投稿日 2020.09.09 更新日 2020.09.10

楽しむ

ようこそ山コーヒーの世界へ。アウトドアの達人が教える山での美味しい淹れ方

アウトドアクッキングの達人、小雀陣二さんに「山で楽しむ至高のコーヒー」について教えてもらう本企画。前回は挽き方や道具などについて語ってもらいましたが、今回はいよいよ実践編。山でのコーヒーだからこそ意識すべき豆知識や、小雀流こだわりの淹れ方について教えてもらいます。知れば知るほど深みにハマるコーヒーの世界にハマってみては?

目次

前回の記事「アウトドアの達人に学ぶ「山コーヒー」の道具、淹れ方、嗜み方」では至高のコーヒーを淹れるための道具について触れた。本記事ではいよいよ淹れ方を紹介しよう。

「コーヒーには一口では語れない魅力がある」と前回の記事中でも述べたが、「淹れ方」もとてつもなく奥深く、魅力的な領域なのである。

早速、説明していきたいところだが、焦ることなかれ。まずは序章として”豆そのもの”の話から始めたいと思う。まずは豆についてもう少し深堀りをしていこう。

コーヒー豆と味の関係

知っている人がほとんどだと思うが、コーヒーはもともとは果実である。

果実から飲める状態になるまでには様々な工程があり、生豆がブラックビーンズになる仕込み、いわゆる煎りの段階によっても味や香りは大きく違ってくる。また、同じ豆を使っても、豆の挽き具合や抽出の仕方によって味が大きく変わることを読者の皆さんはもう知っているはずだ。

圧力をかけて抽出するエスプレッソは、きめ細かいパウダー状の粉を使用する。粗めに挽いた粉を使用するパーコレーターは焚き火との相性が良く、野外では大変喜ばれる。

直火で使用してきたパーコレーター。使うほどに味がでる(著者私物)

ペーパードリップの場合は、その中間である中挽きが基本と言われている。粉の粗さで粉とお湯が接する時間が変わり、味に影響するのだ。

豆の品質、煎り方、挽き方、抽出方法。そのすべての過程で味が変わることがコーヒーの奥深さ。さてここからは、山で飲むコーヒーならではの話をしよう。

美味しさの秘訣は「標高」と「空気」

山の上で淹れるコーヒーにおいてポイントになる点は、ずばりお湯の温度だ。それはなぜか。

理由は山の高さにある。標高が上がれば、お湯が沸騰する沸点が変わる。つまり、同じ沸騰状態でも、標高によってお湯の温度が違うのだ。

基準を標高0mで気温20度、気圧が1,013hPaとすると、沸点は100度となる。これが標高1,000mだと気圧は100下がり913hPa、沸点は約97度。これが2,000mだと沸点は約94度と少しずつ下がっていく。そして日本で一番高い富士山頂だと理論的には約90度で沸騰することになる。


コーヒーは注ぐお湯の温度が高いか低いかで、味の決め手である酸味や苦味、甘みが違ってくる。一般的には温度が低いと酸味が強く、高いと苦味が強く出ると言われている。

ずいぶん前に私がコーヒーを習った時は、「ベストな温度は90度前後」と言われていた。最近は豆の種類が増え焙煎具合も多様化しているため、それに合わせて湯温の幅も広くなってきているが、基本大きく変わってはいない。

ここでの結論としては、富士山頂のように沸点が90度前後だとむしろ都合が良くわかりやすい。クッカーで沸騰させたお湯をそのまま注げば、理論上は美味しいコーヒーが淹れられるからだ。

ぜひあなたも山でコーヒーを淹れる時には、自分の標高を地図で確認してみてほしい。沸点は◯度前後だから、冷ます時間はこのくらいかな、と意識してみるだけで山コーヒー通っぽくなるのではなかろうか。

またもう一点ポイントがある。それは空気だ。

うちのカフェで出しているアイスコーヒーはハンドドリップで抽出している。豆は中煎りと深煎りのブレンド、温度は90度を目安にしている。湯沸かしポットで沸騰させたら、一度温めたドリップポットに熱湯を注ぎ入れる。その時に高い位置からじゃばじゃばと、お湯に空気が入るように注ぐ。

これには理由がある。水が沸騰しお湯になるとpH値が上がり、アルカリ性に寄ってしまう。お湯に空気を含ませることで、コーヒーの味を邪魔しない中性側に戻しているのだ。

コーヒーの淹れ方一つをとっても、標高や空気など、科学的な根拠が隠れていることを追求すると、さらに奥深い世界を知れておもしろい。私も山行中に浄水されていないおいしい湧き水を手に入れたら、持ってる知識を総動員して、極上のコーヒーを淹れるようにしている。

山コーヒーの淹れ方、実践!

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さて、いよいよ本題。ここからはドリッパーを使って淹れ方の基本を画像と共に説明しよう。道具については前回の記事で解説したので、ここでは割愛する。

湯沸かしの道具とドリッパーの両方を山に持っていくのは、正直かさばる。「それでも美味しいコーヒーのためならば頑張れる」という情熱を持っている方は、さらに温度計を持ち歩くことをおすすめする。お湯の温度が明確になるためだ。

では、ここからは、コーヒーの淹れ方の手順を説明していこう。

詳しくは後述するが、大まかな手順としては、

手順1)粉を準備する
・粉10〜12gに対して150〜200ccのお湯を準備する
・粉を入れたら、平らになるようにならす

手順2)お湯を注ぐ
・お湯を入れ20〜30秒間蒸らす
・ペーパーフィルターにお湯がかからないように中央で「の」を描くようにお湯を注ぐ

と思ってもらえればOKだ。それでははじめて行こう。

手順1)粉を準備する
ドリッパーにペーパーフィルターを折り整え、設置する。
使用する豆によってグラム数は変わってくるので一概には言えないが、私が使うブレンドでは一杯12gとしている。

