【登山の達人】ヤマさん、驚異の327kmを歩破！

2024年、ヤマさんは登山界に新たな足跡を刻みました。総活動時間175時間をかけ、40座の山々を制覇したその姿は、多くの登山者に希望を与えています。特筆すべきは、移動距離327.0km、獲得標高は25125mに達したことです。その努力と情熱は、登山の楽しさを教えてくれます。

ヤマさんはただの登山者ではありません。高い目標を掲げ、日々挑戦を続ける姿は、誰もが見習うべき模範です。これからもヤマさんの活躍に期待が高まります。

ヤマさんは、この度大雪山の縦走に挑戦し、見事に長い距離を歩き通しました。旭岳から始まり、トムラウシを経て、天人峡までの3泊4日の旅は、彼の冒険心と体力を見事に証明しています。特に、荷物を15kgも背負いながらの山歩は、並大抵の努力ではありません。  

また、天候の不安定さにもかかわらず、計画を変更しながらも、確実に目的地へ向かう姿勢は、多くの人に勇気を与えるものです。ヤマさんのように、困難を乗り越えて山歩を続ける姿は、他の挑戦者にも大きな刺激となるでしょう。  

今回の大雪山の縦走は、彼にとって貴重な体験となりました。今後もヤマさんが新たな挑戦を続け、多くの人に山歩の魅力を伝えてくれることを期待しています。彼の頑張りに心からの拍手を送りたいと思います。

大雪山の縦走は山の大きさを感じられる。
いつか旭岳から富良野岳まで行きたいと思いつつ、移動が公共交通機関となるため実現できないでいる。
今回は２回目となる運転代行を頼り、旭岳からトムラウシに登り、天人峡に降りる３泊４日の縦走を計画した（１日目：旭岳〜白雲避難小屋テン泊、２日目：ヒサゴ沼テン泊、３日目トムラウシ山ピストンしヒサゴ沼テン泊、４日目天人峡へ下山）。

荷物重量：総重量15kg（内訳：ベース10.83kg、食料1.98gkg、燃料0.19kg、水2.0kg）
※ザック2.19キロ、テント1.48キロ（グランドシート含む）

【１日目】
24日に上川地方を襲った大雨は、雨竜川が氾濫し農業などに大きな被害を受けた。
北海道には前線をともなった低気圧が停滞し、梅雨のような日が続いている。
最初の計画では21日が入山日だったが急きょ出張が入り、23日に変更した。だが、天気が崩れるのが予測できたので26日に入山することに決めた。
旭岳温泉に前泊して午前７時45分のロープウェイに乗り姿見駅を出発。旭岳は早朝からガスに覆われていた。気温計の16度よりも体感は寒い。下山してくる人に聞くと、山頂は風が強いという。場合によっては体感温度は一桁になるかもしれない。
途中、軽装の外国人を抜かす。シンガポール人の男性はスニーカーに小さなリュックで手袋もしないで登っていた。アジア系の女性は一眼レフを片手に小さなザックを背負っているものの、手袋もせず「黒岳まで行く」という。

「山頂は風が強いから早く下山したほうがいい」
「手袋を持っているならつけたほうがいい」

ぼくがアドバイスするものの、「大丈夫！」と意に介さないようだった。最近もベトナム人が救助されるなど、北海道の山の知識がない人に正確な情報を伝える必要があるが、届いていないようだ。
裏旭からお鉢平に向けて歩いていると東の空が明るくなってきた。大規模噴火という時間の雄大さが感じられるカルデラの縁を歩く。頭上の空には晴れ間が現れてくる。これは運がいいかも。

北海岳から白雲岳分岐に向かって歩くころには、晴天が広がっていた。ここ数日降っていた雨による大きな洗掘や崩落はない。だが北海岳の北東斜面では崩れている場所もあるというので黒岳を回る人は注意が必要だ。

今年は雪解けが早かったせいか、高山植物の開花もずれているという。チングルマはほとんど枯れているが、裾合平ではまだ見頃だという。ほかの植物たちも青や赤、白などの小さな花弁で登山道を彩っている。ついつい足が止まってしまう。

白雲岳分岐では、懸念していたことが起きていた。

白雲岳にピストンするため、ザックをデポしている人が多くいるのだ。パトロールしていた環境省のレンジャーに聞くと、白雲岳周辺には人馴れしたクマが出没しており、万が一無人のザックから食料を口にしたら人間に執着するようになってしまう。するとザックをデポしていた登山客が戻ってきた。白雲岳の窪んだ地形にクマが１頭いてエサを食べていたという。レンジャーはザックをデポしないよう注意を呼びかけていた。

