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人生変わる歩き旅|熊野古道ロングトレイル~千年以上つづく信仰の道を歩く~
平安時代からの歴史を刻む祈りの道・熊野古道。熊野に参ることで過去・現在・未来の安寧が得られ魂が救われる。そう信じられ歩き継がれてきたその道は、今も国内外のハイカーが憧れる地であり続けている。今回挑むのは、かつての熊野詣のメインルートとして利用された中辺路(なかへち)全150kmのロングハイク。
後鳥羽上皇なども歩いた旅路を辿るように、山を越え、川を下り、古の巡礼を現代のハイキングスタイルで歩く。これこそ「令和版・熊野古道巡礼ロングトレイル」。日本文化の根源に触れ、人生を再起動する。「人生が変わる蘇りの旅」が、ここから始まる。
目次

アメリカのロングトレイルを歩いてきた2人に熊野古道・中辺路はどう映る?
ハイカーは、中村純貴(写真右)と清田勝(写真左)。ハイキングカルチャー本場のアメリカのロングトレイルを歩いてきた経歴を持つふたりが、ロングトレイルとしての熊野古道を体験する。
中村純貴(以下ジュンキ)パシフィッククレストトレイル(PCT)のほか、コンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)などアメリカをはじめとするロングトレイルを歩く。ハイキングカルチャーを伝えるYoutubeチャンネル『HikerTime』も運営。
清田勝(以下マサル)ロングディスタンスハイカー。PCTをはじめとするアメリカの3大トレイルを踏破するほか、みちのく潮風トレイルや北海道東トレイルなど国内のトレイルも歩く。地元大阪でcafe&bar『Peg.』を営む。
旅のアウトライン|平安時代のクラシックルートを再現

旅で歩いたルートはこちら。YAMAP「モデルコース」に新登場。
中編:川の参詣道として世界遺産に登録されている熊野川を下り熊野速玉大社へ。
後編:熊野速玉大社から熊野那智大社へ。そして大雲取越、小雲取越を経てふたたび熊野本宮大社へと戻る。
※ルート踏破で獲得できる「デジタルバッジ」や旅の組み立てに役立つ「立ち寄りスポット一覧」は、本記事末尾でご紹介
DAY 1|紀伊田辺駅〜滝尻王子|約24.6km 街から山へ

1日目は紀伊田辺駅からスタート。熊野古道中辺路の玄関口として栄えた街並みに触れ、巡礼にゆかりのある史跡を巡る。熊野古道特有の社(やしろ)である秋津王子や三栖王子などの王子(現在は社跡)を経て、市街地から峠を越え、中辺路と並走する富田川沿いのトレイルへ。滝尻王子までの約24.6kmを歩く。

旅のスタートは紀伊田辺駅から。多くのハイカー、旅行者はここからバスで移動するが今回は歩き通す
マサル「到着しました、紀伊田辺駅。ここから8日間の旅がはじまります」
ジュンキ「新大阪から特急くろしおに乗って2時間半。海沿いの路線で気持ちよかった。マサルくんは、熊野古道はよく歩いてたよね?」
マサル「何年か前から初詣に行く感覚で、正月に中辺路を歩いてるんだよね」
ジュンキ「僕は小辺路を父と一緒に歩いたことがあったけど、中辺路ははじめて。そもそも熊野古道の歴史や信仰のことはあんまり理解していなくて」
マサル「それは僕もですよ。歩いてはいるけど知らないことばかり。今回は歴史を教えてくれる語り部さんも来てくれるみたいなのでじっくり旅をしていきたいですね」
田辺の街から里山へ

熊野信仰の歴史をいまに伝える鬪雞神社。今回の旅の安全を祈願するために出発前に立ち寄った
田辺の市街地を抜け、川沿いの道を進んでいく。舗装路ではあるが、王子跡などかつての名残を感じさせる史跡を訪ねることができる。実は、1日目の紀伊田辺駅から滝尻王子までの区間のほとんどは整備された道で古道の趣を感じられる区間は少ない。そのため中辺路を歩く人はこの区間をスキップし、滝尻王子までバスで移動することが多い。
しかし実際に歩いてみると、生活を身近に感じられる里山の景色や地元の人たちとの触れ合いもあり、ロード区間の楽しさに触れられるセクションと言えるのだ。そして街から里山へと変わっていく、景色のグラデーションを体感できるのも歩いた者だけの特権だ。

「これを持っていって」と、バックパックを背負ったふたりを見つけて柿を手渡してくれた
数キロごとに現れる「王子」とは?

