投稿日 2021.06.07 更新日 2021.06.09

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YAMAPを使うと山が再生される? キーワードは“どんぐり”|循環型コミュニティポイント「DOMO」の全貌と真意をYAMAP代表に聞く

2021年7月中旬、YAMAPの新しい仕組み・循環型コミュニティポイント「DOMO(ドーモ)」がスタートします。DOMOはYAMAPユーザー同士で送り合うことができるポイントです。このポイントシステムは、山を守ることにもつながるらしいのですが、それは一体どういうことなのか。DOMOの全貌とその真意について、YAMAP代表の春山に聞いてみました。

目次

DOMOは気持ちを伝え合う、あたたかな手段


ーーDOMOとは一体何なのでしょうか?

DOMOは、YAMAPユーザー同士で「共感・感謝・応援」といったポジティブな気持ちを伝え合うための手段です。また、他の登山者やコミュニティに貢献した人に報いる仕組みとも言えます。これまでもYAMAPの中では、登山者やコミュニティの役に立つ行為、例えば「活動日記を書く・みまもり機能を使う・いいねやコメントをおくる」といった行為が行われてきたのですが、それらはユーザーさん自身のモチベーションで成り立っていました。

プラットフォームの運営者として「他者への貢献」を見える化したり、貢献したユーザーさんへ価値を還元する仕組みが必要だと感じていました。それを実現する手段が循環型コミュニティポイント「DOMO」になります。

YAMAPをどう使うかは、ユーザーさんの自由です。しかし、TwitterやfacebookなどのSNSで起きているネガティブな事象を見ていると、運営側が「サービスを通じて、こういう世界を目指していきます」というビジョンや指針を示さないと、プラットフォームは無法地帯になる可能性があります。DOMOという仕組みを通して、YAMAPというサービスはどういう行為を推奨するのか、どういった行為が他者に喜ばれるのか、一定の目安をつくっていけたらと考えています。

YAMAP代表 春山慶彦

ーーよくあるポイントとの違いはなんですか?

DOMOはお買い物をしたら貯まる一般的なポイントや、国の通貨とは価値設計が根本的に異なります。違いはいくつかあるのですが大事な点を挙げるとすると、一つは自分のためでなく人のために使う「利他的」なポイントだということです。もう一つは、使用期限が3ヶ月で、短いこと。これは「貯めるのではなくおくることや支援すること」に重きを置いているためです。

DOMOと一般的なお金・ポイントとの違い

「利他的な」行為をすれば、DOMOが自然と貯まる。DOMOを持っている人は「共感・感謝・応援」の文脈でDOMOをおくり合える。YAMAP内でDOMOが循環していけばいくほど、利他的な行為や共感・感謝・応援のやりとりが増えて、プラットフォームがより健全になっていく。プラットフォームが健全になることで、山に行く人が増え、山へ行く回数も増える。そんな好循環をつくっていければいいなと思っています。

DOMOは貯めるよりも、おくること・使うことに価値がある

ーーDOMOはどういうときにもらえて、どういうときに使えるのですか?

例えば「山に行った・活動日記を保存した・みまもり機能をONにした」などのように、他者やコミュニティに貢献する行動をすると、YAMAP運営側からユーザーのみなさんへDOMOをお渡しします。

これだけ聞くと飛行機の「マイレージシステム」のようにも捉えることができますが、DOMOはユーザーさん同士でおくり合うことができます。ここが、マイレージと異なります。「活動日記が参考になった、ありがとう」とか「素敵な山登りをしているので応援します」とか、共感・応援・感謝の気持ちと一緒に、他のユーザーさんへDOMOをおくることができます。DOMOという名前も、感謝や挨拶の場面で使われる「どうも」からとりました。

「もらう」「おくる」の場面は、順次増やしていく予定

DOMOの細かい仕様や具体的な利用方法はこちらをご覧ください >>

DOMOは自分たちの手で山を守ることにつながる

ーー「もらう・おくる」以外に、DOMOでできることはあるのですか?

あります。貯まったDOMOは、ユーザーさん同士でおくり合えるだけでなく、「どんぐりの苗」に交換するなど、山の保全活動を支援できる仕組みになっています。

ーーどんぐりの苗と交換?どういうことですか?

前提のお話をさせてください。

今、私たちが登らせてもらっている山々は荒廃が進んでいます。日本の国土の約7割は森林と言われていますが、その9割以上はスギ・ヒノキといった針葉樹の人工林です。植林された後、放置されたままの山も多く、そういった山は土壌が弱いため、土砂災害のリスクが高くなったり、山の保水力が落ちています。

地域によっては、スギ・ヒノキといった人工林は、その役割を終えているとも言えます。一定程度の人工林は感謝をしつつ伐採し、その土地本来の広葉樹の森につくりかえていく必要があるのではないかと、各地の山を歩きながら考えていました。

また、自然の維持管理やインフラ整備を行政だけに任せる時代はもう終わったと思っています。これから経済が縮小し、国だけでインフラを整えることはより難しくなっていくでしょう。となれば、山で遊ばせてもらっている私たち登山者が、自分たちで自然を維持・管理していかなければなりません。

とはいえ、一人でできることには限りがあります。そこで同じ趣味を持つ人同士が共に助け合う「共助」の仕組みがつくれないか、ここ3年、ずっと考えてきました。一人でやる「自助」と、国や自治体がやる「公助」のあいだに「共助」があります。共助を通して山を手入れし、豊かな山づくり、森づくりに貢献できたらと考えています。

