活動データ
タイム
07:27
距離
15.4km
のぼり
1735m
くだり
1734m
活動詳細
すべて見るカラスと木登りの話 子供の時、山に行けば必ずしていた遊びが木登りだった。兎に角がむしゃらに木にしがみついては必死に登り、誰よりも一番高くに上がって遠くを見るのがいつもの楽しみになっていたのだ。 あるひの日曜日に友達と近くの山へと向かった時の話だが、目的は学校での噂話の確認に。烏(カラス)の巣はいつも空(から)だ!と云われれば覗きたくなる悪ガキ達だが、そのカラスの巣のありかを知る友達に連れられ訪ねた里山の川岸から、崖上にせり出す一本のカシワの木を見上げていた。幹から伸びた太い枝先に座布団くらいの大きさの丸い巣が有るのが見えていて、高さが10m近くもある垂直な崖が行く手を阻んでいる。その木の近くへ行くには目の前の崖を登るしか方法が無く、崖上から垂れる太い山葡萄(ヤマブドウ)の蔓(ツル)に掴まりよじ登って崖上に!と、浅はかで可成り危険な考えだが全員何とか登りきり、いよいよ最後のミッションが!だが、崖下から見上げたカシワの木の枝は、崖から斜めに幹がせり出し宙を舞う上にあり、登らねば中が見えないカラスの巣!落ちれば一巻の終わりとなる危険極まり無い木登りに、何かに取り憑かれたかのように突き進む子らには迷いなどは一切ないのである。幹にしがみつき上の枝先へと体を引き上げて、揺れが体に伝わる中程まで登り背伸びをした目線の先の手の届かぬ枝の上・・・噂通りに空っぽのカラスの巣が見えた。 翌日の朝、誰が話したのか?学校中に知れ渡り校長室に呼ばれてこっ酷く叱られたが、やり切った達成感が蘇り言葉が耳には届かなかったようで、あの時に見たカラスの巣越しの里山の景色を思い出していた。 あれから随分と年月が経ち、木登りで見た景色も今は高みを増して登山に変わるが、そんなおバカな記憶とともに久々にしがみ付くブナの木は、嘲笑う(あざわらう)かのように立ち塞がり「もう歳なんだし諦めな!」とでも言っているのか?1ミリも上へはよじ登る事さえ出来ずにただただ苦笑いをしている今日の山 蕎麦粒山である。 この山は、今年の6月に訪ねて以来となるが、前回同様に倉沢谷からのチャレンジとなる。 今回登るルートは、奥多摩町の日原地区から倉沢谷に入り棒杭尾根を経て蕎麦粒山に登頂、下山に鳥屋戸尾根を使い倉沢谷入り口へと戻る周回コースを考えていて、前回に引き続き今回もバリエーションルートを楽しんで来ようかなと考えている。 登山開始は日の出前、まだ開けぬ薄暗さの中を倉沢谷沿いの荒れた林道を歩き棒杭尾根の取り付きとなる長尾谷へと向かって行く。昨年秋の台風被害で彼方此方に崩落が見られる道すがら、落石に怯えながらも沢音に耳を澄ませて歩けば心が騒ぎ足取りも軽くなる?はずの道、息を吐き吐き高度を上げながらも淡々と歩んでいる。魚留橋を過ぎ怪しさ増す道を進めば塩地谷と長尾谷に流れが分かれて朽ちかけた地蔵橋に差し掛かり、沢沿いに登り続けた道先に棒杭尾根への取り付きがある。ここ迄も道標などは無く、これからも都県境界尾根となる稜線まで一切の道標が無い踏み跡怪しいバリエーションルートを歩くのだが、ここから一気に高度を上げて最短ルートを登るのはキツさを伴い笑うしか無い。高度を増すたび傾斜も増してそろそろ嫌になりかけた頃、目先にコース初めての道標が見え都県境界尾根に辿り着く。分かっている辛さだが、来る度堪えて愚痴を云い、まるでMかと笑んでは(えんでは)ペロリと舌をだす。これから辿る尾根道は巨樹の道、癒しの大樹に抱かれて耳を当て暫し息を閉ざして見るが、今は森も眠るのか流れる血潮の囁きさえも届かずに微かだが吹き抜ける風が冷たさを増していた。緩やかな稜線を歩き仙元峠を越えての登り返した先が蕎麦粒山の山頂になる。 蕎麦粒山である。 晴れ渡る防火帯の先に凛として聳える川苔山が見えていて見惚れるのだが、この山頂にはいい思い出が無い。3年前の事だが、群がる虫に悩まされとっとと撤退をと下山を始めたが、その日は急に湧き上がる濃いガスに巻き込まれて見通しが効かずルートを見失う失態をしてしまったのだ。現在地が分からず地図もコンパスも役に立たない山中を3時間も彷徨う羽目になり、無事の下山後にGPS機能を持つスマホを買う切っ掛けになった山であり、その時うっかり紛れ込んだ杣道の有った尾根が今回下山に選んだ鳥屋戸尾根である。作業道が交差して見誤れば彷徨う危険性をはらむ山域でもあり、現に未だに帰らぬ人がいる。 今回はガスも無く木々の合間に周囲の山が所々に見通せる鳥屋戸尾根の緩やかに下る稜線上を歩き長尾山、松岩ノ頭、鳥屋戸八丁、塩地ノ頭のピークを越えて笙ノ岩山を過ぎれば、これからが今回の登山で一番に危険で長く急な道が一気に川苔橋の登山口へと向かって行く。 安全に安全にと願いつつ辿る道、今日もご無事でおつかれ山〜 ふりかえり 今回の登山では、棒杭尾根を登りに使い、鳥屋戸尾根を下山ルートに計画してみたが、振り返り思うのは鳥屋戸尾根の危険箇所と不明瞭な尾根道。登りには問題ないが下山にはリスクが予想以上に有る事が検証でき、一般登山道では無い自覚と装備を持っての登山を薦めたい。 この日記が少しでも登山の参考になれば有難い。
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