甲斐駒ヶ岳〜残雪期リベンジ達成〜
甲斐駒ヶ岳・日向山
(山梨, 長野)
2024.03.30(土)
2 DAYS
昨年の3/10七丈小屋迄で撤退した残雪期の甲斐駒ヶ岳。前週の週末に天気予報を見ると翌週末の天気予報は晴れ(ただし木、金は雪)。ここから様々な情報収集を重ねに重ね挑戦を決めました。
結果、頂上を踏む事ができ大きな怪我なく無事下山。自分の登山経験の中でも大きく記憶に刻まれた山行となりました。
活動:2day
距離:17.9km
時間:18:00
消費kcal:4663kcal
累計獲得標高
上り:2551m
下り:2555m
以下、備忘記録
※長いです
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Day1
06:00 尾城川渓谷駐車場 行動開始
日の出も早くなりあたりはもう明るい
予報通り風が強い
駐車場から神社までの道で既に木の葉が回転しながら巻き上がっている
竹字駒ヶ岳神社で入山のご挨拶
ここから黙々と進む
08:10 笹ノ平分岐
5分休憩
08:45 昨年うなだれながら休憩した広場
昨年より50分ほど遅いペースで通過
休憩することなく進む
雪はしっかり積もっている
今年もベシャベシャ、ツルツル
加えて硬い雪と腐った雪の見分けがつかず不意の踏み抜きが多発してリズムが全く作れない
しかし前回晒された雨〜霙〜雪がないのは救いだった
10:30 刃渡り
強風が吹いている
しかし天気は快晴なので八ヶ岳、鳳凰三山、富士山まで見渡せ気持ちいい
(昨年はここで超吹雪いていた)
11:05 刀利天狗
昼休憩
カップラーメン🍜豚キム(タンパク質たっぷり)
12:20 梯子前の祠
道中ものすごい速さで後ろから颯爽と登っていった方がもう降りてきた
お話を聞くと日帰りで行けるところまで登る予定でアタックしたものの、テン場を越えた標高2500mほどのところでトレースなく雪のコンディション最悪で撤退とのこと
14:00 七丈小屋着
昨年より2時間ほどペース遅く到着
この日の入山パーティーは計8組のようだった
小屋泊は山岳会の方、月一回黒戸尾根に登られている方、海外の方、自分の4組、テン泊3組、日帰り1組
小屋の説明を伺った後は夕飯まで小屋泊の方々、たまに小屋のお兄さん達と雑談に花が咲き、色々な山の楽しみ方や甲斐駒の話を伺った
・残雪期は厳冬期より雪面の環境変化が激しく技術的難易度が高い事
・悪天候でここ暫く頂上まで行った人はいない事
・帰りの時間帯、気温変化で雪が腐ってる可能性がある事
・その他、ルンゼの進み方や過去の事故などなど
昨年登った日から9日後に起きていた雪崩→ https://snow.nadare.jp/news/2023/000075.html
2017年に起きたルンゼ滑落事故→ https://www.kaikoma.info/post/2017/04/23/%E3%80%90%E6%8B%A1%E6%95%A3%E5%B8%8C%E6%9C%9B%E3%80%91%E9%87%8D%E5%A4%A7%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%8C%E7%99%BA%E7%94%9F%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F
※小屋オーナー花谷さんの七丈小屋ブログ
拡散希望とあったので注意喚起のため転載
毎月黒戸尾根に来ている方は今回は頂上へはいかず下山の判断、山岳会の方はロープ持参でアタックとのこと
テン泊の3組はどう判断するか
色々雑談した結果、入山前の計画は日の出よりだいぶ前の時間から行動開始を予定していたものの、暗い中の雪崩ポイントをソロで進むには自分のレベルを超えてると判断
日の出前の空が明るくなり始めたタイミングでアタックすることに計画を変更した
17:00夕食
カレー🍛おかわり2回
その後再び雑談
ゆっくり過ごし明日の準備
20:00 消灯
就寝
Day2
04:00起床
朝ごはん(お弁当)お稲荷さん3つ
身支度、改めてデポする装備を見直しパッキング
05:10 行動開始
日の出前の夜明け
空が明るくなってきている
山岳会の方々は暗い時間帯で出発されていた
テン場を通過
3組ほどのうち身支度している様子が2組
1組は既にスタートしていた
テン場を越えるとすぐに昨日聞いた雪崩エリアへ
緊張しながら侵入する
トレースがありがたい
#感謝
雪はしっかり締まっている
裸の雪ルートではなくダケカンバ密集箇所を進む
05:35 日の出🌅
まだ雪崩エリアは抜けない
いつもは嬉しい日の出も気温が上がるので若干微妙な心境
