ハジカミ山・尻付山に想いを馳せる!
猪群山
(大分)
2024.02.27(火)
日帰り
本日17時から出勤、
仕事前に久しぶりに平日トレッキング。
国東半島豊後高田(ハジカミ山・尻付山)にお邪魔してきました。
【西比叡山・ハジカミ山・尻つき山】
神仏習合を原点とした山岳宗教が展開された「六郷満山」が佇む国東半島、特にその西側を占める大分県豊後高田エリアはなんとも魅力的な霊験高い低山が林立しています。
六郷満山を擁する国東半島の知名度は全国的、その証として、同半島には、日本三叡山として、豊後高田市の「西叡山」が、なんと京都の比叡山(大比叡)と東京の東叡山と並んで存在します。
もしかすると、大分県民の多くはそのことを知らないかもしれません。
「西叡山」には、西叡山高山寺が718年に宇佐八幡の化身とされる“仁聞菩薩”(奈良時代に国東半島各地に28の寺院を開基したスーパーレジェンド僧侶)によって開基された高山養老寺が国東六郷満山の本山本寺となりましたが、それは、天台宗総本山の比叡山「延暦寺」、東京上野の山にある東比叡寛永寺と並んで平安時代に栄華・隆盛を極めた寺院と記録されています。
ちなみに、新型コロナ感染症パンデミック直前の2018年、仁聞菩薩によって開かれた六郷満山は開基1300年の節目を迎えたことは記憶に新しいことと思います。六郷満山霊拝はいま密かなブームです。
今回、開基1300年の節目ですが、
豊後高田市の霊峰、西比叡山(570m)とともに国東半島中央部に鎮座する、「ハジカミ山(570m)」と「尻付山(587.4m」を先に登拝することにしました。
その理由は、夷耶馬の名勝・中山仙峡(高城)を過去二度訪れた際、多数の奇岩・奇峰でできた細尾根を通過する私を、その右手からお釈迦様(仁聞菩薩)のように見守っていただいた「ハジカミ山」の存在が長きに気になっていたからです。
国指定の名勝「中山仙峡」に訪れながら、その魅力を越えるような不思議な存在感を見せつけられては、いつかは「ハジカミ山」にご挨拶に伺わなければ、との思いは募るばかりでした。
【ハジカミ山と尻付山】
「ハジカミ山」、その不思議な山名はとにかくインパクトありますね。外来山のイメージです。
また、最初感じた「ハニカミ山」?、「恥ずかし屋の山」?と誤ったイメージはなかなか抜けないもの。
それが脳裏に焼きついたなかで、中山仙峡から感じ得た菩薩様(山体)とのイメージとの整合性ギャップに未だ戸惑っています。
「ハジカミ」とは、古来中国で「生姜」を意味する言葉だそうです。生姜は2~3世紀ごろ中国から日本に入ってきたもので、当時は主に漢方薬として用いられましたが、後に料理の多角的なアクセントとしても用いられるようになってきた食材です。
漢字では「薑」または「椒」と表しますが、いずれの漢字もショウガの古い名称を表します。
その後、難しい漢字である「薑」から平易な「椒」に置き換わってきましたが、結局、江戸時代には再び「生姜」(しょうが)という呼び方に統一されて呼ばれるようになってきたそうです。
「はじかみ」、すなわち「矢生姜」という山名が未だ国東半島で呼ぶ習慣があることは大変た興味深く、それは古い名称の単なる名残りというよりは、「ハジカミ山」が、山岳宗教普及の時代の健康管理や食生活にも影響を与えた高き存在意義を山名に残したとも推測されます。
山頂に設置されている複数の標識(4つ)の一つには、それでも「薑」の漢字が使われていることは、山名由来を深く考慮しないまま刻印されたのかも知れませんね(考え過ぎかも)。
個人的には「ハジカミ山」が、西比叡山と同じ570mであることにも大変興味があります。ハジカミ山と尻付山は西叡山と一連の筋路をなす山々かもしれません。
ハジカミ山の登山口入り口に設置されている「五桂明神」と書かれた朽ちた古神社は、なんとも不思議な佇まいです。
神社周辺から手掛かりを探索しましたが、結局何を祀っているは分かりませんでした。唯一の情報は、石鳥居標識に掘られた「五桂大明神」の文字だけ!
