2004年、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産にも登録された紀伊半島の熊野古道。紀伊半島各地から、熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)へと伸びる道は、平安以降、多くの人々が訪れた由緒ある祈りの道です。
熊野本宮大社はその核心部とも言える名跡。熊野三山の中では最も古い創建と伝えられています。今回は、熊野古道「中辺路(なかへち)」の発心門王子から、熊野本宮大社・大斎原(おおゆのはら)にかけての山歩道をご紹介します。
コースのスタートは「発心門王子」。“仏の道に帰依する心を発する門”という意味を持っており、ここから先は熊野本宮大社の神域と考えられてきました。かつては、神域への入口となる大きな鳥居があったとも伝わっています。
「発心門王子」から「水呑王子」「伏拝王子」までは、なだらかな下り坂。各王子間はおおよそ30分ほどの道のりです。「水呑王子」にはその名の通り小さな水場があり、「伏拝王子」は、かつて参詣者がここで初めて熊野本宮大社を遠望し、伏して拝んだことに因むとも言われる場所。地名の由来・歴史に想いを巡らせ、いにしえの道を歩くのも一興です。
伏拝王子から、下りと登り返しを経ていよいよ熊野本宮大社へ。途中には「ちょっと寄り道展望台」もあり、その名の通り「大斎原」とその背後を滔々と流れる熊野川を一望することができます。展望台から30分ほどで熊野本宮大社へ到着。
生い茂る木立の中に佇む荘厳な本殿には、主祭神である家都美御子大神(ケツミミコノオオカミ/スサノオノミコトの別称)をはじめ、熊野十二所権現と呼ばれる神々が祀られており、交通安全、大漁満足、家庭円満、夫婦和合、長寿などにご利益があると言われています。
熊野川・音無川・岩田川の合流点にある「大斎原」は、明治22年の大水害に襲われる以前に、本宮大社があった場所。参拝者は川で水垢離を行い、祈りを捧げていたそうです。
旧本宮大社は現在の数倍の規模を誇ったとされており、太古の昔に熊野の神々が降り立った場所であるとも伝わる聖地。木々に囲まれた敷地内には小さな祠が祀られており、静謐な雰囲気です。木立の向こうには、川の流れがキラキラと輝いて見え、身も心も癒される居心地の良い空間が広がっています。