12:38
29.3 km
2472 m
【丹沢山】めくるめく紫春の尾根
塔ノ岳・丹沢山・蛭ヶ岳 (神奈川, 山梨)
2024.04.20(土) 2 DAYS
にっぽん百名山二十一座目。 春爛漫の折、遠くから何度も見た丹沢山地へ。 最寄り駅沿線では小田急線と京王線で行ける唯一の日本百名山である。 大倉登山口から鍋割山稜ルートで巻き鍋割山へ、その後主脈ルート合流にて塔ノ岳へ、稜線伝って丹沢山頂のみやま山荘にて宿泊、翌日に最高峰蛭ヶ岳を登頂し焼山方面へ下山する贅沢なコース。 事前調査では色々聞いており、猛暑になる前かつヒルがいないうちに行きたかった。 【1日目】 2日間を通して天気予報は曇天の後、悪天候との予報。 空に不安を覚えながらも年明けやっとの本格登山に一抹の期待を抱きながら相模の地を南へ駆け抜ける小田急線の窓を覗く自分がいた。 飯田橋始発で行き、小田急線渋沢駅には6:39着。 小田急線渋沢駅6:48発神奈川中央バス大倉行きに乗れば、大倉登山口にて7:05に登山開始できるが、祝祭日で増便されており、座るため、次発に乗った。 大倉登山口到着。 かの有名な大倉尾根(通称:バカ尾根)は最初の目的地、鍋割山へは繋がっておらず、次回に登ってみよう。 大倉から本格的な登山道までなだらかでのどかな風景が続く。 雲が多いが、晴れ間がしっかり見えていた。木漏れ日注ぐ川沿いの西沢林道は涼しく、とても清々しい。 ちょうど半年前に奥穂へ登った途中路、梓川を左に臨む上高地から横尾までの道に酷似しており久しぶりの会話も懐かしく和気藹藹の二人歩の進みである。 途中に水置き場がある。置いてあるペットボトル群にはそれぞれ水が入っており、ボランティアでボトルごと鍋割山荘まで歩荷協力とのこと。ポリタンクもあり、運んでいける強靭な体力の持ち主がいるのかなと思った。 ※山荘まで歩荷する水の置き場であり水飲み場ではない。 二俣を過ぎると、本格的な登山道に入り急登が突然始まる。「鍋割山3」と立て看板がある場所からだろうか。 大倉尾根とは違う巻き道ルートなので、さほど辛くはないだろうと高を括っていたのが大間違い。痺れる九十九折登りがひたすら続く。 後沢乗越より最後の急登。距離2キロにて、一気に標高600m上げる過酷な登山道。 風景もなく無骨な閉ざされた樹林帯中の登りでメンタルも些かやられる。 鍋割山頂着。 鍋割山荘にて指折りの名物山小屋食「鍋焼きうどん」を頂く。 10時半時点で、既に十人ほどの列が並んでいた。 購入までの過程で少しコツがいる。 ・テラス席のみ。席を確保しザックを置いてから、代表者のみ小屋入口、右壁に沿って並ぶ。 ・1500円現金のみ。並んでる間に注文を聞きに来るので個数を伝える。 ・出来上がったら中に呼ばれるので取りに行く。 ・食べ終わったら、小屋の中の返却口に置く、それ以外目的で小屋に入らない。 小屋番の対応も良かったし問題なく、私達は気持ちよく名物の鍋焼きうどんを頬張れた。 かぼちゃ、長ネギ、油揚げ、天ぷら、なると、温泉卵、えのき、椎茸の具沢山で豪華だった。 天気も良く気持ち良い。 芝生もあり、昼寝をしている登山客もいた。 鍋割山出発し、大倉尾根との分岐である金冷シへ。 ここからが丹沢三峰尾根の眺望を臨みながらの本格的な縦走路となる。 右側から真っ直ぐ前方に尾根が伝い真正面の丹沢山と蛭ヶ岳に続いている。 真正面に見えるから遥か遠くと感じられ気が遠くなりそうだった。 丹沢は全体的によく整備された登山道だ。 