「五桂大明神」の意味は、ネットで調べても何も分かりませんでした(民俗歴史書レベル?)。
しかし、中国では「桂」を、月の世界にある伝説の木という意味も含んでいることから、それに関連した「月桂樹」から類推して、
それが西洋ではギリシア神話の聖なる木という意味と中国での月に生えている生命力に長けた再生能力の高い桂の木と深く関係するのではと考えます。
「五桂」はそれを増幅した造語と考えるならば、それから強靱な神パワーも容易に想像できます。スーパー僧侶仁聞菩薩様に対抗した大明神のイメージです。確か、大映映画『大魔神』が祀られた山もハジカミ山に似ていた様にも感じます。
「ハジカミ山」の登山口に祀られる「五桂大明神社」にはきっと大切な意義があるに違いありません。
杉林山道の途中にも壊れていますが鳥居⛩️痕跡があることから色々妄想が膨らみます。
「ハジカミ山」は、平安時代から地域民から強く信仰された「西叡山」にも勝とも劣らずの重要な霊峰だったのかもしれません。神社が所在する西狩場の地名。
鳥や獣を狩る基点となった大切な場所、そして貴重なハジカミも狩れる山を擁したという地名かもしれませんね。
国東半島住民の生命を守る大切な狩場を見守る霊山、それが「ハジカミ山」の本態では、と思えてきました!もちろん妄想です。
今回、山頂付近で「矢ショウガ」を見つけることは出来ませんでした。というよりは、それがどの様な植生かよく理解していないのが問題です。
次回予習して探してみます。
【ハジカミ関連追記】
「焼き魚」にはよく「ハジカミの甘酢漬け」が添えられています(写真最後)。
これは焼き魚に紅白の彩りを加えるとともに、嫌味のない甘苦さが口直しするという意味もあります。ハジカミのピリッとした辛さと甘酸っぱさは、魚の臭みを消し、脂質が絡んだ舌表面を味覚清浄、そして漢方薬的役割もあるからでしょうね。ハジカミ(生ショウガ流石です)、あらためて食べたくなりました。
【尻付山】
一方、「ハジカミ山」と兄弟のように隣接する「尻付山」標高587.4m。
それは、豊後高田市真玉と香々地の境に位置し、同エリアで一番標高あるノッポ山です。中山仙峡からは正面に「ハジカミ山」に対して左手に見えます。
一風変わった山名は、その昔「弘法大使・空海」が、四国の生活を懐かしんでここで腰を下ろしたことが山名の由来とも言われています。
しかし、山頂から四国を懐かしむのであれば両子山や千燈山の方で腰を下ろした方が良かったのではと感じます。立っていますが「ゴームリー」の様に。
尻付山は、ハジカミ山より表層がゆるい土でできた山道ばかり。
山頂まで続く急登で、滑って尻付きし易いことの方が山名由来として納得しやすいところ。そうすると「ハジカミ山」も状況はやや同じですが。実は「弘法大師様」がお滑りになられた際、腰を下されて休憩された、との表現に変わったのかもしれません。弘法大師様ですから!
ハジカミ山と尻付山はセット登山の「お山」。
ハジカミ山山頂からの眺望に歓喜しました。
次回、西叡山に伺います!
猿田彦大神
天孫降臨の際に道案内をしたことから、道の神、旅人の神とされた所以。それは道祖神と同一視されていますね。そのため全国各地で塞の神・道祖神が「猿田彦神」として祀られています。ハジカミ山登山口の石碑は、五桂明神社とは関係ないのでは?