いくつもの「王子」を辿りながら旅は続いていく。三栖王子は梅畑の丘の上にあり見晴らしもよい
ジュンキ 「マサルくん、王子ってなんやろな」
マサル「僕もそれ気になってて。中辺路にはいっぱいあるんだけど」
ジュンキ「調べてみたんだけど、そもそも熊野古道って熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社・那智山青岸渡寺といういわゆる熊野三山を目指すための道で、王子というのは、その熊野三山の子どもの神様を祀る小さな社なんやって。
熊野古道は長い道のりやから、途中に王子社という社を設けて、過酷な旅の区切りとしていたみたいなんやな。いまでは社がない場所がほとんどだけど王子跡として石碑とかが残されているみたい」
マサル「ハイカー的にはちょうど休憩したいなって思った頃に出てくるのがいいね。秋津王子、万呂王子、三栖王子……結構たくさんあるなあ!」

市街地と田畑の間に点在する山や森を歩く

富田川沿いにある水垢離(みずごり)場。ここではかつて清めの儀式が行われていた
三栖王子、八上王子を経て、峠を越え稲葉根王子へ。清流富田川と合流する稲葉根王子では、かつて上皇をはじめ熊野詣で訪れた人びとは、川の水を浴びることで身体の穢れを払い身を清める「水垢離」の儀式を行っていたそうだ。いまでは簡易的な水垢離場が整備されている。
世界遺産に認定された信仰の道

富田川周辺では古道は川の右岸と左岸をいったりきたりしながら王子や名所を辿っていく

仲間との会話もロングトレイルの楽しみのひとつだ

ハイカーだけでなく、自転車で旅をする人の姿も。外国人旅行者からの人気が高いことを知る
熊野古道は『紀伊山地の霊場と参詣道』の一部として世界遺産に登録されている。ここで言う霊場とは「熊野三山」「高野山」「吉野・大峯」という3つの山岳霊場を表し、それぞれ別々の信仰の形を有している。
その中でも熊野の信仰は、山や滝、川、岩といった自然のものに神様が宿ると考える自然信仰を基盤に成り立ったのだが、6世紀頃に仏教が伝来、平安時代頃には神と仏を同一視する神仏習合思想が広まった。
そして平安時代以降、仏教の概念のひとつである浄土思想(阿弥陀如来の慈悲により死後に極楽浄土で救われるという思想)が広まり、熊野は生きながらにして蘇ることのできる「現世の浄土」として信仰を集めた。かつての上皇、貴族はもとより平民に至るまで、そんな熊野での蘇りを願い、熊野三山を目指して熊野古道を歩いたのだとされる。

昼食は「ふるさと食堂しゃりはん」へ。一番人気という「熊野の奥がけ丼」をいただいた

古道からの景色は、次第に街から山へ。緑がどんどん濃くなり、山道のセクションも増えていく

古道の各所にはその場所の解説や案内板が設置されている。立ち止まって歴史に想いを馳せる
生活を感じるのが日本のトレイル
マサル「滝尻王子までのセクション、これまで歩かなかったのはもったいなかったって思ったね。やっぱりハイカーって、つい舗装路を避けてしまうから」
ジュンキ「街から里山に徐々にすーっと抜けていくようなね。いきなり山道に入るんじゃなくて、歩きながら徐々に向かっていく感じがいいね」
マサル「東海自然歩道とかみちのく潮風トレイルとかもそうだけど、村とか集落を通るんよ。ここにも人の生活があんねんな、みたいなのを感じられるのが日本のトレイルなんだと思う」
ジュンキ「日本の歩き旅、ロングトレイルってこういうことか、ってだんだんわかってきた気がする。
少しずつだけど信仰の道ということも意識し始めていて。まだ1日目だけど、自分自身を見つめて受け入れることが、この熊野の信仰を理解する手がかりになるのかなとも思ったんだよね。
どの時代の人も、心に何かを抱えていて救いを求めていたり、いろんな葛藤を持ちながら多分歩いてたはずだし。当時の人の想いを現代人である我々がどう解釈するか。長い距離を歩きながら自分自身と対話して、自分の人生を見つめ直してみるきっかけになるかもしれない」
マサル「結構ディープなところまで来てるね!」

