこの日は快適なベッドの上で癒した。

いにしえの信仰「川の参詣道」を旅して

熊野本宮大社から熊野速玉大社を目指した参詣者は、熊野川を川舟で下った。それは移動手段であると同時に、川の流れに身を任せることで心身を清める浄化の儀式という意味合いもあったという。

そんな川の参詣道を現代のギアであるパックラフトで下ることは、かつての参詣を再現する試みであると同時に、旅の可能性を大きく広げる実験でもあった。もちろんアクティビティとしての楽しさもある。

1000年以上も続く熊野古道の巡礼の歴史をアップデートすること。それは現代のハイカーだからできることなのだと、平安時代の貴族も見たであろう熊野川の景色を前にして感じた。

続く後編では、残る熊野三山・熊野那智大社と那智山青岸渡寺を参拝し、中辺路を歩き熊野本宮大社へと戻る旅をレポートする。

※前編の記事はこちら
※後編の記事はこちら

◾️今回の旅のルートはYAMAPモデルコースにも登場。

◾️条件クリアで限定デジタルバッジも手に入る。

※バッジの獲得条件や期間についてはリンク先でご確認ください。
※今回のモデルコースは7泊8日と長いので、上記リンクを開く際に時間がかかることがございます。

DATA BOOK|熊野本宮大社〜熊野川〜熊野速玉大社|立ち寄り場所・利用施設
DAY 4|川湯温泉〜川舟センター
補給|Yショップ しもじ本宮店
国道168号沿いにあるコンビニエンスストア。小雲取越の登山口から徒歩5分。
場所はこちら(Google マップ)
補給|瀞峡めぐりの里熊野川
和歌山県の特産品を販売する土産店。レストラン熊野川を併設。自動販売機、トイレあり。
スポット詳細はこちら
DAY 5|川舟センター〜熊野速玉大社
サービス|熊野川 川舟センター
パックラフトを利用しない場合も、この川舟で「川の参詣道」を体験できる。道の駅「瀞峡街道熊野川」から熊野速玉大社横の川原までの約16kmを下る川舟を運行。語り部が同乗。営業は3月~11月。
スポット詳細はこちら
サービス|くまのエクスピリエンス
熊野古道・熊野川エリアを中心に、アウトドアツアーやガイドを行っている。特に熊野川でカヤックやパックラフトを楽しみたい場合、現地の自然を知り尽くしたガイドが案内してくれるためおすすめ。
詳細はこちら
補給|かあちゃんの店
地元食材の販売と郷土料理を提供。熊野名物のめはり寿司のほか、さんま寿司など地域の家庭料理を食べることができる。
場所はこちら(Google マップ)
参拝|熊野速玉大社
熊野川の河口に鎮座し、熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ=イザナギノミコト)と熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ=イザナミノミコト)を主祭神とする。神門の先に広がる壮麗で美しい朱塗りの社殿は、鎌倉時代に描かれた「熊野曼荼羅」の世界を再現している。
スポット詳細はこちら

文章・撮影:小林 昂祐
モデル:中村純貴、清田勝
プロデューサー:土屋智哉
協力:和歌山県観光振興課