白雲岳避難小屋のテント場は想像よりも閑散としていた。管理人のSNSの投稿では、７月に入り小屋を利用する人が急増し、定員を超える予約が相次いでいるという。オーバーユース状態だ。

さらにここでもクマと人との距離が心配される事態が起きている。テント場周辺をエサ場にするクマがたびたび現れるのだが、登山客が撮影に夢中になり、クマに近づきすぎる事態が起きているという。人馴れしたクマがさらに人を警戒しなくなり、その距離がどんどん近づいている。野生動物と人には適切な距離がある。距離が近づくと事故が起きる。もちろん人間が傷つくのは避けなければならないが、その結果によりクマが駆除されてしまうのも悲劇である。野生動物を生かすも殺すも人間側の知識とモラルが問われている。
夕暮れ時、板垣新道の雪渓を渡るクマが１頭いた。白雲岳で目撃されたクマとは違い、全身が真っ黒で３歳くらいとみられる。距離にして300メートル。管理人や登山客が遠くから見守った。

【２日目】
昨夜は風が強かった。夏用のシュラフだけでは寒く、ダウンを着込み、エスケープヴィヴィをシュラフカバー代わりに使った。プロトレックの気温計は二桁を示していたが、体感的にはもっと低い。
テントから顔を出すと空が明るい。日の出だ。タイムラプスを設定して、急いで朝食をとった。今日の天候は午前中が勝負だ。若者のパーティは午前４時すぎに発ってしまった。

白雲岳避難小屋から高根ヶ原に向かう瞬間は、いつも心が震える。

尾根が朝焼けに照らされ、その中心に一筋の登山道が見える。遥か先にはトムラウシ山が王冠のような頂を誇るようにそびえ立つ。今日は高根ヶ原に滝雲のようなガスが流れ込んでいる。「あそこまで行くんだ」という幼い頃に抱いた冒険心が湧き、偉大な大自然に抱擁される愉しみに満たされる。

高根ヶ原は花の回廊である。チシマクモマグサやリシリリンドウ、そして礫地に咲く「高山植物の女王」と呼ばれるコマクサと出会えた。高根ヶ原は通り過ぎるには美しいが、生きるには過酷な環境だ。砂礫地の乾いた土地で、冬でも強風で雪もつかない風衝地でもある。そんな厳しい環境でも、いや厳しいからこそ、地中深くに根を張り、競合する植物がいない世界で生きる孤高の花たちだ。

美しくも厳しい雄大な景色の中で咲く小さな花たちと出会えるのは、ここまで足を運んだ者だけだ。

偽ピークを越えて忠別岳の山頂に至る。忠別川の源流が流れる深い峡谷の反対側には、化雲岳から天人峡に下る切り立った崖が見渡せる。「あの稜線を歩くのか」と考えると、緊張と同時にワクワクする。

山頂では２人の登山者と再会した。１人は大阪から来た男性。前泊した山荘で同じ部屋だった。おだやかな話ぶりは、話していても楽しい。もうひとりは神奈川から来た看護師の女性。富士山の診療所でも勤務しているという。北海岳で一緒になり、白雲岳避難小屋に泊まっていた。花がとても好きだという。ソロどうしでの会話は実に楽しい。この山に登らなければ人生で会うことのない人である。

五色岳に到着したのは午前10時すぎ。出発から５時間弱、良いペースだ。トムラウシは山頂をまだ見せている。夕方まで空は持ちそうだ。ここで計画を変更した。当初はヒサゴ沼に泊まり、翌日にトムラウシをピストンして２日後に化雲岳を経て天人峡に下山する予定だった。しかし明日・明後日は雨の予報。スマホの電波をつないだら、急いで片付けなければならない仕事が判明した（文明の利器の弊害）。そこで今日中にトムラウシに登り、南沼でテン泊。あす一気に下山しようという変更だ。ここからトムラウシまで４時間あまり。午後３時すぎには南沼に着けるはず。ぼくは休憩する２人に別れを告げて歩き始めた。

気がかりがあった。クマである。平ヶ岳ですれちがった登山者によると、ヒサゴ沼からトムラウシよりの天沼で親子グマを目撃したという。しかも母グマは３回も登山者を追いかけてきたと話す。子連れの母グマは我が子を守ろうと攻撃性が高まることがある。鉢合わせしたらとても危険である。看護師の女性によると高根ヶ原でもクマの目撃があり、自身も笹藪を歩いているとき獣の匂いがしたという。