見所の多さと地元の人との出会いで立ち止まることも多く、コースタイムをオーバー。滝尻エリアに着いたのは日没後だった

1日目の宿泊地である「滝尻王子」近くの民宿「あんちゃん」に到着
本日の宿へ辿り着く頃にはすっかり夕暮れどき。食事どきにはそれぞれ感じた想いなどを語らいながらこの日は終わりを迎えた。
DAY 2|滝尻王子~近露|約13km いよいよ熊野の聖域へ

滝尻王子から熊野本宮大社までは中辺路を代表する人気のセクション。というのも、ここから先は急峻な山道がつづき、熊野古道らしい古くからの名残を感じさせる巡礼の道を体感できるからだ。
また、2日目は「語り部」と呼ばれる熊野古道の歴史や信仰について教えてくれる案内役が加わる。熊野古道とは?信仰とは?と熊野の本質を知りたいと願うふたりのハイカーのいい案内役になってくれるだろう。
皇族や貴族が挑んだ過酷な道

語り部の水本好則さん。「古道語りべ・熊野赤リュック」に所属する最年長語り部。とても気さくな方で本旅路では「ヨッシーさん」と呼んだ

滝尻王子の裏手から古道を登っていく。古い石段の険しい道が続く
ジュンキ「熊野古道を歩いた人ってどんな人がいたんですか?」
ヨッシー「いろいろな方が歩いていますが、鎌倉時代初期の歌人・藤原定家がその様子を『熊野御幸記』に記しています。旅のはじまりは京都で、本宮、速玉、那智を目指し、片道約330kmの道のりでした。
要した旅の期間は、およそ往復で1ヶ月。1190年に訪れたひとりの貴族の日記には、ここ滝尻王子からの道のりを『身の力尽きる思いで私はよじ登る』と記されています。
そこまでして参る熊野とはなんであったか。
熊野は人々を蘇らせてきた聖地でした。様々な身分の方たちが希望を求めて目指したのが熊野なのだと思います。そしてその希望の道、険峻なこの厳しい道を遠い昔の人々が何を信じて歩いたか。
我慢の向こうには嬉しいものがある。 我慢の向こうには光るものがある。そういったことを信じながら歩いた道が熊野古道だったと思います」
マサル「希望を求めてここまで歩いてきたんやな。でも京都から往復で1ヶ月ぐらいっていうのはまあまあタフやと思う。結構いいペースで歩いてるね」
ジュンキ「当時は人力しかないわな。もっと遠くから来る人はスタート地点が違うし。マジでロングトレイルやな」
マサル「それだけの苦労をしてでも歩きたい道だったんやろうね。途中で息絶えた人もいただろうし」
語り部とともに歩く熊野古道

難しい歴史や文化の話をわかりやすく解説してくれるのも語り部の魅力だ

広葉樹と針葉樹が混成した森を歩く。ヨッシーさんによる植物の解説のおかげで森も見方が変わった

「道の駅 熊野古道中辺路」に立ち寄る。ここでは地元の食材なども手に入る
ジュンキ「そういえば、マサルくんってさ、いままでガイドつけて山入ったことある?」
マサル「いや、ないかな」
ジュンキ「なんかね、僕やっぱそういう語り部さんとかガイドさんとかをつけて山入ると、もう、見える景色変わるなと思った。ヨッシーさん、道中の王子のこととかだけじゃなくて、草花のことも詳しかったやんか。景色から見えることとかを、歴史も合わせて一緒に教えてくれるっていうのがね」
マサル「ヨッシーさん、76歳。ガイド歴30年のベテランやもんな」
ジュンキ「すごい情報量やったけど、ぜんぶわかりやすかったな。平安時代のことも、いまのことみたいに話してくれたもんね」
マサル「いや、語り部さんってなんか勝手に堅いイメージを持ってしまっていたけど、全然そうじゃなかった」
ジュンキ「ヨッシーさんと別れてから、語り部の存在の大きさに気づいたね。いろいろ教えてもらいながら歩くの、すごくよかった」
マサル「そうやね。歩く人はぜったい語り部さん頼んだ方がいいと思ったよ」

