投稿日 2021.06.08 更新日 2023.05.23

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【好評につき、第2期決定】登山道整備のプロから学び、山の楽しみ方を広げる講座が開講!

木々の間を縫って山に伸びている歩きやすい道や、分岐に差し掛かった時に目にする標識。私たちが何気なく見ている山のこういった風景は、誰かの手によって整備されているのだと想像したことはあるでしょうか? 今回は北海道・大雪山で、登山道荒廃問題と向き合いながら整備を続ける岡崎哲三さんにお話を伺いました。登山文化と雄大な自然を守りながら、自らも山を楽しむ。そんな登山道整備の魅力に迫ります。

またそんな岡崎さん指導のもと、登山道整備について体系的に学ぶことができる講座はここだけ。愛する自然のために何か自分にできることを探していたなど、興味がある方はお見逃しなく!

開催期間:2022年7月〜9月
エントリー期間:〜6月30日(木)

目次

山と人をつなぐ登山道。時には崩れてしまうその道を、陰ながら整備している人がいます。

2011年に一般社団法人「大雪山・山守隊」を立ち上げた岡崎哲三さんもそのひとり。生まれ育った北海道を中心に、崩れた登山道をただ修復するのではなく、自然のあるべき姿に復元していく。そんな登山道整備の新たなスタイル「近自然工法」を提唱し、日々登山道の整備と啓蒙活動をしている方です。今回は、私たち登山者にとって、切っても切り離せない登山道とその整備について改めて考えるべく、岡崎さんに話を伺いました。

登山道は本当に必要?

岡崎さんは幼少の頃、生まれ育った裏山で昼夜を問わず駆け回って遊んでいたそうです。「山遊びの経験のおかげか、天気や動植物の変化にすぐ気づくんです」と語ってくれました

そもそも、登山道は果たして必要なものなのでしょうか?

登山者としては、かけがえのない体験をするためには無くてはならないインフラであり、必要だと答える人が多いと思います。しかし、環境のことだけを考えてみると、そうも言えない側面があるのです。

「私たちが安全に山を楽しむために、登山道は必須のものです。ですが、山に人が入ることで本来の自然に少なからず影響を与えてしまうという点は確かにあります。

例えば私が主なフィールドとしている大雪山では、登山道が荒廃し、結果として登山者の安全はもとより、美しい自然をも脅かす状況になっているのです。大雪山系に約300kmにわたって張り巡らされている登山道では、近年いたるところで道が崩れ歩きにくくなり、土が流されることで植物が減っているのです」

大雪山の登山道の様子。以前手を入れた道が崩れてしまっています

荒廃の理由としては、大雨などの災害だけでなく、登山者の踏圧も少なからず原因として挙げられるとのこと。それでも岡崎さんは、登山道の必要性を訴えます。

「登山道は絶対に必要です。登山道があるからこそ、私たちは自然の近くまで歩くことができ、その美しさに出会うことができるのですから」

もし登山道がなくなると、自然と触れ合う機会が減ってしまい、結果的に自然に無関心な人が多くなってしまうこともありえます。岡崎さんは、そういった無関心な人を少なくするためにも、登山道を守っていきたいと強く考えています。

岡崎さんが考える登山道整備の理想

雨が続いたあとなど、このように登山道が崩れている光景を見たことがある登山者も多いはず

山を歩いていて、歩きづらいと感じたことがある人は少なくないはずです。大きな岩や倒木、滑りやすくぬかるんだ道など、登山道は千差万別。登山道整備とは、そういった荒廃した道に人が手を加え修復し、歩きやすくすること。例えばコンクリートを敷いたり、階段を作ったり、道を整えることを想像する方がほとんどかもしれません。

しかし、岡崎さんが提唱する登山道整備は少し違います。

人が手をかけることで植生や土壌を蘇らせ、そこに生態系を作り、登山道を整備しながら山をデザインしていく。それこそが岡崎さんの考える登山道整備であり、近自然工法というスタイルなのです。

山を歩きながら、「自分が歩いたところだけでも自然へのダメージをなんとかできないか」と考えはじめたことが活動のはじまりだったそうです

岡崎さんが提唱する近自然工法とは?