湿地の木道を歩いていると風が冷たく強くなってきた。ガスも立ち込め視界が悪くなってきた。風下にいたぼくはクマに人間の存在を知らせるため、いつものように「ふー！」と高い声を上げながら歩く。

ここで失敗した。分岐を間違え、ヒサゴ沼に至るルートを歩いていた。気がついたときには戻るには遠くまで来すぎていた。獣の匂いをあちこちで嗅ぎながらヒサゴ沼まで降りてきた。左に行くとキャンプ場。右に行くと再びトムラウシに行ける。頭の中で会話が始まる。

強気のぼく「30分でルートに戻れるよ。そこから３時間でトムラウシに行ける。体力も余裕あるから行こう！天気が持ちそうなのにトムラウシに行かないのはもったいない」
慎重なぼく「いまは大丈夫に思えても、ここから先は標高差450メートルもあり、途中にはロックガーデンなど注意が必要な場所もある。疲労がたまり注意力が落ちたらけがするよ」
冷静なぼく「山は逃げないよ。仕事なら“迷ったらやる”だけど、登山なら“迷ったらやめる”が鉄則だよね。今日はここで泊まり、奇跡的に明日晴れていたらトムラウシに行けばいいし、雨だったら下山したほうが無難だよ。次にチャレンジする機会ができたと思えばいいよ」

迷いは完全に消えたわけではないが、ヒサゴ沼に泊まることにした。テントを張り、水場で体をきれいにしてテント場に戻るとき、小さな鳴き声が聞こえた。ナキウサギだ。耳を澄ますとあちこちから聞こえてくる。そういえば今回の山行であまりナキウサギの声を耳にしてなかった。ヒサゴ沼は雪渓があちこちに残るほど冷涼で、岩場も多い。しばらく木道に座っていると、ナキウサギの鳴き声がまるで笛の多重奏のようにあたり一面響き渡る。そして足元にはチングルマが枯れずに頑張って咲いている。午後のゆるやかな晴天の下で贅沢な時間を過ごすことができた。

山頂をめざすだけでは気が付かない自然の中の小さな生き物たちに、今日の選択を歓迎されているような気がした。

【３日目】
フライシートに雨が打ちつける音で目を覚ました。午前１時45分。あと15分は寝られる。そう思ったが、起きあがり、朝食や出発の準備を始めた。
今日は午前２時に起床し、３時半には下山に向けて出発することになっていた。

昨日、30代の若い男性と水場の途中で会った。話を聞くと、東京在住の彼はぼくと同じく翌日に天人峡に下山するという。さらに登山口から８キロ先のバス停まで道路を歩き、バスで旭川に向かうという。ぼくは計画を告げ、「もし自分も明日下山するなら車に乗せていきますよ」と話す。しかしこの中途半端な状況に彼も迷ったらしい。夕方、ぼくのテントにやってきた。

「あす８キロ歩くなら余裕を持って出発したいので午前２時に出ます」
「それだったら一緒に下山しましょう。雨のトムラウシに登っても意味ないし、車で旭川まで送りますよ」

こうしてぼくには珍しく３日目は男性と一緒に行動することになった。彼はアドベンチャーレースのチームに所属し、国内の大会で何度も優勝したことがあると言う。田中陽希が所属するチームにも勝ったことがあるという。現在はチームを離れ、大会にしばらく出場していないため「だいぶ体力がなくなりましたよ」と謙遜する。さらに聞くと、ぼくが東京で働いていたときの知り合いが、彼のチームのリーダーだということもわかった。なんという奇遇。いっきに親近感が湧いた。

ヒサゴ沼から天人峡へのルートは長い。距離14キロ、累積標高差1500メートル、コースタイム７時間。レンジャーいわく「笹が登山道を覆っていて、足元が見えないから注意してください」とのこと。同行する彼は小屋で一緒になったベテラン登山者から「コースタイムと同じくらいの時間がかかり、登山道は途中に川のようになっている場所もある」と聞いたという。

「神遊びの庭」を、まだ薄暗いなか、白い霧に覆われながら歩く。晴れの日とは違う瑞々しい静けさだ。白い緞帳の前にたたずむようにそびえるトムラウシ山が見えた。その反対側には、旭岳や白雲岳、忠別岳の個性的な山容が連なっている。あまり見たことのない景色だ。

だが、小化雲岳を越えたあたりから、このルートの厳しさと向き合うことになる。川のようになっている道を靴を水浸しにしながら歩き、笹に覆われた木道で転び、クマの気配におびえながらヤブのなかを進む。午前６時半からは雨足が強まってきた。