花山法皇が熊野詣を行った際の姿と伝承されている牛馬童子像。愛らしい姿は中辺路のシンボル的存在だ

近露王子は滝尻王子と熊野本宮大社の中間地点ぐらいに位置し、この地域は熊野詣の宿泊拠点として栄えた
マサル「ヨッシーさんが話してた、二礼二拍手一礼のことを思い出してたんだけどさ、その理由ってなんなん?って話で。いろんな解釈があるけど、一礼目はこれまで生きてきた自分と神様に感謝する過去、二礼目は将来へのお願い、二拍手して最後の一礼は、現在に対して祈るという話をしていたと思うんだよね」
ジュンキ「いい解釈やなって思った。わからずやってたところあるからね」
マサル「これも蘇りの話やんね。ちゃんと過去に対して感謝して、ここにいる今にお礼をして、未来に祈るってことなんだよね」

ヘッドライトを点け、キャンプ場への道を歩く
2日目もしっかり1日を使い切り、20時頃にキャンプ場に到着。各々テントを立て食事を囲みながらヨッシーさんと歩いた時間を思い出していた。
DAY 3|近露~熊野本宮大社|約25.7km 熊野詣最初の目的地へ

3日目は、キャンプ場がある近露エリアから熊野本宮大社まで。この区間は中辺路歩きのハイライト的な区間で、古道らしさを味わえる山道や集落を経て、発心門王子などの名所を辿る。熊野ならではの奥深い森や里山の風景に触れながら歩くことができるセクションだ。
また本日はゲストにこの地域の山道や森を守り続けてきた森林のエキスパートが加わる。林業が盛んな熊野地方の森の話も伺う予定だ。

朝7時。キャンプ場をチェックアウトし熊野古道へ。幽玄な朝靄のなか近露を歩いていく

立派な参道と社殿が残る継桜王子。人気スポットの一つでハイカーや旅行者も多い

中辺路で出会ったハイカーは外国人が多い。日本の自然信仰や巡礼の文化に興味を持ち、歩きに来ているという
ジュンキ「熊野古道を楽しむためには、じっくり時間をかけて歩くのがいいんじゃないかって思いはじめていて。これから向かう熊野本宮大社にしても、車で行けちゃうし、中辺路の一部だけ歩いて行くこともできる。でも、実際に歩くと、やっぱり見えてくるものが変わるなって思うんだよね」
マサル「ここまでの中辺路も距離でいえば40kmちょっと。車だったら1時間もかからないわけでしょ。でもそれだと得られる情報ってほとんどなかったんじゃないかな」
ジュンキ「同じ区間をどれくらいの時間で行くのかってことだよね。やっぱり時間をかけて噛み締めながら、時に休憩して一回考えて、みたいな旅の仕方もいい」
マサル「1日で行けるところを2泊3日でゆっくり行ったっていい。スピードで優劣はつけられない。これがハイキングのいいところなんだと思うね」
14年ぶりに復旧した世界遺産の道を行く

仲人茶屋跡から蛇形地蔵までのセクションは14年ぶりに開通。正式な巡礼道として復活した
中辺路の人気区間のなかでも仲人茶屋跡から蛇形地蔵までは、2011年の台風の影響で通行止め(迂回道を使用)になっていた区間だ。古道の再整備と安全確認が取れ、正式なルートとして2025年10月に14年ぶりに復活した。
熊野古道の多くは原生林というよりは、人の手が入った植林の森だ。古くから林業が盛んなこの地域では、杉や檜といった針葉樹が植えられ、国内有数の産地として発展してきた歴史がある。巡礼の道である熊野古道だが、その森や道は、森を所有し管理する人たちの手によって支えられてきた背景がある。

森づくりに長年携わってきた岡上さんが合流し、古道をともに歩きながら話を伺った
林業という視点で熊野古道を解説してくれるのが、3日目のゲスト岡上哲三さんだ。和歌山県・中辺路町森林組合の元代表理事組合長を務めた林業のレジェンド的存在だ。林業に携わり60年。植林の運営から森林の整備、人材育成にも力を入れてきた。
2004年に熊野古道が世界遺産に登録されると、次世代の林業や安全な道づくりにも取り組んできた。中辺路の通行止め区間の復旧もそのひとつだ。

