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“接写限定”で高尾山を歩いてみたら、いつもと違う世界が見えた
「水滴に映る青々とした森」「小さな花の中に広がる万華鏡のような景色」。実は私たちの足元には、日頃気付いていない極小の絶景が広がっています。
今回ご紹介するのは、そんな極小の絶景だけに焦点を当て、国内随一の登山者数を誇る高尾山を歩いた山行の記録。接写能力に優れたコンパクトデジタルカメラ「TG-7」を相棒に、山岳ライターの森山憲一さんが見つけた異世界をご堪能ください!
目次
アウトドア向けのタフなカメラで接写に挑戦
OM SYSTEMのTough TG-7(以下TG-7)というカメラがあります。
これは文字通りタフなことが売り。2.1mからの落下テストをクリアし、水深15mに沈めても大丈夫。アウトドアに打って付けの機能を持ったカメラです。その機能性から登山者人気も高く、過酷な環境下でのサブカメラとして使用する山岳カメラマンもいます。

そしてもうひとつ大きな特徴があります。それは接写に強いということ。高山植物をはじめとして接写すると楽しい被写体が山には多くありますが、スマホのカメラだと接写はうまくできないものも多く、一眼カメラでもマクロレンズを持っていかないと撮影できません。その点、TG-7なら単体でクオリティの高い超接写が簡単にできるのです。
以前、このYAMAP MAGAZINEでも、TG-7の接写を山の現場でやってみた記事を掲載したことがあります。
登山の楽しみ方が変わる超タフカメラ「OM SYSTEM TG-7」|水中撮影も超マクロ撮影も欲張りに
今回はこれをさらに推し進めた実験的な山行をやってみようと思います。
題して「高尾山“接写限定”山行」。
高尾山は首都圏を代表する初心者向けの低山ですが、意外なほどに自然が豊かな山でもあり、山野草の宝庫としても知られています。TG-7の接写モードしか使ってはいけないというルールで、それらを撮影してみようというのが今回の趣旨。
きっと見たことのない高尾山が表現できると思うのですが、さて、どうなるか――。
使っていいのは接写モードだけ

ということで、私、山岳ライターの森山憲一が高尾山にやって来ました。
実は私、同じOM SYSTEMのOM-1というミラーレス一眼カメラのユーザーでもあります。いつも山にはOM-1を持っていくところ、今回はその相棒は自宅に置いて、TG-7のみを持ってきました。
写真の腕にはそこそこ自信があるのですが、高山植物が最大の苦手分野。ちゃんと花を撮影した経験はほとんどなく、自信をもって花名を言えるのはコマクサくらいしかないという体たらくです。今、高尾山にどんな花が咲いているのかの知識は皆無に近く、これからどんな写真が撮れるのか想像もつきません。

出発前にモードダイヤルを「接写モード」にセット。顕微鏡のアイコンがそれです。このモードでは、カメラと被写体がくっつくくらいのほぼゼロ距離でもピントがちゃんと合う超接写が可能になります。ここまで強力な接写ができるカメラは他に聞いたことがありません。
しかし一方で、このモードだと普通の広い山岳風景が撮影できなくなります。下山するまでダイヤルをここから動かしてはいけないというルールで私は歩かなければならないのです。

まずは、高尾山でいちばん自然が豊かといわれる6号路を歩き始めました。
しかしどうも、いつもと違って調子が狂う。接写の被写体としてふさわしいものは当然ながら小さく、意識しないと目に入ってこないのです。いつものようにサクサク歩いていると、被写体をことごとくスルーしてしまう。同行の矢島カメラマンに指摘されて、視線を足元に移して歩くようにしました。そうするとなかなか進まない。うーん、接写、難しいな。

そうやって歩いているうちに、いい感じの花を発見。何という花なのかは知らないけど撮影してみよう。その撮影結果は以下。
TG-7で撮影
これ……かなりいい感じじゃないですか!? プロが撮った写真みたいに見えるぞ。しかもクモが絶妙なアクセントになってくれている。こんな写真撮ったことない!
「これ、ニリンソウですね」と矢島カメラマンが教えてくれる。そうか、これがニリンソウか。一面にワーッと咲いているところは山でよく見るが、一輪をこんなにまじまじと見たことはなかった。遠目ではまったく目に入らなかった雄しべや雌しべの色や造形も美しい。
俄然、接写が楽しくなってきました。
山肌に隠された小宇宙を発見
さあ、次のターゲットは何だ。行程がなかなか進まないことはもう気にならず、獲物を狙うハンターのように進んでいきます。

