
登る
摩耶山|初級者にも最適な、六甲山系のおすすめコースを登山ガイドが解説
神戸中心街のすぐ北側にそびえ立つ摩耶山(702m)。六甲山系の中央部に位置する、同山系の主峰のひとつです。古くから六甲修験の修行の場であり、また、お釈迦様の生母である摩耶夫人(まやぶにん)を祀る古刹・天上寺が栄えた名峰です。
山頂直下の掬星台(きくせいだい)へは、ケーブルカーとロープウェイを乗り継いで手軽に行くことができ、神戸市街と大阪湾のすばらしい眺めを楽しめます。特に夜は、「神戸1000万ドルの夜景」を楽しむ観光客やデート客で人気で、「日本三大夜景」にも選ばれています。
摩耶山への登山ルートは多く、中には急坂が続く体力勝負の道もありますが、整備された遊歩道を歩くような”ハイキング”から、一般登山道を歩く”登山”へのレベルアップを図りたい方にも適しており、ルートの組み合わせしだいでは、岩場や渡渉箇所にガッツリ挑みたい経験者にもおすすめです。
ここでは、数多くのルートのうち、六甲山系によくみられる風化花崗岩の山道を行く天狗道を登り、麓と最短距離で結ぶ上野道を下る代表的なルートを、登山ガイドで山岳ライターの岡田敏昭さんが紹介します。
目次
摩耶山のおすすめポイント

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
天狗道の魅力ポイント
① 駅(神戸市営地下鉄/東海道新幹線・新神戸駅)から直接アプローチできる
② 六甲山系屈指の名瀑・布引滝
③ 荒々しい風化花崗岩の急坂となる天狗道
④ 修験道の痕跡を残す摩耶山山頂の天狗岩
⑤ 神戸市街や大阪湾方面の絶景が広がる掬星台
上野道の魅力ポイント
① 旧天上寺への表参道。急坂だが最短で市街地へ下山できる
② 旧天上寺の親子杉と「旧摩耶の大杉」
③ 峠茶屋跡など下山途中にも複数ある展望スポット
④ 途中で疲れた場合、摩耶ケーブル・虹の駅にエスケープが可能
新神戸駅発〜摩耶山〜摩耶ケーブルまでのルート紹介
新神戸駅~布引滝~桜茶屋

「トレイルステーション神戸」の先の出口を左へ
まず、新神戸駅の1階コンコースから、いちばん東の出口(「トレイルステーション神戸」が印)から、新幹線線路のガード下のトンネルをくぐります。周辺案内図の看板を見て、右の坂を登ります。
砂子橋(いさごばし)を渡って左折。この砂子橋は、導水管橋として1900年(明治33年)頃に竣工した歴史ある橋で、神戸市の重要文化財に指定されています。

布引滝雌滝
最初の見どころ、布引滝雌滝(めんたき:落差19m)には、数分で到着。石積みの古い取水施設は、先の砂子橋と同時期のもので、やはり重要文化財です。
布引滝は、下流から順に雌滝、鼓ヶ滝、夫婦滝、雄滝(おんたき:落差43m)の4つの滝の総称です。

布引滝雄滝
雌滝手前の階段を上がり、坂道から鼓ヶ滝の音を聞くと、ほどなく夫婦滝と雄滝がセットで見えてきます。大岩壁を落下する雄滝はなかなかの迫力です。

布引貯水池。ダム湖百選のひとつで、その水は環境省による名水百選のひとつ
布引おんたき茶屋、みはらし展望台を経て、布引貯水池沿いの道を道なりにしばらく進むと、右に桜茶屋、左に公衆トイレがあります。休憩するのによいところです。

桜茶屋の斜め向かいにある公衆トイレ。これより先は掬星台までトイレはない
桜茶屋~(稲妻坂)~(天狗道)~摩耶山頂
この区間はちょうど、六甲全山縦走路に指定されています。稲妻坂、天狗道と険しい登りが続く、今回紹介のルートでは一番のがんばりどころです。

