投稿日 2020.11.05 更新日 2020.11.06Sponsored

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「マイ・ファースト・パタゴニア」にふさわしいタフな一着|ナノ・パフ・ジャケット

2010年に発売されたパタゴニアの「ナノ・パフ・ジャケット」。化繊インサレーションの定番として長く愛されてきました。発売時からこのジャケットを愛用している全天候型アウトドアライターのホーボージュンさんが、変化の激しいアウトドアウェアの世界で変わらず「定番」としてあり続けている理由を教えてくれました。

目次

見た目にはわからない革新的な進化

パタゴニアの大定番であり、世界中のアウトドアーズマンから愛されている「ナノ・パフ・ジャケット」。この人気者がこの冬モデルチェンジを受けたという。10年来のナノパフファンでもある僕は、その変貌を確かめるべくパタゴニアストアへ向かった。きっと革新的な進歩がされているに違いない。今度はマイクロ・パフよりハイスペックなんじゃないのか……。そんな期待を抱いていたのだ。

ところが新作を見て驚いた。まったくどこも変わっていない。デザインはもちろん、レンガブロックのようなステッチも、中綿の厚みもそのままだ。半信半疑のまま着てみたが、フィット感も着心地もまったく変わっていなかった。

「ナニこれ? どういうこと?」

スタッフに変更点を聞いてみると、中綿の製造方法が少し変更されたのだという。

「ナニ? それだけ?」

そう、それだけ。

それ以外はまったく変わっていなかった。デザインも、素材も、スペックも。しかし製造時に排出される二酸化炭素排出量は従来の半分になり、地球環境に対する負荷は大きく軽減されたという。それは大いなる進歩であり、世界に向かって知らしめるべきビッグニュースだそうだ。それをきいて思わずにやけてしまった。それは“いかにもパタゴニアらしいやり方”だった。

雪山でも山を下りてもずっと

初代のナノパフが登場したのは2010年の秋冬シーズンだが、僕が使い始めたのはその1年前、2009年の冬のことだった。ローンチに先駆けてフィールドテストと記事制作をするため、アメリカからサンプルを送って貰ったのだ。色はゴールドに近い黄色で、プルオーバースタイル。サイズはMで全身にレンガの壁のような見慣れないミシンステッチがかけられていた。

「へんなの……」

最初の印象はかなりビミョーなものだった。なにしろ薄い。当時愛用していたふんわりしたダウンセーターに比べるとまるでせんべい布団みたい。表地には20デニールの高密度マイクロファイバーが使われ、見た目がシャリシャリしていてまるで宇宙服みたいだった。

さっそく着てみたが軽すぎてなんとも頼りない。ポケットは胸ポケットひとつでハンドウォーマーすらない。スタッフは「これは高所クライミングのためのミニマルなデザインで、寒冷で湿潤な雪山ではフリースやダウンを超える存在になる」と力説したが、正直ぜんぜんそんな気がしなかった。

ところが、いつのまにかナノパフは僕のメインアイテムになっていた。コイツは重量が300gにも満たず、ポケットにたくし込むと掌にのるほどコンパクトになった。だから携行がまったく苦にならず、いつもバックパックに放り込んでおいた。

この年の冬、僕はワンボックスカーにキャンプ装備一式とスノーボード、そして愛犬を積み込み長い長いスノートリップに出かけた。パウダースノーを求め山から山へ。ベースにしていた北海道のニセコではマイナス20℃を下回る厳寒のなかで車中泊をし、ボードを背負って雪山に登っては滑る毎日を繰り返した。

写真:Takahiro Nakanishi

北海道の滑り手は厳冬期はダウンウェアを着たまま滑る人が多かったが、ナノパフは濡れてもぜんぜん大丈夫なので雪の中ではダウンより使いやすかった。シンプルなデザインはビブの下に着込むのにも使いやすかったし、派手に転んで雪まみれになっても気にならない。中綿は薄かったが高密度な表地のおかげで冷気をしっかり遮断してくれたし、上にジャケットを着込めばグッと保温力が上がった。

