投稿日 2021.09.02 更新日 2023.11.01

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山の天気と写真をドラマチックに彩る自然現象|山の写真をもっと楽しく上手に撮る方法 #4

YAMAPフォトコンテスト2020で特別賞に輝いた、雲海Lover/フォトグラファーことスズキゴウさんが、写真がもっと楽しくもっと上手になる方法を伝授してくれる本連載。第4回目は山で写真を撮る上でとても重要な天気と自然現象についてです。最高の一枚を撮影するために、雲海・モルゲンロートといった山の自然現象をどう予測するのか...何かしらのヒントが見つかるはずです!

山の写真をもっと楽しく上手に撮る方法 #04連載一覧はこちら

目次

お天気に悩まない人はいない

お山での写真撮影において、自分では絶対にコントロールできないことが1つあります。それは、みなさまご存知の「お天気」です。地上とは違い数時間ごとにコロコロと変わっていくお山の天気予報に、みなさまもヤキモキしているのではないでしょうか?今回はきっとみなさんも悩みが多いであろう、お山で撮影する際のお天気、そして山に絶景をもたらしてくれる自然現象についてのお話をしていきたいと思います。

みなさんは、お山の天気予報は何でチェックしていますか?「てんくら」「登山天気」のような天気そのものを予報するアプリ、「ヤマテン」のように初心者から上級者まで網羅できるデータや予報をメール配信してくれる有料のアプリ、さらには「Windy」や「SCW」、気象庁の天気図なども含めたデータをチェックして判断している方もいるかもしれません。

手段は違えど一つ言えることは、登山する日の天気予報はよっぽどの雨登山好きではない限り、「晴れてー!」と願ってやまないということです。自分ももちろんその1人なのですが…。

雲っているのに晴れ予報?!

私は行くお山を決めるとき、アプリやインターネットで得た情報と季節やその山域の特性を考慮し、狙っている撮影時間帯のシチュエーションを想定します。その上で最良と思われる山域を候補にしていきます。つまり、最終的に行く山域は、お天気次第であるため基本直前まで確定していないことが多いです。

実は、ドラマチックなお山の写真を撮影することを考えた場合は、必ずしも晴れ予報じゃなくても良かったりします。お山では、同じくらいの標高の山でも、隣の山は山頂が雲に覆われているのに、自分がいる山頂は抜けていて見晴らしがよいみたいケースも珍しくありません。なので、「晴れ」「曇り」「雨」といった天気予報はあくまで参考程度にとどめておくことが多いです。ざっくりとした場所の予報よりも「撮影ポイントと撮影対象は、撮影時間にどういったシチュエーションになりそうか」を徹底的に調べるようにしています。

ちなみに「お天気.com」によると晴れ、曇りの定義は空の雲の量によるそうです。

快晴:雲の量が1割以下
晴れ:雲の量が8割以下
曇り:雲の量が9割以上

つまり、空の8割を雲が覆っていても「晴れ」マークが出ていることになります。ぴーかんの青空でお山を狙いたい時は「快晴」マークの時が狙い目。結構知らない方も多いと思いますのでぜひ覚えておいてください!

快晴の富士山と大雲海 赤岳より撮影

天気を予測するのではなく、自然現象を予測する

先週公開のvol.3の連載でも記載しているように、私が狙う山域を決める際はドラマチックな瞬間を一度の登山でたくさん遭遇できるように、以下の現象ができるだけ発生しそうな場所を狙います。

・雲海
・モルゲンロート、アーベントロート、ビーナスベルト
・朝焼け、夕焼け

これらはすべてお天気に関連して起こる自然現象です。実はお山の写真を撮影するに当たっては「お天気」というよりは「上空の天気も含めた起こりうる自然現象」を予測することが美しくドラマチックな写真を撮影する鍵になります!これ超重要です!!

この部分が、登山を目的に天気予報をチェックする方と、私のように写真を中心に考えている人との決定的な違いなのかなと思います。

では、ここからはただえさえ絶景な山を超絶景にしてくれる、愛しき自然現象たちを紹介しますね。

雲海

お山でしか見ることができない特別な楽しみといえば「雲海」があります。私は雲海が大好きです!食べたら美味しそうと思えるような大雲海はいつ見てもテンションが上がります!雲海が生まれるメカニズムの詳細は長くなるので詳細は省きますが(知りたい方はググってみてください!)ざっくりいえば湿度と寒暖差です。

これは自分の経験値からの推測なので正しいかどうかは全くわかりませんが、自分なりに雲海がでるプチ条件があります。

・湿度が92-3%以上
・風が弱く、寒暖差が7-8度以上

そう言われてもなかなかピンとこないと思いますが、例えば前日の夕方まで雨が降っていて、夜から翌朝にかけて高気圧が張り出す時は雲海大チャンスの可能性が高いです。そんな時、私はソワソワして仲間と連絡を取り合います。