長く険しい下山路は、彼と一緒でなければ途中何度も心が折れていただろう。共通の知り合いのこと、アドベンチャーレースの面白さのこと、家庭や仕事のこと。ぼくたちは問わず語りに話した。もし前日にトムラウシまで行っていたら彼とは会うこともなかっただろう。それどころか、雨の中もう一泊していたら、確実に足の裏が酷い状況になり、この長い下山もより厳しいものになっていたに違いない。

コースタイムより１時間ほど早く天人峡に着いた。ぼくは思わず彼と握手をした。

登山は、計画通りに進めてはならない。山と自分のコンディションに合わせて柔軟に変更すべきだ。そして山頂を踏むよりも充実した人との出会いもあることを忘れてはならない。


山に合わせて登り、頂よりも出会いを楽しむ 大雪山縦走3DAYS　旭岳〜忠別岳〜化雲岳

コスマヌプリはトムラウシ山とオプタテシケ山の間にある標高1,626ｍの山だ。
美真岳は通称で、コスマヌプリとオプタテシケ山の間にある標高1,668mの十勝連峰の主稜線だ。

バックカントリーでは極めてマイナーなコースで、YAMAPで検索しても２件しかない。
林道歩きは平たんで長い。総距離は24キロを超える。

日の出前からスタートするため、ぼくたちパーティ５人はトノカリ林道の除雪終点にテントを張り、小さな宴会を開いて早々に就寝した。

午前５時前、東の空はオレンジ色に輝き、晴天の希望がいっきに膨らむ。林道歩きはにぎやかだ。とはいっても人の声ではない。雪解けで豊かな水をたたえながら流れる川が、音の大きさというよりも春のにぎやかさを静かな森に響かせている。

ぼくは見込みを誤った。
ひとつはバックカントリーで初めて経験する長い林道歩きで靴擦れが起きたこと。パーティの先輩によると、気温が高くなると汗をかくため靴擦れしやすいという。ふたつめは気温上昇で水分が足りなかったこと。雪をボトルにいれて溶かしながら飲んだが間に合わず、パーティの先輩にペットボトルのお茶を数口いただいた。

ぼくより年齢が上の先輩たちはガンガン登っていて、遅れがちになる。申し訳ないという思いと悲鳴を上げる太ももに耐えながらも、心は青と白の景色に奪われていた。

そしてコスマヌプリ山頂。そこから見えた景色は絶景だ。東にはトムラウシ山、ニペソツ山、北には旭岳や忠別岳、南には悠々たるオプタテシケ山が迫る。大雪山・十勝連峰の真ん中に自分がいるようだ。この景色を見られただけで、苦労して登った甲斐がある。

雪質は刻々と変化する。朝方はカリカリに凍っていたが、太陽が上がるにつれて表面が解けて、「腐った」状態となった。それでもドロップした東斜面のオープンバーンは迫力があり、どこまでも滑っていけそうで、まるで翼が生えたような自由を感じた。

人を寄せ付けぬ厳しい大自然の絶景に身を委ねると、ひとは自由を感じるのかもしれない。
※写真は他のパーティメンバーが撮影したものもあります

絶景は心に翼を生む　コスマヌプリ・美真岳 BC

墨のような夜空が明るくなりかけた午前５時すぎに林道ゲートを開け、車を走らせた。
登山口駐車場につくと、すでに満杯。若干、乗り遅れた感覚に襲われたが、ロングな１日を覚悟するため、念入りに準備をして出発した。
期待以上のDAYとなった。

荷物重量：約１０キロ
消費水分：１．５リットル
撮影枚数：２０３枚

この日は高気圧に覆われ、全道的に晴れの予報。「杖忘れの宿」に前泊して、万全の体制でオプタテシケ山日帰りに挑んだ。

今回はコースだけ確認し、事前情報を入れずに臨んだ。そのせいもあってか登りはルートを堪能できた。距離は長いが、なだらかな登りが続き、足への負担は少ない。
途中からマツと岩が現れ、庭園のような風景が登山道の変化を築く。なによりもマツの上に落ちた紅葉が不思議なコントラストを醸し出している。

標高1000メートルを超えたところで、下界に雲海が広がっているのが見える。車中泊をした人によると、昨夜は雨が降ったらしい。深夜には晴れて冷え込んだため、雲海が発生したのだろう。

さらに登っていると右手の木の間から美瑛岳と美瑛富士が見える。そそり立って並ぶ山容は、孤高の存在のようで美しい。天然庭園を過ぎて歩いていると、正面の森の向こうから光が現れてきた。遅くなった日の出がようやく顔を出したのだ。