またフリースのようにかさばらず、重ね着もしやすいので、山を下りたあとも僕はナノパフを着っぱなしだった。これを着てメシを食い、これを着てクルマの運転をし、夜はそのまま寝袋に潜り込んだ。雪かきをするときも、MSRで棒ラーメンを茹でる時も、凍てついた森の中へ犬の散歩に行くときもずっと着ていた。

長旅には手入れが簡単なのがなにより嬉しかった。僕のナノパフは泥やコーヒーやワックスの削りカスや寝る時にグリグリと鼻っ面をこすりつけてくる犬のヨダレでそこらじゅう染みだらけだったが、週に1回、倶知安駅前のコインランドリーに行って洗濯機に放り込めば魔法をかけたようにキレイになった。脱水だけでも充分だったが、乾燥機にかければものの数分で乾いてしまう。僕は焼きたてのホットケーキのようにポカポカなナノパフを着て、氷点下の街を歩くのが好きだった。

P.U.R.Eテクノロジーを使ってCO2排出を削減

それでは最新のナノパフジャケットを詳しく見ていこう。まずは今回の目玉であるプリマロフト中綿だ。見ての通りプレート状の綿を表地にミシンで縫い付けてあり、裏地は当ててあるだけだ。

裏地を切って中のプリマロフト中綿を見てみると…

今季モデルに使われているのは「プリマロフト・ゴールド・インサレーション・エコ」という素材だ。原料には消費者から回収されたリサイクルポリエステルを100%使用し、さらにパタゴニアとプリマロフト社が共同開発した新しい製造技術P.U.R.E(Produced Using Reduced Emissions)を導入することで、二酸化炭素排出量をこれまでの52%も削減している。

このP.U.R.Eテクノロジーのキーとなるのが酸化型バインダーの開発だった。プリマロフトのような化繊中綿は、マイクロファイバーを積層して成型する際に「バインダー」と呼ばれる接着材を使用する。これを素材に噴霧し巨大なオーブンに入れて熱することでバインダーが熔けファイバーどうしが強固に固着するのだ。

しかしオーブンの加熱には莫大な火力が必要になり、大量の二酸化炭素を排出してしまう。そこでそのバインダーを酸化型タイプにすることで、オーブンを使わず、空気にさらすだけでファイバーを接着させることができるようになったのである。

この製法による削減量は年間約231トンにもなり、これをクルマでの炭素排出量にすると約103万km分(地球25.7周分)になる。気候変動抑止のためには非常に大きな数値なのだ。

P.U.R.Eテクノロジーは2021年まではパタゴニアが独占使用権を持つが、以降は広く公開する。二酸化炭素削減のために、より多くのメーカーに使って貰いたいとの狙いだ。

ナノパフジャケット4つの特徴

独特のスリーブジョイント方式

ナノパフジャケットはとてもシンプルな製品だ。パッと見て目を引くようなインパクトも、驚くようなギミックもない。しかし随所にパタゴニアらしいこだわりが見て取れる。

たとえば両腕の取り付け方法。通常の洋服は手を下ろした状態でアームホールまわりが最も美しく見えるようにデザインされている。ところがパタゴニアはまったく逆で、手を上に上げた状態をデフォルトにデザインしている。両手をバンザイしても裾がズリ上がってこないのだ。

これはもちろんクライミングのムーブやピッケルワークを意識したもの。逆に手を下ろすと脇まわりがわずかにもたつくことになるが、アウトドアの道具としてどちらが正しいかは言わずもがなだろう。

かつてはこのデザインを「Yジョイント・スリーブ」と呼称していたが、いまでは当たり前になっているせいかカタログのスペック欄にも記載されなくなった。パタゴニアをパタゴニアたらしめているディテールだ。