崩れた登山道の脇に、新たに植生が復元するよう整備を行なった様子

もともと近自然工法とは、スイスの河川工事の考え方を、西日本化学技術研究所の福留脩文氏が日本に持込み、広めたとされています。岡崎さんが実践する登山道整備も、福留氏から大きく影響を受けているのだそう。

「自然界にある植物や小川などはそれぞれ理にかなった構造をしていて、その周りの生態系も互いに影響し合っています。近自然工法とは、荒廃してしまった登山道などを自然と調和する形で修繕し、生態系が機能していくように再現しながら施工していくことなんです」

「荒廃した現場ごとに原因を観察し、適切な施工を徹底する。そうすることで周辺の自然環境も復元していき、施工物も自然と馴染んでいきます。徐々に調和していくことで、崩れにくく頑丈な登山道を作ることができるのです」

ただ、自然にとって適した施工をしたとしても、登山者は歩きにくいと別の場所に足を置きます。それが続くことで新しい荒廃が起きてしまう。歩きやすいところはどこか、登山者の気持ちや行動を想像しながら、自然と向き合い適切な整備をしていくこと。これも登山道整備における大切なポイントのひとつなのだそうです。

山守隊では定期的に登山道整備のイベントを開催し、参加者と楽しみながら整備をしているそうです

登山道整備の「たのしさ」とは?

「やると、みんな楽しそうにやってくれるから嬉しいんです」と岡崎さん。時には北海道を離れ、北アルプスや屋久島など全国の山を整備しにいくこともあるそう

「登山道整備は楽しい」

そう何度も語る岡崎さんにその言葉の真意を尋ねると、意外な答えが返ってきました。

「近自然工法とは、自然をじっくり観察していくところからスタートします。その機会は日常のいたるところにも潜んでいます。例えば今日の田植え中にも発見があったんですけど」

登山道整備のかたわら、米農家も兼業する岡崎さん。取材当日も日が暮れるまで田植えを行い、夜にインタビューに答えてくれました

「この時期(インタビュー時期:5月下旬)の北海道って、まだ朝晩はすごく冷え込みますけど、田んぼの水の中に手を入れるとあったかいんですよね。水温が一定に保たれているから、稲が発芽できる環境が整っている。

つまり、しっかりと自然を観察し、適切なタイミングに人が手を加えることで稲が芽吹く。これって当たり前のように感じるんですが、人と自然の理想的な協業関係だと思うんです。

自然の現象をしっかりと観察することで、自然の奥深さにも気付ける。植物も人間も、自然の中で暮らしています。自然現象って家の前の田んぼでも、山の中を歩いているときでも変わらなくありますよね。登山道整備も農業も、同じ視点で見ることができるんです」

「ただ、山に登るだけじゃなくて、山のいろんなところに目を向けてなぜ? を考えて歩いていく。なぜ登山道のこの部分だけ荒廃しているのか。どうすれば、自然と調和する修繕ができるのか。

登山道整備の面白さって、この自然との対話にあると思うんです。自然と対話しながら、登山道が荒廃した原因を推測し、理想的な整備の方法を考える。そして、自然と調和した美しい登山道の姿を想像する。そう考えると、ただ登るよりも、直しながら登る方も楽しいなと、私は思いますね」

例えば、自分が土に植えた野菜の種から芽が出てくるのを見ると、喜びを感じる人も多いはず。人間は自然の成長に幸せを感じるようにできているのかもしれません。大雪山・山守隊では、今後も自然と対話しながら、小さな幸せを感じれるようなイベントを作っていきたいんですと、岡崎さんは語っていました。

トレランやUL(ウルトラライト)など山の楽しみ方はどんどんと多様化しています。その中にあって確かなことは、ジャンルは違っても、山を楽しむ人々はきっと心から山を愛しているということ。であれば、トレイルランナーもULハイカーも登山初心者も、山を楽しむ一つの方法として「登山道整備」を身につけてほしい。そして次の世代に登山の文化と美しい自然を残す手助けをしてほしい。そう感じたインタビューでした。

登山道整備をもっと学びたいあなたへ

YAMAPはこの春、山についてより深く知識をつけたいあなたのためのステップアップスクール、YAMA LIFE CAMPUSを開講しました。「オンライン講習」と「実践しながらの登山」を組み合わせた画期的なカリキュラムが特徴です。

ここからはYAMA LIFE CAMPUSの概要と「登山道整備講座」のプログラムについて紹介します。

YAMA LIFE CAMPUSとは?

