投稿日 2020.07.22 更新日 2020.07.28

旅する

登山の必須アイテム「ボトル」の多様な使い道を考察する

機能的にデザインされた登山道具の数々。実際に山で使ってみると、登山がぐっと楽しくなりますよね。さらには、使い方を工夫したり自分流にアレンジすると、登山を楽しむ自分のスタイルがアップデートさていくことを実感するはず。

新連載「低山トラベラー大内征の旅する道具偏愛論」では、年間100座をゆうに超える全国各地の低山を登り、テレビをはじめとしたメディアにも多く出演する低山トラベラー大内征さんが、低山を旅する中で試行錯誤しながら辿り着いた道具への思いや使い方を偏愛視点で紹介します。今回のテーマは「ボトル」です。特にナルゲンボトルに詰まった愛を、低山の情景とともに語っていただきます。

低山トラベラー大内征の旅する道具偏愛論 #01連載一覧はこちら

目次

酷暑でも、低山ハイクを楽しみたい!

真夏の低山ハイクは、汗との付き合い方次第で快適にもなり、辛くもなる。とにかく汗っかきのぼくは「汗でびしょ濡れになる問題」が深刻(笑)で、ゆえに「速乾ウェア」と「着替え」の準備、そして「水分と塩分の補給」には、とても気をつかっている。うっかり対策を怠ると、それこそ“魔夏”になってしまうから気をつけたいところだ。

つい先日、埼玉県のとある低山を歩いてきた。その山はクサリ場と固定ロープがあちこちにある岩の行場で、以前にも登ったことがある山。道はよく知っている。コース上に売店や自販機は、当たり前だがあるわけがない。ザックの中には、いくつかのボトルに分けた3Lの水分が用意されている。ざっと6時間程度の行動時間だったけれど、結局、すべて飲みほしたほどに暑かったのだから、重くても持っていって正解といえる。

毎度、夏場の山行では山に来たことを何度も後悔するのだけれど、これだけたっぷり汗をかいた後に源泉掛け流しの温泉にどっぷり浸かる気持ちよさを覚えてしまうと、これがまたクセになってしまう。まるでサウナのようで、魔夏の低山最高!となる。

「夏の低山での熱中症には充分に備えよう」とはいうものの、なにを基準にどれくらいの水を用意するべきなのか、いまいち分からないという人もいることだろう。そんなときは、この公式でざっと必要量を計算できるので、覚えておくと役に立つ。

◎山行中の脱水量[ml]=自分の重さ(体重+ザックの重さ)[kg]×行動時間[h]×5

こうしてはじき出した脱水量の最低でも70%〜80%の水分を補給できるように備えるのがよいとされている。よく耳にする「最低でも1L~2Lくらい持ちましょう!」というざっくりとしたアドバイスは、この計算をベースにしていることが多い。

例えば、体重とザックの重さを足してだいたいの「自分の重さ」となる。ざっと体重を65kg、ザックの重量を10kg、合計75kgとしよう。山中での行動時間は休憩を含めて6時間くらい。それをこの公式にあてはめて計算すると、75×6×5で2250 となる。この値の70%〜80%だから、だいたい1,800mlの水分が最低でも必要ですよ、ということになるわけだ。

これを受けて、ぼくは500mlのペットボトルに入ったミネラルウォーター×2本、スポーツ飲料×1本、ミネラル麦茶×1本で、合計2L相当の水分を持とうと考える。さらに気温や体調などを考慮して、追加で1Lも予備としてザックにしまうと、やはり3Lになる。いつものことながら、なかなか重い。
※上記の計算は、鹿屋体育大学の山本正嘉教授が考案した公式を参考にしています。

気がつけば、ボトルだらけになっていた

ザックに入れておく水分量が多くなればなるほど、それを持ち運ぶ容器にもこだわりたくなるのが、道具好きの性だろう。たとえば「ナルゲンボトル」などは登山者にとって必須アイテムになりつつあり、この類のボトルの持ち運び方や使い方を自分なりに深めたりひと工夫するのが、なに気に楽しい。そんな創意工夫も登山のうち、である。

