馬事公苑通り→都立桜町→コジマ用賀→用賀中町通り→谷沢川→等々力通り→玉川野毛町公園→丸子川→玉川大師→瀬田郵便局→五郎様の森緑地→用賀三条通り→弦巻通り→馬事公苑通り。 家を出た瞬間モワッとした空気に包まれ、今日も一日暑さとの戦いだと悟ってげんなりする。今朝の最低気温は28℃。日中は35℃超えの予報。セミも元気に鳴いてるよ。 丸子川沿いのいつも走ってる道に「次大夫堀東通り」という名前がついてたことを知る。丸子川自体が次大夫堀(六郷用水)の名残だから、当たり前っちゃ当たり前なんだけどね。 オーディブルはレイモンド・チャンドラー『さよなら、愛しい人』の続き。 霊能術者ジュールズ・アムサーに消されることを懸念して、ジゴロのリンゼイ・マリオットはマリファナ煙草の内側に、アムサーの名刺となんらかのメッセージ(見えない文字で書かれた?)を残した。ハッタリをかましたマーロウは、アムサーの用心棒のネイティブアメリカンによってボコボコにされ、別の管轄の警官によってドラッグ漬けにされて、アル中患者用の治療施設にぶち込まれた。口封じのために。だが、われらがマーロウは、そんなことで黙るような男じゃない。 「それでいい、マーロウ」と私は歯の間から声を絞り出した。「お前はタフガイだ。身長180センチの鋼鉄の男だ。服を脱いで顔もきれいに洗って、体重が85キロある。筋肉は硬く、顎もかなりしぶとくできている。これくらいでは参らない。頭の後ろを二度どやされた。喉を絞められ、半ば失神するくらい銃身で頭を殴られた。薬物漬けになり、頭はたがが外れて、ワルツを踊っている二匹のネズミみたいな有様だ。さて、私にとってそれは何を意味するのだろう? 日常業務だ。よろしい、そろそろ掛け値なしにタフな作業に取り組もうじゃないか。たとえばズボンを履くとか」 「階段を降りようと足を前に踏み出したところで、咳の音が聞こえた。はっと後ろを振り向くと、そこから始まっている別の廊下の、ドアのひとつが半開きになっているのが見えた。私は絨毯の上をそっと歩き、その半ば開いたドアの近くで歩を止めた。しかし中には入らなかった。くさび形の光が、カーペットの私の足元に落ちた。男はもう一度咳をした。胸の奥から出てくる深い咳だった。穏やかで安らかな咳だ。余計なことには首を突っ込まないのが賢明だ。私が求めているのは一刻も早くここを出ていくことだ。しかしこの屋敷にどんな人間がいるのか、もし見られるものなら見ておきたかった。中にいるのは責任ある地位に就いている人間かもしれない。ひとこと挨拶しておく必要があるかもしれない。私はその光のくさびの中に足をそっと僅かに踏み入れた。新聞ががさがさという音を立てた」 「僅かに隙間っのあいたドアの奥で、ぼそぼそという声が聞こえた。それに答える声を私は待った。何も聞こえなかった。電話の会話だった。私はドアのそばに行って聞き耳を立てた。ほとんど呟きに近い低い声だった。話している内容は聴き取れない。最後に電話を切るかちゃっという乾いた音が聞こえた。  そのあと部屋の中では沈黙が続いた。  こんなところは一刻も早く立ち去り、できるだけ遠くに離れるべきなのだ。ところが私はドアを開けて、静かに中に入った。それが私という人間だ」 何にでも首を突っ込まざるを得ない男、フィリップ・マーロウ。できるだけリスクを回避して安全志向でいくタイプとは真逆の、ディテクティブストーリーにうってつけの、タフでニヒルであきらめ知らずの傷だらけのヒーロー。 次元大介役を50年つとめた声優、小林清志さんが逝ってしまった。ルパンによく出てくる、若くて気の強い、しかし、どこかウブなところもある女性の原型は、もしかしたら、「好感の持てる娘」ことアン・リオーダンなんじゃないかとふと思った。たとえば、こんな記述から。 「あなたはきっとくたくたになっているはずよ」と彼女は言った。「ベッドに入った方がいいんじゃない?」 「ここでかい?」  彼女は毛根まで赤くなった。顎がぐっと突き出された。「何がいけないの? もう子供じゃないんだから。私がいつどこで、どんな風に何をしようが、誰の知ったことでもないはずよ」  私はグラスをわきにやり、立ち上がった。「私が分別を発揮しようという気になるのはきわめて稀なことだが、たった今がそうだ」と私は言った。「タクシーの乗り場まで車で送ってくれないか。もし君が疲れていなければだが」 「なんていう人かしら」と彼女は怒りを露わにして言った。「頭をあやうく叩き割られそうになって、わけのわからない麻薬を打ちまくられたのよ。あなたに必要なのは一晩ぐっすり眠って、朝すっきりと目を覚まし、新たな気持ちでまた調査に取りかかることじゃないの?」 「むしろ長く眠りすぎたような気がしていたんだがな」 「愚かしいことを言わないで。本来なら病院に入っているべきなのよ」 「彼女は立ち上がり、私に向かってぐっと顎を突き出した。「あなたは今すぎベッドに行くのよ。うちには予備の寝室があるし、さっさとそこのベッドに入ってーー」 「君の部屋のドアに鍵をかけると約束してくれ」  彼女は赤くなり、唇を噛んだ。「あなたって凄腕の探偵に見えることもある」と彼女は言った。「でもときどき救いようのない下品な人間にしか見えない」 「彼女はうちまで送ってくれた。その身体は怒りに満ち、唇は一文字に閉じられていた。運転ときたらそれはすさまじいものだった。アパートメント・ハウスの前で私が降りると、彼女は冷え冷えとした声でおやすみなさいと言って、そのまま小さな車で通りの真ん中にぐいと飛び出していった。ポケットから鍵を取り出したときには、もうその姿は見えなくなっていた」 #街ラン #朝ラン #早朝ラン #ランニング

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