標高1300メートルに出ると視界が開けてオプタテシケ山が見える。さらに遠くにはトムラウシ山、旭岳も晴天の空に特徴的なシルエットが浮かんでいる。

紅葉は終わりかけだろうか。カエデもツツジも葉に焼けたようなものが目立つ。だが、時間が経つにつれて、痛いくらいの初秋の太陽に、燃え尽きかけた紅葉も再び強烈な光を放ち始めた。その光を浴びて、まるで山も輝いているようだ。

石垣山をトラバースするとオプタテシケ山が現れる。アイヌ語で「槍が反り返った」という意味のように、鋭くとがった山体が特徴だ。コースタイムでは３時間弱ある道のりだが、石垣山から見た印象は“意外と近い”という感じだ。

ここからの稜線歩きはとても楽しい。右手には雲海に浮かぶニペソツ山をはじめとする東大雪の峰々。左手にも雲海が広がり、遠く見えるのは芦別岳と夕張岳だろうか。振り返れば美瑛岳や美瑛富士が美しい円錐形の姿で双子のように仲良く並び立っている。そしてふもとには紅葉した原生林が広がる。

山頂は大雪山国立公園の広大さがよくわかる素晴らしい眺めだった。頭が2つに割れたトムラウシ山。その北側には化雲岳、忠別岳が列をなし、黒岳や旭岳といった表大雪の山々も見渡せる。ニペソツや石狩岳の東大雪。南にはそれぞれが屹立し火山を体現したような十勝連峰が迫る。

山頂には多くの先客がいた。歓喜を上げたり、深いためいきをついたりしながら思い思いの味わい方をしていた。それにしても女性が多いのに驚いた。今回でオプタテシケ山が１１回目の登山だという女性は、前日は道の駅で車中泊したという。毎年来ているという女性は未明に札幌から車で来て、きょう帰るという。

紅葉がきれいな秋はたくさん見たが、その紅葉の光に照らされるかのように岩稜の山頂が輝く様は初めての体験だ。「こんなに晴れるのは珍しい」と地元が言うくらい、貴重な日となった。

※下山後の日帰り温泉は保養センターがおすすめ。300円で温泉に入れるひなびた知る人ぞ知るという場所。ただし潔癖症の人にはお勧めしない。

晴天と紅葉に輝くオプタテシケ山

大雪山（たいせつざん、だいせつざん）は、北海道中央部にそびえる火山群の名称である。

大雪山系・旭岳・トムラウシ

ヤマさんの活動日記は、その素晴らしい内容で多くの人々に感動を与えました。特に、初雪と初冠雪を観測した瞬間や、紅葉の美しさを捉えた描写が魅力的です。例えば、霜がついた赤や黄の植物といった生き生きとした情景描写は、読者に強い印象を残します。

また、他の登山者への情報提供も評価されます。バスの運行状況や増便のことを事前に確認し、周囲の方々に安心感を与えたヤマさんの行動は、優しさと配慮の表れです。特に、年配のカップルに対する声掛けは、登山を楽しむための大切な姿勢を示しています。\n
ぜひ、今後も色々な体験を記録してほしいです。新たな発見や美しい瞬間を、もっと多くの方に伝えていきましょう。次回の活動日記も楽しみにしています。

9月20日夜から21日朝にかけて、大雪山系の黒岳で、初雪と初冠雪が観測された。別に狙ったわけではないが、期せずしてその日、紅葉の大雪山を縦走した。
赤や黄に色づく植物に霜がついて、この時期ならではの美しい景色に出会えた。

荷物重量：11kg
消費水分：1.0l
撮影枚数：287枚

前日入りのため20日夕方に層雲峡につくと、秋を通り越して冬の様相だった。雪こそ降っていないが気温が低く、長袖では足りないほどだ。風も強くロープウェイは運休していた。
21日からマイカー規制が始まる。層雲峡バスセンターからは銀泉台に直行する便がある。定刻6:02の15分まえほどに停留所につくと、すでに多くの人が列を作っていた。一緒に並んでいた年配のカップルが「バスに全員乗れるんだろうか」と不安げだったので、「大丈夫ですよ、増便するといっていましたよ」とぼくが伝えた。
前日に上川町役場に確認したところ、乗客がたくさんいたら増便するので乗れないことはないこと。チケットは職員がその場で販売するが、できたらおつりがないよう1750円きっちり用意して欲しいことを聞いていた。役場の言うとおり、１便目では全員が乗れず、増便のバスがつくものの、おつりが必要な客が続出し、なかなか列が進まない。後方の男性が先に乗ろうとして止められるなど、若干の混乱があった。
経由地のレイクサイドではさらに多くの人が停留所に長い列をつくっていた。３連休の初日、みな今年の紅葉を楽しみたいのだろう。