ナルゲンボトルとは、米国のブランド「ナルゲン」が手がけるボトルのこと。国内外問わず多くのアウトドアユーザーに愛用されている

山行当日、道中のコンビニや自販機などでペットボトルの飲料を購入するという人は多いと思う。ゴミが増えるということがちょっと気になるものの、ついつい買ってしまう気持ちはよくわかる。

人より水分を多くとると自覚するぼくは、ここしばらくナルゲンボトルを愛用していて、飲料もできるだけ自宅から用意していく。このボトルはカラーが多彩で、さまざまなアウトドアブランドがプリントしたデザインのものを出しているのも、なんだかよい。サイズや形状もバリエーションに富んでいる。持っていて楽しい気分になるし、用途に合わせて使い分けることが可能なのが嬉しくなる。気がつけば、ぼくはさまざまなボトルのうち、ナルゲンボトルだけで8本も持っていた。もちろん、いっぺんに山に持っていくわけではないけれど。

ナルゲンボトルの特長は、いくつもある。

・頑丈だから中身がつぶれない
・頑丈だから落下してもボトル自体が壊れにくい
・中身も匂いも外に漏れない
・キャップを落とす心配がない
・ザックのサイドポケットに入れれば、行動中の出し入れがスムーズ
・ザックにボトルホルダーをつけて出し入れするのも◎
・耐冷耐熱温度は-20℃~100℃ととてもタフ
・口が広いから手袋をしていても開けやすい
・口が広いから氷を入れることができる

……などなど。

まだまだ利点を挙げられそうだけれど、こうした点を踏まえると、いろいろな活用法が浮かんでくる。なんて優れモノなんだろう。

ぼくは、このボトルの使い方をハイカー自身が思案したり工夫することに、登山の楽しみ方をアップデートしていくヒントがあると思っている。ものごとの進化・深化に、創意工夫と試行錯誤は欠かせない。

そんなわけで、ここからは個人的なモノへの思いや実際の活用法を、あらためて考察していきたい。

考察その1 行動食の携行に便利!

すでに浸透した使い方ではあるけれど、あらためて「行動食」の携行にナルゲンボトルは優秀だと思うのだ。ぼくは専ら「ドライフルーツ」と「ナッツ」の乾物ミックスと決めて久しい。

いまや山旅で訪れた地域に道の駅やファーマーズマーケットがあれば必ず立ち寄り、ドライフルーツやナッツを買い足すのが楽しみのひとつとなった。旅心が満たされて、抱えた紙袋につい笑みがこぼれる。その地域に名産の果実があるのなら、ぜひその乾物を手に入れたくなる。乾物だから比較的長持ちするし、水分が飛んでいるぶん軽い。だからなおさら携行向きで、栄養価も高く、登山に最適だといえる。

ちょいちょい食べて、ボトルの半分ほどまで減ってきたら、買い足しておいたお土産の乾物を継ぎ足すのだ。すると、日本各地のドライフルーツとナッツの、香ばしい香りと味が複雑に混じり合い、もはや再現不可能な「秘伝のタレ」のごとし。完全なるオリジナルフレーバーを作ることができるのだ。

食べるときは、キャップをくるっと回して掌に出すだけ。手を汚したくない場合、あるいは手が汚れている場合は、そのまま口に持っていって流し込めばよい。ナルゲンボトルの口が広い設計だから成せるワザ。そうやって口に広がるオリジナルフレーバーたるや、これまたものすごく美味いんだなあ。

乾物だからと、つい中身をそのままにしてしまうことがあるかもしれない。口に運ぶ前に、食べられるか否かをチェックしておくことを忘れずにしたい。山中でお腹を壊したら大惨事だ。それだけは、絶対に避けたい…。

考察その2 夏なら冷凍、冬なら湯たんぽ

耐冷耐熱という特性にも、ナルゲンボトルの素晴らしさが秘されている。-20℃~100℃まで対応するというタフさ、である。アウトドア、とりわけ登山との相性は抜群だ。どういうことかというと、凍らせることが出来ることと、熱湯を入れても大丈夫だということ。これが意味するところは、とてつもなく大きい。

