わたくしの山行酒場放浪記  わたくしが山登りを始めるきっかけのひとつが、仕事で訪れた宮崎県の都城市から見た高千穂峰でございました。霧島連峰の一角を占める高千穂峰は1574mの成層火山で、「山」の字そっくりの美しい山容を誇り、天の坂鉾や坂本龍馬とお龍さんが日本史上初めての新婚旅行で薩摩を訪れた際に登った山としても有名です。その美しい山容に見惚れて、わたくしも登ってみたいなどと分不相応なことを思ったものでございます。そんな高千穂峰ですが、去年の11月の終わり頃、念願かなって一度だけ登ったことがございます。前日に韓国岳に登ったのですが、その時は運よく晴天で、遠く鹿児島湾に浮かぶ桜島が見えました。ところが翌日の高千穂峰登頂では雨こそ降りませんでしたが、強風が吹き荒れ頂上は雲の中、視界10mという有様でございました。真っ白な水蒸気に囲まれ強風に頬を打たれる辛さに即座に回れ右して下山したことを昨日のことように覚えております。  わたくし、実は先週から都城に滞在しております。休日またぎの滞在ですので、性懲りもなく、今回は天気の良い高千穂峰を登りたいと思い、背嚢と山靴を持参いたしました。一週間前の予報では晴れのち曇りでしたが、週末が近づくにつれ、曇りのち晴れ、曇り、雨時々曇りと変化し、わたくしの気持ちも予報に合わせて萎えていったのでした。そんな気持ちを払拭するため、夜の都城に流れ者が繰り出したのでございます。  都城市は宮崎県第二の人口を誇る都市でございます。郊外型の地方都市はどちらの町でも一緒ではございますが、都城駅前は少し寂れておりますね。都城には西都城駅に近い「牟田町」と言われる繁華街がございますが、今回は都城駅に近い飲み屋街を歩いてみましょう。こちらは牟田町に比べるとこじんまりとして時節柄もあるでしょうが人通りも少ないですね。今夜はこちらの「百番」さんにお邪魔します。表に”ろばた”とありますね。  暖簾をくぐりますと、御亭主が阪神タイガースの熱狂的なファンなのでしょうか、阪神タイガースの旗やら虎のぬいぐるみなどが沢山ございます。お客さんはわたくし以外まだいらっしゃらないようですね。さて、カウンターの角に座ることに致しましょう。こちらはご夫婦で切り盛りされているのですね。笑顔の素敵な御亭主と上品な女将さんです。生をください。  ビールがくるまでにつまみを選びましょうか。黒板ありますね、旬の物がありそうで心が躍ります。じゃあ黒板から何か頼みますか。おっと、生ビールとお通しが来ました。注文してもよろしいですか?それじゃあ、アジの刺身と新玉ねぎの天ぷらと・・・、タラの芽いいですね、これも一つ下さい。とりあえずそんなところでお願い致します。  まずビールを一口。う~ん、旨いですねぇ。この旨さ、全然山に関係ないですね、これは。お通しはタケノコの酢味噌和えですね。これも上品で、う~ん、美味しいです。刺身が来ました。九州ではゴマアジというのが有名ですね。ゴマアジというお魚がいるわけではなくて、白ごまと醤油でアジを和えているんですが、今日はただのアジの刺身です。では早速いただきます・・・旨いですね~、日向灘で取れたアジでしょうかね。九州の醤油は関東の醤油に比べて甘みがあります。この醤油、初めて使ったときは違和感を感じましたが、慣れるとこれもまたおいしいですね。九州で刺身食べているなぁという実感がわいてきますね。ビールもすすむわこりゃ。  天ぷらがきましたよ。抹茶塩ですか?そうですね、それもいただけますか?さて、新玉とタラの芽。まず新玉から天つゆでいただきますか・・・甘いねぇこれは。美味しい。タラの芽はどうかな、塩でいこうか・・・あぁ、春の味ですねぇ、いいですねぇ。 この後カウンターにお客さんが一人、二人といらっしゃいました。常連さんのご様子で、御亭主と女将さんとお話している仲に入れていただき、楽しくお話させていただきました。

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