YAMA LIFE CAMPUSとは、ひとことでいうなら山の学校です。山のエキスパートが講師を務め、実際に山で学ぶフィールド講習とその前後にあるオンライン講習を組み合わせ、テーマに合わせて山について深く学ぶことを目的としています。

予習、実践、復習を繰り返しながら、着実に技術や知識を高めていくため、受講を終える頃には、体系的に登山スキルが身につくこと間違いなし。

またこのYAMA LIFE CAMPUSの特徴のひとつにコミュニティがあります。Facebookグループを作り、講師や他の参加者に質問・相談を気軽に行うことができます。コミュニティで助け合えるので、挫折せず続けられるだけでなく、一生の山仲間ができるチャンスでもあります。

受講が終わった後もずっとつながり続けられる大切な山仲間が作れることも、この取り組みの大きな価値なのです。YAMA LIFE CAMPUS登山道整備編一期生という繋がりを大切にして、これからの山ライフを楽しんでほしいと思っています。

登山道整備編とは?

日本各地の山々に張り巡らされる登山道は、登山文化の継承のため、そして自然保護のためになくてはならない重要なインフラです。しかし、その整備技術を持つ「山の守り人」は決して多くありません。この講座では、登山道整備の基礎技術について体系的に学ぶことができます。

また講師の岡崎さんによる近自然工法という自然に即した整備を学ぶことで、自然に対する視座が高くなり、あなたの今後のアウトドアライフがより充実したものになるでしょう。もちろん、身につけた技術を実際に生かすための活動方法についてもご紹介します。

※ スケジュール詳細とカリキュラムはこちらから
※ 状況によっては変更する可能性があります
※ 北海道・大雪山系現地集合のプログラムです。

講師紹介:
岡崎哲三さん(大雪山・山守隊・代表)

メッセージ:
大雪山の「登山道荒廃問題」は深刻な状況です。大雪山に300kmにわたって張り巡らされている登山道では、いたるところで道が崩れ歩きにくくなり、土が流され、植物が減っています。YAMA LIFE CAMPUS登山道整備編では、侵食を止め、生態系を復元させる考え方である「近自然工法」を皆さんと共に学び、 登山道整備を実践したいと考えています。
修復した登山道に再び芽吹いた植物を見た時の感動は、普通の登山ではまず得られない感情です。大雪山という美しい自然を利用するだけでなく、正しく理解し、そして、その回復に力を注ぐ。自然を修復しながら旅を楽しむという真のエコツーリズムで、皆さんとお会いできることを楽しみにしています!

昨年の登山道整備編、参加レポート

YAMA LIFE CAMPUS 登山道整備編参加レポ|登山者が山を整備する未来に向けて

〈レポ内より抜粋〉
今回の「YAMA LIFE CAMPUS 登山道整備編」は、登山のステップアッププログラムとは一味違う。技術そのものをフィールド講習で学び、施工もする。その施工物が山に残るという愉しみや達成感もあるだろう。だが、真のキーワードは「視点」だったように思う。

回を追うごとに新しい視点を増やしていく参加者はキラキラと眩しく、問題意識を持って登山道の未来を考える姿には感動すらおぼえた。「登山道整備」を学ぶ。ニッチには違いない。だがしかし、だからこそ、学んだことがある人が日本で、いや世界にもどれだけいるだろうか。

きっとこのプログラムから、全国の登山道整備に出向くようなリーダーが生まれるのではないか。登山道整備を「知らない誰かがやる」時代はもうおしまい。自分たちが好きで楽しんでいるフィールドを生かすも殺すも自分次第。その”視点”持ってますか? 

詳細・期間・募集人数について

期間
2022年7月〜9月 3ヶ月間

受講料
160,000円(税込) 

内訳
第1回 大雪高原温泉・高原沼周辺 旅行代金:45,000円
第2回 白雲岳避難小屋周辺 旅行代金:60,000円
第3回 愛山渓周辺 旅行代金:45,000円
オンライン講習 全5回 :2,000円 / 回

※ 詳細はWEBまたはメールにてご案内いたします。 

定員
15名様 
※ 応募者多数の場合は抽選になります。

エントリー期間
2022年5月16日(月)〜6月30日(木)

ご参加までの流れ:
Step1. 参加ご希望の方は、エントリーページよりご登録ください。
Step2. クラブツーリズムよりカリキュラムの詳細をメールでお送りします。
Step3. 応募者多数の場合、抽選を行い、結果をメールでお知らせします。
Step4. プログラムへのご参加方法は、入学後にご招待するFacebookグループでご案内します。
※ 受講期間中のご連絡はFacebookグループ内で行いますので、受講される方はFacebookのご登録およびグループへのご参加が必須となります。あらかじめご了承ください。

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