投稿日 2020.02.28 更新日 2020.02.28

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九重連山・平治岳 絶景のミヤマキリシマ登山

九重を代表するミヤマキリシマの名所として知られ、5月〜6月にかけて全国から登山者が集まる花の山「平治岳(ひいじだけ)」。可憐なピンクの花に染められる山肌は、初夏の九重の風物詩と言っても過言ではありません。著者は元法華院温泉山荘スタッフで、今も九重に足繁く通うアウトドアショップスタッフの平野泰祐さん。今回は吉部登山口から坊ガツルを経て平治岳山頂に至る絶景お花見ルートをご紹介します。

目次

九重のミヤマキリシマの時期とオススメスポット

全国から登山者が集まり、九重連山は全山、人、人、人の大賑わいをみせる時期がある。言わずとしれたミヤマキリシマのシーズンだ。ツツジ科の一種で、ゴールデンウィーク後から梅雨時期までの間に小さな花を山肌一面に咲かせる。九州の霧島、阿蘇、雲仙などほとんどの火山で見ることができる腰丈くらいの美しい植物である。

雲上の楽園を楽しみに全国各地から登山者が集まる

開花時期は、5月中旬から6月中旬。毎年6月の第一日曜日に開催される「九重山開き」と重なり、関東の登山者は飛行機で福岡空港に着陸し、そこからバスやレンタカーで九重へ。はたまた関西の登山者は大阪南港から「さんふらわあ」に乗って別府経由で九重へ。その時期の船内は登山者が雑魚寝の二等船室に集まり、まるで船上の山小屋と化す。7月からのアルプスの夏山シーズンとはかぶらずに丁度良いのかもしれない。「肩慣らしに九重のミヤマキリシマでも見に行こか!」的な心境なのだろう。

開花スポットとしては牧の戸(まきのと)から近い「扇ヶ鼻(おうぎがはな/1,698m)」。それに長者原(ちょうじゃばる)から登る「三俣山(みまたやま/1,745m)」。そしてちょっぴり行程が長くなる「平治岳(ひいじだけ/1,642m)」が近年の三大ミヤマキリシマスポットと言ってもいいだろう。

ここでは一番登りごたえのある名所、平治岳を紹介する。と言ってもこの平治岳は誰もが納得するほどミヤマキリシマしか取り柄のない山で、この時期以外のことを紹介するとしたら「坊ガツルの展望が素晴らしいです」の1行で終わってしまうのだ。

平治岳へのオススメルート(吉部登山口〜坊ガツル)

登山口は長者原から雨ヶ池越(あまがいけごえ)を越えて、坊ガツルを経由するルートがよく知られている。その次に吉部登山口から暮雨の滝(くれさめのたき)を経由して向かうルートと、男池園地(おいけえんち)からソババッケを経由して向かうルートの3つが一般的である。ここでは日帰り登山では最も登りやすい吉部登山口からのルートをオススメする。

吉部登山口は、九重連山の九重町側の飯田高原の隅っこにある登山口で、坊ガツルまで何と車両が通行できる大船林道という車道が通っている。ゲートがあり一般車両の通行はできず、主に法華院温泉山荘の運搬車両や林業者が利用している道である。この林道は山荘の命綱でもあるので、冬になり寒波で雪が積もると一日中寒さに耐えながら雪かきを…というのはここではやめておこう。(なにせ筆者はこの山小屋で長らく働いていた。苦労話を思い出すと、ついつい話が逸れてしまうことをお許し願いたい)。

冬の大船林道。木々の影が照らされる路面を我々はかつてゼブラシートと呼んでいた

ゲートの手前に有料駐車場があり、登山者はそこを利用して入山する。坊ガツルから流れる鳴子川(なるこがわ)沿いの左岸(西側)を登るルートだ。右岸にも途中、大船林道を経由して坊ガツルに向かうルートがあるが、近年登山者が少なく落木や踏み跡が不明瞭な場所が多々あるのでオススメしない。

鳴子川沿いの登山道。自然林豊かで心地よい

駐車場からほど近い登山口は、登山届のポストも設置してあるので比較的わかりやすいだろう。はじめは植林の生い茂る登山道を登る。開始後、すぐに「これを登るのか?」と心折れそうな急登の斜面が現れる。木々の根っこが露出していて痛々しいかもしれないが、上手にジグザグに道を取れば何のことはない。しかし、雨が降った後などは非常に滑りやすいので注意が必要。滑ると振り出しまで戻るようなところもあるので用心を。