木道も丁寧に敷かれている。 しかし丹沢の木道特有の印象として、歩幅と木道の間隔が何故か合わない。調子よく歩を進めようと思えば木道に乗ったり、落ちたり、あるいは滑ったりの繰り返し。この「脚と木道の不協和音」が最後までずっと続いたので今山行は膝への負担がこれまでで一番大きかったような気がする。果たして下山時には膝に痛みが出ていた。 向き不向きもあるのかもしれない、私はどちらかというと木道や階段は決まり敷かれた道筋に足が拘束されて、自由に歩を進められないもどかしさが否めない。 眺望は尾根だけでなく、各山の山荘もくっきり見えていたのも特徴である。 金冷シ着。 大倉尾根との分岐であり、たくさんの登山客が登ってくる。 到着直前に横から壮大な大倉尾根が見えた。斜め一直線にすごい角度だ。 塔ノ岳までもう一踏ん張り。 塔ノ岳山頂にある尊仏山荘が見えてきた。 塔ノ岳山頂着。 景色が大変に秀逸。 後に泊まるみやま山荘でも他の宿泊客と話題になったが、尊仏山荘の外トイレをはじめ、丹沢の山荘外トイレ全体は使用済みトイレットペーパーは全て持ち帰り必須となっていることに驚いた。よって、トイレにはペーパー入れ持ち帰り用ポリ袋が設置されている。 しかし密閉性保つためにも、自宅からジップロックなどを持ってくる方がベターだ(みやま山荘の宿泊者専用内トイレはペーパー入れ箱設置あり持ち帰り不要)。 塔ノ岳からは気持ちの良い稜線歩きが続く。 前方には丹沢山と蛭ヶ岳、西には富士山を遠くに丹沢の西連山がそびえ、常に全体に霞がかかっているのが逆に趣深い。 丹沢山山頂到着。 どの山頂も広場があり開放感溢れる。 山頂標識の側に仏像があり、背後に富士山が開けている。 この場所は、本当に神聖な気持ちになり気が付けば取り憑かれたようにふと立ち止まっていた。仏様と相俟った富士山がなんとも神々しい。 丹沢の地と登山者を天壌無窮から守っていてくれているようだ。 今でも写真をもいつまで眺めていたい心持ちである。 本日宿泊するみやま山荘は、丹沢山山頂に佇むロッジ風の趣あるこじんまりした建物である。 室内は暖かく綺麗で、艶出しされた建具はじめ木調インテリアの数々、雰囲気も落ち着いており疲れきった気持ちが和らいでいた。 スタッフの対応も大変良い。チェックイン時では、物腰の柔らかい小屋番に丁寧に説明頂いた。そして登山道の道な道案内も詳しい。 計画では、大倉登山口からこの先の蛭ヶ岳まで日帰りピストンする選択肢(いわゆるオークラ・ヒルトン)もあったが、途中行程ここ丹沢山到着14時時点では危険との情報もいただけた。 ヒルトンするなら、丹沢山に遅くとも12時過ぎに到着していることが望ましいとのこと。 料金は、夕朝食付き宿泊費9000円+トイレ協力金100円=9100円現金のみ。 宿泊者専用屋内トイレも大変清潔で綺麗である。 余裕持った計画だったので早めに到着。 夕食の時間まで周辺を散策し、広場でキンキンに冷えた缶ビールと純米酒「丹沢山」をいただく。 心地よい日差しの中のお酒は渇きった身体中に染み渡る。 夕食は鴨肉中心の和食。陶器も立派なもので、まるで高級旅館に来たような心持ち。 純米酒「丹沢山」とともに。 頗る口に合う。 日も暮れる頃蛭ヶ岳方面へ少し足を伸ばしてみる。 暗くなってきたにもかかわらず紫がかった西丹沢山群の連なりと富士山が鮮明に見え、山紫水明とはこのことだと思わされる丹沢の大観。 蛭ヶ岳方面もしっかり見え、恰も水墨画のようだった。 