登る
山形・蔵王1泊2日の山旅|スノーハイクで雪山歩きに挑戦!
冬の蔵王は雪山登山者&スキーヤーたちの憧れの地。その魅力は良質な雪と、巨大な樹氷・スノーモンスターだけでなく、「美人づくりの湯」と名高い温泉にもあります。
今回は、「こいはる」のニックネームで知られ、登山系ユーチューバーでもあるタレントの小泉遥さんが、1日目はスノーハイクで雪山歩きを堪能し、2日目は蔵王温泉でのんびり町ブラを楽しみました。
目次
小泉遥、スノーハイクで雪の蔵王へ。スノーモンスターにも会えました!
冬の蔵王と言えば、巨大な樹氷・スノーモンスター。でも、厳しい環境の山上でしか見られない自然の造形美ゆえ、「スキーは初心者だし…」「雪山は登ったことがないけれど…」と、不安に思う人も多いはず。
でもご安心を。蔵王はロープウェイやケーブルを使って楽ちんに山の上へ登ることができ、ガイドツアーや道具のレンタルなど、初心者向けのプランが充実しています。
今回は、登山好きタレントの小泉遙さんと雪山歩きを楽しんできました。
蔵王は日本最大級ともいわれるスキー場をもつ山。ロープウェイを3本、ケーブルを1本、リフトを32本も保有し、多様なスキーコースを楽しめるため、スキーヤー憧れの地として有名です。また、広大な雪原を散策できるというのもあって、スノーシューやわかんを使った雪上歩きも人気で、多くの登山客が訪れる場所でもあります。
今回は、スノーハイクという新しい道具を使って、雪上歩きを楽しむことにしました。
スノーハイクとは、スキーとスノーシューのよいところを合わせて作られたもの。ブルーモリスという日本のスキーメーカーが開発した商品で、ヒールフリーといって、かかとが固定されていないため、雪上での脚上げが楽ちん。専用のブーツは不要で、どんな靴もバンドで固定することができます。
そしていちばんの特徴が、前方にはなめらかに滑り、後方には強い抵抗があって滑らないこと。板の裏にはシールという、けばだったテープが貼ってあり、足裏を雪面に押しつけるようにすれば、緩やかな登りは難なく登ることができるんです。
普通のスキー板では難しかった登りに対応できて、まったく滑らないスノーシューよりも楽に遠くまで歩けるので、まさにいいとこ取り。
今後、スノーハイクは蔵王ベースセンターでレンタル開始の予定。スノーハイクでのガイドツアー(要予約)も企画中なのでお楽しみに!
今回歩くコースは、まずは蔵王スカイケーブル中央高原駅から、スキー場のコースをたどって蔵王中央ロープウェイ鳥兜駅へ。そこからブナ林が広がる雪原の中を歩き、パラダイスリフトを上がり樹氷原へ。スノーシューに履き替えた後は蔵王ロープウェイ山麓線の樹氷高原駅まで歩き、ロープウェイで上がって樹氷を見て帰るというコース。スノーハイク&スノーシューのコースはいくつかあって、天候や雪のコンディションをチェックして、ガイドさんの判断で変えるそうです。
コースを案内してくれるのは山口勝美さん。蔵王山岳インストラクター協会で登山やスキーのツアー&講習を行う、四季折々の蔵王を知り尽くしたベテランです。
モデルの小泉遙さんは、スノーアクティビティは2度目。沖縄出身ということもあって雪山に憧れがあり、つい昨年、スノーボードデビューを果たしたところ。
「私でもできるのか、どきどきしています…」と少し不安げな小泉さんに、山口さんが優しく声をかけます。
「大丈夫ですよ、まずは平らなところで慣らしていこう!」
スノーハイクを装着し、準備は万端。足元の感触を確かめながらゲレンデの脇を歩いていきます。
「足は滑らすように前に出して。ストックは体の斜め後ろをつくと楽だよ」
おそるおそる足を出してみると、「おぉ! 思ったより安定してますね!」と小泉さん。
「こっちはふかふかだよ!」少し先で山口さんが手を振っています。ゲレンデから外れ、踏み跡のない真っ新な雪の森へと足を踏み出してみると…。
「あれ? ふかふかなのに歩きやすい!」と小泉さん。
スノーハイクの板は幅広で、深雪や新雪で力を発揮。浮力があって足運びがスムーズなんです。
最初はおぼつかない感じだった小泉さんも、いつの間にか平坦な場所ではスイスイ進むように。「まだちょっと怖いけど、だいぶ慣れてきました!」とリラックスした表情でにっこり。