登り切ると比較的なだらかな登山道が坊ガツルまで続く。次第に杉林を抜けるので風通しもよくなり、心地よい。途中の寄り道スポットとして暮雨の滝が有名だ。鳴子川には3つの滝があって、登山者が見ることのできるこの滝は3つの中間に位置するものだ。国土地理院の地図に表記されている滝マークがあるところはここではなく、下流側の三段に分かれたもっと大きな滝である。暮雨の滝くらいの落差くではどうやら記載してくれないらしい。

暮雨の滝。地理院地図上の滝表記は別の場所なので注意

この暮雨の滝がある鳴子川は、麓の九酔渓(きゅうすいけい)を抜けると玖珠川(くすがわ)へ合流し、その後日田を抜けて久留米方面までつながる。九州最大の河川、筑後川(ちくごがわ)の支流である。

ここで記念撮影を撮ろうとして、ポケットから取り出したカメラを落としてしまった場合は、ぜひ久留米や大川の知り合いに電話をかけて地引縄ですくってもらうと良い。あわよくば、丸々と太った美味しそうな鰻と一緒に水揚げされるかもしれない。もしくは浮羽(うきは)あたりで、採れたての果物が梱包された白いダンボールの中に一緒に収穫されて入ってるかもしれない。後日、原鶴(はらづる)の道の駅あたりをくまなくチェックすると良いだろう。

春には付近のアケボノツツジの開花が美しく、冬に寒波がしばらく続くと氷爆が見られることでも有名である。しかしながら水量も多いので全体が凍った氷瀑が見られるのはかなり稀である。

平治岳へのオススメルート(坊ガツル〜平治岳)

坊ガツルまで出ると、キャンプ場の炊事場で水筒の中にしっかり水分を補給して大戸越(うとんごし)を目指そう。

途中に一人一石運動と書かれた看板がある。馬酔木(あせび)の木々が生い茂り地面に日が当たることが少ない路面は非常にぬかるみやすい。これを打開するために往来する登山者に石を一つ運んでもらってぬかるんだところに置いてもらうという人海戦術だ。山荘で働いていた頃は「だいたいみんなこの辺で諦めるんだよね」って肝心なところまで石が運ばれてないところにぼやいていたが、月日が経って現在では石の置き場もないほど埋め尽くされていてビックリする。

周辺には運搬用の小石が積んである

大戸越は、坊ガツルから男池(おいけ)方面のソババッケに向かう中間の峠に位置する。本州の山に登りなれている人にとっては「乗越(のっこし)」と言った方がわかりやすいだろう。

シーズン中は、シートを引いてお昼ごはんを食べている人が多い。平治岳に登る起点でもあり、ここからはミヤマキリシマ時期の渋滞を緩和するために、登り専用道と下り専用道のふたつの登山道がある。平治岳の斜面を正面に見て右側に位置するのが登り専用道なので間違えないようにしよう。

平治岳山頂付近の様子。登山者がお気に入りのアングルを見つけてはシャッターをきる

ようやく登り着いたと思った山頂は通称ニセピーク。大きな岩に乗って見渡す展望が美しいが平治岳の山頂はその先。九重にもあった双耳峰! というやつだ。その先に続く細い登山道を進むと、山頂はなだらかな稜線の端っこにある。一面にミヤマキリシマのピンク色が広がり、正面には色づいた三俣山や九重の峰々、眼下には坊ガツル湿原が見えるだろう。

美しい景観を守るための取り組み

近年、九州電力を中心にミヤマキリシマの保護を目的に、平治岳山頂付近の馬酔木やノリウツギなどの繁殖力が高い植物の伐採活動が行われている。なんで九電? と疑問に感じる方も多いかもしれない。実は、昭和のはじめに「坊ガツル」をダムにする計画が持ち上がった際、九州水力電気株式会社(現在の九州電力)が坊ガツルの約半分から平治岳付近の土地を取得し現在に至っているのだ。

冬時期だけ楽しむことができるハート型に夕陽が差し込む平治岳

もちろんダム計画は、山岳会や地元有志の反対運動によって中止され、九州電力は現在、九重連山の春の風物詩の一つでもある「坊ガツル野焼き」の実行委員でもある。坊ガツル付近の登山道脇で、赤いペンキが塗ってあるセメントの古い杭を見つけたら近くに行って良く見てみると良い。「九水」と彫られていている。九重の自然を守ってきた沢山の人の歴史の一部が今でも刻まれている。

平治岳(1,642m)

春のミヤマキリシマシーズンには、多くの登山者で賑わう花の山。坊ガツル湿原の北東に位置する。湿原に立ち寄らずとも頂上へアプローチできるが、青々とした湿原とピンク色に色づいた山肌の景観は非常に美しい。ぜひとも坊ガツル湿原を経由してほしい。

紹介ルートを通過した活動日記はこちら


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