稲妻坂、天狗道への分岐
桜茶屋から、さらに先へ。ハーブ園への分岐を直進すると、ほどなく右に稲妻坂があり、天狗道へ続く道が分岐します。
稲妻坂に入ると、急坂が始まります。傾斜がやや緩むと、425m三角点ピークを左から巻き、ハーブ園からの道と合流します。ここからが本格的な登りとなりますので、話ができるくらいのペースで歩くといいでしょう。555mピークで学校林道が合流します。

登りがいがある花崗岩の険しい岩場
なだらかなピークをひとつ越えると、いよいよ天狗道のハイライト、花崗岩の岩場の急登です。場所によっては、確実な三点確保で安全に登ることが求められます。

隠れ展望スポットからの眺め
行者尾根道が合流して、コブをひとつ登り返すと、次に岩場の小ピークが出てきます。この奥が、神戸の海を望む大パノラマが楽しめる隠れ展望スポットなので、ここは通り過ぎずに、ぜひ立ち止まっていただきたいところです。標識はありません。
すぐに地蔵谷道と合流し、丸太階段を一気に登るといよいよ山頂部、電波塔の横に出ます。最初の電波塔の右の山道に入るとほどなく、摩耶山の山頂に到着です。

摩耶山の山頂には、猿田彦大神(左)と天狗岩大神(右)が祀られる
山頂には、2つの鳥居と天狗岩、698.6m三角点があります。いずれも周りを樹木に囲まれて展望はありませんが、落ち着いた、少し神秘的なたたずまいです。
天狗岩は猿田彦大神の碑の後ろにありますが、昔、摩耶山の僧がここに天狗を封じ込めたと伝わります。

摩耶山の三等三角点
ところで摩耶山は、古くは八州嶺(はっしゅうみね)と呼ばれていたといいます。これは、旧国名で摂津、播磨、淡路、丹波、山城、河内、和泉、紀伊が見渡せることによります。
今でこそ樹林の中ですが、かつて、ここは絶景の場所だったのかもしれません。三角点があるということは、少なくとも明治時代には今より展望がすぐれていたのでしょう。時の流れを感じさせます。
掬星台

広く平坦な公園となっている掬星台
山頂から北へわずかで林道に出て、下山路の上野道分岐を見送って東へ数分で掬星台に着きます。「手を伸ばせば星が掬(すく)えそうなほど美しい星が観える」ということで名づけられました。
摩耶ロープウェーの駅や、セルフカフェ「摩耶ビューテラス702」がある広い公園となっており、観光客やデート客でにぎわっています。自販機、公衆トイレ、休憩舎もあるので、弁当を広げたり長休止をとったりするのに最適です。

掬星台の展望デッキからはみごとな展望が楽しめる
掬星台からは、神戸の中心街やポートアイランド、六甲アイランドから大阪湾までが手にとるように見え、特にここからの夜景は「神戸1000万ドルの夜景」として有名です。

掬星台からの「神戸1000万ドルの夜景」
このようにレジャースポットとして大人気の掬星台ですが、もともとは太平洋戦争のころ、当時の陸軍が高射砲を設置するために切り開いた陣地だったとのことです。その後、1955年(昭和30年)、摩耶ロープウェーの開業時に奥摩耶遊園地として整備されました(神戸市灘区資料)。
掬星台北側の立ち寄りスポット
掬星台の北側には摩耶自然観察園があり、季節の花々のほか、釈迦誕生伝説の「産湯の井」などがみられます。
摩耶自然観察園の隣にあったホテル「オテル・ド・摩耶」は、残念ながら2021年(令和3年)に営業を終了しました。

摩耶山天上寺
さらにすぐ北の摩耶別山に、摩耶山天上寺(忉利天上寺)があります。ご本尊は十一面観音菩薩と、釈迦の生母である仏母摩耶夫人尊。摩耶夫人を本尊とする寺は、わが国でここだけです。
646年(大化2年)、孝徳天皇の勅願で、法道仙人が開創した寺で、のちに空海が唐から摩耶夫人尊像をこの寺に持ち帰りました。摩耶山の山名の由来もここにあります。