雪に囲まれたドッコ沼を見ながら進んでいくと、山口さんが足元を指さして立ち止まって質問です。
「これは何の足跡でしょう?」「う〜ん、何だろう?」「これはね、テンの足跡。山で生き物に出会うのは難しいけれど、冬は足跡とか、痕跡がはっきりわかるから、生き物のくらしを垣間見られて楽しいよね。」
しばらく散策を楽しんだら、山口さんおすすめの展望スポット、鳥兜山へ。蔵王中央ロープウェイの鳥兜駅でスノーハイクを脱いで、徒歩でほんのひと登り。山頂からの眺めは最高で、真っ白な雪山の世界が広がっていました。
「ここからは、山形県にある百名山6つがぜんぶ見えるんです。鳥海山に月山、飯豊連峰、朝日連峰、吾妻山、それに蔵王山。今日は天気に恵まれたから、全部ちゃんと見えてるね」。小泉さんも大展望に興奮気味で、「こんな景色に出会ったのは初めて!」と写真撮影に夢中。
小泉さんは昨年の夏から登山を始め、地元の丹沢の山や筑波山、武甲山など、関東近郊の低山へ繰り出すうちに、今では週1で山へ出かけるほどはまっているのだそう。
「もともと体を動かすのが好きだったのもあって、登山を始めてみたんです。そうしたら、すてきな風景に出会えるし、自然の中でリラックスできるし、”めちゃくちゃ楽しい!”ってなって。八ヶ岳や北アルプスも登ってみたいけど、もうちょっと経験を重ねてからかな…」と登山の楽しさにすっかり魅了されている様子。
スキー場のコースへ戻り、ブナ林が広がる雪原を歩いて樹氷原へ到着。今度はスノーシューを装着して樹氷高原駅へ向かいます。樹氷の中を歩きながら無事に樹氷高原駅へ到着です。
ロープウェイ山麓線で一気に地蔵山頂駅へ上がると、寒さは格別。先ほどまで微弱だった風も、しっかり吹き抜けていきます。「標高が300m違うからね。しっかり着込んで暖かくしよう」と山口さん。
山頂駅を出るとまるで異世界! 巨大な雪の塊がニョキニョキと地面に生えています。
「これがスノーモンスター! すごい迫力ですね!」と小泉さん。
「樹氷は、アオモリトドマツに氷や雪がたくさんついてできたもの。厳しい寒さや強い風など、条件が揃ってないと育たないんだ。さぁ、樹氷原を散策して遊ぼうか!」と山口さん。
モンスターの間を歩き回りながら、写真を撮ったり、遠くの景色を眺めたり。そうこうしているうちに、夕日が空を赤く染め始めてきました。尾根にはオレンジ色に照らされた雪面と、黒い木の影が美しい縞模様をつくっています。
きらきらと輝きを増す樹氷たちを見ながら、「言葉にならないくらいすてきな景色。本当に最高の一日でした」と、今日いちばんの笑顔で小泉さんがつぶやきました。
下山後は山形酒のミュージアムで飲み比べ!
下山後に立ち寄ったのは「山形酒のミュージアム」。蔵王温泉街にあり、山形の銘酒を試飲&購入できるスポットです。
山形県内には49もの蔵元があり、実は日本でも有数の日本酒の産地。その高い品質によって、全国のみならず、世界中で山形の酒が注目されているといいます。
ここ山形酒のミュージアムでは、そんな山形の酒を常時50種以上取り揃えていて、日本酒好きはたまらないはず。
人気なのは、3種を飲み比べるコースでの試飲。個性派辛口コースや、隠れた銘酒飲み比べコースなど、いろいろなコースがあり、気に入ったものを購入もできます。日本酒通の店員さんばかりなので、好きな傾向を相談して、おすすめを教えてもらうのもアリですね。
甘口のお酒が好きという小泉さんは、店員さんおすすめの『くどき上手』にドハマリ。「おいしい! 濃厚だけど、スイスイ飲めちゃう!」
一日遊んでお腹がペコペコな人は、併設の「湯けむり屋台」で山形名物をつまみにしても。牛肉がコク深さを生み出す芋煮や、山形だしをたっぷりかけた冷や奴など、リーズナブルなおつまみがいっぱい。
店員さんのイチオシはステーキと山賊揚げ。「蔵王牛の赤身を使ったステーキにはコクのある日本酒が合います。山賊揚げは鶏肉の半身を豪快に揚げたもの。皮はパリッと、中はジューシーで、さっぱり系の日本酒とどうぞ」時間があれば明日も来たい!…もはや、入り浸りたい!