場所によって出やすい、出にくいなどの特性もあり、その時の条件によって雲海の湧く高さも違ったりしますが、そこを読み切れるようになってくると、どのくらいの標高のお山にいけば良いのかも見えてくるので、おいしそうな雲海を撮影できるチャンスがグッと近づきます。流れ込む風の方角や強さ、地形も影響するので何度も同じ山域に通ってその土地独特の雲海の条件を見つけてみるもの楽しいと思います。

雲海とシュカブラ

モルゲンロート、アーベントロート、ビーナスベルト

早朝の日の出前の時間帯、低い上空にグラデーションが掛かったピンク色の線が水平線と平行に見えたことはありませんか?その美しいピンク色のラインはビーナスベストと呼ばれており、お山と合わせて写真撮影するとテンションがぶちアガ上がる、早朝の写真撮影の醍醐味の1つです。日の出前の時間帯、太陽と逆の空に現れる現象で、朝焼けとは違った優しい雰囲気ですよね。

厳冬期の剱岳とビーナスベルトと大雲海

時間が経つにつれて太陽が登ってくると、今度は美しくお山を染めることモルゲンロートが始まります。日の出を迎える前にピンクや赤、オレンジの光がお山を染めることをモルゲンロートと呼ぶのが正しいのだと思いますが、光が差し込む東の空の雲や水蒸気の量などの条件によっては日の出の時間帯を超えてからモルゲンロートと同じような現象が起きたりもします。反対に夕陽が山を染める現象はアーベントロートと呼ばれています。

大晦日の朝、笠ヶ岳と穂影とモルゲンロート

朝焼け、夕焼け

朝焼け夕焼けの時間帯に最高に萌えるシチュエーション、それは上空の雲が朝夕の色づいた太陽の光で染まること。小さい雲ではなくて空一面の雲がすべて染まるような、フォトグラファーの世界でいわゆる「爆焼け」と呼ばれる現象をお山の上から撮影できた時は涙が出るほど感動します。

つまり、撮影時においては雲がお山の表情を作るといっても過言ではないくらい重要な要素だと考えています。そしてモルゲンロートにも言えることなのですが、太陽の光がしっかりお山や雲を照らすのかどうかがポイントになります。ということは、ドラマチックな写真が生まれる元は太陽の光。美しい陰影や山肌に映す雲の影や山の影、モルゲンロートほか全ての元になります。

なので、私は天気図や衛星写真、そのほか手に入るたくさんのデータを駆使して太陽の光が自分の狙っている山域に差し込むのかどうかを直前まで何度もチェックするようにしています。

日本山岳写真フォトコン「特選」受賞作品。8/31-9/8まで東京都美術館にて開催中の写真展にて展示中

自然現象を撮る上でのアドバイス

「いまの瞬間を逃すと次はない、今だと思うなら撮っておけ」

これは、自分が過去に何回も経験した苦い想いからできるだけ実践しているポイントです。

すべてが生きた自然現象でできているお山での撮影では「かっこいい」「撮りたい」と思った数分後には違う景色に変わってしまいます。自然はこっちの都合なんて気にせず、次々と新しい自然現象を生み出しては消していきます。なので、いま!と思ったらシャッターを切りましょう。とにかく撮る!

過去にそういった失敗はたくさんります。たとえば、以前北アルプス笠ヶ岳で山頂まであと数分というタイミングで後ろを振り返って見渡すと、西鎌尾根から槍ヶ岳の根元に向かってかっこいい滝雲が流れ落ちていました。西鎌尾根からの滝雲と槍ヶ岳は有名な構図ではあるもののテンションはMAXに。山頂まで急いで登り、カメラを構えたのですが時すでに遅し。2-3分前まで溢れ出していた滝雲は消えていて、とても悔しい思いをしました。

朝夕の時間帯もそうですが基本的に美しい瞬間は一瞬だったりします。その一瞬の煌めきを逃さないように、めんどくさがらずにたくさんシャッターを切っていきましょう!

さて、今回はお山の写真における天気と愛でるべき自然現象について触れていきました。

もちろん、記事の中で触れた3つの自然現象だけではなく、滝雲や吊るし雲、虹やブロッケン現象などもドラマチックな写真の要素となります。さまざまな自然現象が目の前で起こった時、「どうやってお山と組み合わせようかな」「この自然現象はどう撮ったら素敵な写真になるのかな」など、あれこれ考えて試行錯誤しながらシャッターを切りまくってください。Vol.3の記事でも触れた通り、あらかじめロケハンをしておき、突然現れる山の神様からの贈り物をある程度頭の中で想定できていれば、どんな状況でも素晴らしい作品を撮影できるようになると思います。

次回はいよいよ最終回。最終回は写真を撮った後の写真現像についてのお話を中心にしつつも、あらかじめYAMAPユーザーのみなさまからいただいた質問とそれに対する回答を私なりにお答えする予定です。お楽しみに!

第5回へ続く

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