久しぶりの本格登山であり身体が疲労困憊、みやま山荘宿泊を選んで正解だった。 布団もふかふかでほろ酔いもあり20時には就寝。 【2日目】 予報通り悪天候で残念ながら朝日は見られなかったが僅かに朝日にたなびいた雲が垣間見られた。 ここは朝食も本気である。五目ご飯と味噌汁、美味し過ぎて2杯もおかわりしてしまった。 夕食も含め全体的におふくろの味、薄味だが出汁を上うまく利かせ素材の旨味を引き出しているようで料理の技術が非常に高い。 丹沢最高峰蛭ヶ岳へ出発。 雨も降らず天気も何とか持った。稜線もはっきり見えながらの縦走が継続できて本当に運がいい。 雄大な丹沢尾根を眺めながら木道のアスレチックが続く。 蛭ヶ岳への難所は1ヶ所。 岩に登り鎖を使って下る鬼ケ岩である。石鎚山の天狗岳を思い出す。 去年の奥穂以来、高度感への免疫維持するトレーニングはしてなかったので脚がすくみ恐怖で一瞬動けなかった。やはり山トレは体力のみならず、普段からも恐怖感じるくらいの高い所に登っていることが重要だなと思う。 螺旋階段のような木道にて歩を進めた先、ついに蛭ヶ岳山荘が見えてきた。 蛭ヶ岳山頂着。 天気が徐々に悪くなっており限られた眺望。 しかし上雲も下雲の真ん中に垣間見せたふじの山は見たことがなく神秘的で珍しい。 たなびく雲の向こうに、反対側からこちらをいつも見ていた高尾山があるのだとノスタルジーに浸る。 遮るものはなく、天気がいい日は最高の眺望になりそうだ。 蛭ヶ岳山荘名物「蛭カレー」は早く到着し過ぎたのもあり受付していなかったが次回是非とも頂きたい。 下山開始で姫次へ。 途中で鹿の群れに出会う。 野生の鹿はのびのびとしてて観察するだけで和む。こちらが来たかと親子同士で警戒しあってるのも頼もしい。 姫次到着。 焼山から蛭ヶ岳へ登るコースの一服地である。 ベンチがあり展望が良い。 ここを起点に縦走路外の袖平山まで片道20分なので行ってみることに。これがかなりのアップダウンの道。袖平山には展望はなくピークハントを目指す人のみおすすめ。 焼山登山口へ下山歩をすすめる。 慎重に行けば問題ないと思ったが間違い。焼山登山口寄りのこちらの縦走路は大倉登山口方面と比べれば人だかりも少ない、ということは登山道整備もそれほど期待してはいけないということだ。次なる黍殻山への登山道は急登でザレ場を真斜めに登る箇所多数、雲取山の芋の木ドッケを思い起こさせる。下山も尾根がない道上に樹木の根っこが絡みついた所を塔渡りするような危険箇所多数。 こういう所で事故が起きることは警戒していたので十分に神経を注ぎながら進んだ。 主脈最後の焼山着。 ここも下山道が荒く何よりもこれまでアップダウン続けた膝への疲労が重なりキツい。急な箇所でロープを伝う箇所、単調な九十九折下りがひたすら続く。焼山から登ってくる方が肉体的にもメンタル的にも辛いのではないだろうか。 のどかな相模原の村風景が見えてきた。 秦野から相模原まで歩いたなんて今思うと凄い経験だ。 登山道から一般道へ抜ける時、ゲートを抜ける瞬間にしびれるほどのやりきった感が身体を心地よく駆け抜けるのはやはり登山の醍醐味のひとつだ。 焼山登山口バス停着。 祝祭日の昼以降は16:36発のバスしかないのでこの時間を目処に下山計画を立てた方が良い(平日は11:01、13:16があり)。 丹沢は近くで遠かった存在。 念願の縦走が達成できて感無量の他ない。 全く違う風景やドラマがまるでコマ送りのように今でも脳裏に焼き付いている。