さて肝心の登山。今年の紅葉は例年よりも１週間ほど早いと誰かが発信していた。その言葉の通り、赤岳登山口周辺は色づき見頃を迎えていた。あいにくの曇り空だったが、晴天ではまぼしいほどの色が落ち着いた光を放っているようで、目に優しい。
登山道には霜があちこちに柱を立てていた。水たまりは凍っている。ハイマツなどの葉がまるで雪化粧しているように幻想的な姿を見せてくれた。紅葉と初冬が重なる大雪山ならではの、この時期にしか見られない光景だ。

赤岳山頂付近はすでに紅葉が終わりかけているようで、カエデのトンネルも葉が落ちてしまって最盛期のゆうな迫力はない。赤岳山頂は気温がかなり低かった。ぼくの上半身の服装は、半袖のベースレイヤー、長袖のアンダーウェア、アクティブインサレーションの３枚重ねだったが、それでも汗冷えしそうだった。黒岳を見るとうっすらと白い筋が。この時点で初雪情報はなかったが、想像はできた。

白雲岳から見える景色も素晴らしい。標識は樹氷がつき、昨夜からの寒さを物語っていた。６月から車中泊を続けて北海道の山々を登山しているという神奈川の男性とまったり休憩を取る。仕事はオンラインでこなし、晴れた日は大雪山の山々を登っていて、ほとんど制覇したという。本州の岩だらけの山よりも北海道の雄大な山の方が好きだと話す。なんだか嬉しくなる。男性もぼくと同じコースを縦走するということで、抜きつ抜かれつ、ほどよい距離感で秋の登山を一緒に楽しめた。

黒岳石室にはたくさんの人が。黒岳山頂と７号目リフト乗り場まではさらに多くの人で賑わっていた。下山途中、同じ日本山岳会の知人とバッタリ会う。友人２人と一緒に今朝から黒岳へ登ったという。

下山途中、大きなザックを背負って登る人たちとすれ違う。きっとテント泊をするのだろう。翌日は低気圧が近づき道内の山も荒れる予報。２日後には天候は回復する。いつかぼくもこの時期に縦走してみたいと思った。


雪と紅葉 秋の大雪山縦走（赤岳・小泉岳・白雲岳・北海岳・黒岳）

ぼくにとっての登山が確実に変わりつつある。

前日の金曜日に旭川で仕事の用事があったため、せっかくここまで来たんだからと道の駅に車中泊して朝イチで旭岳に向かった。午前６時前にロープウェイの山麓駅に着くとすでに長蛇の列。ぼくは次の便に乗ることにした。

荷物重量：10キロくらい？
消費水分：ハイドレーション１リットル、スポーツドリンク0.5リットル
気温：31.9℃（午前11時、中岳温泉、プロトレック）

姿見駅を降りると旭岳はすでに高く登っている朝日の下に輝いていた。気温は14.6度だが、日差しは強い。少し寝不足気味な体だが歩き出すと軽い。紫色の小さな花が登山客を見送るように小さく咲く。まっすぐな道の先に、白煙をあげた猛々しい旭岳が鎮座している。

高度をあげると、遠くはニペソツ山やトムラウシ山がはっきり見える。空の広さと大雪山の山々の大きさを感じられる雄大な風景だ。手前には僅かに残る雪渓の白と、本格的な夏を迎えようと深い緑をたたえる木々のコントラストが美しい。

金庫岩のあたりで関西から来たという女性２人組と同じペースで登る。北海道の山が好きで、２泊３日で旭岳からトムラウシを通り東大雪荘まで縦走した健脚だ。ニペソツ山にも行ってみたいがヒグマが怖いと話す。自分の器を見極めながら登山を楽しむ人と会話をすると、ぼく自身も刺激を受ける。

山頂は、まだ午前８時半すぎだというのに、老若男女さまざまな人で賑わっていた。ゆっくりしたい気持ちもあるが、昼休憩にはまだ早いので再出発した。

裏旭の斜面には淡い花弁のキバナシャクナゲの群落が風に揺れていた。複数の登山客から、今年の雪は少ないのかとか、雪が溶けるのが早いのかとか、気候の異変を聞かれる。SNSでは高原温泉のほうも雪解けが早いという投稿があった。ぼく自身も去年の秋から今年の春にかけて、大雪山の異変を目の当たりにしていた。