そうして道の脇に湿った箇所を発見。コケが目に入ったので、何か撮れないかなと近づいてじっくり見てみました。
TG-7で撮影
うお! さっきのニリンソウ以上の衝撃!! なんなの、このアーティスティックなオブジェは!!!
もはやこうなると何を撮ったのかわかりませんが、これ、コケの先端にしたたる水滴です。水滴の中にさまざまなものが映り込んでまるで宝石のよう。ところが実物の大きさはわずか5mmほどしかないのです。あんな汚く湿った山肌にこんなものが隠されていたとは……!!
今回もまたもやクモがいいアクセントになってくれている。このクモ、実は撮影時には気づいておらず、あとで撮影データを見て初めて存在に気づきました。クモ、おまえ、そこにいてくれていたのか……。
カメラマンのミラーレス一眼カメラで撮影
ちなみに、同じ水滴を撮った矢島カメラマンの写真がこちら。さすがにプロは雰囲気のある写真を撮るな……という感想ですが、私のTG-7もかなりいいよね!? コンデジなのに、プロ用ミラーレス一眼カメラ+マクロレンズにけっこう迫っていると思いませんか。しかもTG-7はより近くで接写ができているぞ。
筆者スマートフォンで撮影
参考までに、スマホで撮影してみたらこうなりました。あまり近くに寄れず、なかなかピントが合わなくて苦労しました。接写モードを備えた高級機ならもう少しうまく撮れると思いますが、それにしてもTG-7には及ばないはず。近年のスマホはカメラ性能の向上が著しいですが、接写は苦手分野のひとつですね。
自分の目を疑うような写真が次々と
すっかり気をよくして、バンバン接写していきます。

端から見ると怪しい人に見えなくもないですが、こっちは撮影に夢中なのでそんなこと知りません。
山を歩いているときは「視野を広く保つ」というのが登山者としての長年の習慣でしたが、接写山行をしていると自分の目の焦点が狭くなっていくような感覚があります。普段は目に入らなかった小さな風景がどんどん見えてくるのです。

いつもの倍くらいの時間をかけて歩いていますが、これはマジで楽しい。新しい山の楽しみ方を知ったような気分です。
そこで撮れた結果は以下。
TG-7で撮影
TG-7で撮影
TG-7で撮影
本当にこれは私が撮影したのでしょうか。シャッターを切るたびにモニターに信じがたい画像が写っています。
しかもこれ、標高300メートル程度の道端ですよ。どこにでもあるような低山の登山道脇に、こんなにもカラフルで美しい小世界が隠れていたとは、驚きでしかありません。
風景よりも足元の小さな自然が楽しい

やがて、人でごった返す高尾山山頂に到着。いつもならちょっと休憩して、富士山の写真でも撮るところですが、私のカメラは現在、接写モード限定。山頂でできることはなく、ザックも下ろさず先に進みました。

すでに私の目は道端の小さなものだけを狙うモードになっています。何か見つけるとすぐさま這いつくばって激写。他の登山者が通りかかると「何してんの」という目で見られますが、モニターに集中しているとそれも気にならなくなってきます。
TG-7で撮影
TG-7で撮影
そうしてまた傑作が撮れました。
虫を撮ってみたいなと思って探していたところ、赤くてキレイなベニボタルを見つけました。しかし動きが速くてなかなか撮れない。動きが一瞬鈍ったスキを見てなんとか撮影に成功しました。
2枚目の写真はツチハンミョウ。パッとしないルックスのうえに毒を持っているという嫌われもの。通常であれば注目するようなものではありませんが、接写してみたら! まるでエイリアンかプレデターのような迫力! メタリックに輝く顔面の質感などは、肉眼で見ているときにはまったく気づきませんでした。
大きさはベニボタルが1cmほど、ツチハンミョウは3cmくらい。仕上がりの写真だけ見ると、そんなに小さい虫だったとは信じられないですよね。
写真って面白い
ここからは日影沢経由で下山していきましたが、まだまだ傑作がたくさん撮影できました。その一部を以下に列挙します。どうぞ。
TG-7で撮影
TG-7で撮影
TG-7で撮影
TG-7で撮影
TG-7で撮影
TG-7で撮影
最後のハコベは、1cmくらいしかない小さな花です。それがこんなに見事に撮れるんだからすごいですよね。ボールペンの先を一緒に写し込んだ写真を撮ったので、それを見ていただければ、マクロの世界のすごさが伝わるんじゃないかと思います。
おまけですが、記事冒頭のタイトルカットはこうやって撮りました。左が矢島カメラマン、右が私。こうして見ると間抜け以外のなにものでもないし、ただの荒れた道端でしかない場所でもあるのだけど、空間を切り取ると見事なタイトルカットになるわけです。写真って面白いですね。