夏場なら冷凍がよい

ぼくは登山の前夜にクエン酸が配合されたプロテインとか、スポーツ飲料とか、そういうものを作って冷凍しておく。山につくころには半分解凍された状態になっていて、その冷たさに暑くてダルい身体が躍るほど回復するのだ。場合によっては完全に解凍されていることもあるけれど、保冷バッグを使うなどして対策すればよい。

冬場なら熱湯もあり

お湯を持参する用途として、ということではなく、寒いときに「湯たんぽ」として使うことができるという意味で、救世主となるかもしれない。バーナーを持っている場合は自分で作れるし、山小屋に頼んでお湯をいただくこともある。

キャンプのときには必ず数本のナルゲンボトルを持っていくことにしている。仲間内で寒そうにしている人がいたら、湯たんぽを作って貸し出すことが多々あるためだ。寝る前にシュラフに入れておくと温かく過ごすことができる。山中で体温が低下するリスクに備える意味でも、お守り代わりにナルゲンボトルを持っておくのはよいと思う。ぼくは極寒の避難小屋で、これに救われた経験がある。

ちなみに、上の写真は蓄光タイプのもの。枕元に置いておいておけば、喉が渇いた深夜に目覚めても、すぐに見つけられる。はずだが、ぼんやり光る程度なので、目が悪い人は、結局ヘッデンをつけて探すことになる。ぼくのように…。

考察その3 遭難時、一縷の望みをかけて

体温低下の話題を出したついでに、もうひとつリスクに対するナルゲンボトルの活用アイデアを書いておきたい。あくまでアイデアだから、書いた通りに役割を果たす約束はできないけれど、ぼく自身が万が一そういう状況に陥ったときに、こんな使い方もできるかなあと想像していることでもある。

遭難時、木々にぶら下げて目印にする

中にSOSと自分の情報、日付と時刻などを記したメモ帳のきれっぱしを入れておく。白い紙がいい。できるだけ人が通りそうな場所、遠くから見えそうな場所を選んで、木の枝などに吊るしておくのだ。

いろいろ試してみた結果、外から中身がわかりやすい無色透明のボトルがベター。赤色のキャップは視認性が高かった。特に樹林帯では木々の緑を背景に、ピンクのロープで吊るすとより目立つ。登山道の目印のテープに使われている、あの色だ。

苔や樹皮の濃い大きな木を選んで吊り下げてみたが、どうだろう。これなら遠くからも発見してもらえる可能性がありそうだ。

しかしこれには、ちょっとした準備が必要となる。
メモ帳、油性ペン(または鉛筆。水性ペンはNG)、細引きのロープ、それと緊急時に役立つホイッスルなどをあらかじめナルゲンボトルの中に入れておくのだ。荷物になると思うかもしれない。しかし、軽いし、寒いときはお湯を入れて湯たんぽにしてもいい。なにしろ絶体絶命のときに、わずかでも望みを託せるアイテムになるかもしれない。

登山に不可欠なアイテムのひとつにファーストエイドキットがあるけれど、あれと同じように自分にとって必要な「SOSキット」として常備しておきたい。身分証明を予めコピーしておいたり、小型のナイフやLEDライト、鏡などを入れておくのもいいアイデアではないか。

とはいえ、ぼく自身は実際に遭難した経験はない(遭難者を発見して救助に関わったことはあるが)。だから、他にどんなアイテムを入れておくとよいか、よく妄想している。

それと、こんな使い方もあるかもしれない。

遭難時、沢に流して目印にする

遭難でよくあるケースが、沢に沿って下りてしまうケース。その先が滝だったり、ゴルジュ(切り立った岩壁に挟まれた狭い谷)だったりで、進退窮まるという話を耳にしたことがあるだろう。

そんな時は下手に動かず、SOSを託したナルゲンボトルを沢に流し、救助を求めるのもひとつの打ち手だ。もちろん、人に発見されない可能性もあるだろう。しかし、考えられる手立て、そしてその実現に必要な道具を持っているとしたら、迷うことはない。