今日のお宿は「明湯舎 創」。2017年にリニューアルオープンしたばかりで、おしゃれな和風モダンの宿です。温泉はもちろん源泉かけ流し。蔵王山の火口湖「お釜」をイメージした露天風呂が人気で、雪の季節には風流と評判です。
夕食は香ばしさが食欲をそそるジンギスカンを。蔵王温泉はジンギスカン発祥の地ともいわれている場所で、温泉街のあちこちでジンギスカンが食べられます。周辺の農家で綿羊のために羊を飼っていたのが由来だそうで、ジンギスカン鍋は山形鋳物で作ったのが始まりとも言われています。
お肉好きの小泉さん、パクリと一口目を口にした瞬間、「くぅ〜! 疲れた体に染み渡りますね!」と感激。もっちり食感の山形ブランド米「はえぬき」と、一緒にお腹いっぱいいただきました!
東北の伝統工芸・伝統こけしの絵付けに挑戦
2日目は蔵王温泉街を散策することに。
まずは宿のそばにある「田中こけし屋」さんで、こけしの絵付け体験にチャレンジ。山形県や宮城県など、東北では伝統こけしづくりが盛んで、地域によって目や鼻の形、胴の模様などが異なり、細かく分けると10系統にも分かれるのだそう。
「いちばん最初に描くのは目。目は口ほどに物を言うって言葉があるでしょう? 顔の表情が決まるから、とっても重要よ」と絵付けの準備をしながら、手順を教えてくれるのは工房の女将、田中初子さん。
「ちゃんと描けるかなぁ…」と緊張気味の小泉さんでしたが、いざ筆を握ると迷いなく、さらさらと描き込んでいきます。
あっという間に、ぱっちりお目々が完成。「すごいわ、上手ね! あとはバランスを見ながら描けばバッチリよ!」と田中さんも驚いています。
伝統こけしに使われる木材は、イタヤカエデやサクラ、エンジュなど、硬くて艶が出るもの。スギなどの軟らかい木材は、くっきり年輪が出てしまって向かないそう。
「3〜4年かけて乾燥させて絵付けに使うから、赤や青のサラッとした色はよく吸っちゃうの。墨はこってりしてるから、ヤスリで削って直せるよ。いちばん難しいのが墨で描く目や眉。筆で細い線を描くのって、昔の人は簡単にやったけど、今の人は筆を使わないから難しいみたい」そこで思いついた道具が爪楊枝。細かい線を描くのにぴったりで、お客さんにも使いやすいと好評だそう。
黙々と絵付けを続けること15分。小泉さんのこけしちゃんが完成。「胴の絵柄を蓮にして、華やかにしてみました!」「こんなに細やかに模様を入れた人は初めてかも。すてきに仕上がったね。小泉さんに似ていて、とってもかわいいわ」と田中さん。
艶出しと色止めのために表面に固いロウを塗り込んで、ドライヤーで乾かして仕上げも完了。濡れた布で拭くとにじんでしまうので、乾いた布でお手入れを。
「美人づくりの湯」と名高い蔵王温泉を堪能
宿で温泉に入ったけれど、せっかくなので2日目も…ということで、蔵王温泉街の共同浴場へ。
蔵王温泉の歴史は古く、開湯したのはなんと1900年前。蔵王山の修験信仰が盛んになると、山上の蔵王権現や熊野神社への登山口としてにぎわいを見せたとのこと。当時、温泉は身を清めるものとして使われ、温泉に浸かってから山上へ向かったのだといいます。江戸時代からは温泉地や湯治場として有名になり、各地から多くの人が訪れ、温泉番付でも上位に入るほどの観光地になったのだそうです。
温泉街を散策していると、至る所で湯気が上がり、硫黄の香りが立ち込めています。源泉の立て札もたくさん見られ(源泉数は47!)、共同浴場は3つ、日帰り入浴施設は5つ、足湯は5つ、しまいには「手湯」なるものまで登場し、さすが日本有数の温泉地!