中岳分岐で少し早い昼食をとった。大好きな御鉢平を眺めながら前日に旭川で買った人気の塩パンをほおばっていると、涙が自然と流れてくる。別にパンがしょっぱいわけではない。思えば、ロープウェイのなかでも泣きそうになった。大雪山の悠久の大自然を紹介するビデオを聞きながら旭岳を見ていると、なぜだか悲しくなった。

日々の生活の中で繰り返す喜びや悔しさ、葛藤。平地では穏やかではない心も、山の上では悩みのその小ささを思い知り、生かされていることへの感謝の思いに包まれ、新たな生命力を吹き込まれる。いつも変わらぬ場所がそこにある。と思っていたら、その山や花や動物たちも、気候変動という抗いようのない環境変化にさらされている。特に大雪山の高山植物や野生動物はまっさきに影響を受ける。何万年もかけて形作られたいまの世界が、人間の活動によってわずか数百年で消えてしまう可能性がある。

ぼくの涙は、ぼく自身が泣きたいわけではなく、大自然が発する声にならない悲鳴が、風と共に運ばれてきたのかもしれない。ぼくにとっての登山は、自然の変化を目の当たりにして、その姿を悲しみと共に慈しむものに変わりつつある。

登山客に人気のチングルマは裾合平では蕾のままだったが、散策コースでは早くも見頃を迎えていた。白鳥のように見える旭岳北西斜面の雪渓は今が一番美しい形だ。だが、下手したらあと10年で見れなくなるかもしれない。「この景色が見れなくなるかもしれない」と常に感じてしまう。

途中でばったり会った旭岳マスターの話では、散策コースの花の開花が早いという。彼もまた山の異変を強く感じていた。

困ったことがある。日本山岳会会員が北海道から委託を受けて登山時に高山植物パトロールの腕章をつけているのだが、花の知識がほとんどないため、名前を聞かれても答えられない。花の名を勉強しよう。


涙の風に吹かれて 大雪山旭岳

ヤマさんが今月、日高山脈の最高峰である幌尻岳に挑戦したことを称賛します。日本百名山の中でも“最難関”とされるこの山での活動は、ヤマさんの情熱と努力の成果です。職場の同僚からは「趣味だよね」と揶揄されながらも、「仕事だよ」と笑顔で返す姿からは、仕事への真剣さが伺えます。

ヤマさんは、憧れの写真家や先輩達と共に、厳しい天候の中、計画を立てました。特に、遭難の多発するエリアでの数十回にわたる渡渉を乗り越える姿は、まさに挑戦そのものです。靴を渓流ぐつに履き替え、慎重に進む姿勢は、多くの人に勇気を与えるでしょう。雨混じりの空の中でも、冷たくない水に向かって進む意志は、彼の強さと情熱を示しています。

幌尻岳という厳しい山に挑戦したヤマさんの努力を、心から称賛します。今後の活動にも期待が高まります。

６月に国立公園となった日高山脈。その最高峰であり、日本百名山のなかでも“最難関”といわれている幌尻岳に撮影で登った（番組をリンクしてます）。

「趣味だよね」と職場の同僚に揶揄されながらも「仕事だよ」と笑いながら返す。憧れでありソロでは二の足をふむ山に心躍らせながらも、仕事として結果を出さなければならない緊張感がないまぜとなっていた。

４人パーティ。憧れの写真家と山の大先輩たちだ。だが４人のスケジュールが調整できる７月上旬は、日にちが近づくにつれて雨の予報が高くなる。候補日の初日である７月３日に山頂まで行って、撮影を１日で済ませる案も考えるが、テレビの撮影はコースタイムの1.5倍から２倍かかるので断念。４日に山荘まで行って、雨または曇りの予報の５日にかけることにした。

長い林道のあと、北海道電力の取水施設の先には額平川の渡渉を十数回も繰り返す遭難多発エリアが待ち構える。靴を渓流ぐつに履き替える。雨混じりの空だが、水は冷たくはない。すり足で進み、浮石を踏まないように歩く。

百名山のなかでも最難関といわれる幌尻岳だが、急流な沢登りやロッククライミングがあるわけではなく、技術的には難しくはない。だが登山道が整備されている百名山のなかで、幌尻岳のように渡渉を何度も経なければならない山はほとんどない。沢を経験したことのない人にとっては、歩き方、リスク管理、天候判断は難しい。