天上寺からは、明石海峡大橋と淡路島が見える
天上寺は、もとは摩耶山の南側直下にありましたが、1976年(昭和51年)1月、放火事件によりほとんどが焼失し、現在の地に再建されました。
掬星台~(上野道)~摩耶ケーブル駅

上野道分岐
いよいよ下山です。先ほど通りがかった上野道分岐まで戻ります。
上野道は、焼失する前の旧天上寺への、古くからある参道で、最短距離で麓と結んでいます。

かつての天上寺が建っていた摩耶山史跡公園
大きな杉が立ち並ぶ急坂を下り、三権現社跡を経て、摩耶山史跡公園(旧天上寺跡)に出ます。
ここにはかつて、親子杉という高さ25mの巨杉がありましたが、2018年の台風で倒れてしまいました。現在は、切り株などに説明板が設置されています。

参道の石段を下る途中に標識があり、西へ50m寄り道すれば、「旧摩耶の大杉」があります。樹齢1000年、幹回り8mとされる巨木でしたが、天上寺の火災が原因で枯死してしまいました。しかし、枯れてもなお、圧倒的な存在感を示しています。
参道の石段をさらに下り、仁王門を過ぎると傾斜が緩み、峠茶屋跡に着きます。かつて茶店が並んでいた場所です。ここで展望を楽しみつつ、ベンチで休憩しましょう。
右の道を下ると最短距離で下山できますが、体力と時間に余裕があれば、左の道をとり、摩耶山の見どころをもう少し楽しんでいきましょう。左の道も、下で右の道と合流します。

かつての建造物の痕跡をとどめる摩耶花壇跡
ほどなく現れるのが摩耶花壇跡。摩耶花壇は、大食堂と宿泊施設を備えた木造2階モルタル造りの大正モダニズム建築の洋館でしたが、1960年前後に解体されました。
敷地の南斜面には、地下室の遺構があり(立入禁止)、その上にあったテラスには40余名の宴席があったそうです。

千万弗展望台跡からの眺め
ロープウェイとケーブルカーの乗換駅である虹の駅の横には、千万弗(ドル)展望台跡があり、現在は展望のよい休憩所になっています。ここまで下りてくると、市街地にかなり近づいたのがよく分かります。
上野道をさらに下り、先ほどの右の道と合流します。地形図の346m点の西を巻き、古い丁石が立つ分岐を右へ、最後の展望台を経て、五鬼城展望公園を抜けると、住宅街に出ます。T字路で左折、次のT字路を左、わずかに坂を上がり次の三叉路を右で、摩耶ケーブル駅に着きます。

摩耶ケーブル下バス停(神戸市営バス)
あとはバスが各駅へ通じています。
・神戸市営バスで、神戸市営地下鉄/東海道新幹線・新神戸駅、神戸市営地下鉄・三宮駅、
JR神戸線・三ノ宮駅、阪急電鉄・六甲駅、JR神戸線・六甲道駅、JR神戸線・灘駅、
阪急電鉄・王子公園駅。
・まやビューライン「坂バス」でJR神戸線・灘駅、阪神電鉄・岩屋駅、阪急電鉄・王子
公園駅、JR神戸線・摩耶駅。
登山ガイド
岡田敏昭
1967年京都生まれ、大阪育ち、奈良在住。(一社)日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅡ)、奈良山岳自然ガイド協会所属。遊山トレッキングサービス主宰。環境省大台ヶ原登録ガイド。国内は関西一円の山々や日本アルプスを中心に1,300峰に足跡を残す。海外はマッターホルン、キリマンジャロ、ウィルヘルム山(パプアニューギニア)、キナバル山、玉山など12座に登頂。著作:「大阪府の山」(山と溪谷社・分県登山ガイド)、山と渓谷社やJTBパブリッシングのガイドブックの共著多数。
この筆者の記事をもっと読む公式SNSで山の情報を発信中
自然の中を歩く楽しさや安心して山で遊べるノウハウに関する記事・動画・音声などのコンテンツをお届けします。ぜひフォローしてください。