沢を流れる途中で、岩や倒木などに引っ掛かってしまうケースは考えられる。それでも、目立つ色のナルゲンボトルが登山道の近くの水辺に浮いていたら……。そしてその中に紙きれのようなものが入っていることが視認できたら、これを目撃した人はピンとくるのではないだろうか。

まあ、これも登山道具をどんな風に使うとより活きるのか、その想像の中で考えたことだから、不十分な点があるかもしれない。しかし、もし遭難するようなことがあった場合、ザックに「SOSキット」が入っていたら、ぼくは迷わずやってみる。

考察その4 1Lの水をどう持つか問題

1Lを超える容量のボトルとなると、どのようにザックしまうか、水がなくなったボトルをどのように持ち帰るか、このあたりを考えておきたくなる。ぼくの場合は、ナルゲンボトルよりも、折り畳みが可能なボトルを使うことが多い。

たとえばモンベルのフレックスウォーターパックは、水が入っているときは自立し、冷凍もでき、空になったらクルクルと丸めて収納できるので、よく使っている。別売りのサーモカバーを使うと、保冷効果と結露防止まで実現する優れものだ。真ん中のクリアボトルは、同じくモンベルの1Lのハードボトル。ザックの出し入れがしやすいことや、手袋をしたまま開閉することを想定するなら、こっちが便利だ。

実際は、ナルゲンボトルとフレックスウォーターパックの併用が、山では調子がいい。350mlのナルゲンボトルにスポーツ飲料の粉末を溶かす。やや濃いめに作っておけば、疲れているときにいい感じだ。1/3ほど飲んだら、フレックスウォーターパックを取り出して水を足して飲む。そんな具合に何度か繰り返し、薄くなり過ぎたら粉末を加えて調整するわけだ。

ちなみに、水は一気に加えるのではなく、少しずつにしておくのがポイント。なぜなら、登山中にケガなどした際、傷口を洗うための水をとっておきたいから。ぼくは、わずかながら保冷効果を期待してボトルやパックを手ぬぐいで包んでおき、いざケガとなったら直接圧迫止血法で傷口をおさえたり、負傷部分に巻いて使ったりすることを想定している。だから、セットで持っておいて損はない。

番外編 サーモボトルは冬山の主役にして、夏の高山の名脇役

最後に、もはや定番の山用保冷保温ボトルのことに触れておこう。

ぼくの中では、モンベルのアルパインサーモボトルが絶好調。秋冬の低山はもちろん、雪山では絶対に欠かせないアイテムになった。山仲間の間では、いくつかあるブランドを比較して、どれが優れた保温ボトルかを議論して盛り上がる。

これを使い始めてからというもの、うっかり自宅に置き忘れたときの失望感は言葉では言い表せないほど愛してしまっている。いつも少量のハチミツをお湯に溶かしていく。口当たりよく、身体にスーッと染み入ってきて、胃の底から温めてくれる。冬山はもちろんのこと、なに気に夏山の高山でもいい味を出してくれる。夏はナルゲンボトルが主役で、サーモボトルはさしづめ名脇役といったところだ。

登山は、道具への偏愛と創意工夫で面白くなる!

さてさて、こうして「ボトル」というものを考察してみると、意外と使いでがあり、工夫の余地があり、その結果として多様な使い方が実現する山道具だということが伝わったのではないだろうか。シンプルな道具ほど、基本的な用途とともに、その発展的な使い方が無限にあることを感じさせる。

試行錯誤と創意工夫。なにかよい活用法があったら、そのナレッジを共有し合いながら、みなさんと一緒に登山のアップデートを試みていければ嬉しい。そういう協同の考動にこそ、登山という冒険の醍醐味があると、ぼくは思うのだ。

あ、そうそう。
とても単純なことだけれど、ボトルにスッテカーチューンがめちゃめちゃ楽しい。好きなアウトドアショップやブランドのステッカーを貼って、自分らしく楽しもう。万が一、同じものを使っている人が近くにいても、しっかり区別できるはずだ。

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