泉質は白濁とした強酸性の硫黄泉。酸性の度合いを表すpH値は源泉ごとに多少異なり、共同浴場の中では上湯共同浴場のpH値1.6が最強。強酸性の湯として有名な草津温泉でも、pH値は2前後らしいのでこれはなかなかの数値です(pH値は数値が小さいほど、酸性の度合いが強い)。
強酸性の湯は、少し浸かるだけでも体の芯からポカポカに。血行促進効果は抜群です。また、蔵王温泉は「美人づくりの湯」とも呼ばれ、殺菌作用やピーリング効果もあるのだそう。
蔵王温泉街をのんびり町ぶら
次に町ぶらで立ち寄ったのは、2020年1月にオープンした「湯旅屋 高湯堂」さん。「温泉&温泉街をもっと楽しめるアイテム」をテーマにした雑貨屋で、手拭いや桶、下駄、羽織などの温泉街にベストマッチなものから、自然由来の化粧水やハンドクリーム、こけしの置物など約300種のアイテムが並んでいます。
店長の竹さんが温泉街のしっとりとした雰囲気になじむものを探し、全国各地から取り寄せているのだそう。竹さんのイチオシは、蔵王温泉湯巡り手拭いとタオル。湯巡りパスを兼ねていて、提携する旅館で見せると日帰り入浴料を割引きしてくれるサービス付きなんです。
「湯巡り手拭いとタオルはオリジナル商品です。地元だけでなく、各地の作家さんと商品作りも行っています。今楽しんでいるのは、コーヒーのドリップパック作り。山形市のTsuki Coffeeさんと作っているのですが、湯上がり用のコーヒーがあったらおもしろいね、という話から始まって。12月から冬ブレンドを発売中で、今後は四季それぞれのブレンドを考えていく予定です」
2021年2月からはホームページでのネット通販も始まるそうなので、気になる人は要チェックです!
高湯堂を出て温泉街を歩いていると、「いがもち」という看板がちらほら。正式名称は「稲花餅(いがもち)の里」だそうで、試しにひとつ買ってみることに。
笹の葉の上に一口サイズの餅が3つ。餅の頭には黄色い米粒がのっていて、これは稲の花を模したものだとか。もとは蔵王権現にお餅をお供えしたのが始まりで、豊作祈願の意味があるのだそう。ほのかに笹が香る餅と、ほどよい甘さのこしあんがぴったり。3つペロリといただけちゃいました。
最後は「食事処きくち」さんで、少し遅めのお昼ご飯。
評判のメニューは冷たい肉そば。山形で肉そばというと、牛肉ではなく鶏肉を使ったものがふつう。それも、ブロイラーの若鶏ではなく、採卵用の親鶏を使うのだそう。
ご主人にお話をうかがうと、「親鶏は1時間ほど煮込まないと柔らかくならないけど、油がさらっとしていてきれい。常温でも固まらず溶けたままだから、冷たい汁に使えるんだ」とのこと。
親鶏を煮込んだ出汁に、醤油、みりん、酒のシンプルな味付けでいただきます。煮込んだ肉はスライスして、そばの上へ。一口すすると「出汁がしっかり! 甘くて香りがいいですね」と小泉さん。細めの手打ちそばに、汁がよく絡んでおいしい。
メニューはそば以外にも、ラーメンやうどんなどの麺類も。「山形は麺好きが多いからね。そばももちろんだけど、麦切りとか、米沢ラーメンとか、麺文化は栄えていると思うよ。いろいろ食べにまた山形においでよ」
1日目は冬の蔵王でスノーハイク、2日目は蔵王温泉街を町ぶらと、蔵王を遊び尽くした2日間。「スノーボードで滑ってみたいし、温泉にももっと浸かりたいし、スノーシューハイクも気になります。…また遊びに来たいです!」と再来を宣言した小泉さん。
冬の蔵王はこれからが本番。ぜひみなさんも、蔵王で雪山&温泉を楽しんでください!
記事で紹介したスポット
山形酒のミュージアム
住所/山形県山形市蔵王温泉951
電話/023-694-9052
名湯舎 創
住所/山形県山形市蔵王温泉48
電話/023-666-6531
田中こけし屋
住所/山形県山形市蔵王温泉875-12
電話/023-694-9386
上湯共同浴場
住所/山形県山形市蔵王温泉45-1
電話/023-694-9328
TAKAYUDO
住所/山形県山形市蔵王温泉19
電話/080-3190-0019
食事処きくち
住所/山形県山形市蔵王温泉710
電話/023-694-9302
原稿:池田菜津美
撮影:西條聡
モデル:小泉遙(グリック)
協力:環境省、蔵王索道協会、蔵王温泉観光株式会社、タカミヤホテルグループ
衣装協力:コロンビアスポーツウェアジャパン
ライター
池田 菜津美
子供向けの自然科学の本や、図鑑の編集などを行う。子供の頃から外遊びが好きで、山菜採りや野鳥観察、雑草探しに興じていた。現在は自宅裏の神社で鳥&昆虫を愛でるのを日課とし、近所の自然公園へぶらりと植物探しに出かけることも。今も昔も相変わらず、生き物の暮らしや生態に感心しながら、それとのふれあいを楽しんでいる。著書に『飼育員さん教えて!みんなどきどき動物園』『飼育員さん教えて!みんなわくわく水族館』(新日本出版社)、『ときめくヤマノボリ図鑑』(山と溪谷社)など。
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