比叡山飯室谷【安楽律院】〜三石岳・八王子山。

2020.12.03(木) 日帰り
uriuri4211
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活動詳細

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11月の終盤から12月中は私の仕事は一年で最も忙しい時期である。 公休日は普段どおり月に9~10回あるのだが、出勤の日は帰宅が23時を回ることも多い。疲労と睡眠不足のせいか休みの日に早朝に起き出して、しっかりと山へ行こうという山欲(さんよく)がイマイチ湧いてこない。 出世欲も金欲も性欲も無い。辛うじて食欲だけはあるのが救いだろうか。 今日もたくさんの食べ物を小さなザックに詰め込んで遅いスタートの裏山散策に行こう。 例によって大宮川観光駐車場からスタート。明智光秀の菩提寺・西教寺の前に差し掛かると拝観者用駐車場を拡張する工事をされている。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の影響で訪れる人が増えているのだろう。コロナ禍中ではあるが地元民としては嬉しいことだ。 坂本8丁目の住宅街を抜けてゆく。綺麗に花々を手入れされている民家の庭先にこの時期はさすがに咲く花が少ないのだが、木立ダリア(皇帝ダリア)を植えておられるのが目立つ。すっくと伸びた茎(幹)に薄紫の美しい花が印象的だ。凛としていて大好きな花である。 住宅街を抜けるとまもなくで飯室谷へと続く登山道の入口がある。植林の尾根と谷を緩やかに登ってゆく。しばらくすると谷にアルミ製の踏板の橋が架かっており、これを渡ると飯室不動堂に達する。 苔むした穴太積みの石垣の参道がとても情緒がある。 飯室不動堂の前から真っ直ぐに進み安楽律院への案内標にしたがって緩い坂を登ってゆく。やがて穴太積みの石垣に挟まれた切り通しを過ぎると幅の広い石段の下り坂が緩やかに山門へと続いてゆく。 山門から石段を登り切った高台の上に上がると急に広く開けた場所にでた。広場は火災で焼失した本堂の跡であり、礎石と敷石が残っている。 小さなお堂が二つ目に入る。一つ目のお堂の横には樅木の大樹が聳え立ち印象的だ。敷地を挟んで数段上がった上のお堂の周りにはモミジの樹々が数本あり、最盛期は過ぎたものの美しい紅葉を楽しませてくれる。 境内を散策していると庭園や池の跡と思しき名残りが残っている。とにかく石積みや石垣が多い。石垣の道に誘導されるかのように登ってゆくと、そこは高僧の墓であった。 かなり大規模な寺院であったことが想像され、比叡山の鬼門に位置する飯室谷を守り続けた在りし日が偲ばれる。 安楽律院を後にして再び飯室不動堂に立ち寄り、苔むした石垣の参道を過ぎてアルミの橋を渡る。渡った先に三石岳へと続く尾根道の取り付きがある。 道は尾根芯に沿って続いてゆく。多少の藪と倒木があるが問題ない。やがて黒いプラスチック製の階段が現れる。どうやら鉄塔の巡視路であるようで、それはよくありがちな急登である。 急坂を登ってゆくと急に明るくなり鉄塔地に出た。北東に開けた視界には比良の山並みと堅田以北の琵琶湖の好展望が得られた。 雲が多いものの青空も覗いており、なかなか美しい。先日の夕刻ヤマネコさんと登った(走った)長命寺山と奥島山も綺麗に見える。その奥の伊吹山や霊仙山は雲のヴェールに包まれていた。 鉄塔地から先も急登が続くが途中からははっきりとした登山道が現れる。林道を横切り傾斜が緩やかな道になると暫くで三石岳に登頂する。 三石岳の山頂は樹林に囲まれた地味な広い山頂だが三等三角点がある。小さいが分かりやすい山名板の上に、よく見るとPH氏のプレートもあった。 三石岳から南東の急な斜面を下り、八王子山へと至る道を進んでゆく。急に暗くなり気温が下がった気がすると、小雨がパラパラと落ちてきた。急いで八王子山へ向かう。 八王子山の山頂は今年の春頃から踏み入る事が出来なくなっている。小さなケルンが積んであり八王子山と端正な文字が刻まれた石標のある頂上。この地は日吉大社の御神体であり、神聖なる神域のため人の立ち入りを禁止されたのだ。 山頂を巻く道で迂回して牛尾宮・三宮宮のお社へと至る。舞台造りが壮観である。そしてこの地からの南東方向の眺望は抜群だ。 我が家からも見上げればこの二つの社はいつも見えている。ときどきゆっくりと訪れたくなる場所だ。 ちょうど男性お二人が下って行かれたところで、誰もいないこの展望台でゆっくりと持参した食べ物をいただこうと思いながら、ふと御神体の大岩の方を見ると、両宮の間に腰掛けていらっしゃる女性がいらした。 こんにちはとご挨拶すると、私が写真を撮るのに邪魔になっているものと勘違いされ、その場を立ち去ろうとされる。大丈夫です、ごゆっくり、と申し上げて私は牛尾宮の舞台の下で食事をする。 女性は場所を移動しながら熱心にスマホで写真を撮られている。と、私の頭上を見つめカメラを構えられた。何かありますか?とお聞きすると、牛尾宮の軒下に大きなスズメバチの巣が、しかも2つぶら下がっている。 それを小さな声で教えて下さったのだが、このとき初めて女性のお顔をしっかりと見た。マスク越しにではあるが目鼻立ちの美しさがはっきりと分かる。 私は食べ物でいっぱいの口をモグモグさせており、何か話したいのだが緊張もあって、辛うじてどちらからいらっしゃったのか尋ねるのが精一杯。 三重からわざわざお見えになった美女は、では失礼します、と一言だけ残して去っていかれた。 食事が中途半端だったので半ばヤケクソ気味に持ってきた食べ物を全部食べ切ってしまった。 曇っていた空が少し晴れてきた。湖面が青く輝き出した琵琶湖と、その対岸の三上山をもう一度眺める。そして日吉大社へと下るのみだ。 下山途上の参道にある数本のモミジは意外にも綺麗に色付いているものが残っている。 立ち止まって、あぁ美しいなぁと眺めるのだが、先ほどの女性の美しさには、敵うはずもない。 急いで日吉大社まで下ったが彼女の姿はすでに見当たらない。まるで初冬のモミジの葉のごとく、淡い赤色の恋心はハラハラと散り落ちて、茶褐色に枯れてゆくのだった。

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