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関東でミツマタを鑑賞できる山|厳選3座を登山ガイドが解説
早春の山を歩いていると、まだ冬の名残を感じる冷たい空気の中で、ふいに甘くやさしい香りに包まれることがあります。
その正体は、ミツマタ(三椏)。
枝が必ず三つに分かれる独特の姿を持ち、葉を出す前に淡い黄色の花を球状に咲かせるこの低木は、日本の里山に古くから根付いてきた存在です。
ミツマタはジンチョウゲ科の植物で、かつては和紙の原料として各地で栽培されていました。現在、山中で見られる群生の多くは、その名残が半ば野生化したものだといわれています。
本記事では、関東でミツマタが美しく咲く厳選3座として、群馬県の屋敷山、神奈川県丹沢の不動尻、そして栃木県の焼森山を紹介します。いずれも人気のスポットですが、山の雰囲気や歩き方は大きく異なるため、登山ガイドの上田洋平さんが各山のポイントやおすすめコース紹介してくれました。
目次
屋敷山(群馬県):圧巻のミツマタの海

辺り一面がミツマタで覆い尽くされる屋敷山
【見頃】
例年3月中旬〜4月上旬
群馬県桐生市にある屋敷山は、標高658mの里山です。昔石灰の採掘で栄えて多くの屋敷が並んだことから、屋敷山とよばれるようになりました。現在では春先に斜面一帯がミツマタの淡い黄色に染まり、訪れる人を驚かせてくれます。
屋敷山のミツマタの魅力は、その近さにあります。登山道脇や斜面のすぐ向こうに花が咲き、香りもはっきりと感じられます。写真を撮るにも適した場所が多く、ミツマタを初めて見る方にとっては、強く印象に残る山でしょう。
また、群生地がコンパクトであるがゆえに、人の集中による踏み荒らしが起きやすい場所でもあります。登山道を外れず、花との距離を保つことは、次の春へと景色をつないでいくための大切な行動です。里山らしい親しみやすさの裏に、自然への配慮が求められる山だといえるでしょう。
根本山登山口往復コース【1時間30分】

ポイント
①圧巻のミツマタの海
②根本山登山口駐車場からアスファルト道を45分歩けば群生地へ
③シーズン中は混雑に注意

コース情報
コース定数:6(コース定数とは?)
コースタイム:約1時間30分
歩行距離:4.4km
累積標高差(上り)233m
累積標高差(下り)233m
不動尻(神奈川県):丹沢の森とミツマタを味わう

沢音に包まれた丹沢の谷に咲く不動尻のミツマタ
【見頃】
3月中旬〜4月上旬
神奈川県丹沢山地の大山南東部に位置する不動尻は、ミツマタとハナネコノメソウの名所として知られています。
不動尻へのアプローチは、広沢寺温泉駐車場から林道を進んでいくハイキングコースになります。途中でトンネルを通るなどして変化のある道を進むと、ミツマタ群生地に到着。
ミツマタは沢沿いに点在し、光の入り方や湿度によって表情を変えます。そこに広がる景色は、晴天時の明るさ、曇天時の落ち着き、どちらも魅力的。その空気感も含め、写真ではなかなか伝えきれないので、ぜひ現地で体感していただきたいです。
丹沢での注意点として、気温の上昇とともにヒルが出始める時期でもあります。完全なシーズン前とはいえ、対策をしておくことで安心して歩くことができます。
広沢寺温泉 – 不動の滝 往復コース【3時間20分】

咲き乱れるミツマタ(ゆっちーさんの活動日記)
ポイント
①大山、大山三峰山、鐘ヶ嶽登山と組み合わせればしっかり歩ける
②広沢寺温泉駐車場から林道を1時間40分歩いて群生地へ
③シーズン中は駐車場の混雑に注意

コース情報
コース定数:14(コース定数とは?)
コースタイム:約3時間20分
歩行距離:7.6km
累積標高差(上り):633m
累積標高差(下り):633m
焼森山(栃木県):妖精の森とミツマタを味わう

ミツマタの絨毯(susumanaさんの活動日記)
【見頃】
3月中旬〜4月上旬
栃木県益子町に位置する焼森山(423m)は、鶏足山塊を代表する一座で、関東屈指のミツマタの名所として知られています。標高は423mと高くはありませんが、ルートのバリエーションが豊富です。
登山口から歩き始めると、尾根道、沢沿い、緩やかなアップダウンが交互に現れ、単調さはありません。ミツマタは突然現れるわけではなく、徐々に数を増しながら、やがて斜面一帯を覆うようになります。その過程こそが、焼森山ならではの体験です。
見頃の時期には多くの登山者が訪れ、週末は特に混雑します。群生地周辺では立ち止まる人が増え、登山道が狭く感じられることもあります。
焼森山は低山でありながら、分岐が多く、道迷いのリスクもあります。花に目を奪われがちですが、現在地の把握を怠らないことが安全な登山につながります。YAMAPなどのGPSアプリを活用しつつ、紙地図も併用できると安心です。
整備された観光地ではなく、「山の中の花景色」であること。それが焼森山のミツマタの価値を高めています。倒木や落ち葉、ぬかるみを越えた先に広がる黄色の世界は、歩いた人だけが味わえるご褒美だと言えるでしょう。
赤沢富士-鶏足山-焼森山-鶏足山登山口 周回コース【3時間40分】

木漏れ日に照らされる焼森山のミツマタ
ポイント
①3座登頂+ミツマタ群生地を巡るコース
②弘法大師ゆかりの鶏足山も登る
③シーズン中は保全協力金が必要

コース情報
コース定数:14(コース定数とは?)
コースタイム:3時間40分
歩行距離:6.0km
累積標高差(上り):618m
累積標高差(下り):615m
屋敷山、不動尻、焼森山。いずれの山も、春の入口に立つ存在です。
ミツマタは派手な花ではありませんが、確実に季節の移ろいを知らせてくれます。
ぜひ、季節になったら関東のミツマタの山へ足を運んでみてはいかがでしょうか?
執筆・写真提供:登山ガイド・上田洋平
登山ガイド
上田洋平
1979年2月10日生まれ。愛知県名古屋市出身、神奈川県藤沢市在住。2児の息子の父。日本の山々だけでなく、海外の山々(アフリカ最高峰キリマンジャロ、南米最高峰アコンカグア)への登山経験を経て、2017年から富士山の登山ガイド。2019年4月に日本山岳ガイド協会登山ガイドステージI資格、2022年4月に登山ガイドステージII資格を取得し、専業ガイドに。山岳写真を撮るため、フルサイズ一眼レフ、ジッツォの三脚、雲台、標準ズームレンズ、望遠ズームレンズを担いだドM登山も敢行。キャンプ、空手、筋トレ、旅行、読書、トレイルランニング、ギター、ゲームなど趣味多数。https://y-hey.com/
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