息が上がらないよう慎重に進む
06:15 八号目
石碑の後ろに甲斐駒ヶ岳が聳えている
左手は鳳凰三山
オベリスクがくっきり見える
ここまで多少の踏み抜きはあったものの八号目以降踏み抜く頻度が増え始める
先行のテン泊の方が大岩あたりを通過しているのが見える
06:25 最初の大岩
夏道は左手を進むが冬道は右手を進む
06:35 岩が迫り出した鎖場
鎖を超えたところでピッケルを差し込み乗り越える
06:45 核心部 ルンゼ直下
ナイフリッジが出てきた
テン泊先行者の1組目の方が戻ってきた
戻りのタイミング的に撤退の様子
先に通っていただき
その後ナイフリッジを慎重にトラバース
ナイフリッジを超えたところで山岳会のお二方がいてロープを出しているところだった
後ろから後続のテン泊の2組目の方が合流
ここから不思議と交互にトレースをつけていくような流れに
1ピッチ目は山岳会の方が先行
2ピッチ目の途中で先頭交代
ここでまさかのタイミング
核心部、ルンゼ突入のタイミングで先頭となった
最初に登れる嬉しさと緊張感と混ぜこぜな心境
登り始めると右サイドは雪が既に腐り始めており蹴り込んでは踏めども雪が崩れ全然ステップが作れない
ピッケルを指しても緩くてテンションかかると下に崩れてしまう
こんな状態で1m登るのに5分くらいかかってしまった
苦戦も楽しめていたがここでけっこう体力を消耗してしまう
そんなおり合流したテン泊の方が交代を申し出てくれた
この交代するタイミングでルンゼ左サイド少しズレる
するとそこの雪はアイゼンがかかってくれた
すぐにかかりの違いを共有する
50cm横にずれるだけでアイゼンのかかりが全く違う
踏ん張りがきき、先ほどとは打って変わり2m登るのが1分ほど
ルンゼ上の岩まで来て右サイドに避けて先頭を交代をした
先ほどの5分のジタバタで呼吸が乱れている
呼吸整えつつ見上げるといよいよ二本剣が見える
先頭交代してくれた方が既に二本剣を超えていた
進む速度、体力共に素晴らしい
自分は自分と息整え再びゆっくり進む
07:25 二本剣 烏帽子岩
甲斐駒ヶ岳象徴の1つ
やはりかっこいい
夏季と違い雪が積もっているので岩の上部にも取り付ける
流石に危険なので岩は登らなかったがかなり二本剣まで近づく事ができた
07:35 二本剣の上
見晴らしのきく斜度がないところまできて一息
先頭交代したテン泊の方は写真撮影を堪能していた
ここでお互い自然とお声かけ
ルンゼでのやりとりの感謝や景色の素晴らしさなどを話した
と、ここで
僕は引き返しますが先に進みますか?と聞かれた
進みますと伝える
お互いここまで来たことにエールを送り合った
ここで冷静に状況確認をした
マイナスポイント
・残雪期のこの領域は初
・周囲はガスり始めている
・時刻は07:40(気温が上がり始める時刻)
・先行トレースなし
・冬道を探しながら進むので時間がかかる
・ルンゼの影響でエネルギーが少し切れてきている
プラスポイント
・ここまで来ても気力は充実している
・進行ルートは北側の山影を巻くので雪は硬め
・山影以外もガスり始めてるので直射日光が遮られ雪の緩みは少し遅くなりそう
・想定したより風は抑えめ
・装備は山小屋デポしているので非常に軽い
・後続で山岳会の方が上がってきている
※この状況で1人は不安だけど複数人いると俄然安心感が違う
などなど諸々考慮
行動食を補給、息を整える、改めて装備を整える
ここから先、集中力を高めるために気を引き締めた
天気予報の情報と現場の状況を整理
頂上まで届かなくとも08:30を超えたら撤退しようと決め再度アタックを開始
ここから先300mくらいがかなり痺れた
目の前の人達が1人1人撤退していく中進む道の心細さ
そんな中でトレースなし&ルーファイ
ガスって雪面が見にくい状況
切れ落ちた斜面
意外なほどに精神が消耗する
夏道のような明確な道はないので雪庇や雪面状況を探り探り慎重に進む
トラバースの最中、踏み出すごとに表層5cmくらいの凍結した雪が崩れて斜面を滑り落ちていく
アイゼンは崩れた下の雪にかかるので問題はないものの、気持ちが滑り落ちる雪の斜面下側に持ってかれるのが良くない
下は見ないで上を見上げろ
よく聞く言葉だけど、この時ばかりは心の中で何度も反芻した
トラバース中、小さな赤い杭の頭が見えた
進む方向が分かるだけでとてもありがたい
雪に気をつけつつ赤い杭に向かって進む
そこから周囲を見渡すと次の赤い杭が上部に見える
再びそこへ向けてゆっくり進む
この杭まで来てようやく駒ヶ岳神社本社の石碑が見えてきた
ここからは直登
雪面はガチガチ
ピッケルを刺し、アイゼンを一歩一歩蹴り込む
08:15 駒ヶ岳神社本社