コードロックの処理

風雪の吹き込みを防ぎ、腰回りを暖かく保つために裾にはショックコードとコードロックが備わっている。その取り付け方にもパタゴニアらしい工夫がされている。

通常は片手でコードロックを押さえ、もう一方の手でショックコードを引き絞るように操作する。しかしナノパフの場合はロック用のプラスチック部品が裾に縫い付けられていて、片手でコードを引っ張るだけで簡単に引き絞れるようになっている。これはクライミング中や片手にギアを持っている時にも素早く操作できる工夫である。

さらにコードのエンドは内側のループに留められていて、余ったコードがウエアの内側にたくし込めるようになっている。これはカラビナや登攀用のギア、木の枝などが引っかからないための安全策。細部の気配りがハンパないのだ。

袖口のパイピング


袖口のパイピングは80年代からフリースパイルなどに使ってきた手法。従来のゴムシャーリングのように手首周りが窮屈にならないし、ベルクロを用いたカフのように作業の邪魔にならない。普段は緩やかに手首周りを保持してくれるが、ロープワークをしたり水仕事をする時には簡単にまくり上げることができ、そのままの位置でぴたりと保持される。シンプルだが合理的なスタイルだ。

内ポケットに収納できる


内ポケットにたくし込むことでコンパクトに収納可能。隅にはカラビナをつけるループが付いていて、ハーネスやバックパックにぶら下げておくことができる。休憩時や行動中に急な天候悪化に見舞われてもすぐに着用できるのがいい。付属のスタッフバッグをつけることなく、自己完結で収納できる点がとてもクール。

マイ・ファースト・パタゴニアに

さて。ここで誤解のないように言っておくが、ナノパフはけっして暖かくはない。「これさえあれば雪山も大丈夫!」というタイプのモデルではない。厳冬期のビバークにはしっかりした保温着が必要だし、おなじサイズ感ならダウンセーターやマイクロパフのほうが暖かい。

でもナノパフにはそれを超越した魅力がある。それは「なんにでも、どこでも使える」ということだ。タフだから状況を選ばない。洗えるので汚れが気にならない。

結局僕は10年間、激しくナノパフを使い続けた。夏の北アルプスの縦走登山も、泥だらけの残雪期登山も、海外の長期遠征も、シーカヤックでのアイランドホッピングにも連れて歩いた。瀬戸内海300kmを7日間かけて無補給横断した時には168時間一度も脱がなかった。汗と海水と冷たい雨でグシャグシャになった哀れなナノパフは、無人島に上陸するとグリグリ絞り上げられ、焚き火で燻され、強制的に乾かされてまた任務に戻った。また今年の2月に氷点下14℃の燧岳で雪中ビバークしたときには、肉球が凍り付いて身動き出来なくなってしまった可哀想な愛犬のために丸めてベッドにしてあげた。

築50年を超える古民家をリノベ中のホーボージュンさん。現場には電源も暖房もなく、作業用ビブの下にナノパフ・プルオーバーとパンツを着込んで作業していたそうだ

アウトドアだけではない。クルマのオイル交換、鉄作の錆取り、漁師の手伝い、大工仕事など、普段の暮らしにもガンガン使った。釘や針金にひっかけてかぎ裂きができても、ダウンのように吹き出さないからいい。ダクトテープを貼り付ければそれで終わり。オイルも、ペンキも、ミートソースも、担々麺も、なんでも来いだ。おかげで僕の黄色いナノパフはひどい見た目になってしまったが、それでもまだ現役だ。これほどタフに使えるウエアを僕はほかに知らない。

もし君がタフでオールマイティに使えるインサレーションを探しているのなら、あるいは憧れの(だけどちょっとだけ高価な)パタゴニアのアイテムを検討しているなら、僕はだんぜんナノパフをお薦めする。“マイ・ファースト・パタゴニア”としてこれほどふさわしいアイテムはない。

少なくとも向こう10年間に渡って、君と君の冒険行を支え続けてくれるはずだ。

カラーバリエーションもさまざま。もっと詳しく知りたい方は、patagonia公式HPへ

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