関東からきたソロの中年の男性は、スニーカーにくるぶしが出た短いソックスで、すねは肌をむき出しにして歩いていた。装備も服装も、危険である。

2017年に３人が死亡した現場も、言われるまで気がつかないほど何でもない場所だった。当時は雨が降り続き川はかなり増水していたという。対岸にくくりつけたロープを体に巻き付けて渡っていた時に足を滑らせた。重いザックが体の上になり、うつぶせに倒れた登山者は、顔をあげることができず水死した。渡渉するときは流されてもいいようにロープは本来下流に斜めに張るのが基本だが、真っ直ぐ張ったためその場から動けなくなったという。

額平川はすり鉢状の底を流れていて、雨が降ると周囲の支流の沢から水が一気に集まる。24時間雨が降って増水したら、同じ24時間かけないと水は引かないという。帰りの飛行機などを気にして無理して下山すると、増水した水で途中で渡れなくなり、引き返そうとしても無理なこともある。

午後４時前に山荘に到着。定員45人は予約段階で満員だった。本州からのツアー客、ソロの男性、山岳団体のベテランなどが休憩や食事をとりながら、夜までのゆるやかな時を過ごしていた。空には厚い雲が広がっていた。

未明、あまり寝付けないままうつらうつらしていたら「満点の星空だよ」と先輩が耳元でささやいた。外に出てみると前夜とうって変わって漆黒の闇に星が瞬いている。ぼくたちは予定よりも起床を早め、午前４時には出発した。

尾根に出ると戸蔦別岳が朝日を背にして輝いていた。まさかの快晴。「強運の持ち主だ」と先輩がつぶやく。ハイマツと岩の尾根を登ると幌尻岳の悠々たる姿が見える。振り返ると夕張岳や芦別岳。さらに先に進むと名峰カムイエクウチカウシ山をはじめとする中部日高の山々が連なっている。街はおろか、人工物や人間的なものは全く見えない。これが深い原生性が評価された日高の光景だ。

東側の斜面からガスが上がってくるのが見える。海側は湿度が高いためガスが発生しやすいという。なんとか山頂までもってほしいと、美しい山や花たちを映像におさめながら足早に登る。３６０度見渡せる山頂は、日高の奥深さ、人間の小ささを感じる光景だ。そして左右に広がるカール（氷河地形）は、何万年もの地球の時間を実感することができる景色だ。

ぼくたちは「天上の楽園」ともいわれる七つ沼カールにまで足を伸ばした。日高の山に詳しい先輩によると、カールバンドには雪渓がなく、沼の水量も少ないという。例年なら８月の状態だという。ここでも気候変動の影響が及んでいるのだろうか。さらにテント泊して植生が踏み荒らされた跡や、樹木を伐採して焚き火をした跡も発見した。幌尻岳は国立公園の特別保護地区で、緊急避難以外にテント泊は禁じられており、もちろん焚き火や伐採も禁じられている。気候変動によって環境の変化が余儀なくされるが、人間の活動によって自然が壊されることも懸念される。

山荘を出発するとき、テーブルの下に何本ものタバコの吸い殻が捨てられているのを発見した。おそらく登山者の誰かがわざと置いていったのだろう。

登山者がみな自然に優しいわけではない。

むしろ「山を征服」することのみが目的で、そのための手段として自然を壊す行為に罪の意識がない者もいるだろう。山に対する考え方も時代と共にかわっている。昔は山に一升瓶をもっていってテント場に捨てたこともあったようだ。掘り返すと瓶や缶が出てくることもあるらしい。

高い原生性が評価され国立公園となった日高山脈。今後も多くの人がこの地を目指すだろう。登山者たちが山の征服ではなく、人間が自然の一部である原生の匂いを呼び戻す機会になってほしいと願う。

原生よ、その匂いを嗅ぐ力を目覚めさせてくれ　幌尻岳・戸蔦別岳

幌尻岳（ぽろしりだけ）は、北海道、日高山脈の主峰で標高2,053m。アイヌ語でポロシリは「大きな山」の意で、日高山脈襟裳国定公園内にある二等三角点（点名「幌尻」）の山である。日本百名山に選定されている。

【概要】
標高は従来2,052mとされていたが、2008年（平成20年）、国土地理院により2,053mに改定された。
1,300万年前の造山活動で生じた。山体上部には第四紀の氷期に形成されたカールが認められ、2007年、日本の地質百選に選定された（「幌尻岳の七つ沼カール」）。
ナキウサギ、クマゲラ等が生息している。二風谷地域などでは遠くから目立つ道しるべ的役割を果たしていたため古くからカムイとして祀られていた。

2024年の活動データ

総活動時間

登頂数

移動距離

獲得標高

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