YAMAPはこれまでも山小屋支援プロジェクトなどを通して、山岳・登山環境が抱える課題にアプローチしてきました。しかし、それらはあくまでも局所的な対応でした。今(2021年6月現在)、YAMAPのダウンロード数は250万ほどです。自然を愛する人たちの力を束ねて、山を豊かにする恒常的な取り組みができるのではないか、と考えました。

そして辿り着いたのが、DOMOいう循環型コミュニティポイントと、どんぐりの苗に交換できる仕組みです。

一定量のDOMOとどんぐりの苗1本を交換できます。どんぐりの苗に交換していただけたら、林業に携わる私たちのパートナー企業が、はげ地・荒れ地になっている山にどんぐりの苗を植えてくれます。DOMOというデジタルなコミュニティポイントが、どんぐりの苗というリアルなモノに変わり、山の再生につながるのです。

ーーなるほど。少しずつ理解ができてきました

そもそも、どんぐりとは広葉樹の果実です。どんぐりの苗は、その土地に元来生えている広葉樹から育ててつくります。もともと日本の森は常緑の広葉樹だったということが研究でも明らかになっています。外来の木ではなく、その土地のどんぐりを植えることは、本当の意味で森を再生させることにつながります。また、広葉樹の森は山の保水力を高め洪水を軽減したり、地滑りを抑えてくれます。

エコといえば「プラスチックを減らそう・温室効果ガスを減らそう」といった引き算の施策ばかりが注目を集めていますが、森をつくることは、足し算のエコ活動であり、SDGsそのものです。気候危機が高まっている今、森を手入れすること、山をつくりなおすことが急務です。山の恩恵を受けている私たち登山者・アウトドア愛好者が、山を豊かにする。山を再生する取り組みには、深い意義がありますし、今こそ取り組まなければいけないことだと感じています。

ーーどんぐりの苗はどこに植えられるのですか?

第1弾の植林地域は和歌山県田辺市、熊野古道がある場所です。どんぐりの苗をつくり植えてくれるのは、このエリアで新しい林業を実践している株式会社中川のみなさんです。

株式会社中川の植林風景

和歌山は紀伊国(きのくに)であり、「木の国」です。熊野本宮大社に祀られているスサノオノミコトは「林業と植林の神様」でもあります。古くから、熊野本宮に詣でるときは苗木を持参し、お供えするしきたりがあったそうです。YAMAPが「苗を植え山を豊かにする」取り組みを始める場所として、田辺や熊野はぴったりな場所だと感じています。

他の例にはなりますが、サクラで有名な吉野山も、参拝者がサクラの苗木をお供えすることで、“一目千本”という桜の木々が見渡せる絶景がつくられたそうです。登山者や参拝者が山を手入れし、育んでいく文化が、日本にはもともとあったんですね。DOMOの取り組みは、その文化の再興でもあります。

一目千本の吉野の風景

ーーとはいえ、植林にもお金はかかるはずです。その費用はどうするのでしょうか?

YAMAPが負担します。これに関しては事前のユーザーテストの中でもさまざまなご意見をいただきました。熟考を重ねた結果、山の再生は私たちYAMAPにとっても大事なテーマであり、DOMOを通してYAMAPをより良いプラットフォームとしていきたいという考えから、先行投資と捉え、費用を拠出していきます。

ーー最後に、今後の展望について教えてください

植林活動に関して、田辺や熊野に限らず、水俣、英彦山、栃木や群馬など全国各地域に広げていきます。また、DOMOで支援できる取り組みは、どんぐりの苗だけでなく、登山道整備やバイオトイレの設置など、順次増やしていく予定です。

DOMOはユーザーのみなさんと一緒に育てていく、循環型コミュニティポイントです。社会的に見ても新しい取り組みであり、チャレンジになります。試行錯誤しながら「支援し合う関係」と「共助の仕組み」を、ユーザーのみなさんと一緒につくっていきたいと思います。

いろいろとお伝えしましたが、DOMOがリリースされたら難しく考えず、まずは使ってみて、楽しんでもらえると嬉しいです。

DOMOの細かな仕様などについて

DOMOの細かな仕様や具体的な利用方法についてはこちらをご覧ください

DOMOをつくるにあたって、参考にさせていただいた書籍(敬称略)

河邑厚徳『エンデの遺言』
新井和宏、高橋博之『共感資本社会を生きる』
影山知明『ゆっくりいそげ』
山口周『ビジネスの未来』
近内悠太『世界は贈与でできている』
富山和子『森は生きている』
内村鑑三『デンマルク国の話』
安宅和人『シン・ニホン』
濱口秀司『SHIFT』
中村哲『医者、用水路を拓く』
養老孟司、岸由二『環境を知るとはどういうことか。流域思考のすすめ』
宮脇昭『森の力』
宮脇昭『三本の植樹から森は生まれる』
木村秋則『すべては宇宙の采配』
プロジェクトX挑戦者たち『えりも岬に春を呼べ 〜 砂漠を森に・北の家族の半世紀』

Special Thanks 〜 DOMOを構想するにあたってアドバイス、お力添えをくださった方々〜

新井和宏さん、ピースコイン阿部さん、株式会社ポケットチェンジ、株式会社中川

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