いにしえの時代より人々の信仰を集め、神々の伝承が今なお息づく神秘の地、紀伊半島。その信仰の中心である「熊野本宮大社」「熊野速玉大社」「熊野那智大社」へと通じる参詣道は「熊野古道」と呼ばれ、千年を超える昔から歩かれてきた祈りの道です。
中でも和歌山県田辺市から熊野三山を巡る「中辺路ルート(全長約100km)」は、平安時代以降、上皇や貴族をはじめ多くの人々が訪れた由緒ある古道。神々が棲まう場所として大切に守られてきた美しい森や、古道沿いに数多く祀られた寺社仏閣など、その神秘的な魅力は国内外を問わず多くの人々に愛されてきました。2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産にも登録されています。
世界的にみても貴重な祈りの文化と豊かな自然。しかし今、その姿が変わろうとしています。林業従事者の減少によって山は荒廃し、結果として山に生きる鹿や猪が田畑を荒らすようになりました。また、農業従事者の高齢化による耕作放棄地も増加しています。一見すると世界文化遺産にも登録されて観光客が増加し、地域経済もうまく回っているように見える熊野ですが、人口減少や一次産業の衰退によって、古道を支えてきた里山の営みは今、存続の危機にあるのです。
里山の荒廃によって引き起こされる地域の衰退、そして文化消失の危機。その解決の鍵として今注目されているのが、熊野に脈々と伝わってきた一次産業を取り入れた観光資源づくり。今回の取り組みでは「熊野フィールドワーカー」と題して、熊野の魅力を再発見する仲間10名を募集します。
具体的な活動内容としては、地元熊野で「農業」「林業」「狩猟」「観光」に従事する事業者とともに、全4回のワークショップ(東京)、そして2泊3日のフィールドワーク(熊野)を実施。参加者の皆さんと現地事業者との交流を通し、登山者の視点で熊野古道に触れ、中辺路とその周辺地域に新たな観光資源を見い出すことが目的です。
登山者の目線で熊野の自然と文化を楽しみ、フィールドワーカーとして地域の魅力を発見する。そして地元の事業者と共に、その魅力をより多くの人に楽しんでもらえるように具体化していく。今までにない、新しい取り組みが始まろうとしています。ぜひ皆さんのチカラを貸してください!
「熊野フィールドワーカー」プログラムはヤマップが進行を、低山トラベラー大内征氏がメンターとして全体の案内を務めます。
第1回【ワークショップ】
熊野古道 悠久の歴史と「観光」の魅力を知る
第2回:【ワークショップ】
神々の森を再生し、未来につなぐ「林業」の最前線
第3回:【ワークショップ】
滋味豊かな熊野の食を支える「農業」と「狩猟」の今を知る
第4回:【フィールドワーク】
知る人ぞ知る プレミアムな熊野に触れる2泊3日の旅
第5回:【プレゼンテーション&修了式】
熊野の観光に新たな息吹をもたらす! アイデア共有会
南紀白浜空港に向かう飛行機が紀伊半島にさしかかると、窓の外には山岳が複雑に折り重なる稜線が延々と広がるばかりだ。これだけ視界が開けていても、そこに山しか見えないというのは、日本広しと言えども熊野だけのものだろう。
そんな山深い風景の中に、遠い昔から人を惹き付けてきた道がある――それこそが熊野古道だ。貴賤貧富の別なく、誰しもが生まれ変わることのできる「蘇りの道」である。
奇しくも干支がひと回りした庚子(かのえね)という転換の年に、数多の登山者から熱い視線を集めるこの古道の“今”を知る絶好の機会が、田辺市とYAMAPのタッグによって設けられた。同じアンテナをもった仲間たちとともに熊野に没頭する、またとないチャンスとなるだろう。登山アプリNo.1のYAMAPの進行の下、ぼくはメンターとしてみなさんの案内人となる。光栄だし、これもまた面白いタッグとなった。
そんなぼくはというと、中辺路を歩いたときの写真を今から整理している。初回座学の冒頭に、とっておきのフォトツアーをする予定だ。そんな具合に、案内人のぼく自身が、すでに前のめりになってしまっている。
果てなく続く熊野の山稜のごとく、飽くなき探究心をもった仲間たちが集うことが、もうワクワクでしかない。新たな出会いだ。そして、そんな仲間たちとともに熊野を「フィールドワーク」する日が、本当に楽しみで仕方がない。
「熊野フィールドワーカー」メンター 大内征
下記の要項をよくお読みいただき、応募してください。
下記アンケートフォームにご記入いただいた応募内容をもとに厳正なる審査を実施し、参加者を決定いたします。審査を通過された方にはYAMAPより後日連絡をさせていただきます。審査を通過された方のみが、本取り組みへ参加可能となりますので、あらかじめご留意ください。
下記アンケートフォームよりお申し込みください。ご記入内容をもとに審査を実施いたしますので、できるだけ詳細に、参加への熱意が伝わるようにご記入ください。