トレイルの整備は、古道周辺の間伐材を使用し、環境負荷を押さえた工法を用いている

世界遺産に指定されているエリアであるため、重機を入れた大規模な修繕が行えず人の手で保全も行われる
ジュンキ「世界遺産だから、整備をするのにもルールがある。そんな制約がありながらも、ハイカーが安全に歩けるように整備してくれているのはありがたいね。今日歩いたところも結構山奥やんか。世界遺産だから重機を入れて道を作れないから、人の手で直しているって言ってたね」
マサル「植林の杉って植えてから伐採するまで50年とかかかる。だから森づくりは、次の世代のためを思ってやることなんやって。古道の整備もそう。何十年先を考えて取り組んでいる。すごい仕事やなと思った」
ジュンキ「なかなか次世代のことを思えへんよね。やっぱ僕たちと見てる景色が違うんだなと思った。視点が違うんだろうなと」
マサル「こうして歩いている道も、森だったり林業に関わる人の気持ちが込められていると思うと見え方が変わってくるね」
熊野本宮大社へと続く古道歩きのハイライト

岩神峠のふもとにある湯川王子。皇族・貴族の宿所が設けられていたという

三越峠で昼食と休憩。昨晩の朝露で濡れたテントと装備を乾かした

王子社のなかでも格式の高い五躰王子のひとつ、発心門王子。ここから先は熊野本宮大社の神域とされる

人里エリアへと突入し、熊野本宮大社が近いことを伺わせる

展望台から熊野本宮大社の旧社地である大斎原を遠望。シンボルの大鳥居を望むことができる
熊野本宮大社を前に、展望台から大斎原(おおゆのはら)を望む。もともと熊野本宮大社は熊野川と音無川、岩田川が合流する中州に建てられていた。しかし明治22年の未曾有の大水害により社殿が流失し、高台にある現在の場所に遷座された。かつて社殿があった場所は旧社地として今も篤い信仰の対象となっている。
日本人だからこそ感じられるトレイルの景色

熊野詣の最初の目的地、熊野本宮大社に到着
夕方前、ついに熊野本宮大社へ。熊野本宮大社は熊野三山のうち、未来を司る聖地であり、参拝することで未来のご加護が得られるとされている。

熊野本宮大社の社殿。社殿には熊野三山それぞれの神が祀られている

これまでの無事に感謝するとともに未来の加護を願い手をあわせる
マサル「熊野本宮大社まで来ましたよ」
ジュンキ「旅の終わりみたいだけど、これでまだ半分も来てないんよね」
マサル「そうなんですよ。でもひとまずこの3日間を振り返ってみようと。どうでした?」
ジュンキ「歩いてみて感じたのは、味わいながら歩けるトレイルだということ。海外のトレイルを歩いているときって、ちょっと急ぎがちになっちゃう。でも熊野古道は王子跡で立ち止まってお祈りをしたり、街で人と会話したり、土地から何かを感じながら歩くトレイルなんだなって」
マサル「僕も3日間を振り返ると、今までと違った歩き方をしてきたなって思ったね。熊野古道っていう千年以上の歴史があって、語り部さんや道を直してくれた人とかの話を聞けたのもよかった。
歴史や文化に思いを馳せると同時に、未来のことだったり、自分のこれからの生き方を考えるきっかけにもなったかなって」
ジュンキ「海外のハイカーが多いけど、熊野古道を味わえるのはやっぱ日本人やと思うんですよ」
マサル「僕ら日本人は宗教観がないって言われるけど、自然崇拝と仏教の混ざった概念もなんとなく感覚として染み付いてるんやと思う」
ジュンキ「熊野を歩いた人って、僕たちのご先祖様でもあるわけじゃないですか。この旅は僕ら日本人のルーツに触れる旅でもあるのかなって思いはじめたね」
マサル「僕も中辺路は何度も歩いているけど、こんなに奥深い道だとは知らなかったしね。熊野古道、奥深い」

かつて社殿があった大斎原へと向かう。入り口の大鳥居は高さ約34m、幅約42mで日本一の大きさを誇る

投宿したのは民宿立石。古道を歩く旅人から親しまれてきた素朴な家族経営の宿だ
紀伊田辺駅〜熊野本宮大社を歩いて
熊野古道をロングトレイルと捉え、現代のスタイルで歩くプロジェクト。その前編をお届けした。中辺路は熊野古道のなかでも人気が高いルート。多くのハイカーや旅行者は熊野本宮大社近くの区間を1〜2日で歩くことが一般的だが、紀伊田辺駅から王子社を辿りながら本宮大社まで歩くことで、街から里、里から山へと続く土地のグラデーションやロングトレイルとしての多様性を体感できた。
そして、ハイカーにとってなかなか馴染みのない「信仰」「宗教」「歴史」といった熊野古道ならではの魅力は、語り部をはじめとする地元の声を聞くことで身近に感じられたように思う。
中編では、「川の参詣道」として知られる熊野川をパックラフトで下り、熊野速玉大社を目指す旅、後編では熊野那智大社と那智山青岸渡寺から大雲取越・小雲取越を経て熊野本宮大社までを歩く旅をお届けする。
◾️今回の旅のルートはYAMAPモデルコースにも登場。
◾️条件クリアで限定デジタルバッジも手に入る。

