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熊野古道中辺路3 赤木越・大日越の写真

2024.05.05(日) 09:18

猪鼻王子も昨日お参りしました。

この写真を含む活動日記

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10.9 km

667 m

熊野古道中辺路3 赤木越・大日越

熊野古道 中辺路①(紀伊田辺駅〜熊野本宮大社) (和歌山)

2024.05.05(日) 日帰り

熊野古道中辺路を歩く企画、第3回目です。 前回は発心門王子や伏拝王子を経由し、本街道を歩いて無事に熊野本宮大社に到着しましたが、本宮大社に向かう古道は実はもう1つあります。船玉神社から分岐し、赤木越で湯の峰温泉に下り、湯の峰温泉から大日越で本宮大社に至るルートです。江戸時代頃にはこちらのルートで熊野本宮大社に向かうのが一般的であったようです。 このルートが一般化した理由としては、湯の峰温泉の存在が大きいと思われます。湯の峰温泉は大阿刀足尼(おおあとのすくね)によって発見されました。大阿刀足尼は、饒速日 ― 宇摩志麻遅 ― 味饒田 ― 神日子 ― 麻佐良 ― 久尼牟古 ― 大由乃支 ― 大阿刀足尼と続く物部氏の人物で、13代成務天皇の頃に熊野国造となり、その子孫が熊野本宮大社社家を務めました。湯の峰温泉は開湯1800年という長い歴史を持ち、日本最古の温泉とされています。 湯の峰温泉と熊野本宮大社は非常に深い関係にあります。毎年4/13-15に熊野本宮大社の例大祭が開催されます。祭は湯登神事(ゆのぼりしんじ)から始まります。この神事ではまず、神の依代である2-3歳の稚児が湯の峰温泉で身を清め(湯垢離(ゆごり)といいます)、温泉粥をいただきます。「あづまや」さんと「伊勢屋」さんが隔年交代で湯垢離の場を提供し、祭のご奉仕をしたそうです。その後、湯峯王子で稚児が八撥舞(やさばきまい)を奉納すると、稚児に神霊が憑依するので、以降は神聖な稚児は例大祭が終わるまで地面におろしてはなりません。その後、ウマ役の父兄に肩車されながら熊野古道大日越えを歩き、道中の月見丘神社でも八撥舞を奉納し、熊野本宮大社に至りました。大日越は距離は短いものの急登・激下りの連続するワイルドな道でしたので、幼子とはいえ肩車をして峠を越えるのはさぞ大変なことと思います。 また、熊野はハンセン病(らい病)との関係の深い土地でもあります。ハンセン病は結核菌の仲間である「らい菌」が引き起こす感染症です。皮膚に感染すると、しこりが出来たり顔や四肢が変形したりし、見た目が非常に悪くなります。末梢神経に感染すると、感覚障害や運動麻痺を起こします。しかし、内臓障害を生じることはないため、命を落とすことは稀とされています。中世では、ハンセン病は前世の悪業の報いでかかる病気だとされていたため、ハンセン病を発症すると、問答無用で家を追い出されたそうです。熊野はハンセン病患者をも回復させることができる強力な浄化力をもつ場所だと考えられ、湯の峰温泉には大勢のハンセン病者が治癒の奇跡を求めてやってきました。また、別の本には、死に場所を求めてハンセン病患者が熊野を目指したとも書かれていました。ハンセン病患者は忌み嫌われた一方で、最も穢れた存在であるがゆえに、彼らに施しを与えることは最高の善行であると考えられていました。 上記を象徴するように、湯の峰温泉には小栗判官と照手姫の伝説が残されています。以下、熊野観光協会さんのホームページより引用します。「およそ600年の昔、戦に敗れ常陸の国に逃れた小栗判官は、相模の大富豪横山家の長女、照手姫と出会い恋におちます。しかし二人の関係に立腹した横山家は、小栗判官に毒を飲ませ殺してしまいます。地獄に落ちた小栗判官は閻魔大王の同情をかい、蘇生への道として餓鬼阿弥(=ハンセン病患者)の姿に変えられ現世に送り返されました。哀れな姿で倒れていた小栗判官は通りかかった高僧に助けられ、木の車に乗せられて熊野の湯の峰を目指します。小栗の首には高僧により「一引き引いたは千僧供養、二引き引いたは万僧供養」と書かれた札が下げられました。一方、照手姫は恋人を失った上、兄弟の策略により流浪の身となっておりました。ある時、首から札を下げた餓鬼阿弥を見て、亡き小栗判官の供養になればと湯の峰へ参詣の旅に旅立ちました。長い旅路の果て、ついに湯の峰に辿りついた照手姫は餓鬼阿弥を49日間つぼ湯に浸けて湯治させたところ、なんと元の小栗判官の姿に戻りました。」蘇りの地、熊野にふさわしい伝承だと思います。 最後に、温泉もまた別格であることを付記しておきましょう。泉質はこの地域では珍しい硫黄泉で、温度は90℃を越えます。飲泉も可能で、温泉懐石料理や温泉コーヒーなども楽しめます。温泉を使うことで料理の味がまろやかになるそうですよ。狭い谷に温泉宿がひしめき、風情ある温泉街が広がっていますので、一度は宿泊することをオススメします。また、世界遺産に登録されている「つぼ湯」や、温泉卵や茹野菜を作る「湯筒」、公衆浴場などもありますので、宿泊できなくても、一度は訪れて欲しい場所です。 【前泊】温泉民宿やまね ・ 住所: 和歌山県田辺市本宮町湯の峯171 ・ 源泉かけ流しの硫黄泉で、日本最古の温泉とも。 ・ シャワーはなくカランのみ。お湯は温泉を使用。 ・ 温泉を用いた料理や温泉コーヒーが特徴。味が円やかになるようです。 ・ 洗濯機・乾燥機はありませんが、J-hoppersさんで有料で借りられます。 ・ 熊野本宮大社の氏子総代だとか。 【熊野古道中辺路シリーズ過去記事】 熊野古道中辺路1 滝尻~野中 https://yamap.com/activities/30029950 熊野古道中辺路2 野中~本宮 https://yamap.com/activities/31513446 熊野古道中辺路3 赤木越・大日越 本記事