お湯はだいたいひとりあたり150〜200ccを準備してほしい。

また1杯で淹れるよりも、2杯以上で入れた方が美味しいという意見もあり、私はこれに賛同している。山でコーヒーを淹れる時には同行者の分までまとめて淹れてあげよう。その時には、この数字をそのまま人数分増やしてもらえば大丈夫だ。

挽いた粉を入れ、フィルターの中で馴染ませ、横を少し叩きながら平らになるよう整える。

私は真ん中にちょんと指で穴をあける。「美味しくなれ」というおまじないの意味も込めているのだ(笑)。

手順2)お湯を注ぐ

お湯が沸騰したら、火を止め、適温(前出80〜95℃)まで冷まし粉に注ぎ入れる。

少しづつ注ぎ、お湯を粉に馴染ませる。粉からコーヒー成分がうまく抽出されるように、粉の中の炭酸ガス抜くという大事な作業だ。

新鮮な豆で挽きたてならば、モクモクと膨らんで盛り上がってくるので、コーヒー豆の鮮度の指標にもなる。ガスを出すことで、コーヒーとお湯がなじみやすくなり、お湯の通り道ができる。つまり「蒸らし」は、コーヒーの美味しい成分をしっかりに引き出す大切な工程なのである。

※時間はだいたい20〜30秒が基本と言われているが、使う粉によって変わってくるので一概には言えない。購入時に店員さんに尋ねてみると良い。

粉の中心に湯を注ぎ、ペーパーフィルターに直接お湯がかからないようにしよう。じっくりと「の」の字を小さく描くように、中心から全体にお湯が馴染み抽出されたコーヒーが容易に落ちるようにしたい。


ドリッパーのお湯が1/3くらい減ったら、次を注ぎ入れる。これを繰り返し、適正量まで注いでいったら完成だ。

これはあくまで私のこのブレンドを使った淹れ方であり、紹介した方法は一例であることは重ねてお伝えしたい。

コーヒーは自由な飲み物だ。まして山で嗜むのなら、よりその人らしさがあっていいはずである。こだわりも人それぞれだ。自分の好きなルーティンで、好きな香りや味わいを探求していただきたい。

お気に入りのカップでもっと美味しく


コーヒーをさらに特別なものにするには、お気に入りのカップで飲むこともおすすめだ。コーヒータイムは山行中のちょっとした心安らぐひととき。体力の回復と気分の入れ替えという大事な時間である。

せっかくここまでこだわってきたのなら、カップもこだわるべきだろう。なにより気分が上がる。

私は、チタンやステンレスのダブルウォールのカップを好んで使っている。お気に入りはセブンセブンのチタン製の真空二重カップ。冷めにくいことと、金属系の道具の無骨な雰囲気にめっぽい弱いのだ。

金属が苦手な人は、プラスチック製、木製などカップは多種多様にあるので、ぜひ、お気に入りの逸品を探し出して欲しい。お気に入りの道具選びは、カップひとつとっても色が出る、楽しい時間だなとつくづく思う。

冬季の登山や雪中で外気温が氷点下に近いと、カップの素材によっては驚くほど早くコーヒーが冷めてしまう。例えば、熱伝導率が高いアルミのカップなどは冷めやすい 。一方でチタンは熱伝導率が低いため、冷めにくいという特性があるのだ。

ちょっと山にはかさばってしまうが、キャンパーに人気のDINEXのダブルウォールは冷めにくいのでおすすめだ。素材はプラスチック系のポリプロピレン製なので熱伝導はさらに低い。カップ選びの際にちょっと参考にしてみてほしい。

自分なりのアレンジで、山コーヒーの世界を広げてみよう

コーヒーの楽しみ方は数多くあると何度も伝えてきた。さてあなたはコーヒーを飲む時、ブラック派だろうか? コーヒーにはいろいろとアレンジレシピがある。ブラック好きのあなたにも、ミルク党のあなたにも、ぜひいつもと違った飲み方をオススメしたい。

通常、コーヒーに加えるものといえばミルクと砂糖だろう。砂糖は味に影響しにくい「グラニュー糖」が定番だが、あえてこれを固形の黒糖にしてみる。すると独特な味わいのコーヒーになるだけではなく、黒糖自体が行動食としても使えるのだ。ミネラルと糖分も摂取でき、まさに一石二鳥である。


山でのミルクのおすすめは、個人的には粉末のクリープ。原材料も牛乳由来のものだし、粉末で軽く、ゴミも少ないし、手軽に使える。コーヒー、紅茶、ココアはもちろん、料理にも使えるので大変重宝する。

あとは定番のはちみつ。少し高価だが本物のローハニー(生はちみつ)なら、栄養満点。薬がわりにもなる存在だが、ちょっとコーヒーにはもったいないかな。

シナモンには血行促進改善、抗酸化作用の効能があり、クローブにも消化促進作用がある。軽いし料理にも使えるだけでなく、コーヒーの味変や紅茶派にも合うのでおすすめだ。

さて、ここまで、きめ細かく厳密に語ってはきた。こだわるともちろん違いはでるのだけれど、ロースターの友人がこう言っていた。「コーヒー農園の人曰く、美味しい豆なら適当に淹れてもうまいよね!だってさ!」…大変言いにくいのだが、実はまさにその通りなのだ(笑)

どこの山に登るのが自由なように、コーヒーだって自由。好きに楽しく飲めばいいのだ。それでいて奥が深いから、私のように虜になる人も多いのかな。ぜひ今度の山でのコーヒーには、これまでよりちょっと深く、こだわってみてはいかがだろうか。

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