接写の仕上がりをよくするふたつの秘訣
ということで、無事、接写山行は終了。
作例が見事なので(自分で言うのもなんですが)、本当は別のカメラで撮っているとか裏があるんじゃないかと思われるかもしれませんが、正真正銘、TG-7の接写モードだけで撮りました。私に接写のスキルが特にあるわけでもなく、目に付いたものに気軽にシャッターを押していっただけです。なのでこのくらいの写真は誰でも撮れると思います。
ただし、ふたつだけ、特別なことをしました。
ひとつは「フォーカスブラケット」の使用。TG-7には、シャッターを押すとピントの位置を少しずつズラしながら複数枚撮影してくれるフォーカスブラケットという機能があります。今回はこれを多用しました。
接写モードはピントの合う幅が非常に狭く、ちょっとした手の動きや風によるわずかな揺れなどですぐピントがズレてしまうのです。
TG-7で撮影。フォーカスブラケット機能を利用すると、写真のようにピント位置をずらして複数枚を撮影してくれる
接写はピントが命。このふたつを見比べてもらえば、わずかなピントのズレでイメージが大きく変わってしまうことがわかると思います。これ、1~2mm、ほんのわずかに手が動いた程度の差なんですよ。フォーカスブラケットがなかったら、今回こんなにいい写真は撮れていなかったと思います。
フォーカスブラケットを使うとメモリーカードの容量を食うし、あとでベストな一枚を選ぶ手間もかかりますが、ここぞというときはぜひ使うことをおすすめします。
*フォーカスブラケットの詳細はこちら

もうひとつの特別なことは、LEDライトの使用。
TG-7には「LEDライトガイド LG-1」という純正アクセサリーがあります。上の写真でリング状に白く光っているのがそれです。
小さなものを接写しようとすると、被写体とカメラがギリギリまで接近することになり、被写体がカメラの陰になってしまうことがあります。そうすると被写体が暗くなってしまうのです。
TG-7で撮影。左がLG-1なし、右がLG-1あり
接写の仕上がりがぐっとキレイになることがわかりますよね。
このLG-1、接写には威力抜群のうえ、付けっぱなしにしていてもほとんど邪魔にならないので、ぜひ合わせて使うことをおすすめします。もう標準装備で最初からTG-7に付いていてほしいと思うくらい便利です。
接写限定山行を終えて
いや、もう、大満足でした。接写限定なんてやったことがなかったので、うまくいくのか不安もありましたが、想像以上にいい写真が撮れたし、なにより楽しかった! 山を見る目がまたひとつ広がったような感覚があります。
帰宅後に撮影写真を見返しているだけでニヤニヤが止まりませんでした。写真の整理が終わって、セレクトしたものをフォトアルバムに入れてスマホを開いてみたらまた驚き。

これは図鑑!?
たとえばインスタグラムのプロフィール画面がこんな写真で埋まっていたらどうでしょう? 見ているだけで気分よくなりませんか!? 自分がいきなり写真の上級者になったような……。
私もこういう山の楽しみ方をほとんど知りませんでしたが、新たな世界が開けるようで、本当におすすめです。ぜひやってみてください!
原稿:森山憲一
撮影:森山憲一/矢島慎一
山岳ライター/編集者
森山 憲一
1967年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学教育学部(地理歴史専修)卒。大学時代に探検部に在籍し、在学中4回計10カ月アフリカに通う。大学卒業後、山と溪谷社に入社。2年間スキー・スノーボードビデオの制作に携わった後、1996年から雑誌編集部へ。「山と渓谷」編集部、「ROCK&SNOW」編集部を経て、2008年に枻出版社へ移籍。雑誌『PEAKS』の創刊に携わる。2013年からフリーランスとなり、登山とクライミングをメインテーマに様々なアウトドア系雑誌などに寄稿し、写真撮影も手がける。ブログ「森山編集所」(moriyamakenichi.com)には根強い読者がいる。
公式SNSで山の情報を発信中
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