※バッジの獲得条件や期間についてはリンク先でご確認ください。
※今回のモデルコースは7泊8日と長いので、上記リンクを開く際に時間がかかることがございます。
サービス|口熊野トランスポート
熊野古道エリアでの荷物の配送サービス。ハイキング装備以外の服や道具を宿に送ることができる。取材時は熊野川で使用するパックラフトの配送に利用した。
熊野古道の荷物搬送サービスの検索サイトはこちら
昼食|ふるさと食堂しゃりはん
国道311号線沿いにある食堂。「熊野のあんかけうどん」や「熊野の奥駈け丼」といったハイカーにも嬉しい定食を提供。「めはり寿司」も購入できる。
場所はこちら(Google マップ)
宿・夕食|古道の杜 あんちゃん
滝尻王子に隣接する宿。食堂兼カフェもあり、テイクアウトのコーヒーやお土産を購入可。ハイカーの立ち寄りスポットとしても人気。
宿の詳細・予約はこちら
サービス|古道語りべ・熊野赤リュック
熊野の歴史や伝説、自然や暮らしなど、幅広い知識で案内をしてくれる語り部団体。知りたいテーマに合わせて案内してくれる。
電話:090-5067-1068(代表 水本好則)
*その他の語り部団体の連絡先はこちら
休憩|高原霧の里休憩所
高原熊野神社から程近くにある無料休憩所。ベンチからは果無山脈を一望できる。トイレ・駐車場・公衆電話などが完備されている。
場所はこちら(Google マップ)
補給|道の駅 熊野古道中辺路
地元の特産品やお土産を販売。花笠をモチーフにした建物が目印。自動販売機、トイレあり。牛馬童子像まで歩いて約25分。
場所はこちら(Google マップ)
補給|Aコープ熊野古道ちかつゆ
近露エリアでは数少ないスーパー。食料や行動食を購入できる同じ敷地内にはレストランや土産店などもある。
場所はこちら(Google マップ)
宿|アイリスパークオートキャンプ場
日置川沿いにあるキャンプ場。電源つきのサイトがあり充電が可能。バンガローや民宿も併設されている。
キャンプ場の詳細・予約はこちら
参拝|熊野本宮大社
主祭神は、家都美御子大神(けつみみこのおおかみ=スサノオノミコト)。かつては、「大斎原」と呼ばれる中州に鎮座していたが、明治22年の水害を受け、現在地に移築・再建された。
スポット詳細はこちら
立ち寄り|和歌山県世界遺産センター
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の発信を目的とした施設。展示空間や交流スペースがあり、交流スペースでは、3面マルチスクリーンによる迫力ある映像で、世界遺産と和歌山県の魅力を紹介している。
スポット詳細はこちら
補給|八屋商店
食品や日用品を販売する精肉店。食料や行動食のほか、お惣菜やお菓子も購入可能。和歌山県特産和牛である熊野牛を取り扱う。熊野本宮大社から徒歩で約10分。
場所はこちら(Google マップ)
宿|民宿立石
川湯温泉エリアに位置する温泉宿。熊野産の天然鮎や旬の野菜を使った会席料理が魅力。公衆浴場が隣接。
宿の詳細・予約はこちら
文章・撮影:小林 昂祐
モデル:中村純貴、清田勝
プロデューサー:土屋智哉
協力:和歌山県観光振興課
撮影と執筆業
小林 昂祐
旅雑誌の編集部を経てフリー。在籍時には「アウトドアを科学する」をテーマにした『terminal』を創刊。実体験とインタビューを中心に、自然そのものの美しさやその地に暮らす人びとの営みを取材し、対象に寄り添うことで得られる情景を文章と写真で伝える。著書に西表島を特集した『NatureBoy』ほか、おやつの世界を巡る『OYATTUmagazine』など。趣味は登山。
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