ここでやっと一安心
何かの距離を進むというジャンルにおいて、人生の中で5本の指に入るくらい痺れた300mだった
また同時に撤退時刻もほぼ確実にクリアできる状況となった
直線約100m先に頂上の祠が見える
ここで、山岳会の方も合流
最後の直線を歩く
08:25 登頂
緊張と緩和とはよく言ったもの
達成感が凄まじい
自然と山岳会の方と拳と拳を合わせる
やりましたね!と言葉を交わし写真を撮り合う
すると頂上から望む南側の雲が抜け一気に光が射し込んだ
この時、雲の動きの中で見れた1-2分の間だけの景色
登頂したことを祝福してくれるかの様な絶景だった
08:35 下山開始
改めて行動食を補給し、集中力を高めて下山
来た道を戻る
改めて下山ルートを見ると自分のつけたトレース後を綺麗になぞる足跡が見えた
不安な中慎重にルーファイして進んできた道が正しかったと支持してもらえた様な、なんとも不思議な気持ちになった
勇気をもらいここもゆっくり慎重に降りる
少しでも急勾配があれば必ずバックステップを選択
トラバースは相変わらず精神が削られた
削られゾーンの300mを抜けたところでテン泊3組目の方とすれ違う
ここで今回の入山パーティー8組のうち3組が登頂となったのだと想像した
今回の入山パーティー
小屋泊1 ソロ
小屋泊2 ソロ 登頂
小屋泊3 2人組 登頂
小屋泊4 2人組
テン泊1 ソロ
テン泊2 ソロ
テン泊3 2人組 登頂(すれ違いのためたぶん)
日帰り1 ソロ
09:05 二本剣
ここまで降りると再びガスは抜けていた
二本剣右手に鳳凰三山と雄大に聳えた富士山が見える🗻
ここの二本剣×富士山×鳳凰三山の絵が素晴らしかった
思わず何枚も撮影
09:20 核心部 ルンゼ再び
上から見ると切れ落ちていて先が見えない
登りの通過時間から約2時間
南側斜面で日に照らされて約4時間
登りの時より更に雪が腐ってる状況は十分に予想できる
登り以上に慎重に少しでもかかりがよさそうな場所にピッケルを刺し、足を蹴り込んだ
それでも体重がかかった途端に足元の雪が崩れて下のステップで止まる事が2度ほどあった
ピッケルともう片方のアイゼンが効いていて問題はないものの核心部の落差30cmは十分肝を冷やした
#三点支持の大事さ
09:30 核心部通過
ここから先は不定期なガチガチとグズグズとズボズボ、たまにズボッ!をクリアしていく
帰りのこのエリアはそもそも腐っている率が高いので予め踏み抜く想定で進む
しかし中には股まで届く踏み抜きもあり気は抜けない
09:45 八号目
振り返り、石碑からの甲斐駒ヶ岳を改めて撮影
心の中で感謝の合掌
10:15 七丈小屋着
小屋のお兄さんへ挨拶&登頂の報告
お祝いの言葉をいただいた
#感謝
核心部周りの話となったので登りと下り時のルンゼの雪面状況を共有
改めて早出で雪が緩まない状況下でアタックするのが残雪期のポイントとお話されていた
七丈小屋のインスタは山の様子が毎日更新、ありがたい
→ https://www.instagram.com/p/C5MhgKRBt8H/?igsh=MXE3eGc0bnFwZGdoOA==
昨日の雑談で話した結果の行動計画の見直しだったので登頂を喜んでいただけて嬉しかった
外には海外の方が下山の準備をされていてお声かけいただいた
小屋のお兄さんと同じ様な内容のお話をし、こちらでもお祝いの言葉をいただいた
すごい、グレイトとか言ってもらえた気がする
#謝謝
デポしていた荷物を受け取り食事休憩
カップヌードル🍜カレー味
頂上アタックで消耗した気力・体力の回復に努める
補給を終えデポした荷物を再度パッキング
服装を整えているところで山岳会の方も小屋着
下山時のルンゼの踏み抜きは股下までいったとの事
1mは下がったはずなのでかなりの落差に感じたと思う
ロープの安心感は雑談やアタック中も伺っていたのでまた1つ勉強になった
10:55 下山再開
緩やかな箇所はペースを変えず粛々と進む
急峻な梯子や鎖場は慎重に進む
11:35 梯子下の祠(広場)
暑くなりフリースを脱ぎ体温調整
気温は6℃〜7℃
風が通りちょうどいい休憩となった
ここから先はアイゼン外す以外ほぼノンストップ
12:35 刀利天狗
12:55 刃渡り
13:50 笹ノ平分岐
15:10 竹字駒ヶ岳神社
怪我なく下山できた事と登頂感謝のご挨拶
ちょうどそのタイミングで神社の方がいて入山者の数と無事登頂できたかを聞かれたのでお伝えし、ご苦労様でしたと労いの言葉をいただいた
15:20 尾城川渓谷駐車場
下山完了
昨年と今年のタイム比較
尾白川渓谷駐車場〜七丈小屋間
登り 昨年 6時間ほど
今年 8時間ほど
下り 昨年 4時間30分
今年 4時間20分